大聖女と言われ転生しましたが、大きな仕事もせずに第二王子に愛されています。

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第4章*隣国の王女

29それぞれの部屋で夜は更ける

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■■■【デオドール寝室】

 何事も無く三日目も終わりそうだな。
 デオドールは自分の寝台の上で昨日トルウェインに言われたことを思い出していた。
 不思議だ。
 あんなに面倒だと思っていたエスメラルダのフェリーシア王女だが我が国に来てからそれ程嫌ではなくなった。
 十七才の煩いお転婆娘で自分の好みでは決してなかったのに。
 それどころか甘えられて可愛いとさえ思ってしまう。

 彼女に貰ったポプリは言われた通り枕の下に入れてあるが確かに快眠を誘い疲れを癒してくれるような香りがして心地良い。
 あのお茶も飲み易いし元気が出る気がしていいな。

 深呼吸をした後ゆっくりと呼吸をする。
 いつの間にか夢の中へ。

++++++++++++
 デオドール様、デオドール様。
 誰だい?
 私よ
 フェリーシア王女か?
 フェリーシアとだけで呼んで欲しいです
 フェリーシア?
 はい、デオドール様
 可愛らしい笑顔だ
 まぁ、嬉しい
 私くしデオドール様に恋をしていますの
 我にか?
 ええそうです。デオドール様も私の事がお好きでしょう?
 我がフェリシアの事を好きだと?
 はい、そうですわ

 そうか我はフェリーシアを好いているのか・・・

++++++++++++

 デオドールは夢の中でフェリーシアと逢瀬を楽しんでいた。
 目覚めた時いつもは起きれば覚えていない夢が今朝はリアルに覚えている事に気付く。
 寝台の上で思い返しながら夢にまで見ると言う事はフェリーシアの事を自分はいつの間にか好きなっていたのだろうかと考える。

 国に帰れば側室のいる隣国の王の後妻に入るかも知れないと泣いていた。
 自分なら何とかしてあげらるかも知れない。

 そんな事を考えながら身支度を整えるデオドールでした。

■■■【二人の寝室】

 今夜は仕事を終えたバージルと一緒に夕食を済ませ二人で揃って部屋へ戻ったアンナ。

「湯あみを済ませておいで。私は自室の風呂を使って来るから」
 バージルの言葉に頷き侍女ともに寝室に繋がる広い浴室に向かう。
 彼女たちは今夜も期待を込めてアンナに磨きをかけます。

 アンナが戻って来るとバージルは既に寝室に戻って来ていました。
 「おいで」とカウチにアンナを呼ぶと侍女たちは黙って頭を下げ退室していった。
 バージルはアンナを膝の上に座らせるとまだ少し濡れている髪を魔法で乾かしてあげた。
 何だかここがお風呂上がりの私の定位置になりつつある?

「今日はあれから王女に呼び出されたと聞いたが何かあったのかい?」
「ええ、デオドール様の事で少しお話を聞いてきたの」
「兄上の事で?」
「ジル様はデオドール様が少し変だと思いませんか?」
「少しな。あれ程拒んでいた王女なのにどういった心境の変化か気になってはいるよ」
「ですよね」

「実は今日お二人が手を繋いでいるところを見てしまってからどうも気になって」
「あの二人が?」
 バージルは信じられないと額に手を当てた。
 アンナは王女の部屋で話したことをバージルにも話した。

「兄上と恋がしたいか・・・」
「でも何か引っ掛かるんです」
「何かって?」
 アンナは今日感じたことをバージルに伝えた。

 わざわざ自分を部屋に呼びつけた事やデオドールから感じるハーブと思われる香りと王女の侍女リンダがハーブに関して詳しい事。

「うーん。なんだろうね。兄上の変化は勿論だけど、そのハーブがキーワードな気もしないではないな」
「ユリの香りの事も有るから余計に気なってしまって」

 二人で色んな可能性を考えてみるが王女の行動も気になり答えは出て来ない。
「間違っていたら申し訳ないんだけど私には王女と侍女のリンダが何か仕掛けているように思えてならないの」
「だとしたら最後の仕掛けは何だろう?アンナの食事会か帰国前夜に何かあるかも知れないな。しかし目的がさっぱり分からない。とりあえず、アンナは食事会の準備をしながらで悪いが王女の動向も気に掛けて置いてくれるだろうか」
「はい、分かりました」

「あっ、料理の事だけどハンバーガーだっけ?アレは出さないでね」
「えっ、どうしてですか?評判よかったじゃないですかー」
「どうしてもだよ。アレは二人で遠乗りに行く時にって言っただろう」

 バージルはあんなに可愛くかぶり付く姿は誰にも見せたくないと思っていたのでした。
「はぁ、そうでしたね」
「そういう事でよろしく。うん、それじゃ寝台に行こうか」

 バージルは昨夜と同じくアンナを抱き上げると寝台へ向かった。
 二人で一緒に横になりキスを交わす。
 アンナもだいぶ慣れて来たようです。
 それを感じ取ったバージルはいつもよりも長くそして時々彼女の唇を食むように口づけて来ました。
「ジル様?」
 アンナがバージルの名を呼び、唇が少し開いた時を狙っていたかのようにバージルは自分の舌を忍ばせて来た。

「んんっ」
 少し抵抗したものの頭の中が真っ白になりそれ以上何も出来ずされるがままのアンナ。
 バージルは暫くアンナの口の中を堪能して静かに離れました。

「このキスにも慣れないとね」

 そう微笑みながらアンナと自分の口元を拭うと彼女の額に唇をそっと落とし

「おやすみアンナ」

 と、優しく抱きしめ彼女の背中を摩ります。

 アンナは突然の行為に戸惑いならも自ら考える事をやめそのまま意識を飛ばし眠りに落ちて行ったのでした。


 目覚めるとやはりバージルの姿はありません。

『昨日私が起きるまで一緒にいてくれるって言ったのに』
 寝台の上でぽそりと呟きハッとする。
『えっ私、今なんて言った?もしかしてジル様が居なくて寂しかったの?いやいや、そうじゃなくて、自分で言ったくせに居ないからそう思っただけだわ』
 自分にい訳をしながらぶんぶんと吹っ切るように頭を左右に振った。

 今朝も侍女たちの浮かぬ顔を見ながら今日の予定を考える。
 午後には頼んでおいた食材が届くのでその前に調理場を確認する事。
 場所はマリー様の離宮別名ミモザの館で行うことなったので、午前中にそちらの厨房を見に行くことにした。
 
 
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