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本編 第3章
迎え
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リベラトーレとヴェルディアナが再会してから、早くも一週間の日が流れた。ヴェルディアナは一刻も早く自分の結論を伝えようと、リベラトーレに手紙を出した。
そして、今日。ヴェルディアナはカザーレ侯爵家の屋敷に向かうことになったのだ。もちろん、住み込みで働くことになっている。
「ヴェルディアナ、いい返事がもらえて、俺はとっても嬉しいですよ」
「……リベラトーレ様」
リベラトーレのきれいな笑みを一瞥し、ヴェルディアナは「……早く、行きましょう」と告げる。
彼が乗ってきたという馬車はとても豪奢なものであり、侯爵家の権力を存分に見せつけていた。こんな下町には到底似合わない代物である。そう思いながら、ヴェルディアナはリベラトーレにエスコートされながら馬車に乗り込む。
馬車の中はとても広く、快適だった。こんな馬車、滅多なことでは乗れないだろうなぁ。そんな悲しい気持ちを抱きながら、ヴェルディアナが馬車の椅子に腰かければ、リベラトーレもすぐそばに座る。その後、御者が扉を閉めるとゆっくりと馬車が走り始めた。
「……ヴェルディアナ」
それから数分ほど経ったとき。不意にリベラトーレの甘ったるい声が、ヴェルディアナの耳に入った。それから、重ねられる手。それに驚いてヴェルディアナが目を見開けば、彼はそのままヴェルディアナの指と自身の指を絡めた。
「……リベラトーレ様」
「好き、ヴェルディアナ。……もっと、触れたい」
しかも、彼はそんな言葉を続けた。その声は胸焼けしてしまいそうなほど甘ったるく、ヴェルディアナは逃げようと身をよじらせる。しかし、そんな抵抗は無駄なものであり、リベラトーレは「口づけ、しましょう」と言ってヴェルディアナの顎を掬うようにつかんだ。
「……嫌、です」
「拒否権なんて、ないんで」
ヴェルディアナの拒否の言葉を聞くこともなく、リベラトーレはヴェルディアナの唇に触れるだけの口づけを施してくる。数回ほど施される、触れるだけの口づけ。その感覚がこそばゆく、必死に逃げようと身体を後ろに倒せば、そのまま椅子に身体を押し倒されてしまう。
「……リベラトーレ、さま?」
その突然の行為に驚き目を瞬かせれば、彼はくすくすと声をあげて笑う。そして、彼の手はヴェルディアナの長い金色の髪を梳いてきた。その触れ方には下心がこもっているようであり、何とか逃げようともう一度身をよじるものの、その抵抗は全く意味をなさない。
「ヴェルディアナ」
馬車はとても豪奢な造りをしているためなのか、揺れは少ない。それでも、椅子に押し倒されているということもあり、些細な揺れがしっかりと身体に伝わってきた。
……どうして、リベラトーレは自分のことを押し倒しているのだろうか。
それに合わせ、その目には情欲がこもっているようであり、ヴェルディアナの心にどうしようもない感情が渦巻く。
「……ここで行為に及んでもいいんですけれど、普通にムードがないですよね。でも、ヴェルディアナに触れたいので、触れます」
それは一体どういうことだ。
そう思いヴェルディアナが口を開こうとすれば、彼はヴェルディアナの唇に自身の唇を押し付けてくる。そのまま舌でヴェルディアナの唇を割り、口内に舌を差し込む。
「んんっ! んぅ……!」
必死にヴェルディアナが抵抗しようとするものの、抵抗する力が身体に入らない。口づけに意識が集中してしまい、身体に上手く力が入らない。そう思って入れば、ヴェルディアナのワンピースの中に……リベラトーレの手が侵入してくる。
「んんっ! んんっ!」
何とかして暴れ、その手を振り払おうとするものの、リベラトーレの手は容赦なくヴェルディアナの身体をまさぐってくる。その手は器用にヴェルディアナの下着をずらし、その豊満な胸に直で触れる。その感覚が恐ろしく、ヴェルディアナは硬直してしまった。
「ヴェルディアナ。ずっと、ずっとこの胸に触れたかった。……きっと、たくさんの男がそう思ったんでしょうね」
ようやく唇を解放され、ヴェルディアナは必死に空気を吸う。しかし、その間にもリベラトーレの手はヴェルディアナの胸を撫でまわしてくる。その感覚は未知のものであり、ヴェルディアナは露骨に身体を震わせてしまった。なのに、リベラトーレの手は止まらない。
「一つだけ質問、いいですか?」
その触れ方に呼吸を乱していれば、彼は不意に真剣な面持ちでそう問いかけてくる。それに静かに頷けば、リベラトーレは唇の端を上げ「処女ですか?」なんて問いかけてきた。
「なっ!」
「ヴェルディアナは処女ですか? それとも、もうほかの男に捧げちゃいましたか?」
そう問いかけられ、ヴェルディアナはそっと視線を逸らす。
ヴェルディアナは正真正銘の処女である。が、それを素直に伝えることは出来なかった。理由など簡単だ。処女であると、バレたくなかった。
「そ、そんなの、関係ない――」
「――関係あるでしょう」
ヴェルディアナの抗議を聞き、リベラトーレは露骨に不機嫌になる。リベラトーレは少し強面なこともあり、不機嫌になるととても迫力がある。それに軽く怯えていれば、彼は「……処女ですか?」ともう一度問いかけてくる。
「……いわ、ない」
「……強情。じゃあ、身体をまさぐってあげます」
