大聖女と言われ転生しましたが、大きな仕事もせずに第二王子に愛されています。

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第5章*成人と婚姻

45/新しいお友達

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 水の精霊の言葉を聞いてバージルがむくりと体を起こしました。
「あら起きてたの?」
「聞いていたのか?」
 ビオラとダニエルに聞かれバージルは無言で頷いた。
「座ったままで失礼する。水の精霊殿、私はオレガノ王国第二王子バージルと申します」
「うふふ、イケメンね♪よろしく。ビオラの愛し子ちゃんのフィアンセね。あら、目を閉じてたから気づかなかったけど貴方の瞳」
「ああ、これですか。元は金眼ですが事情があって色が変わりました」
「なるほど、今は愛し子ちゃんのお陰で戻りつつある訳か。仲良しって事ね」
 ウフフと精霊は含みを持たせて笑いました。

「ん。朝?」
 寝ぼけながらアンナが目を覚ました。
「うわっ!誰?神様。。。」
 目の前で微笑む美しい人を見て、かつて会いに来ていた神を思い出し思わず口から出てしました。
「あんなチャライのと一緒にしないで。私は水の精霊よ、よろしくね」
「水の精霊さんですか!」
 アンナがビオラの方を見ると彼女はコクンと頷きました。
「ビオラのお友達さんですね。ジュリアンナですよろしくお願いします」
 きゃぁー可愛い♪精霊に抱きしめられ目を白黒させるアンナにビオラとフォルヴァが声を出して笑います。

 林の入り口で待機していた馬車に戻ると従者と護衛の騎士からお嬢さまの手作りを食べたと帰ったら自慢ししますとお弁当のお礼を嬉しそうに言われてアンナも満更ではありませんでした。

「またアンナのファンが増えちゃうわね」
 ビオラの言葉にアンナを膝に乗せたバージルが仏頂面をするのを見て水の塊になった精霊がフルフルと揺れます。
「ねえ、二人は何時もこの体勢なの?」
 馬車に乗るや否や自分の膝の上にアンナを乗せるバージルを見て水の精霊である水の塊がフルフル震えながら聞いてきます。
「あー、いつもの事だから気にしないで。それより『水の』、アンタも呼び辛いからアンナに名前を貰ったら?」
 それを聞いたアンナが慌てます。
「そんな事したら水の精霊さんとも契約を・・・」
 アンナが慌てて否定します。
「大丈夫よアンナ。名前を付けても精霊から加護のキスを受けなければ契約にはならないわ」
「うん、そうね、契約云々はおいて置いて、私も名前が欲しいわ」
「えっ、いいんですか?」
「いいわよ、アンナちゃんお願い」
 精霊さんにお願いされてはお断りできないわ。どうしよう・・・
 水の精霊、水。。。雫。。。綺麗な水滴。。。単純だけど

「ドロップ・・・なんて駄目でしょうか?」
 恐る恐る聞いてみた。
「なんか美味しそうな名前ね。いいわドロップで」
 水の形を色々変えながら精霊が喜んでいるように見えます。
「ビオラ、今日から私はドロップよ」
「はい、はい。分かりました」
 はしゃぐ水の塊を見ながらビオラは素っ気なく答えます。自分だってアンナに名前を貰った時はあんなに嬉しそうに飛び回っていたのにね(笑)

「でも水のままじゃ変だわよね。かといっていきなり人の姿で連れて帰ったら誘拐でもしてきたかと思われてしまうわ。違うモノに変化へんげしなさいよ」
 ビオラに言われあらそう?と精霊が変化したのはめっちゃイケメンの少年。
 イケメンの少年を前にしてアンナが頬を赤らめていると
「人型は駄目だ!特に男はっ」
 とバージルが騒ぎ立てドロップは渋々水の塊に戻ります。
「おばかね、バージルがヤキモチ妬くから人型は駄目よ。他の動物にしない」
「つまんないわね」
 ビオラに怒られ次に変化したのは真っ白なふわふわな子猫でした。

「可愛い」アンナが思わず抱き上げます。
小聡明いあざといわね、ドロップ。アンナがモフモフふわふわ可愛いを好きなのを知ってたのね」
「えへへ、フォルちゃんを撫でているのを見たらね」
「おぬしやるな」
 黒猫になっていたフォルヴァも呆れます。

 そんな訳でバージルの膝の上にはアンナ。そしてアンナの膝の上には猫になったフォルヴァと同じく水の精霊ドロップが乗りカタカタと馬車はオレガノ邸へと帰路に着いたのでした。


 帰宅したアンナ達は部屋で早速今日の出来事で盛り上がります。
「フォルヴァと走り回って本当に楽しかったわ」
「我もだ主。しかし、バージルの馬も飼い主人と同様に主にうつつを抜かして居ったな」
「あは、ブレイブね。葦毛の可愛い馬だったわ」
「アンナに掛かるとみんなメロメロね」
 ビオラが呆れたように笑います。
「そういえばアンナ。アンタが寝ている間にバージルとダニエルはアンナが大聖女ジュリアーナの魂を持ってくる事を知ったからね」
「えっ、まじ?」
「ごめんなさい、あたしが嬉しくて喋っちゃったの」
 ドロップが申し訳なそうに謝ります。
「ダニエルは薄々気付いていたみたいだけどね。転生の話も少しだけして置いたわ」
「あちゃ、いずれはジル様に話すと決めていたけど転生の事まで知られたんじゃ早めに私からも話をするべきね」
「その方が良いと思うわ」

 バージルは私の事を聞いてどう思ったんだろう。
 前世の記憶があるって聞いたら引かれちゃうんじゃないかだろうか。
 不安になるアンナ。

「大丈夫よ、王子はめっちゃアンナちゃんの事を愛してるもの」
 ドロップがアンナに撫でられながら気持ちよさそうに答えました。
「だと良いけど・・・」


◆◆◆

「ダニエル、今日のアンナの話だけど」
「ああ、大聖女ってやつか」
「それはまぁ普通の聖女ではないとは感じていたからそれ程驚かなかったが」
「前世の方だよな。確か二十歳で命を落としたといっていた」
「前世とはどんな世界なのか。我々の世界での前世なのか、全く違う世界なのか。
 そこでアンナはどんな女性だったんだろう、どんな生活をしていたのか。家族は、二十歳なら恋人もいたんだろうか?」
「そんな事俺たちが考えたってわかる訳ないだろう?」
「・・・」
「きっとお嬢から話してくれるさ」 

                                    

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