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第3章*婚約期
13聖女マリーの祈り
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馬車からのらりくらりと下りてくる聖女マリー。
『寝起きが悪いのか?』フォルヴァが呟く。
迎えに出て来た神官に促されて仕方なく神殿に入っていくマリー。
カラダを清め白い衣装に着替えると神殿の奥にある祈りの間へとやってきた。
毎日の日課だからか手慣れた様子で神に水と穀物を捧げ祈りの台に跪く。
『ちゃんとやっておるではないか』
そう思ったのもつかの間、十分もしない内に飽きてしまったのかもぞもぞと動き出し尻をついて駄々をこね始めた。
その様子はもうすぐ九才になろうとする娘とは思えない。
九才と言えばジュリアーナが大勢の負傷者を救った年ではないか。
五歳の時に我が憑依した男子よりもやることは幼いぞ。
神官の一人が何か飲み物と菓子のようなものを差し出すとそれらを飲み食いし、また祈り始めた。
それをまた繰り返す。
『子供とは故これでは』
フォルヴァはため息をついた。
神官たちも甘やかしすぎだろうが。こんな祈りで結界を維持できるのだろうか。
結局昼までの間合計一時間ほどしか祈りの台で跪くことは無かった。
祈りの間から出て来たマリーはおやつのお土産を貰うと急いで馬車に乗り込んでいったのでした。
『なんと報告したらいいものやら・・・見せるのも忍びない位だ』
フォルヴァは屋根を飛び移りながら家路を急いだ。
その頃お昼休みになったアンナは図書室でビオラと落ち合う約束をしていた。
出された宿題をちゃちゃっと終わらせ窓から外を眺めていると渡り廊下をダニエルと歩くバージルを見つける。ダニエルは沢山の書類を抱えていて公務の多忙さが垣間見れた。
ふと、バージルが上を見上げアンナに向かって手を振って来た。
『えっ、どうして気付いたの?』
驚いたものの笑顔で手を振り返すとバージルは嬉しそうに大きくブンブンと手を振り返してきたが、何かダニエルに言われ元のキリッとした殿下に戻り渡り廊下から見えなくなって行きました。
やっぱりカッコイイな。こんな人が私のフィアンセなんていまだに信じられないよ。
ふぅーと息を吐いて窓から向き直るとビオラがニタニタしながら立っていました。
「なによ、来たなら声を掛けなさいよ」
「殿下とラブラブの所お邪魔したら悪いと思って遠慮してたんですよお嬢様」
「・・・」
赤くなる私を半目で見ながら「例の報告ですが」と机の向こう側に腰を下ろした。
私たちは読書をしているかのように本を開き、時々めくりながら念話で会話をする。
『で、聞き込みの方はどうだった?』
『聖女の周り口の堅い侍女たちがガードしているんだけど』
『うん』
『その中で一人昨日聖女に叱咤を受けた新米が居てね。話を聞けたわ』
『それで?』
ビオラの話はこうであった。
ドリーというメイドはつい最近辞めたメイドの代わりに離宮に入ったそうで、早くも辞めたいと思っているらしい。
マリーの我儘を叱る者もなくみんな言いなりになっている。先日辞めたメイドはほんの少し窘めただけでカップを投げつけられて顔に怪我して辞職したそうだ。
我儘と癇癪は数日に一度の割合で起こり侍女やメイドはなるべく気に障る事の無いように努めているらしい。
『困ったちゃんね』
アンナが本から視線をそらさないまま呆れた口調で念話する。
『でね、何時だったか神殿の祈りに行きたくないと駄々を捏ねたらしいのよ』
『あらら』
『何とか宥めようとしたんだけどダメで。願いを聞くからと言ったら何て言ったと思う?』
『さぁ、外で遊びたいとか?』
『ううん。それがね、殿下のどちらかが一日遊んでくれたら行くって言ったらしい』
『うわっ、お二人とも忙しいのに』
『だよね』
『その時外交で国外に出ていたデオドールの代わりにバージルが国王命で相手をしたらしいけど、殿下はあの通り魔力持ちで触れる事もままならないじゃん。だから余計にもどかしくてバージルに執着しているらしいわよ』
『成る程、それでこの間ガゼボでバージル様が私に触れた時に邪気が出たのね』
『うん。それ以外にも自分の思い通りにならないときっと出てるわね』
『でもそれをコントロールできないと聖女の役目を果たせなくなる。そしてこの国は・・・』
『まぁアンナがいるから何とかなるけど』
『それじゃ駄目よ。私はあくまで陰。聖女が一生懸命にやってもダメな時に動くと神様も言ってたじゃない』
『確かに。。。』
このままでは駄目だ。国の将来の為に聖女がこれから成長していく為に周りが変わらなくてはならない。
遠回しにバージル様に相談してみるしかないな。
アンナは開いていた本を閉じてビオラと一緒に図書室を後にしました。
家に帰る為に馬車の乗り込もうとする寸前バージルからの伝令を受け取ります。
【明日は久しぶりに休みが取れそうだからお忍びで街へ行こう。昼前に迎えに行くよ。ダニエル一人連れて行くけど騎士の服装ではなく普段着で来させる。君とビオラもそれなりにね】
「うわぁ、アンナ。殿下からのでえとのお誘いじゃないですか!」
ビオラは目を輝かせている。
お忍びでデート、楽しみだわ。最近ゆっくり話も出来てなかったから聖女の事も話してみよう。
そんな事を考えながらオレガノ邸へ戻るとフォルヴァガが聖殿から戻って来ておりアンナのベッドの上でふて寝していた。
