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第3章*婚約期
12フォルヴァと大聖女のお話し①
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夕食を済ませ自室でゆったりとしながらビオラにフォルヴァも加えて今日の出来事を整理します。
「聖女の邪気はヤキモチだと分かったけど、おかしいわね。普通あんなにあからさまに出ては来ないと思うんだけど」
ビオラが不思議そうに考え込む。
「他の事に対してはどうなのかしら?」
「聖女の器は小さいと神が言っていたであろう。コントロールができないのだろうな」
「うーんそれにしてももう八才よ。あの言動もちょっと生意気すぎるわ。相当甘やかされているんじゃないの」
「そうね、ただのヤキモチなら良いけど違う方向へ向けられると色々と問題が起きてきそうな気がするわ」
「言えてる。あの子ちゃんと聖女としての祈りを捧げてるの?なんか怪しくなってた」
「どうかしら、午前中は神殿に行き祈りを捧げていると聞いてはいるけど」
「よし、我が明日の祈りの時間に神殿での様子を見に行ってやろう」
「フォルヴァお願いね。私たちは王城で聞き込みをするわ」
誰しもが心中に妬みなどの闇を持っている。それをうまくコントロールして生きているのだ。でもそれが出来くなると負が大きくなり暴力などで人を傷つけたり自傷行為に走ったりする。
聖女がそうなってはお国の一大事だ。
翌朝フォルヴァは早々に神殿へと向かった。
石造りのひんやりとした感触が懐かしい。フォルヴァは五百年前の満月の夜に聖殿に射し込む月の光から誕生した。
フォルヴァはこれまで多くの聖女と呼ばれる者を見て来た。
聖女たちは皆神に祈りを捧げ平和と人々の安住を願ってきた。
しかし聖女とて人間である。その昔はある程度成長してから聖殿に入った。しかし、外の世界を知ってしまった聖女は聖殿での窮屈な生活に疲れ時には自由にならない自分の身を悲観し自ら命を絶った者もいた。
そこで何も知らぬ赤子のうちから神殿で育て聖女のあるべき姿を教え込もうと神官たちは思った。
ある時代の聖女が世を去り、世の中は瘴気と魔獣が混在する世界と化した。人々の祈りから念願の聖女が誕生する。聖女の誕生により世の中は多少浄化されたが平和を取り戻す迄には程遠かった。
それから一年後修道院の前にまだ一歳にもならないと思われる赤子が捨てられる。その子を見た修道院の院長は孤児院には入れずジュリアーナと名付け自分の子として育てた。
聖女が十才、ジュリアーナが九才になった時に大災害が起こり多くのけが人がジュリアーナのいる修道院に運ばれる。この修道院の周辺は魔獣の出没もなく至って平和だったからだ。治癒魔法が使える者たちが神殿より駆けつけ怪我人の治療に当たった。その中には勿論聖女の姿もあった。
しかし一人ずつしか治療できない為埒が明かない。聖女でさえ一度に三人が限界だったし、まだ幼い少女には治癒の反動が大きすぎた。
二日目の真夜中、部屋にいないジュリアーナを探していると、まだ治療の順番が来ない重症者の横にジュリアーナが立っているのを義母で修道院院長であるエニスタが見つける。
声を掛けようとした瞬間、彼女の体の周りが光に包まれた。そしてジュリアーナの両手の平からその光は重症者に注がれ、周りに寝かされている同様の者たちにまで広がり十人ほどの負傷者がオレンジ色の光に包まれた。
暫くしてオレンジ色の光が消えるとジュリアーナはまた別の負傷者たちの元へ移動し同じ動作を繰り返した。
それを合計十回行い最後に首に掛けているロザリオを握り締め祈りを捧げると無言で自分の部屋のある方へと帰って行った。
エニスタはジュリアーナの姿が見えなくなるの待って急いで怪我人の元へ向かい、その状況を見て我が目を疑った。
重傷者は重篤の危機を脱し、それ以外の他の者は殆ど完治の一歩手前まで回復していたのだ。
エニスタの全身はガタガタと震えた。
聖女でさえ一日三回十名が限度で自身もその負担から倒れてしまうというのにジュリアーナはここにいる百人余りを僅かの時間で治療したのだ。それもまだ九才の少女が。
ジュリアーナが魔法を使えることは知っている。生活魔法を使いこなし修道院に働く老婆たちの仕事の負担を軽くしていたのだ。ジュリアーナにも院の外で使う事を禁じていたし老婆たちにも口止めしてあった。
でも今見たものは魔法や魔術などとは違う。治癒魔法ではなく聖女の持つ癒しの力だ。
ジュリアーナは聖女なのか。
エニスタは愕然とする。この世界に二人の聖女は存在してはならない。
ならばこの事はわたしだけの胸にしまっておくしかない。
ジュリアーナの自由の為にも。
そう決心したのでありました。
翌日負傷者の回復状態に驚いた周囲の者は聖女のお陰だと涙した。
神殿も王城もこの話で持ち切りとなり聖女への崇拝が高まる。
しかし、フォルヴァには腑に落ちないところがあった。
確かに今の聖女は十才にしては優秀だと思う。だがまだ十才の聖女に一晩でそれだけの人々を治す力があるとは思えなかったのだ。
フォルヴァは噂の修道院に何かがあるのかも知れないと思い王都から離れた村の修道院へと向かった。
ところがこの場所がこれと言って何かの力がある様には思えなかった。
中にはまだ負傷者がいるが皆回復してきており明るい声も聞こえている。
そしてもう一つ。どうしてこの地は魔獣が出ないのか?それもまたフォルヴァにとっての疑問でもあった。
