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第一章 宿敵の男と政略結婚することになってしまった
自然豊かなウィテカー王国。ここは大陸の中でも広い国土を誇り、周辺諸国の中でも有数の存在感を放つ国である。
東側には大海原が広がり、魚介類をはじめとした豊富な資源に恵まれている。
南側は交通の要所として交易が盛んで、温暖な気候からバカンスに訪れる者も多い。
北側は自然豊かな国というだけあり、美しい自然が広がる静養地として有名だ。
では、西側は?
西側には隣国との国境があり、常日頃からピリピリした空気を醸し出していた。というのも、隣接する国は血気盛んな、世にいう武力国家なのだ。
そのために、ウィテカー王国は国の西側に大きな武力を置いている。
西側を守るふたつの伯爵家。
コナハン伯爵家と、フォレスター伯爵家。
このふたつの家は王国にとって守りの要であり、それぞれ王家からの信頼も厚い。
が、このふたつの家はとことん仲が悪かった。
それこそ、社交の場で顔を合わせてもにらみ合い、会話ひとつしないほどの険悪さ。
コナハン家とフォレスター家は王国にとって大切な存在だ。片方を贔屓にするということは、それすなわちもう片方を敵にまわすということ。歴代の王は触らぬ神に祟りなしとばかりに、ふたつの伯爵家について干渉してこなかった。
だが、二年ほど前に王位を継いだ第十七代目の国王は違った。
コナハン家とフォレスター家を、和解させようとしたのだ。
◇◇◇
「え、政略結婚、ですか?」
その日、フォレスター伯爵である父に執務室に呼び出され、フォレスター家の長女メアリーは怪訝そうな声を上げた。
メアリー・フォレスター、十九歳。
ゆるく波打つ漆黒色の髪、長い睫毛にふちどられた意志の強そうな赤い瞳。その美しい容姿は十九歳とは思えないほど大人びていた。実際、彼女の態度には貫禄がある。
「あぁ、そうだ」
メアリーの父はただでさえ怖い顔をさらにしかめながら、彼女に向き合った。
メアリーはこのフォレスター伯爵家の次世代を担う跡取りだ。今のフォレスター家には娘しかおらず、長女であるメアリーが婿を取って家督を継ぐことになっていた。
そのため、結婚自体はおかしな話ではない。嫌がる理由もない。
けれど、メアリーにはひとつの懸念点がある。
「お言葉ですが、私にはすでに婚約者がおります。わざわざ改まってお話をするということは……彼、エディ様がお相手ではないということでしょう?」
父は難しい顔でうなずいた。
「……そうだ」
エディ・ロウトンはフォレスター伯爵家の分家であるロウトン子爵の令息であり、メアリーの婚約者だ。
気は弱いが、女伯爵として家を盛り立てるメアリーを支えるにはふさわしいと判断された。そのため、約一年前にメアリーはエディと婚約したのだ。
「悪いが、その婚約は解消になる」
「なぜです?」
「王より、政略結婚を命じられたからだ」
はぁと露骨にため息をつきながら、父は執務机の前からソファーに移動し、そこに腰かけた。
その様子を見つめながらも、メアリーは「王命、ですか」と静かに呟く。
「……それも、相手が問題でな」
父が不服そうにひげを撫でる。
この様子は、かなり面倒な相手なのかもしれない。メアリーの直感がそう告げて、思わず表情がこわばった。
「陛下がな、王命として結婚を命じてきた。ここまではいいな?」
その言葉と同時に、侍女が紅茶を運んでくる。
カップを口元に運びながら、メアリーはこくんと首を縦に振った。
貴族である以上、王命は絶対だ。
だがフォレスター家は多大な武力を有し、王家にとって恐れを抱く対象でもある。だからこそ、王家はフォレスター家に対し、ことさらに機嫌をとってきた。王命としてなにか依頼することがあっても、多大な報酬と引き換えであることがほとんどだ。
だから王命とはいえ、そこまでフォレスター家にとって不利益になることがあるとは考えづらい。
それなのに、父はなぜそんなにも思いつめた表情をしているのか。
「まぁ、私とて貴族の娘。王命に背くことがあまり好ましいことではないことくらい、理解があります」
カップをソーサーの上に戻しながらそう答える。
だが、父の表情は相変わらず浮かないものだ。
もしかしたら、相手が問題のある人なのかもしれない。
一瞬だけそんな考えが頭をよぎるが、王家が変な輩をこの家に送りこむとは考えにくい。
「……それで、お相手はどちらさま?」
今度は父に顔を向け、メアリーは凛とした声でたずねた。
そんな娘の態度に覚悟が決まったのか、父はため息をひとつついたのち、声を上げる。
「……コナハン家の人間だ」
「コナハン、家」
その家名を聞いて、メアリーも露骨に顔をしかめた。
コナハン伯爵家。
フォレスター家と同等の権力を持つ家であり……フォレスター家の人間にとって、忌み嫌うべき家だ。
