大聖女と言われ転生しましたが、大きな仕事もせずに第二王子に愛されています。

文字の大きさ
上 下
80 / 111
第6章*聖女の派遣と新婚旅行

65*聖女マリーは目標を見つける

しおりを挟む
 マリーの力はとても安定しているように見えたので今回もマリーー人でナリスへの癒しをさせてみる事にしました。
 心の中の器を覗いてみると以前より大きくなっていたからです。

 ナリスに癒しを送るマリーの後ろ姿を見ながらアンナは次の段階の事を考えていました。
 
「ナリス様、後は午後の癒しで聖女マリーの癒しの治療は終了となります。顔色も良くなれて、これからは衰えた筋力を戻すためにリハビリですね」
 そう告げるとナリス様は顔中を綻ばせ
「まぁ、本当ですか!ありがとうございます。元の生活に戻れますようにわたくし頑張りますわ」
 と寝台の上で自由になってきた身体を動かしながら嬉しさを現していました。
「今夜バージル様に最後の術を解いて頂けば完璧ですね」
「ええ、ええ、嬉しいです!」
 今年三十路になるというナリスの笑顔はまるで少女の様だとアンナは思ったのでした。

「お姉さま、最後の解術にマリーもご一緒しては駄目ですか?」
 ん-ん、困ったわ。同席させたらビオラの存在がマリーに分かってしまう。とりあえず、今は即返はしないでおこう。
「バージル様に聞いてみますね」
「はい」
「でも。期待しないでね。バージル様が解術に魔術を使うからマリー様にはちょっとキツイかもです」
 そんな事はないのだけれど一応けん制して置きました。
「そうなんですね」
「あっ、そうです。マリー様は治癒魔法と回復魔法をもっと学びたいと仰ってましたよね?」
「はい、この間翼を折った鳥を治療して飛べるまでに出来たんですよ!」
 マリーは目を輝かせアピールをしてきます。
「まぁ、凄いわ。では人に対しても多少の怪我なら大丈夫そうですね。それでは回復魔法の基礎をしましょうか。積み木を積んでそれを崩しそれを回復魔法で元のように積み上げる訓練をやってみましょう」
「面白そう♪」
 お遊び感覚で出来る訓練に興味をそそられるマリー。
「では、早速マリー様のお部屋に積み木を届けるよう言っておきますわ」
「ありがとうございます。ナリス様」

「聖女様もいきなり何でもできる訳ではなく訓練が必要なんですね」
 ナリスが感心したように言います。
「そうですね、人として成長しながら聖女の力も増えていきますので何もしなければただ祈るだけの祈祷師と同じになってしまいます。災害が起き負傷者が出れば駆けつけ治療に当たるのも聖女の役目ですから。その為に心も鍛えて置く必要があります」
「そうですか、その聖女様の努力でアデライト王国は加護されているのですね」
 ナリスはアンナの顔をしっかり見つめながら「ジュリアンナ様のお陰ですね」と心中で思ったのでした。


 早々ナリスの手配により部屋に積み木を届けて貰ったマリーは昼食もそこそこに訓練を始めていました。
 まずは自分の膝丈まで積み木を積み上げると、それをフォルヴァが飛びつき崩します。
 崩れた積み木を元の形をイメージし回復魔法を送ると最初は難なく元の形に積み上げる事が出来きました。しかし一段ずつ増やしていくとある高さで思うように復元できなくなります。
 何度やってもいびつになったりまた崩れてしまったりで上手くいきません。
「どうしてなの?」
 落ち込むマリーにずっと見ていたビオラが声を掛けます。

「マリー様、あまり根を詰めてもダメですよ。集中力が無くなってきています」
「ねぇ、ビオラ。お姉さまは小さなころから訓練してきたの?」
「そうですね、アンナ様は七歳のころから頑張ってこられましたよ」
―――アンナは積み木ではなく岩で訓練してたけど(笑)
「うわぁー、そうなのね。お姉さまには特別な力があるわよね?一緒にナリス様の手を握っていていたらすごく気持ち良くて・・・お姉さまの何かがマリーの中にも流れてくるのを感じたの」
「そうでしたか」
「もしかしてお姉さまは聖女と同じ力を持ってるのかしら?」

 ビオラは戸惑ってしまう。でも「お姉さまは聖女なの?」と聞かれた訳ではない。小さい頃からの教育でこの国に聖女は一人と聞いて育ってきたマリーにはもう一人聖女がいるという概念は無いのだと感じました。
「そうね、アンナ様がバージル様と同じくらい魔力持ちだという事はマリー様も知っているでしょう?」
「うん、知ってるわ」
「それだけの魔力を持っていて小さい頃から訓練を重ねて来たのだから聖女様の力に近いものを持っているのかも知れませんね」
「そっかー。マリーも頑張ればお姉さまの様になれるのしら?」
「マリー様は聖女様ですもの。真面目に訓練していけば大人の聖女になった時はアンナ様を追い越していますよ」
「うん、真面目に頑張る。お姉さまが目標よ!」
「はい。期待しております」
 ビオラは笑顔で答えました。

 崩れた積み木を前足で転がしながら遊んでいたフォルヴァとドロップは
―――あんなこと言ってるけど絶対にアンナは追い越せないのにな。
―――フォルちゃんそんなこと言ったらだめよ。あの子褒めれば伸びる子なんだから
―――それにしてもビオラちゃん。なんか真面目な侍女してるわよね
―――ああ、我もそう思う。普段のガサツな精霊ではないな

 なーんて会話をしているとビオラに睨まれてしまいました。
 そんな事とは知らないマリー。昼食を済ませると
「あっ、そろそろ午後の癒しの時間です。これで最後ってお姉さまが言っていたので頑張って来ますね」
 と意気揚々に部屋を出て行ったのでした。

 この日のマリーによる最後の癒しの治療を終えたナリスはアンナとマリーに手を引かれ一年ぶりにバルコニーにまで歩き外の空気を存分に味わうことが出来たのでした。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~

saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。 前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。 国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。 自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。 幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。 自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。 前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。 ※小説家になろう様でも公開しています

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

処理中です...