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本日は少し時間がずれながらの更新となっています_(._.)_
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「聖女の邪気はヤキモチだと分かったけど、おかしいわね。普通あんなにあからさまに出ては来ないと思うんだけど」
ビオラが不思議そうに考え込む。
「他の事に対してはどうなのかしら?」
「聖女の器は小さいと神が言っていたであろう。コントロールができないのだろうな」
「うーんそれにしてももう八才よ。あの言動もちょっと生意気すぎるわ。相当甘やかされているんじゃないの」
「そうね、ただのヤキモチなら良いけど違う方向へ向けられると色々と問題が起きてきそうな気がするわ」
「言えてる。あの子ちゃんと聖女としての祈りを捧げてるの?なんか怪しくなってた」
「どうかしら、午前中は神殿に行き祈りを捧げていると聞いてはいるけど」
「よし、我が明日の祈りの時間に神殿での様子を見に行ってやろう」
「フォルヴァお願いね。私たちは王城で聞き込みをするわ」
誰しもが心中に妬みなどの闇を持っている。それをうまくコントロールして生きているのだ。でもそれが出来くなると負が大きくなり暴力などで人を傷つけたり自傷行為に走ったりする。
聖女がそうなってはお国の一大事だ。
翌朝フォルヴァは早々に神殿へと向かった。
石造りのひんやりとした感触が懐かしい。フォルヴァは五百年前の満月の夜に聖殿に射し込む月の光から誕生した。
フォルヴァはこれまで多くの聖女と呼ばれる者を見て来た。
聖女たちは皆神に祈りを捧げ平和と人々の安住を願ってきた。
しかし聖女とて人間である。その昔はある程度成長してから聖殿に入った。しかし、外の世界を知ってしまった聖女は聖殿での窮屈な生活に疲れ時には自由にならない自分の身を悲観し自ら命を絶った者もいた。
そこで何も知らぬ赤子のうちから神殿で育て聖女のあるべき姿を教え込もうと神官たちは思った。
ある時代の聖女が世を去り、世の中は瘴気と魔獣が混在する世界と化した。人々の祈りから念願の聖女が誕生する。聖女の誕生により世の中は多少浄化されたが平和を取り戻す迄には程遠かった。
それから一年後修道院の前にまだ一歳にもならないと思われる赤子が捨てられる。その子を見た修道院の院長は孤児院には入れずジュリアーナと名付け自分の子として育てた。
聖女が十才、ジュリアーナが九才になった時に大災害が起こり多くのけが人がジュリアーナのいる修道院に運ばれる。この修道院の周辺は魔獣の出没もなく至って平和だったからだ。治癒魔法が使える者たちが神殿より駆けつけ怪我人の治療に当たった。その中には勿論聖女の姿もあった。
しかし一人ずつしか治療できない為埒が明かない。聖女でさえ一度に三人が限界だったし、まだ幼い少女には治癒の反動が大きすぎた。
二日目の真夜中、部屋にいないジュリアーナを探していると、まだ治療の順番が来ない重症者の横にジュリアーナが立っているのを義母で修道院院長であるエニスタが見つける。
声を掛けようとした瞬間、彼女の体の周りが光に包まれた。そしてジュリアーナの両手の平からその光は重症者に注がれ、周りに寝かされている同様の者たちにまで広がり十人ほどの負傷者がオレンジ色の光に包まれた。
暫くしてオレンジ色の光が消えるとジュリアーナはまた別の負傷者たちの元へ移動し同じ動作を繰り返した。
それを合計十回行い最後に首に掛けているロザリオを握り締め祈りを捧げると無言で自分の部屋のある方へと帰って行った。
エニスタはジュリアーナの姿が見えなくなるの待って急いで怪我人の元へ向かい、その状況を見て我が目を疑った。
重傷者は重篤の危機を脱し、それ以外の他の者は殆ど完治の一歩手前まで回復していたのだ。
エニスタの全身はガタガタと震えた。
聖女でさえ一日三回十名が限度で自身もその負担から倒れてしまうというのにジュリアーナはここにいる百人余りを僅かの時間で治療したのだ。それもまだ九才の少女が。
ジュリアーナが魔法を使えることは知っている。生活魔法を使いこなし修道院に働く老婆たちの仕事の負担を軽くしていたのだ。ジュリアーナにも院の外で使う事を禁じていたし老婆たちにも口止めしてあった。
でも今見たものは魔法や魔術などとは違う。治癒魔法ではなく聖女の持つ癒しの力だ。
ジュリアーナは聖女なのか。
エニスタは愕然とする。この世界に二人の聖女は存在してはならない。
ならばこの事はわたしだけの胸にしまっておくしかない。
ジュリアーナの自由の為にも。
そう決心したのでありました。
翌日負傷者の回復状態に驚いた周囲の者は聖女のお陰だと涙した。
神殿も王城もこの話で持ち切りとなり聖女への崇拝が高まる。
しかし、フォルヴァには腑に落ちないところがあった。
確かに今の聖女は十才にしては優秀だと思う。だがまだ十才の聖女に一晩でそれだけの人々を治す力があるとは思えなかったのだ。
フォルヴァは噂の修道院に何かがあるのかも知れないと思い王都から離れた村の修道院へと向かった。
ところがこの場所がこれと言って何かの力がある様には思えなかった。
中にはまだ負傷者がいるが皆回復してきており明るい声も聞こえている。
そしてもう一つ。どうしてこの地は魔獣が出ないのか?それもまたフォルヴァにとっての疑問でもあった。
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