大聖女と言われ転生しましたが、大きな仕事もせずに第二王子に愛されています。

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最終章

73*寄り道

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今回から最終章にはいります。
終章は短いので最後までお付き合い頂けると嬉しいです♪


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 一行は来た時と同じ馬車列を作りアデライト王国へ向かっていた。
 アリア領とアデライト王国を繋ぐ橋はまだ完成しておらず往路と同じコースを取る。

 アリア→オレオ地区→アデライト王国に入ったところで一台の馬車が列を離れます。
 そうです。国境にあるこの村は大聖女ジュリーナ生誕の地であった村なのです。
 フォルヴァから二百年前の話を聞き結界の修復の為に立ち寄る事なりました。
 デオドールには新婚旅行をさせて貰うと告げバージルとアンナ、ビオラ、ダニエルそしてフォルヴァだけでお忍び旅行となりました。
 御者はダニエルです。護衛も付けずにとデオドールが言い掛けましたが、アンナの強さを目の当たりにして余計なお世話と思い途中で口を噤んだのでした。
 ドロップはのけ者にされたマリーがいじけて抱え込み手放さそうとしなかったので王都へ一緒に帰還する事になってしまった。

 馬車の中から村の風景を見ていたアンナは初めての場所にも関わらず懐かしさを覚え涙ぐみます。

「あの修道院がジュリアーナが捨てられ十五まで育った場所じゃ」

 フォルヴァの説明に修道院を見つめるアンナとバージル。
 一行は修道院に隣接する教会で祈りを捧げる事にし馬車を降ります。
 フォルヴァは聖獣の姿に戻っています。
 といっても一回り小さな真っ白な狼の姿ですが。
 出迎えた神父と祭壇の前まで進むと彼は突然彼女の前に跪き手を取ります。神父の姿に皆一様に驚きます。

「どうされましたか神父殿」
 バージルが問うと神父はロザリオを握り締めながら目を潤ませてアンナを見上げ
「お帰りなさい大聖女様」と取った手に祝福のキスを落としました。

「どうして・・・」
 アンナが驚き言葉に詰まると神父は立ち上がりアンナの肩に触れくるりと入口の方を向かせました。
 四人は神父が指さす入り口の扉の上に飾られた大きな肖像画を見て息を呑みました。
 その肖像画にはプラチナピンクの髪と瞳を持つ少女が描かれ、その姿は先日の魔術大会で披露した勇者のコスチュームに近い出で立ちでありアンナそのもの姿だったのです。
 そしてその横には聖獣フォルヴァまで描かれていました。

「貴女は大聖女ジュリアーナ様の魂を受け継ぐ方なのですね」

 神父が尊い者を見る眼差しを向けてきます。
 アンナは頷きました。
「あの絵に描かれているのはこの村だけに言い伝わる伝説の大聖女ジュリアーナでございます」

「お話を聞かせて頂いてもよろしいですか?」
 アンナは神父にこの村に伝わる大聖女ジュリアーナの話を聞いてみたいと思ったのでした。

 二百年以上前のこの村にジュリアーナは誕生した。もちろん王都には聖女が存在していた。
 ジュリアーナが幼い頃大きな災害が起き村に怪我人が運ばれてきた。この村は当時多くの場所で発生しいていた魔獣も殆ど出没しない村であったからだ。
 その人々を救うために王都から聖女と治療魔法師がやって来たが怪我人の数のに対応しきれず、順が回ってくる前に命が尽きると思われる者が多数いた。 
 この時聖女に救えなかった多くの負傷者を一晩で治療し助けたのはこの修道院で育ったジュリアーナだった。しかしこの事はアンナの養母であるエニスタ以外に知られる事はなく聖女の功績となった。
 この村は彼女がいる為に守られ穏やかであったと伝えられた文書(日記)も残っている。
 そしてそれを残した人物こそジュリアーナを自分の養女とし育てアデライト国が魔獣と瘴気に包まれた時に救世主としてフォルヴァと共に旅立つのを見送った修道院院長のエニスタであった。
 エニスタは愛娘が大聖女だと気づき断腸の思いで彼女をフォルヴァと共に送り出した。
 そして、その時の様子を絵師に頼み残したのだった。この絵を見た旅人に聞かれたら【大聖女】という言葉は決して口にはしていけない。この村を救った【勇者】だと言いなさいと最後に記してあったという。

 ダニエルは父の話を思い出していた。
 神殿には一切大聖女の記述を残したものはないが神官の中だけで語り継がれてきた伝説の大聖女。
『やはり本当の話だったのだ』
 ジュリアーナの絵を見るジュリアンナの後ろ姿に後光が射したように眩しく光って見える。

養母様おかあさまが書き残して置いて下さったのですね」
「はい、私ども村人はエニスタ殿の日記からジュリアーナ様の事を知り代々ずっと崇めて参りました。現在いまも大聖女様が産まれた地を守る為に作って下さった結界に守られ暮らしていける事に感謝しております。故に大聖女ジュリアーナ様の事は他言せずに参りました」
「そうですか。ありがとうございます」

 バージルはそんなアンナの様子を少し離れて見つめていました。

『今更ながらアンナは真の大聖女なのだ。自分は彼女のデビューの時に一目惚れし強引と言われても仕方ないほど執着して妻にした。本当にそれでよかったのだろうか。彼女にはマリーを陰で支える他にも使命があったのではないだろうか。
 でも、もう私は彼女を手放すことは出来ない。彼女も自分と生涯を共にしたいと思ってくれていると信じたい』
 そう思い願っていながらある日突然目の前からアンナが消えてしまうのではないかという不安に駆られていたのでした。

「二百年もの間ジュリアーナの存在を信じ、口外せず語り継いで下さったことに感謝いたします。私は大聖女ジュリアーナの魂を持っていますが、今はアデライト王国第二王子バージル様の妃であります。帝国へ赴いた帰路で聖獣フォルヴァからこの村の結界に支障が出ている個所があると聞きそれを修復する為に立ち寄らせて頂きました」

「おお、そうでありましたか。奥の森の先に結界がありその先の森には未だ魔物が生息しております。最近小さな魔物が結界の手前の森に出没しているとの噂を聞いておりました。そのような箇所を修復して下さる為にお寄り下さったなんて聖獣殿のお導きに感謝いたします」
 神父は深々と頭を下げます。

「はい、この村がこれからも守られるようしっかりと修復して王都に帰ろうと思います」

「ありがとうございます!」
 神父がアンナの手を握り感謝の気持ちを表している姿を見ながら、彼女が自分の今の身分を明かし王都へ帰ると伝えたことにバージルは少しだけ安堵はしたものの。。。。。

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