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第4章*隣国の王女
38結末と配慮
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【デオドール様、わたくし帰りたくありませわ。】
これがデオドールから求婚をさせるための引き金になる筈の言葉だった。
そして王女の望んでいるデオドールから言葉は
【帰る必要はありません。私の妃になればよいのです】
でした。
じっとデオドールからその言葉を待つ王女に返された返事は・・・
「仕方ありませんね。一週間のお約束でエスメラルダの王もお許し下さったのですから王女殿が帰らなければ友好関係にも支障が出てしまいます」
「えっ、どうして?」
求婚される気満々だった王女は何が起こったのか状況が読み込めません。
「わたくし、帰ってしまっても良いのですか?」
「???それはどういう・・・」
フェリーシアの質問の意味が分からないデオドール。
魔女リンダが慌てて王女の元へ駆け寄り王女の背中を摩りますが、王女はショックのあまり気を失ってしまいました。
「あらま、大変。フェリーシア王女大丈夫ですか?ダニエル部屋までお連れして差し上げて」
王女はデオドールではなくダニエルに指示を出した。
「私たちも付き添います」
バージルがアンナの手を取り立ち上ります。
「そうね、お願いするわ。ジュリアンナちゃん、今日は美味しいお料理ありがとう。是非またお願いしますね」
「はい、ありがとうございます」
アンナは一礼してバージルと共に王女を抱き上げ食堂を出てゆくダニエルと魔女リンダの後を追った。
王妃が溜息を吐くとちょこんと座っていた聖女マリーが呟きました。
「王女様の負けね」
「まぁマリーったら」
王妃が苦笑します。
「王女が来てからのデオドールを見ていたら結婚したいと言い出すのではないかと思いましたわ」
「えっ、我がですか?有り得ませんよ母上」
どうやらすっかり解毒され元の彼に戻ったみたいです。
「不思議ね。拒否していると思ったら急に仲良くなって。それでまた元に戻ってしまうなんて、どうなってるの貴方は?」
「はぁ。自分でも良く判りません」
「デオドールお兄様は一時的に王女様にメロメロになっていただけですね」
九歳のマリーの言葉に王妃は思わず吹き出してしまいます。
残っていたビオラも片づけをしながら今のマリーの話を笑い話として後でアンナ達に教えてあげようと思っていたのでした。
部屋に戻った王女は魔女の気つけ薬で寝台の上で目を覚ました。
「わたし、わたし・・・」
泣き崩れる王女に魔女リンダが謝罪します。
「フェリーシア様申し訳ありませんでした。まさかこのような事態になるとは」
「どうして、どうしてデオドール様に求婚されなかったの?お茶はお飲みになったのに・・・もうお終いだわ」
泣きながら訴える王女にアンナは呆れてしまう。
「王女様やはりあのハーブティーに魔法を掛けていたんですね」
アンナの言葉に王女と魔女は真っ青になった。
「魔女さんが薬を入れたお茶はビオラが自分のと取り替えましたのでデオドール様が飲まれたお茶には薬が入っていません」
魔女は振り向きアンナを見つめ
「何故分かった?お茶の魔法も、私が魔女だという事も」
「アンナは君たちが来てユリの花に仕掛けをした時から何かおかしいと気付いていたんだ」
バージルの言葉に魔女は驚きを隠せません。
「まさか、あんな微量の魔法に気付いた云うのか?」
「ああそうだ、私とアンナは魔力持ちだからね。普通の人が気付かない魔法でも敏感に感じ取ってしまうのだよ。あの香りで頭痛に悩まされた。そして原因はユリの花だと思い調べたら術式のない魔法が掛けられていると判ったんだ」
「そんな・・・それで花を全部取り換えたというのか」
魔女はうな垂れ床に座りんでしまいました。
「最初は君たちの事を疑ってはいなかった。あんな微量の魔法を掛ける目的も意味も見当が付かなかったらね。でも兄上の王女に対する接し方が急に変わり始めたのと同時にアンナがハーブのニオイが気になると言い出した。そしてハーブから君たちに辿り着いたのだよ」
「気付かれないように少しずつ効き目が出るように魔法を掛けていたというのにジュリアンナ様も魔女なのか?」
魔女リンダはへたり込んだままアンナを見上げて言った。
「私は魔女ではないわ。只の魔力持ちよ」
『本当は只の魔力持ちでは無いけどな』バージルは心の中で舌を出していました。
「でも・・・最後のお茶を飲まなかったにしろ今までの効果でそれなりの言葉が頂けたはず筈なのにおかしいですわ」
王女が身体を起こしアンナに食い入るように問い詰めます。
「解毒か」
魔女がかすれた声で言葉を吐きました。
「ええ、殿下の料理に解毒薬を入れてたの」
「でもあんな短い時間で解毒薬を作るなんて出来っこない」
「でも出来たわ」
にっこりと笑うアンナ。
「材料だってそう簡単には集められない筈」
「そうね、私には頼もしいお友達がいるから可能になったのよ。でもそんな事はどうでも良いの。王女様が隣国の王へ嫁ぎたくないと思う気持ちも分からなくはないです、でも」
「いいえ、ジュリアンナ様に分かる訳がありませんわ。こんなにバージル殿下に愛されているジュリアンナ様には・・・」
自分とは全く違う立場のアンナに自分に気持ちを分かるなんて言って欲しくないと王女は心の中で叫んだ。
「それでもやって良い事と悪い事がありますよね?
