大聖女と言われ転生しましたが、大きな仕事もせずに第二王子に愛されています。

文字の大きさ
上 下
66 / 111
第6章*聖女の派遣と新婚旅行

51*聖女の派遣?

しおりを挟む
 数日後早朝から執行部に召集が掛けられバージルも早々に着替えを済ませ出掛けて行きました。

「隣国のドルチェ帝国から使者が参りました」

 ドルチェ帝国とは五つの国を統一した帝国でサミュエル・キャメロンは三十七才の若き皇帝だ。
 ドルチェは先に二国を占領し残りの二国は占領の手が伸びる前に自らドルチェの傘下になることを決めた。それ程サミュエル・キャメロンの率いる軍隊は強かった。
 隣国になるアデライト王国は聖女がいる限り結界は維持されているので戦争を仕掛けられることは無かったが、アンナが転生した時の様に聖女が逝き瘴気に覆われた状態の時に責められれば脆いともいえる。なので今は軍隊にも力を入れている。あくまでも自己防衛の為の軍隊である。
 ドルチェ帝国には魔術師は存在するが聖女はいないのでアデライト王国には一目置いており友好関係も良好といえるだろう。



「ドルチェは何と申してきたのだ」
「はい、掻い摘みますと聖女の貸し出しを願いたいと」
「はぁ?」
 宰相トルウェインの言葉に陛下が似合わぬ声を上げました。
「どういうことだ」
「皇妃が原因不明の病に伏せて居りあらゆる手立てを施しても回復が望めない故我が国の聖女殿の癒しを受けさせて欲しいとの事です」
「なんと、原因不明の病とな」
「はい、勿論条件付きで構わないとの事ですが如何致しましょう」
「マリーは聖女とは故まだ九つだ。他国に行かせるのはどうしたものか」
 陛下は頭を抱えてしまいました。
「前聖女の時にも一度他国へ行ったことがありましたのでその旨を知っている長老が助言したのでありましょう」
「うむ。デオドールはどう思う?」
 陛下に聞かれデオドールは今まで外交を中心に動いてきた立場から意見を述べた。
「ここ数年でドルチェは占領国とは別に二国を傘下に入れた勢いのある帝国です。傘下に入った国は我が国とも交易が盛んな国でありました。サミュエル皇帝は文化、交易などは元の国の行ってきたことを尊重し、制御は致しておりません」
「ふむ」
「そのお陰で現在も変わらず我が国が外交による輸出入で潤っているのも事実です。出来れば今まで交易が無かった占領国の資源など我が国に輸出して貰う事を条件に付けては如何でしょう」
「しかし、聖女が皇妃の病を治せなかったら」
「そこは聖女はまだ幼い故に治せると確約するものでないとはっきり申し上げるべきだと思います」
「確かにそうじゃな」
「それでは、聖女と共にドルチェ帝国へ向かう人選をデオドールお主に任せる。早急に決めて報告せよ」
「はい」
「トルウェインは執行部と交換条件の概要を直ちに作成せよ」
「御意」

 その夜デオドールの執務室に呼ばれたバージルは突拍子もない事を言われる。

「バージル、新婚旅行に行きたくはないか?」

「兄上、それは私とアンナに帝国へ行けと云う事ですか?」
「あはは、その通りだ。マリーを行かせるなら心を開いているアンナちゃんを同行させたいんだよ。大人ばかりじゃマリーも初めての外国で不安だろう?」
「確かにそうですが」
「もちろん我も良くよ」
「えっ、王子が二人国を留守にするのは如何なものでしょう」
「父上だってまだまだ現役だ、トルウェインが付いていれば大概の事はなんとかなる。お前たちはマリーと共に皇妃の病の方を頼みたい。我は帝国の資源を視察し交渉に持ち込む。どうだろう私の考えは?」
 バージルはふぅと息を吐き
「兄上の強かさには敵いませんね。分かりました」
 と答えるとデオドールがニヤリと笑いました。


 廊下を歩きながらバージルは考えていました。
「ダニエル、マリーの力で皇妃陛下の病を治せると思うか?」
「そんな事は行ってみなきゃ分からないだろう。でもお嬢が一緒なら何とかなるんじゃないか?」
「うむ。昼にでもアンナとビオラに相談してみよう」
「それがいい。新婚旅行を兼ねてなら喜んできてくれると思うぜ」
 外交はいつも兄に任せていたのでバージルにとっても久しぶりの国外だ。それもアンナと行けるなら嬉しいに決まっていた。ただ大聖女の魂を持つアンナをあまり人前に晒したくないとも心のどこかで思っていたのです。


「バージル様」
 朝の散歩であろうか庭園の方からアンナがビオラを伴って歩いて来た。
「アンナ、ちょうど君に使いを出そうと思っていたところだ」
 バージルはアンナをハグして軽く口づける。
「大事な話があるからランチを一緒に取りのだが何か予定はあるかい?」
「いいえ、今日は何もありませんわ」
「では、久しぶりにバラの庭園でいいかな」
「もちろんです」
 アンナの了解を取るとバージルはダニエルと共に執務へと戻って行きました。

「大事な話って何かしら?」
「何でしょうね、少し難しい顔をしてましたね。殿下」
「でも今考えてもしょうがないわね、取敢えず部屋に戻りましょう」
「はい、ジュリアンナ様」

 部屋に戻ったアンナは机の上の封書の数を見て溜息を吐く。
「毎日よくこれだけ謁見を伴うお茶会のお誘いが来るもんだわね」
「しょうがないわよ。少しでもお近づきになって色々と便宜を図らってもらいたいとみんな思っているんだもの」
「私に頼んでもしょうがないのね。侍女長あっ、女官長を呼んで本当に必要なお茶会を絞ってくれるようにお願いして」
「はーい」

 アンナは椅子をくるりと回し窓の外の景色を眺めながら早くデオドールが妃を迎えてくれないかと考えていました。そうすれば公務もこういった面倒事も半分になると思うにと。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~

saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。 前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。 国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。 自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。 幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。 自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。 前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。 ※小説家になろう様でも公開しています

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

処理中です...