首をぶんぶんと横に振るヴェルディアナに対し、リベラトーレはそういう。その後、ヴェルディアナの胸の頂をその指でつまんだ。そして――そのまま、指の腹で刺激し始めた。
そして、今日。ヴェルディアナはカザーレ侯爵家の屋敷に向かうことになったのだ。もちろん、住み込みで働くことになっている。
「ヴェルディアナ、いい返事がもらえて、俺はとっても嬉しいですよ」
「……リベラトーレ様」
リベラトーレのきれいな笑みを一瞥し、ヴェルディアナは「……早く、行きましょう」と告げる。
彼が乗ってきたという馬車はとても豪奢なものであり、侯爵家の権力を存分に見せつけていた。こんな下町には到底似合わない代物である。そう思いながら、ヴェルディアナはリベラトーレにエスコートされながら馬車に乗り込む。
馬車の中はとても広く、快適だった。こんな馬車、滅多なことでは乗れないだろうなぁ。そんな悲しい気持ちを抱きながら、ヴェルディアナが馬車の椅子に腰かければ、リベラトーレもすぐそばに座る。その後、御者が扉を閉めるとゆっくりと馬車が走り始めた。
「……ヴェルディアナ」
それから数分ほど経ったとき。不意にリベラトーレの甘ったるい声が、ヴェルディアナの耳に入った。それから、重ねられる手。それに驚いてヴェルディアナが目を見開けば、彼はそのままヴェルディアナの指と自身の指を絡めた。
「……リベラトーレ様」
「好き、ヴェルディアナ。……もっと、触れたい」
しかも、彼はそんな言葉を続けた。その声は胸焼けしてしまいそうなほど甘ったるく、ヴェルディアナは逃げようと身をよじらせる。しかし、そんな抵抗は無駄なものであり、リベラトーレは「口づけ、しましょう」と言ってヴェルディアナの顎を掬うようにつかんだ。
「……嫌、です」
「拒否権なんて、ないんで」
ヴェルディアナの拒否の言葉を聞くこともなく、リベラトーレはヴェルディアナの唇に触れるだけの口づけを施してくる。数回ほど施される、触れるだけの口づけ。その感覚がこそばゆく、必死に逃げようと身体を後ろに倒せば、そのまま椅子に身体を押し倒されてしまう。
「……リベラトーレ、さま?」
その突然の行為に驚き目を瞬かせれば、彼はくすくすと声をあげて笑う。そして、彼の手はヴェルディアナの長い金色の髪を梳いてきた。その触れ方には下心がこもっているようであり、何とか逃げようともう一度身をよじるものの、その抵抗は全く意味をなさない。
「ヴェルディアナ」
馬車はとても豪奢な造りをしているためなのか、揺れは少ない。それでも、椅子に押し倒されているということもあり、些細な揺れがしっかりと身体に伝わってきた。
……どうして、リベラトーレは自分のことを押し倒しているのだろうか。
それに合わせ、その目には情欲がこもっているようであり、ヴェルディアナの心にどうしようもない感情が渦巻く。
「……ここで行為に及んでもいいんですけれど、普通にムードがないですよね。でも、ヴェルディアナに触れたいので、触れます」
それは一体どういうことだ。
そう思いヴェルディアナが口を開こうとすれば、彼はヴェルディアナの唇に自身の唇を押し付けてくる。そのまま舌でヴェルディアナの唇を割り、口内に舌を差し込む。
「んんっ! んぅ……!」
必死にヴェルディアナが抵抗しようとするものの、抵抗する力が身体に入らない。口づけに意識が集中してしまい、身体に上手く力が入らない。そう思って入れば、ヴェルディアナのワンピースの中に……リベラトーレの手が侵入してくる。
「んんっ! んんっ!」
何とかして暴れ、その手を振り払おうとするものの、リベラトーレの手は容赦なくヴェルディアナの身体をまさぐってくる。その手は器用にヴェルディアナの下着をずらし、その豊満な胸に直で触れる。その感覚が恐ろしく、ヴェルディアナは硬直してしまった。
「ヴェルディアナ。ずっと、ずっとこの胸に触れたかった。……きっと、たくさんの男がそう思ったんでしょうね」
ようやく唇を解放され、ヴェルディアナは必死に空気を吸う。しかし、その間にもリベラトーレの手はヴェルディアナの胸を撫でまわしてくる。その感覚は未知のものであり、ヴェルディアナは露骨に身体を震わせてしまった。なのに、リベラトーレの手は止まらない。
「一つだけ質問、いいですか?」
その触れ方に呼吸を乱していれば、彼は不意に真剣な面持ちでそう問いかけてくる。それに静かに頷けば、リベラトーレは唇の端を上げ「処女ですか?」なんて問いかけてきた。
「なっ!」
「ヴェルディアナは処女ですか? それとも、もうほかの男に捧げちゃいましたか?」
そう問いかけられ、ヴェルディアナはそっと視線を逸らす。
ヴェルディアナは正真正銘の処女である。が、それを素直に伝えることは出来なかった。理由など簡単だ。処女であると、バレたくなかった。
「そ、そんなの、関係ない――」
「――関係あるでしょう」
ヴェルディアナの抗議を聞き、リベラトーレは露骨に不機嫌になる。リベラトーレは少し強面なこともあり、不機嫌になるととても迫力がある。それに軽く怯えていれば、彼は「……処女ですか?」ともう一度問いかけてくる。
「……いわ、ない」
「……強情。じゃあ、身体をまさぐってあげます」
首をぶんぶんと横に振るヴェルディアナに対し、リベラトーレはそういう。その後、ヴェルディアナの胸の頂をその指でつまんだ。そして――そのまま、指の腹で刺激し始めた。
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