魔法で魅了しても本当にデオドール様に愛されている訳ではないですよね?
もし結婚したとしても一生殿下に魔法をかけ続けるおつもりですか?
魔法の力で愛されて幸せと言えるのでしょうか?
ただ単に嫁ぐのが嫌だからデオドール様を利用したとしか私には思えません」
『一生愛される為に魔法をかけ続ける?・・・私はそこまで考えていなかった。ただ、ただあの国王の所へ嫁ぎたくない一心で。。。』
アンナに強い口調で言われようやく自分たちが犯した罪に気付いた王女は暫く考えてから俯き加減で話し始めました。
「そうですよね。私はただ嫁ぐことから逃げる事しか考えていませんでした。その為にデオドール様を利用していたのです。でもデオドール様の事は本当にお慕いしていたのです。だから振り向いて欲しかった。諦められなかった。よく考えれば魔法で振り向かせようなんて人の心を無視するようなことを・・・間違った方法を取ってしまった事を今は後悔しています。申し訳ありませんでした」
王女は寝台の上で二人に向かい深々と頭を下げます。
「フェリーシア様」
魔女も涙ぐみ王女と共に頭を下げ謝罪したのでした。
「お二人が分かってくれたのであればこの事は私とアンナの胸に納め兄上には勿論、陛下にも内密に致します。どうぞ何事も無かったとして明日国にお帰り頂きたい」
「罪は問わないと仰るのですか?」
「はい。このようなことで両国の間に亀裂など入れたくはありませんので」
「バージル殿下、そしてジュリアンナ様。ご配慮いただきありがとうございます。本当に、本当にごめんなさい」
こうして王女と魔女のデオドール攻略作戦は幕を閉じました。
これがデオドールから求婚をさせるための引き金になる筈の言葉だった。
そして王女の望んでいるデオドールから言葉は
【帰る必要はありません。私の妃になればよいのです】
でした。
じっとデオドールからその言葉を待つ王女に返された返事は・・・
「仕方ありませんね。一週間のお約束でエスメラルダの王もお許し下さったのですから王女殿が帰らなければ友好関係にも支障が出てしまいます」
「えっ、どうして?」
求婚される気満々だった王女は何が起こったのか状況が読み込めません。
「わたくし、帰ってしまっても良いのですか?」
「???それはどういう・・・」
フェリーシアの質問の意味が分からないデオドール。
魔女リンダが慌てて王女の元へ駆け寄り王女の背中を摩りますが、王女はショックのあまり気を失ってしまいました。
「あらま、大変。フェリーシア王女大丈夫ですか?ダニエル部屋までお連れして差し上げて」
王女はデオドールではなくダニエルに指示を出した。
「私たちも付き添います」
バージルがアンナの手を取り立ち上ります。
「そうね、お願いするわ。ジュリアンナちゃん、今日は美味しいお料理ありがとう。是非またお願いしますね」
「はい、ありがとうございます」
アンナは一礼してバージルと共に王女を抱き上げ食堂を出てゆくダニエルと魔女リンダの後を追った。
王妃が溜息を吐くとちょこんと座っていた聖女マリーが呟きました。
「王女様の負けね」
「まぁマリーったら」
王妃が苦笑します。
「王女が来てからのデオドールを見ていたら結婚したいと言い出すのではないかと思いましたわ」
「えっ、我がですか?有り得ませんよ母上」
どうやらすっかり解毒され元の彼に戻ったみたいです。
「不思議ね。拒否していると思ったら急に仲良くなって。それでまた元に戻ってしまうなんて、どうなってるの貴方は?」
「はぁ。自分でも良く判りません」
「デオドールお兄様は一時的に王女様にメロメロになっていただけですね」
九歳のマリーの言葉に王妃は思わず吹き出してしまいます。
残っていたビオラも片づけをしながら今のマリーの話を笑い話として後でアンナ達に教えてあげようと思っていたのでした。
部屋に戻った王女は魔女の気つけ薬で寝台の上で目を覚ました。
「わたし、わたし・・・」
泣き崩れる王女に魔女リンダが謝罪します。
「フェリーシア様申し訳ありませんでした。まさかこのような事態になるとは」
「どうして、どうしてデオドール様に求婚されなかったの?お茶はお飲みになったのに・・・もうお終いだわ」
