大聖女と言われ転生しましたが、大きな仕事もせずに第二王子に愛されています。

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第4章*隣国の王女

27滞在三日目・変化

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 今日は王妃様も公務でお出かけなので私がフェリーシア王女のお相手をすることになりました。
 後からデオドール殿下も来て下さるとのことなので二人きりではないと知り少しホッとしいます。
 サンルームで王女を待っているとバージル様が覗きに来ました。

「おはようアンナ」
「おはようって、ジル様もうお昼過ぎですよ」
「そうだけど、いつも朝の挨拶が出来ないからね」
「・・・あのう、ジル様はいつも何時に起きられているのですか?」
「ん-、アンナと寝るようになってからすこぶる調子が良いんだ。短い時間でも熟睡できているせいか寝不足も解消してる。だから空が明るくなった頃には起きて剣の鍛練をしているよ」
「そんなに早く・・・それで私が目覚めた時いつもいらっしゃらないんですね」
「あれ、もしかして目覚めた時に私が隣に居なくて寂しかったのかな?」
 悪戯っ子の様な瞳で覗いて来るバージルの口元が僅かに上がる。
「そ、そんな事ある訳ないじゃありませんか!」
 慌てて否定するアンナを見てバージルはなんて可愛いんだと思ってしまう。
「では、明日の朝はアンナが目覚めるまで隣にいてあげる」
「いいです、そんなこと・・・」
「真っ赤になって可愛いな。違う意味で寝不足になりそうだ」
 くくくっ。と口を押えて笑いを押し殺すバージルの意味が分からないアンナ。
 
「そういえば王女は遅いね」
「ええ」
「まだ時間があるから王女が来るまで付き合うよ」
「ありがとうございます。ジル様もう意地悪は言わないで下さいね」
 上目使いでアンナに言われ
「はぁ、そんな顔されたら思いっきり抱きしめたくなる」
 とアンナの手を取りました。
「もう、知りません!」
 彼女はバージルの手振り解き話題を変えます。

「それにしても何の動きもないですね、何の為の【呼び水】だったのかしら?」
「全く分からないな」
 魔女の魔法について話をしていると王女がこちらに向かって歩いてくるの見えました。
 あら、後からと言っていたデオドール殿下とご一緒だわ。

「やぁ、アンナちゃん。何だバージルもいたのか」
「ごきげんよう。デオドール殿下、フェリーシア王女さま」
「ごきげんよう。バージル殿下、ジュリアンナ様」
「デオドール殿下からお聞きしましたけど来年には婚姻を結ばれるそうですね」
「はいそうです」
 バージルが答えると
「お好きな方と一緒になれるなんて羨ましいわ」
 と少し寂しそうなお顔で話されたのが気になります。

 あら?何となく王女とデオドール殿下の間の空気が昨日とは違っている気がするのですけど。
 デオドール殿下の王女を見る目、なんか違う。
 その時そよ風が吹いて何かの香りが漂って来ました。
 向かいに座っているデオドール殿下の香水かしら?
 香水と云うよりハーブみたいな香りだけど。

「ジュリアンナ様、お料理の件ですが私が帰国する前日でお願いできませんか?」

 えっ、あれ本気だったんですか?社交辞令だとばかり思っていた私の料理試食会?。
「えっ、あっはい」
「何だい料理って?」
 デオドール様が何その話とばかりに聞いてきます。
「ジュリアンナ様の創作お料理を是非食させて頂きたいとお願いしたんですの」
「アンナちゃんが作るの?」
 デオドールはまさかと言わんばかりの顔でアンナを見ます。
「ええ、そうなんですけど・・・」
 助けてとバージル様の顔見ると 
「そんな話になっていたの?兄上、アンナの作るものは今まで食べたことがない料理でしかも美味しいんですよ」
 やめて下さい、バージル様まで。
「なんだ、バージルは食べたことがあるのか、是非我も食べてみたい」
「ご一緒しましょうデオドール殿下。よろしいですよね、ジュリアンナ様?」
「そんな、ほんの趣味程度の料理ですので皆さんに食して頂く程のものではございません」
 勘弁してください、王女様。
「よし、では、フェリーシア殿の帰国前日食事会をセッティングしよう。勿論バージルも参加するよな?」
「ええ、当然です」
 私の困惑を無視してデオドール殿下はどんどん話を進めて来ます。
 バージル様まで話に乗らないで下さいよ。

「楽しみですわ」
「そうだな」
 王女と殿下が顔を見合わせ微笑み合う姿を見ながら「はぁ」と溜息を吐き俯くと。
 えっ?
 私の隣にいるバージル様からは見ていないと思われますが、テーブルの下で王女とデオドール殿下が手を繋いでいる?
 私は自分の目を疑った。
 どうして?何時からそんな親密になったの?

 その時ダニエルがバージルを呼び戻しに来、私はこれでとアンナの頬に挨拶のキスをして政務へと戻って行ってしまいました。
 バージルが立ち上ったことで二人は繋いでいた手を離したが、変に生ぬるい空気が漂い居心地が悪いアンナ。

「王女様が帰国されるのは四日後でございますよね。食事会迄三日しか御座いませんので早々に準備しなくてはなりませんわ」
「まぁ、そんなに準備に時間が掛かりますの?」
「はい、食材の調達もしませんとなりませんので。申し訳ありませんが今日はこの辺で失礼させて頂きます」
 私は早くこの場を離れたかった。

「そうか、アンナちゃん楽しみにしているからね」
「私もです」
 デオドール殿下と王女に軽ーく励まされ?私は一礼して逃げるようにその場を後にしました。

 大ごとになってしまったわ、早急にビオラに食材の調達を頼まなきゃ。
 私はメニューを考えながら日本語で材料をメモしていきます。
 一通り決めてビオラへ念話で伝えると、その日は彼女も手伝いに来てくれるといってくれ焦っていた気持ちも少し落ち着きました。

 ソファで寛いでいるとふと先ほどの香りの事が気になり始めました。
 何だったんだろう?ラベンダーの香りもした気がするけどサンルームには無かったわよね。
 先日のユリの件があるから香りに敏感になり気なってしまうのかしら。

 その時ドアをノックされ、足を投げ出し寛いでいたのを慌てて取り繕い、どうぞと返事を返しました。

「失礼します。フェリーシア王女様からお手紙をお預かりして参りました」
「王女様からですか?」
 侍女から手紙を受け取ると直ぐに開いてみました。

【ジュリアンナ様に聴いて頂きたいことが御座います。夕食の前にわたくしのお部屋へ来て頂けますか?】

 なんだろう?聞いて欲しい事って。
 不安はあったもののお断りする訳にいかず、お伺いしますと侍女に伝えて貰う事にしました。
 魔女の魔法も気になるけれど王女が帰国するまであと四日頑張らなくてはと自分に言い聞かせるアンナでした。


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