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本編 第2章
第11話
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正直、意外とかそのレベルの話じゃなかった。
だって、私がラインヴァルト殿下と婚姻しても、メリットなんて一つもないんだもの……。
「……王妃、殿下」
ゆっくりとそんな言葉を口にすれば、王妃殿下が私の手をぎゅっと握ってこられた。力が強すぎるのか、ちょっと痛い。
「大丈夫。わたくしは、テレジアさんの味方よ」
まるで囁くように。優しくて甘い声で、そうおっしゃる王妃殿下。
私の胸の中に、小さな感動が芽生える。……私の両親とは、全然違う。そう、思った。
「今日は、それを言いたかったのよ。……ごめんなさいね、急に呼び出してしまって」
「い、いえ……」
彼女の謝罪のお言葉に、首をぶんぶんと横に振る。王妃殿下は、私のその仕草を見て微笑まれた。
きれいとか、美しいとか。そういう言葉じゃ表せないほどに、魅力的な笑み。……私も、こんな女性になりたいって思う。
「……話が済んだんだったら、さっさと行くぞ」
「あ、ら、ラインヴァルト殿下……」
私の気持ちとは裏腹に、ラインヴァルト殿下は不機嫌なまま私の肩を抱き寄せて踵を返される。
私は、抵抗することも出来ずにつれていかれることしか出来ない。
「……あの、殿下」
王妃殿下の応接間を出て、私はラインヴァルト殿下のお顔を見上げた。……彼の目が、何処となく鋭く感じるのは気のせいじゃない。それだけは、間違いない。
「その、なにか、粗相でもしてしまったでしょうか……?」
恐る恐るそう問いかければ、ラインヴァルト殿下は「違う」と真剣な表情でおっしゃった。
……じゃあ、どうしてそんなにも目を鋭くされているのか。そう指摘したかった。出来なかった。
「テレジア嬢は完璧だったよ」
「そ、そうですか……」
そのお言葉に、ほっと胸を撫でおろす。でも、じゃあ。……どうして、ラインヴァルト殿下が不機嫌なのか。
理由の見当がつかなくて、私は小首をかしげることしか出来なかった。
「……テレジア嬢」
しばらくして、ラインヴァルト殿下が声をかけてこられる。私はそっと彼の顔を見上げて、言葉の続きを待った。
「ちょっと、付き合ってくれ」
「え……」
「散歩でも、しよう」
そうおっしゃった彼は、私の返答も聞かずに私の手首を掴む。そのまま強引に歩き出されて、私は彼の後に続くことしか出来ない。
(……本当、絶対に様子がおかしいわ)
私は、鈍いのだろうか。もしかしたら、ラインヴァルト殿下の気に障るようなことを口走ったのかもしれない。
苦しくなって、ぎゅっと俯いた。彼は、すたすたと歩いて行かれる。
「ど、何処に、向かわれるのですか……?」
必死に彼について歩いて、沈黙が辛くて声をかける。
私の言葉を聞いたラインヴァルト殿下は「中庭」と端的に答えてくださった。
「この時期は、花が見頃だからな。……テレジア嬢も、気に入ると思う」
前を向いて、私に視線をちらりとも向けずにそう言い切ったラインヴァルト殿下。
声音はいつも通りとても優しいのに。まとうオーラは全然違う。……本当に、どうされたのだろうか?
(そういえば、殿下は王妃殿下とあまりお話していない様子だったわ……)
もしかしたら、王妃殿下との間になにか確執みたいなのがあるのかも……とまで思って、顔を上げる。
「……わぁ」
自然と声が漏れた。王城の窓から見える中庭は、美しい花々が咲き誇っている。……確かに、見頃だ。
心がそわそわとするのを実感しつつ、私はラインヴァルト殿下に連れられるがままに王城から中庭へと足を踏み入れた。
だって、私がラインヴァルト殿下と婚姻しても、メリットなんて一つもないんだもの……。
「……王妃、殿下」
ゆっくりとそんな言葉を口にすれば、王妃殿下が私の手をぎゅっと握ってこられた。力が強すぎるのか、ちょっと痛い。
「大丈夫。わたくしは、テレジアさんの味方よ」
まるで囁くように。優しくて甘い声で、そうおっしゃる王妃殿下。
私の胸の中に、小さな感動が芽生える。……私の両親とは、全然違う。そう、思った。
「今日は、それを言いたかったのよ。……ごめんなさいね、急に呼び出してしまって」
「い、いえ……」
彼女の謝罪のお言葉に、首をぶんぶんと横に振る。王妃殿下は、私のその仕草を見て微笑まれた。
きれいとか、美しいとか。そういう言葉じゃ表せないほどに、魅力的な笑み。……私も、こんな女性になりたいって思う。
「……話が済んだんだったら、さっさと行くぞ」
「あ、ら、ラインヴァルト殿下……」
私の気持ちとは裏腹に、ラインヴァルト殿下は不機嫌なまま私の肩を抱き寄せて踵を返される。
私は、抵抗することも出来ずにつれていかれることしか出来ない。
「……あの、殿下」
王妃殿下の応接間を出て、私はラインヴァルト殿下のお顔を見上げた。……彼の目が、何処となく鋭く感じるのは気のせいじゃない。それだけは、間違いない。
「その、なにか、粗相でもしてしまったでしょうか……?」
恐る恐るそう問いかければ、ラインヴァルト殿下は「違う」と真剣な表情でおっしゃった。
……じゃあ、どうしてそんなにも目を鋭くされているのか。そう指摘したかった。出来なかった。
「テレジア嬢は完璧だったよ」
「そ、そうですか……」
そのお言葉に、ほっと胸を撫でおろす。でも、じゃあ。……どうして、ラインヴァルト殿下が不機嫌なのか。
理由の見当がつかなくて、私は小首をかしげることしか出来なかった。
「……テレジア嬢」
しばらくして、ラインヴァルト殿下が声をかけてこられる。私はそっと彼の顔を見上げて、言葉の続きを待った。
「ちょっと、付き合ってくれ」
「え……」
「散歩でも、しよう」
そうおっしゃった彼は、私の返答も聞かずに私の手首を掴む。そのまま強引に歩き出されて、私は彼の後に続くことしか出来ない。
(……本当、絶対に様子がおかしいわ)
私は、鈍いのだろうか。もしかしたら、ラインヴァルト殿下の気に障るようなことを口走ったのかもしれない。
苦しくなって、ぎゅっと俯いた。彼は、すたすたと歩いて行かれる。
「ど、何処に、向かわれるのですか……?」
必死に彼について歩いて、沈黙が辛くて声をかける。
私の言葉を聞いたラインヴァルト殿下は「中庭」と端的に答えてくださった。
「この時期は、花が見頃だからな。……テレジア嬢も、気に入ると思う」
前を向いて、私に視線をちらりとも向けずにそう言い切ったラインヴァルト殿下。
声音はいつも通りとても優しいのに。まとうオーラは全然違う。……本当に、どうされたのだろうか?
(そういえば、殿下は王妃殿下とあまりお話していない様子だったわ……)
もしかしたら、王妃殿下との間になにか確執みたいなのがあるのかも……とまで思って、顔を上げる。
「……わぁ」
自然と声が漏れた。王城の窓から見える中庭は、美しい花々が咲き誇っている。……確かに、見頃だ。
心がそわそわとするのを実感しつつ、私はラインヴァルト殿下に連れられるがままに王城から中庭へと足を踏み入れた。
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