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ある朝目覚めたら、旦那様がキャラ変していました。

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 駄目だ。

 昨日旦那様にお姫様抱っこされて部屋に戻る途中から記憶が無い……。
 これはまさか、隣を見るとしどけない姿の旦那様がいるとか、そういうアレじゃないよね!?


 ドッドッドッと心臓が鳴るのを感じながら、ギギッと首を動かして自分の隣を見る。
 予想に反してそこは無人で、ほっとした私は『はあぁー』と脱力した。
 ビックリしたー! 良かった!! そこまで取り返しのつかない失態は犯してないみたい。

 まさか、あんなにちょぴっとだけ飲んだフルーツワインであんな事になるとは思わなかった。
 お酒ダメ。絶対。

 少し安心して改めて自分の姿を見ると、きちんと部屋着姿になっていた。
 もちろん着崩れたりもしていない。
 着替えた記憶は無いのだが、無意識に自分で着替えたのか、マリーかダリアが手伝ってくれたのか……。

 ふと人の気配を感じて部屋の中を見ると、ソファーで旦那様が眠り込んでいた。

 旦那様!? 何故にソファーで?

「旦那様。旦那様。起きて下さい。こんな所で寝ると身体が痛くなりますよ?」

 声をかけて体を軽く揺さぶるが、旦那様に起きる気配は無い。初夜の時にも思ったけど、旦那様はどうも寝起きがすこぶる悪いらしい。
 あの時は容赦なく転がしたが、今日に関して言えばどう考えても私が迷惑をかけたのだろうから、そんな手荒な真似をする訳にはいかない。

 もう少し寝かせてあげた方がいいのかな……?

 とりあえず、ずり落ちかかっていたタオルケットを旦那様の肩まで掛け直していると、うっすらと旦那様の目が開く。

「……おはよう、アナ」

 目覚めた旦那様は、今まで見た事もない蕩ける様な笑顔でそう言った。

 おおおっ?

「おはようございます、旦那様。昨日はご迷惑をお掛けしてしまってすみません。旦那様は何故こんな所でお休みになっていたのですか?」
「アナが……途中で具合が悪くなるといけないと思ってな。かと言って隣で寝る訳にもいかないだろう?」

 言いながら旦那様はムクリと半身を起こす。

 それはつまり、私の事を心配して、旦那様自らが見てくれてたって事? 何だ何だ、優しいじゃないか?

「そんな、ご迷惑をお掛けして申し訳ないですわ。マリーかダリアを呼んで下されば……」

 私が話していると、言葉の最中に旦那様に手をキュッと握られた。ホワッツ!?

「昨日、折角アナからチャンスを貰ったんだ。これからはきちんと夫としてアナに尽くしたい」

 チャンスとな!? 困った、全然話が見えない。

「それに、少しも迷惑だなんて思っていない。一晩中一緒にいて、アナの寝顔も見られたんだ。役得だ」

 そう言って旦那様はふにゃりと笑う。


 ——ちょっとおぉぉぉー!! 何があったらこうなるの!? 教えて! 昨日の私!!



 その後も、『きっと旦那様は寝ぼけてたんだ! お昼も過ぎればいつも通りに戻るだろう!』という私の期待も虚しく旦那様が元に戻る事はなく。


 翌日。

 私は無駄にロマンティックムーブをかます旦那様と共に魔道馬車みっしつに監禁されて、王都へと連行される事になったのだった……。



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