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白い結婚⑴

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「……ま、今までの所、ほぼほぼ想像通りの展開よね。両手をあげて歓迎されるなんて最初っから期待してないし、公爵家での扱いを思えばむしろ随分と暮らしやすそうだわ」

 自分の為に整えられた室内を見て、アナスタシアはそう独り言ちた。
 ベッドにボスンッと身体を投げ出すと、心地よいマットの感触とフカフカのお布団の良い匂いがする。

 ーーあぁ、今日はグッスリ眠れそうだ。

 公爵家で与えられていたジメジメとした薄暗い部屋と固い布団を思い出す。
『公爵家の娘として恥ずかしくない最低限』の教育と生活とやらは、実際は下町で暮らしていた平民時代より悲惨な物だった。
お貴族の方々は何故か平民はみじめな暮らしをしていると信じて疑わないが、少なくともアナスタシアは両親と3人幸せに暮らしていたのだ。

 公爵に必要無いと断じられた学問を学ぶ事は許されず、マナーばかり叩き込まれ。
 仮にも公爵家の娘としてみすぼらしくあってはならないが、美しくなってもならないと中途半端に手入れされ。
 公爵の意に沿わぬ事をすれば叩かれる事も食事を抜かれる事も、使用人達から嫌がらせを受ける事さえ日常茶飯事だった。

 何度も逃げ出したいと思った。
 公爵家の警備は意外とザルで、その気になれば抜けだせたと思う。
 追手さえ撒いて隣国にでも入ってしまえば、仕事を探して自分一人食べて行く事位アナスタシアにとっては朝飯前だ。

 そうしなかったのは、ある目的を果たす為ー。

 お父さん、お母さん、見てて。私の雑草魂はすっごいんだから!!

 寝ている時すら外す事の無いペンダントをギュッと握りしめると、アナスタシアは立ち上がった。
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