大聖女と言われ転生しましたが、大きな仕事もせずに第二王子に愛されています。

文字の大きさ
上 下
98 / 111
番外編/陰の聖女はまったりを所望中ですが。

◇中庭でバーベキュー

しおりを挟む
 中庭から肉の焼ける言い香りが漂って来ます。

「野営をしているみたいだな」
「今度テントを張って寝てみようかしら」
「目の前に快適なベッドがあるのにわざわざ庭で寝るのかい?」
「だってーキャンプあっ、野営なんてなかなか出来ないもの~」
「それは言えてるわね。護衛ぞろぞろ連れてなんて楽しくないわよね」

「あっ、ビオラ!肉が焦げてる」

「わぁー真っ黒・・・」

「マリーは大きな海老がいいです」

  聖女マリーもうじき十一歳になる。

「ロブスターね、もう少しでいけるわよ。あっ、バージルタレがシャツに・・・」
「うわっ、ホントだ(汗)」

 何とも賑やかなバーベキュー大会に使用人たちもお皿を手にしながら遠巻きに笑っています。

「ほら、あなた達もお皿を持って順番に並んで。早い者勝ちよ!」

 我先にと庭師のポールがやって来ました。
「ポールいつもきれいに庭を整えてくれてありがとう。出血大サービスよ、はい」
 と焼けた肉を大盛に乗せてあげます。

「奥様、このタレというのものはいいですね~」
「でしょう、私特製ですもの。たくさん食べてね」
 二台作って貰ったコンロの一つにはベイベリー邸の使用人達。もう一台の周りにはマリーにバージル、ダニエル、ビオラといつもアンナを警護している護衛の騎士二人、そして目の前のバラの庭園の門番をしてしているジャックを呼びました。

 ジャックはバージルとアンナが付き合い始め庭園でデートを重ねるようになってからの顔見知りです。
 庭園の正面門から裏門の番に交代で入るとベイベリー邸からアンナの料理する匂いが流れて来て堪らないですと聞いていたので今回招待してあげたのでした。
「私の様な門兵が殿下とご一緒に食事が出来るなんて夢の様です」
 涙を浮かべながら肉を頬張る姿はなんともいじらしい。

「そういえば、もうすぐドルチェの皇帝夫妻がお越しになられますが」
「ええ、一年半ぶりにナリス様にお会いできるのでが楽しみですわ」
 ずっと護衛に付いてくれているジェイドがアンナに問いかけるとアンナは笑みを浮かべて答えた。
「わたしも元気になられた皇妃様に早いお会いしたいです」
 ロブスターが妬けるのを待ち乍ら香ばしく焼けたソーセージをはふはふし食べているマリーもまた皇妃との再会を楽しみしていたのでした。
 そんなマリーの頭を撫でながら

「少し厄介な土産も持ってるがな」
 バージルは面倒臭そうに呟きます。

「心配いらないわ。このビオラに任せないって!

 それにもうすぐドロップも戻って来るわ。楽しくなるわよ」
 そう言いながら肉を齧るビオラの目が怖いです。

 水の精霊ドロップはドルチェから帰国する際、聖女マリーに離して貰えず先に帰国していた。
 後日アンナ達が到着するのと入れ替わりに旅に出るわとあっさり消えてしまったのである。
 精霊らしい気まぐれな行動だった。
 アンナの足元にすり寄って来たフォルヴァにまだ焼いてない生の塊肉を上げる。
 聖獣フォルヴァと共に猫に化身していたドロップが姿を消しフォルヴァも少し寂しそうだと思っていたアンナは肉を鋭い牙で切り裂きながら食べるフォルヴァの頭を撫で

「フォルちゃん良かったわね、ドロップがまた来てくれるそうよ」
 というと彼はふんっ、首を振ったのでした。

『うふふ、本当は嬉しいのに照れ隠しね』
『ええ、私もそう思うわ』
 ビオラとアンナが念話で会話しお互いにクスリと笑う姿に気付いたバージル。

「ビオラ、時々で良いからまたアンナと念話が通じるようにして貰えないだろうか?」

 小声でビオラに頼むのを聞き逃さなかったアンナは二人の間に入り断固反対する。

「アレはもうダメです!!!」

 何故駄目なのか想像できるダニエルはバージルの肩をポンと叩きながら

「最初の使い方を間違えたからだろう?」

 ダニエルに皮肉を言われ「ちっ」と舌打ちをするバージルに、全く何を考えているのだか。
 ドルチェ帝国での魔術大会の際、ビオラが私とバージルに一時的に念話が使えるように魔法をかけた。
 でもバージルの意図は別にあったのだ。
 何時ぞやの夜のように念話で愛を囁かれ続けたら気が落ち着かない。昼は仕事も出来ないし夜も眠れなくなるじゃない!

「邸でも一緒、執務室もお隣同士なんだから念話は必要ないでしょう!」

 両手を腰に当ててアンナに窘められそこにいた全員が王子が落ち込む姿に笑いたいのを堪え見て見ぬふりをします。
 すっかり気落ちするバージルにフォルヴァはざまあみろと生肉で血塗られた口元を少しだけ上げたのでした。

 その後何事も無かったように皆は初めてのバーベキューを楽しみ?第一回ベイベリー邸バーベキュー大会は三時間ほどで幕を閉じ、皆片づけを手伝いそれぞれの持ち場へと帰って行ったのでありました。
 


 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~

saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。 前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。 国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。 自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。 幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。 自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。 前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。 ※小説家になろう様でも公開しています

処理中です...