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第3章*婚約期
聖女マリーに会いまして。②
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「地震か?」
バージルがアンナの頭を庇い同時にビオラも駆け寄って来た。ダニエルとマリーの侍女は何事かと不思議そうに見ています。
「殿下どうかされましたか?」
突然ビオラが駆け寄りバージルがアンナを抱え込む姿を見てダニエルがバージルに声を掛ける。
「ダニエルお前の場所は揺れていないのか?」
「揺れですか?いえ何ともありませんが」
バージルの腕の隙間からダニエルの方を見ると抱かれているマリーのモヤモヤが黒く大きく立ち上っている。
『ビオラ、あれっ!』ビオラに念話を送る。
『この揺れは聖女の邪気のせいよ』
『どうしたら抑えられる?』
『弱くで良いから癒しの力を聖女に送って』
『分かった、やってみる』
わずかな揺れはまだ続いている。
アンナは手を少しマリーに向けて差し出し癒しの力を送り始めた。
おや?バージルは自分の腕の中にいるアンナの体温が僅かに上昇したのを見逃さなかった。
『伸ばした指先から何かが出ている?。魔力だろうか。いや魔力なら自分にははっきりわかる筈だ。何か分からないがアンナが何かしている事は確かだ』
数秒後オレンジ色の光がマリーの身体の周りを包み込み黒く立ち上った邪気が消えた。揺れも落ち着くとマリーの力が抜け、すぅーと眠り始めた。
「あら、マリー様眠ってしまわれましたね。ジョージを呼んで参りますので暫くお待ちを」
何かが起こっていたことを知らない侍女はマリーを部屋へ運ぶために入り口にいた兵士を呼びに走って行った。
「殿下何があったのですか?今マリー様のお身体がフワッと暖かくなったのですがいきなり眠られるとは」
ダニエルが不思議そうに腕の中のマリーを見ています。
「私にも良く判らない。アンナやビオラは分かったか?」
「いえ、突然揺れを感じましたから地震かと」
私がはぐらかして答えるとビオラもそれに合わせてうんうんと頷いた。
侍女が呼びに行った兵士と戻って来てダニエルからマリーを預かると二人は離宮へと帰って行きました。
「あのう、殿下。揺れは収まりましたので離してください」
庇って抱いたままだったアンナに見上げて言われ
「あっ、すまない」
バージルは慌ててアンナを離すと独り言のように呟く
「しかし、不思議だ。何故我々の所だけ揺れたのだ」
「私の方は全く揺れてませんでしたし、殿下とジュリアンナ嬢の所も揺れているようには見えませんでしたが、魔力の暴走とか。。。」
「いや、アンナが傍に居る限りそれは無いが、ちょっと不思議な感覚があった。でもそれが何なのかは。。。」
とアンナの顔色を伺う。
『ビオラ、殿下は何か感じたのかしら』
『どうかしら。でもあれだけ密着していたんだから魔力以外の何かをアンナから感じた可能性は否定できないわね』
『とにかく追及される前に帰りましょう』
『そうね、帰れるように仕向けるわ』
「あのう、お嬢様。そろそろお帰りの時間になりますので」
ビオラは時計を見るふりをしながらアンナに声を掛けます。
「そうか、そんな時間になるか。アンナ次回はゆっくりお茶を楽しもう」
「はい、楽しみにしています。それでは」
私は笑顔で答え背伸びをしてバージルの頬に挨拶のキスをし、ビオラと共に庭園の出口に向かいました。
『ぷっ、見ましたか今のバージルの顔』
『うふふ、たまには仕返しをしなくてはね。それに今のキスで起こった事もちょっとの間忘れるでしょう?』
『あは、なかなかやるわねアンナも』
突然のアンナからのキスに真っ赤になった顔を両手で隠ししゃがみ込んでいるバージルをダニエルは生暖かい目で見降ろしています。
二人は引き止められないように急ぎ足で馬車に乗り込むと今まで我慢していた笑いが込み上げ、はしたなくも大笑いをしながら家路に着いたのでした。
◆バージル◆
異例の速さでアンナとの婚約は結ばれ晴れて恋人同士になれた。
いや違うな。恋人と思っているのは私だけで彼女の方は訳も分からぬ内に押し切られたと思っているのだと思う。
王家から求婚されて男爵家が断る事は出来ないからな。
本当はもっとお互いを知り少しでも私に好意を持って貰ってからの方が好ましかったが、そんな悠長なことは言ってられなかったのだ。
今までの仕来りに準じていたら数か月はかかってしまう。
冗談じゃないそんなに待てる訳じゃないか!姑息だと言われても国王の力を借りて婚約を認めさせてしまった。
婚約したと言えアンナはまだ成人前。
触れたくてもそこは自重しなくていけないと自分に言い聞かせる。
初心な彼女は手を繋ぐだけでも頬を染める。
くーっ!可愛くて仕方ない。
アンナの行動は陰の監視を付けているので把握しているが決してストーカーではない。
婚約者になった時点で護衛の騎士は付けてあるが何かあっては困るからな。
陰からの報告で王妃教育を終えガゼボで休んでいると聞きダニエルに無理を言い顔だけでもと思いバラの庭園へと向かった。
今日も可愛い・・・彼女も私に気付き足を一歩踏み出したところで少し困った顔をして歩みを止めた。
彼女の目線の先を見るとマリーが不機嫌そうな顔をして立っていた。
「王妃教育が終わってここへ向かったと聞いて来てみたんだが・・・マリーもいたんだね」
そう言いながらアンナ傍に行こうとしたが
「バージルお兄さまァ~」
と甘えた声でマリーが駆け寄って来た。
「久しぶりだね。ちゃんと勉強はしているかい?」
「し、してますけどお兄様たちが来てくれないのでマリーはさみしいのです」
「兄上も私も公務が忙しいからね。今は色んな人と会えるようになっただろう?沢山話をすることも大事だよ」
「でも~」
最近のマリーは我儘で機嫌を損ねると面倒だと思い抱き上げ直ぐにダニエルの腕に預けてからアンナの元へ行き頬に軽く挨拶のキスをした。
それと同時に地面が揺れ始める。
地震だと思いアンナを抱き寄せ頭を庇うとビオラも直ぐに寄って来た。
ダニエルはマリーを抱えたまま不思議そうに私たちの行動を見ている。
ん?揺れているのは私達三人足元だけなのか?
