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本編 第2章
第1話
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目を覚ます。
ふかふかの寝台から起き上がって、大きく伸びをする。
「よく、眠れたけれど……」
小さくそう呟いて、私は室内を見渡した。
室内には豪華絢爛な家具が配置されている。私の実家じゃ、足元にも及ばないほどに煌びやかな空間。
それに若干引いてしまって、頬が引きつるのがわかった。
(結局、ラインヴァルト殿下に押されてしまったし……)
あの後、いつまで経っても躊躇い続ける私を、ラインヴァルト殿下はご自身の乗ってこられた馬車に押し込んだ。
そのまま馬車を走らせて、王城に連れてこられた。いわば、拉致みたいなものだと思ってしまう。
……でも、本気で抵抗しなかった私も私。ラインヴァルト殿下だけを責めるわけには、いかない。
そして、今、私がいるのは王城の客間。他国の来賓の方々が使われるお部屋を、一日だけ貸していただくことになった。
これも、ラインヴァルト殿下の差し金。彼は、遠慮する私に「部屋の準備が整うまで、一日かかる」とおっしゃったのだ。
もちろん、そのときにやっぱり帰るという選択肢はあった。けど、臆病な私はその選択を取ることが出来なかった。
両親が怖い。……その気持ちは、いとも簡単にラインヴァルト殿下に見透かされていた……と、思う。
というわけで、私はすっかりラインヴァルト殿下に絆され、ここにいる……のだ。
「それにしても、本当……これから、どうしよう」
いつまでもラインヴァルト殿下に甘えるわけにはいかない。そもそも、ラインヴァルト殿下と私が結婚できるわけがない。
……いつか、追い出されることを覚悟しなくちゃ。
「追い出されてもいいように、覚悟はしておかなくちゃ……」
そう思ってぎゅっと手を握ったとき。ふと、お部屋の扉がノックされる。
……誰?
そんな風に思って一瞬だけ躊躇う私だったけど、返事をしないという選択肢はなくて。
「は、はい!」
ほんの少し上ずったような声で、扉に向かって声をかけた。
そうすれば、扉が開いて一人の女性が姿を見せる。彼女は茶色の髪をきれいにお団子にしており、その優しそうなたれ目が特徴的。顔立ちからして、私よりも少し年上……だと思う。
そんな彼女は、丈の長い侍女服を身にまとっていた。
「テレジアさま。おはようございます。昨夜は、よく眠れましたでしょうか?」
人懐っこい笑みを浮かべた侍女が、そう問いかけてくる。なので、私はこくんと首を縦に振った。
「え、えぇ、とてもよく……眠れた、わ」
それは間違いない。
半ば無理矢理連れてこられたというのに、爆睡していた私はちょっと情けない。だけど、私が悪いわけじゃないと思う。
……寝台がふかふかなのが、一番の原因なの。えぇ、そう。
「さようでございますか。でしたら、よろしゅうございました」
侍女は私の葛藤にも気が付かずに、笑ってくれる。
「申し遅れましたが、私はミーナと申します。今後、テレジアさまのお世話をさせていただきます」
「……え」
「……聞いておりませんか?」
彼女――ミーナがきょとんとして、そう問いかけてくる。……少し困ってしまって、目を伏せる。
「まぁ、ラインヴァルト殿下のことですから、素で忘れていらっしゃったのでしょう」
「……そ、そう、ですか」
「はい。それに、私になると決まったのは日付が変わる前でしたので」
ミーナはなんてことない風にそう言うが、ラインヴァルト殿下は忘れていたわけではないと思う。
単に、疲れている私を気遣って、夜に訪れなかっただけだと思う。
「まぁ、そこら辺はお気になさらず」
「……はい」
正直気になってしまうが、これ以上深入りすることは出来そうにない。