泣きながら訴える王女にアンナは呆れてしまう。
「王女様やはりあのハーブティーに魔法を掛けていたんですね」
アンナの言葉に王女と魔女は真っ青になった。
「魔女さんが薬を入れたお茶はビオラが自分のと取り替えましたのでデオドール様が飲まれたお茶には薬が入っていません」
魔女は振り向きアンナを見つめ
「何故分かった?お茶の魔法も、私が魔女だという事も」
「アンナは君たちが来てユリの花に仕掛けをした時から何かおかしいと気付いていたんだ」
バージルの言葉に魔女は驚きを隠せません。
「まさか、あんな微量の魔法に気付いた云うのか?」
「ああそうだ、私とアンナは魔力持ちだからね。普通の人が気付かない魔法でも敏感に感じ取ってしまうのだよ。あの香りで頭痛に悩まされた。そして原因はユリの花だと思い調べたら術式のない魔法が掛けられていると判ったんだ」
「そんな・・・それで花を全部取り換えたというのか」
魔女はうな垂れ床に座りんでしまいました。
「最初は君たちの事を疑ってはいなかった。あんな微量の魔法を掛ける目的も意味も見当が付かなかったらね。でも兄上の王女に対する接し方が急に変わり始めたのと同時にアンナがハーブのニオイが気になると言い出した。そしてハーブから君たちに辿り着いたのだよ」
「気付かれないように少しずつ効き目が出るように魔法を掛けていたというのにジュリアンナ様も魔女なのか?」
魔女リンダはへたり込んだままアンナを見上げて言った。
「私は魔女ではないわ。只の魔力持ちよ」
『本当は只の魔力持ちでは無いけどな』バージルは心の中で舌を出していました。
「でも・・・最後のお茶を飲まなかったにしろ今までの効果でそれなりの言葉が頂けたはず筈なのにおかしいですわ」
王女が身体を起こしアンナに食い入るように問い詰めます。
「解毒か」
魔女がかすれた声で言葉を吐きました。
「ええ、殿下の料理に解毒薬を入れてたの」
「でもあんな短い時間で解毒薬を作るなんて出来っこない」
「でも出来たわ」
にっこりと笑うアンナ。
「材料だってそう簡単には集められない筈」
「そうね、私には頼もしいお友達がいるから可能になったのよ。でもそんな事はどうでも良いの。王女様が隣国の王へ嫁ぎたくないと思う気持ちも分からなくはないです、でも」
「いいえ、ジュリアンナ様に分かる訳がありませんわ。こんなにバージル殿下に愛されているジュリアンナ様には・・・」
自分とは全く違う立場のアンナに自分に気持ちを分かるなんて言って欲しくないと王女は心の中で叫んだ。
「それでもやって良い事と悪い事がありますよね?
魔法で魅了しても本当にデオドール様に愛されている訳ではないですよね?
もし結婚したとしても一生殿下に魔法をかけ続けるおつもりですか?
魔法の力で愛されて幸せと言えるのでしょうか?
ただ単に嫁ぐのが嫌だからデオドール様を利用したとしか私には思えません」
『一生愛される為に魔法をかけ続ける?・・・私はそこまで考えていなかった。ただ、ただあの国王の所へ嫁ぎたくない一心で。。。』
アンナに強い口調で言われようやく自分たちが犯した罪に気付いた王女は暫く考えてから俯き加減で話し始めました。
「そうですよね。私はただ嫁ぐことから逃げる事しか考えていませんでした。その為にデオドール様を利用していたのです。でもデオドール様の事は本当にお慕いしていたのです。だから振り向いて欲しかった。諦められなかった。よく考えれば魔法で振り向かせようなんて人の心を無視するようなことを・・・間違った方法を取ってしまった事を今は後悔しています。申し訳ありませんでした」
王女は寝台の上で二人に向かい深々と頭を下げます。
「フェリーシア様」
魔女も涙ぐみ王女と共に頭を下げ謝罪したのでした。
「お二人が分かってくれたのであればこの事は私とアンナの胸に納め兄上には勿論、陛下にも内密に致します。どうぞ何事も無かったとして明日国にお帰り頂きたい」
「罪は問わないと仰るのですか?」
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