まだ足元も揺れは続いている。
するとアンナが抱えている私の腕の間からほんの少し手を伸ばしダニエル達の方に向け指を伸ばしている。
なんだ?腕の中の彼女の体温が僅かに上がった気がした。
何かをしているように感じるが何だか分からない。
でもアンナが何かをしているのは確かだ。
ほんの数秒で揺れは止まった。
ふと見ると抱かれているマリーがいつの間にか眠っていた。
どういうことか?キツネに摘まれた気分だった。
寝てしまったマリーを部屋に送らせ今起きたことを振り返るがアンナもビオラも地震だと思ったとしか言わない。
先ほどのアンナ行動を確かめようとした矢先ビオラがアンナの帰宅時間と言ってきた。
仕方なくまたゆっくりとと告げると「はい、楽しみにしています。それでは」と急に背伸びをし当たるか当たらないか程度のキスをしてビオラと逃げるように走り去る。
うっ! 彼女からキスなんて初めての事で驚きと嬉しさで思わずその場にしゃがみ込んでしまった。
多分ダニエルはニヤけた顔で私の事を見ているのだと思うがそんな事は構うものか。
やっと冷静さを取り戻し立ち上がることが出来た。
次回はもう少し先に進んで口づけてもいいかもしれないなどと考えていたら先ほどの事がすっかり頭から抜けてしまっていた。
バージルがアンナの頭を庇い同時にビオラも駆け寄って来た。ダニエルとマリーの侍女は何事かと不思議そうに見ています。
「殿下どうかされましたか?」
突然ビオラが駆け寄りバージルがアンナを抱え込む姿を見てダニエルがバージルに声を掛ける。
「ダニエルお前の場所は揺れていないのか?」
「揺れですか?いえ何ともありませんが」
バージルの腕の隙間からダニエルの方を見ると抱かれているマリーのモヤモヤが黒く大きく立ち上っている。
『ビオラ、あれっ!』ビオラに念話を送る。
『この揺れは聖女の邪気のせいよ』
『どうしたら抑えられる?』
『弱くで良いから癒しの力を聖女に送って』
『分かった、やってみる』
わずかな揺れはまだ続いている。
アンナは手を少しマリーに向けて差し出し癒しの力を送り始めた。
おや?バージルは自分の腕の中にいるアンナの体温が僅かに上昇したのを見逃さなかった。
『伸ばした指先から何かが出ている?。魔力だろうか。いや魔力なら自分にははっきりわかる筈だ。何か分からないがアンナが何かしている事は確かだ』
数秒後オレンジ色の光がマリーの身体の周りを包み込み黒く立ち上った邪気が消えた。揺れも落ち着くとマリーの力が抜け、すぅーと眠り始めた。
「あら、マリー様眠ってしまわれましたね。ジョージを呼んで参りますので暫くお待ちを」
何かが起こっていたことを知らない侍女はマリーを部屋へ運ぶために入り口にいた兵士を呼びに走って行った。
「殿下何があったのですか?今マリー様のお身体がフワッと暖かくなったのですがいきなり眠られるとは」
ダニエルが不思議そうに腕の中のマリーを見ています。
「私にも良く判らない。アンナやビオラは分かったか?」
「いえ、突然揺れを感じましたから地震かと」
私がはぐらかして答えるとビオラもそれに合わせてうんうんと頷いた。
侍女が呼びに行った兵士と戻って来てダニエルからマリーを預かると二人は離宮へと帰って行きました。
「あのう、殿下。揺れは収まりましたので離してください」
庇って抱いたままだったアンナに見上げて言われ
「あっ、すまない」
バージルは慌ててアンナを離すと独り言のように呟く
「しかし、不思議だ。何故我々の所だけ揺れたのだ」
「私の方は全く揺れてませんでしたし、殿下とジュリアンナ嬢の所も揺れているようには見えませんでしたが、魔力の暴走とか。。。」
「いや、アンナが傍に居る限りそれは無いが、ちょっと不思議な感覚があった。でもそれが何なのかは。。。」
とアンナの顔色を伺う。
『ビオラ、殿下は何か感じたのかしら』
『どうかしら。でもあれだけ密着していたんだから魔力以外の何かをアンナから感じた可能性は否定できないわね』
『とにかく追及される前に帰りましょう』
『そうね、帰れるように仕向けるわ』
「あのう、お嬢様。そろそろお帰りの時間になりますので」
ビオラは時計を見るふりをしながらアンナに声を掛けます。