魔道具でマリーの祈りの様子を見てビオラと共に開いた口が塞がらない。
「これは至急に何とかしなくては駄目ね」
目覚めたフォルヴァガも情けない表情でアンナの顔を見ていたのでした。
『寝起きが悪いのか?』フォルヴァが呟く。
迎えに出て来た神官に促されて仕方なく神殿に入っていくマリー。
カラダを清め白い衣装に着替えると神殿の奥にある祈りの間へとやってきた。
毎日の日課だからか手慣れた様子で神に水と穀物を捧げ祈りの台に跪く。
『ちゃんとやっておるではないか』
そう思ったのもつかの間、十分もしない内に飽きてしまったのかもぞもぞと動き出し尻をついて駄々をこね始めた。
その様子はもうすぐ九才になろうとする娘とは思えない。
九才と言えばジュリアーナが大勢の負傷者を救った年ではないか。
五歳の時に我が憑依した男子よりもやることは幼いぞ。
神官の一人が何か飲み物と菓子のようなものを差し出すとそれらを飲み食いし、また祈り始めた。
それをまた繰り返す。
『子供とは故これでは』
フォルヴァはため息をついた。
神官たちも甘やかしすぎだろうが。こんな祈りで結界を維持できるのだろうか。
結局昼までの間合計一時間ほどしか祈りの台で跪くことは無かった。
祈りの間から出て来たマリーはおやつのお土産を貰うと急いで馬車に乗り込んでいったのでした。
『なんと報告したらいいものやら・・・見せるのも忍びない位だ』
フォルヴァは屋根を飛び移りながら家路を急いだ。
その頃お昼休みになったアンナは図書室でビオラと落ち合う約束をしていた。
出された宿題をちゃちゃっと終わらせ窓から外を眺めていると渡り廊下をダニエルと歩くバージルを見つける。ダニエルは沢山の書類を抱えていて公務の多忙さが垣間見れた。
ふと、バージルが上を見上げアンナに向かって手を振って来た。
『えっ、どうして気付いたの?』
驚いたものの笑顔で手を振り返すとバージルは嬉しそうに大きくブンブンと手を振り返してきたが、何かダニエルに言われ元のキリッとした殿下に戻り渡り廊下から見えなくなって行きました。
やっぱりカッコイイな。こんな人が私のフィアンセなんていまだに信じられないよ。
ふぅーと息を吐いて窓から向き直るとビオラがニタニタしながら立っていました。
「なによ、来たなら声を掛けなさいよ」
「殿下とラブラブの所お邪魔したら悪いと思って遠慮してたんですよお嬢様」
「・・・」
赤くなる私を半目で見ながら「例の報告ですが」と机の向こう側に腰を下ろした。
私たちは読書をしているかのように本を開き、時々めくりながら念話で会話をする。
『で、聞き込みの方はどうだった?』
『聖女の周り口の堅い侍女たちがガードしているんだけど』
『うん』
『その中で一人昨日聖女に叱咤を受けた新米が居てね。話を聞けたわ』
『それで?』
ビオラの話はこうであった。
ドリーというメイドはつい最近辞めたメイドの代わりに離宮に入ったそうで、早くも辞めたいと思っているらしい。
マリーの我儘を叱る者もなくみんな言いなりになっている。先日辞めたメイドはほんの少し窘めただけでカップを投げつけられて顔に怪我して辞職したそうだ。
我儘と癇癪は数日に一度の割合で起こり侍女やメイドはなるべく気に障る事の無いように努めているらしい。
『困ったちゃんね』
アンナが本から視線をそらさないまま呆れた口調で念話する。
『でね、何時だったか神殿の祈りに行きたくないと駄々を捏ねたらしいのよ』
『あらら』
『何とか宥めようとしたんだけどダメで。願いを聞くからと言ったら何て言ったと思う?』
『さぁ、外で遊びたいとか?』
『ううん。それがね、殿下のどちらかが一日遊んでくれたら行くって言ったらしい』
『うわっ、お二人とも忙しいのに』
『だよね』
『その時外交で国外に出ていたデオドールの代わりにバージルが国王命で相手をしたらしいけど、殿下はあの通り魔力持ちで触れる事もままならないじゃん。だから余計にもどかしくてバージルに執着しているらしいわよ』
『成る程、それでこの間ガゼボでバージル様が私に触れた時に邪気が出たのね』
『うん。それ以外にも自分の思い通りにならないときっと出てるわね』
『でもそれをコントロールできないと聖女の役目を果たせなくなる。そしてこの国は・・・』
『まぁアンナがいるから何とかなるけど』
『それじゃ駄目よ。私はあくまで陰。聖女が一生懸命にやってもダメな時に動くと神様も言ってたじゃない』
『確かに。。。』
このままでは駄目だ。国の将来の為に聖女がこれから成長していく為に周りが変わらなくてはならない。
遠回しにバージル様に相談してみるしかないな。
アンナは開いていた本を閉じてビオラと一緒に図書室を後にしました。
家に帰る為に馬車の乗り込もうとする寸前バージルからの伝令を受け取ります。
【明日は久しぶりに休みが取れそうだからお忍びで街へ行こう。昼前に迎えに行くよ。ダニエル一人連れて行くけど騎士の服装ではなく普段着で来させる。君とビオラもそれなりにね】
「うわぁ、アンナ。殿下からのでえとのお誘いじゃないですか!」
ビオラは目を輝かせている。
お忍びでデート、楽しみだわ。最近ゆっくり話も出来てなかったから聖女の事も話してみよう。
そんな事を考えながらオレガノ邸へ戻るとフォルヴァガが聖殿から戻って来ておりアンナのベッドの上でふて寝していた。
魔道具でマリーの祈りの様子を見てビオラと共に開いた口が塞がらない。
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