その一心で、私は静かに頷いた。ミーナは、相変わらずニコニコと笑っている。その笑みは無邪気にも見えるものであり、押されてしまいそうだった。
ふかふかの寝台から起き上がって、大きく伸びをする。
「よく、眠れたけれど……」
小さくそう呟いて、私は室内を見渡した。
室内には豪華絢爛な家具が配置されている。私の実家じゃ、足元にも及ばないほどに煌びやかな空間。
それに若干引いてしまって、頬が引きつるのがわかった。
(結局、ラインヴァルト殿下に押されてしまったし……)
あの後、いつまで経っても躊躇い続ける私を、ラインヴァルト殿下はご自身の乗ってこられた馬車に押し込んだ。
そのまま馬車を走らせて、王城に連れてこられた。いわば、拉致みたいなものだと思ってしまう。
……でも、本気で抵抗しなかった私も私。ラインヴァルト殿下だけを責めるわけには、いかない。
そして、今、私がいるのは王城の客間。他国の来賓の方々が使われるお部屋を、一日だけ貸していただくことになった。
これも、ラインヴァルト殿下の差し金。彼は、遠慮する私に「部屋の準備が整うまで、一日かかる」とおっしゃったのだ。
もちろん、そのときにやっぱり帰るという選択肢はあった。けど、臆病な私はその選択を取ることが出来なかった。
両親が怖い。……その気持ちは、いとも簡単にラインヴァルト殿下に見透かされていた……と、思う。
というわけで、私はすっかりラインヴァルト殿下に絆され、ここにいる……のだ。
「それにしても、本当……これから、どうしよう」
いつまでもラインヴァルト殿下に甘えるわけにはいかない。そもそも、ラインヴァルト殿下と私が結婚できるわけがない。
……いつか、追い出されることを覚悟しなくちゃ。
「追い出されてもいいように、覚悟はしておかなくちゃ……」
そう思ってぎゅっと手を握ったとき。ふと、お部屋の扉がノックされる。
……誰?
そんな風に思って一瞬だけ躊躇う私だったけど、返事をしないという選択肢はなくて。
「は、はい!」
ほんの少し上ずったような声で、扉に向かって声をかけた。
そうすれば、扉が開いて一人の女性が姿を見せる。彼女は茶色の髪をきれいにお団子にしており、その優しそうなたれ目が特徴的。顔立ちからして、私よりも少し年上……だと思う。
そんな彼女は、丈の長い侍女服を身にまとっていた。
「テレジアさま。おはようございます。昨夜は、よく眠れましたでしょうか?」
人懐っこい笑みを浮かべた侍女が、そう問いかけてくる。なので、私はこくんと首を縦に振った。
「え、えぇ、とてもよく……眠れた、わ」
それは間違いない。
半ば無理矢理連れてこられたというのに、爆睡していた私はちょっと情けない。だけど、私が悪いわけじゃないと思う。
……寝台がふかふかなのが、一番の原因なの。えぇ、そう。
「さようでございますか。でしたら、よろしゅうございました」
侍女は私の葛藤にも気が付かずに、笑ってくれる。
「申し遅れましたが、私はミーナと申します。今後、テレジアさまのお世話をさせていただきます」
「……え」
「……聞いておりませんか?」
彼女――ミーナがきょとんとして、そう問いかけてくる。……少し困ってしまって、目を伏せる。
「まぁ、ラインヴァルト殿下のことですから、素で忘れていらっしゃったのでしょう」
「……そ、そう、ですか」
「はい。それに、私になると決まったのは日付が変わる前でしたので」
ミーナはなんてことない風にそう言うが、ラインヴァルト殿下は忘れていたわけではないと思う。
単に、疲れている私を気遣って、夜に訪れなかっただけだと思う。
「まぁ、そこら辺はお気になさらず」
「……はい」
正直気になってしまうが、これ以上深入りすることは出来そうにない。
その一心で、私は静かに頷いた。ミーナは、相変わらずニコニコと笑っている。その笑みは無邪気にも見えるものであり、押されてしまいそうだった。
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