「そうか、そんな時間になるか。アンナ次回はゆっくりお茶を楽しもう」
「はい、楽しみにしています。それでは」
私は笑顔で答え背伸びをしてバージルの頬に挨拶のキスをし、ビオラと共に庭園の出口に向かいました。
『ぷっ、見ましたか今のバージルの顔』
『うふふ、たまには仕返しをしなくてはね。それに今のキスで起こった事もちょっとの間忘れるでしょう?』
『あは、なかなかやるわねアンナも』
突然のアンナからのキスに真っ赤になった顔を両手で隠ししゃがみ込んでいるバージルをダニエルは生暖かい目で見降ろしています。
二人は引き止められないように急ぎ足で馬車に乗り込むと今まで我慢していた笑いが込み上げ、はしたなくも大笑いをしながら家路に着いたのでした。
◆バージル◆
異例の速さでアンナとの婚約は結ばれ晴れて恋人同士になれた。
いや違うな。恋人と思っているのは私だけで彼女の方は訳も分からぬ内に押し切られたと思っているのだと思う。
王家から求婚されて男爵家が断る事は出来ないからな。
本当はもっとお互いを知り少しでも私に好意を持って貰ってからの方が好ましかったが、そんな悠長なことは言ってられなかったのだ。
今までの仕来りに準じていたら数か月はかかってしまう。
冗談じゃないそんなに待てる訳じゃないか!姑息だと言われても国王の力を借りて婚約を認めさせてしまった。
婚約したと言えアンナはまだ成人前。
触れたくてもそこは自重しなくていけないと自分に言い聞かせる。
初心な彼女は手を繋ぐだけでも頬を染める。
くーっ!可愛くて仕方ない。
アンナの行動は陰の監視を付けているので把握しているが決してストーカーではない。
婚約者になった時点で護衛の騎士は付けてあるが何かあっては困るからな。
陰からの報告で王妃教育を終えガゼボで休んでいると聞きダニエルに無理を言い顔だけでもと思いバラの庭園へと向かった。
今日も可愛い・・・彼女も私に気付き足を一歩踏み出したところで少し困った顔をして歩みを止めた。
彼女の目線の先を見るとマリーが不機嫌そうな顔をして立っていた。
「王妃教育が終わってここへ向かったと聞いて来てみたんだが・・・マリーもいたんだね」
そう言いながらアンナ傍に行こうとしたが
「バージルお兄さまァ~」
と甘えた声でマリーが駆け寄って来た。
「久しぶりだね。ちゃんと勉強はしているかい?」
「し、してますけどお兄様たちが来てくれないのでマリーはさみしいのです」
「兄上も私も公務が忙しいからね。今は色んな人と会えるようになっただろう?沢山話をすることも大事だよ」
「でも~」
最近のマリーは我儘で機嫌を損ねると面倒だと思い抱き上げ直ぐにダニエルの腕に預けてからアンナの元へ行き頬に軽く挨拶のキスをした。
それと同時に地面が揺れ始める。
地震だと思いアンナを抱き寄せ頭を庇うとビオラも直ぐに寄って来た。
ダニエルはマリーを抱えたまま不思議そうに私たちの行動を見ている。
ん?揺れているのは私達三人足元だけなのか?
まだ足元も揺れは続いている。
するとアンナが抱えている私の腕の間からほんの少し手を伸ばしダニエル達の方に向け指を伸ばしている。
なんだ?腕の中の彼女の体温が僅かに上がった気がした。
何かをしているように感じるが何だか分からない。
でもアンナが何かをしているのは確かだ。
ほんの数秒で揺れは止まった。
ふと見ると抱かれているマリーがいつの間にか眠っていた。
どういうことか?キツネに摘まれた気分だった。
寝てしまったマリーを部屋に送らせ今起きたことを振り返るがアンナもビオラも地震だと思ったとしか言わない。
先ほどのアンナ行動を確かめようとした矢先ビオラがアンナの帰宅時間と言ってきた。
仕方なくまたゆっくりとと告げると「はい、楽しみにしています。それでは」と急に背伸びをし当たるか当たらないか程度のキスをしてビオラと逃げるように走り去る。
うっ! 彼女からキスなんて初めての事で驚きと嬉しさで思わずその場にしゃがみ込んでしまった。
多分ダニエルはニヤけた顔で私の事を見ているのだと思うがそんな事は構うものか。
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