「陛下は、コナハン家と我がフォレスター家の和解をお望みなのだ」
父が震える声でそう告げると、メアリーは内心でため息をついた。
父の声の震えの原因は、決して怯えているからではない。……怒っているからだ。
それくらいメアリーも理解していた。
コナハン家とフォレスター家の因縁がはじまったのは、かれこれ百年以上前だと言われている。
詳しい事情こそ知らされてはいないものの、その敵愾心は子孫たちに代々受け継がれ、現在でもふたつの家はいがみ合っている。
メアリーも当然、父と母が嫌うように幼少期からコナハン家を忌み嫌ってきた。
特に、小さなころよく母が言っていた。
『いい子にしていないと、コナハン家の男に攫われてしまうわよ』
と。
その言葉の真意をメアリーはよくわかっていない。
けれど幼いころからの刷りこみは、メアリーにとってコナハン家を忌まわしき存在と思わせるには十分なものだった。
……まぁ、それとは別に個人的なもうひとつの理由があったりもするのだが。
「そう、ですか」
メアリーは目を伏せ、その真っ赤な瞳を揺らした。
フォレスター家にはもうひとり娘がいる。
名前はフローレンス・フォレスター。メアリーの三つ年下の最愛の妹。
本来ならばコナハン家へ嫁入りするのは跡取りとして育てられたメアリーではなく、次女のフローレンスにその役割がまわるはずである。
だが、それができない事情があるのだ。
メアリーはそれをよく理解していた。
(あの子は身体が弱いもの。コナハン家に行って耐えられるとは思えないわ)
フローレンスは虚弱体質だ。
子どものころから病気がちで、いつも姉のメアリーに頼りきりだった。
そんな彼女がコナハン家のような針の筵で生きていくことなどできるはずがない
だから父はメアリーにこの話をもちかけたのだ。それは容易に想像がつく。
メアリーにとってフローレンスはなによりも誰よりも大切な妹だ。
世の中にはいがみ合う姉妹も多いが、メアリーにとって彼女は可愛くて可愛くて仕方のない妹。
小さなころから自分の後ろをちょこちょことついてくる彼女を、嫌うというほうが無理な話だ。
なにをするにも一緒にいたがる甘えん坊な妹を、メアリーは目に入れても痛くないほどに可愛がっていた。
「それでお父様。……コナハン家のお相手というのは、やはり」
確かめるように言うと、父は言いづらそうに口をもごもごと動かす。
「……長男のシリル様だ」
「やっぱり、ね」
父の言葉に、メアリーはそう呟いた。
シリル・コナハン。
コナハン家の跡取り息子であり、国の西側を守る騎士団の次期団長という将来有望な男性だ。
年齢は二十三歳。
常に自信に満ち溢れ、それにふさわしい実力の持ち主だと周囲からはもてはやされている。
しかし、幼少期から彼と付き合いがあり、いわば幼馴染のような関係のメアリーは知っている。
自信家といえば聞こえはいいが、あれは度が過ぎた傲慢であると。
(昔からいけ好かないのよ、あの人は)
手のひらを握りしめながら、メアリーは心の中でそうこぼした。
メアリーはシリルのことが嫌いだ。それこそ、大嫌いといっても過言ではないほどに。
コナハン家の人間だからというだけではない。
幼馴染として幼少期から付き合い続けたメアリーは、幾度となく彼のあの傲慢な態度に振りまわされてきた。
極めつけに、過去に起きた『とある出来事』。
それがきっかけで、彼に対して決定的な苦手意識も持つようになったのだ。
なので、本音を言えば彼との結婚などまっぴらごめんだった。
しかしフローレンスのことを思うと断るなんて選択肢はない。
(エディ様には悪いけれど……)
そっと目を伏せ、メアリーは噛みしめるように「わかりました」と返事をする。
「私とて貴族の娘。家のために嫁ぐなんてこと、どうということはありませんわ」
メアリーは凛とした声でそう宣言した。
父はそんなメアリーを見つめると、「悪いな」と頭を下げた。
その言葉を聞いて、メアリーは静かに首を横に振る。
「貴族が簡単に頭を下げるものではありません。それを教えてくださったのは、お父様でしょう?」
「……そうだったな」
メアリーのその言葉に、父は少しだけ口元をゆるめた。
貴族とは侮られてはいけない存在だ。
だから、やすやすと他人に謝罪をすることは許されない。
メアリーは次期跡取りとしてそう教育されてきた。
それに、メアリーにも貴族令嬢としての矜持がある。
逃げ出すなんてしたくないし、コナハン家に甘く見られるのも嫌なのだ。
「それではお父様。失礼いたします」
いまだに表情の暗い父にそれだけ告げ、メアリーは父の執務室を出ていった。
が、執務室の扉を閉めると、一気に身体から力が抜けてその場に崩れ落ちる。
(私があの人と結婚? 冗談じゃないわ!)
父の前では凛とした令嬢を演じた。
だが、ひとりになってその仮面を外せば、言いたいことは叫びだしたいほどにある。
(あんな人、大嫌いよ。小さいころにさんざん嫌がらせをされたじゃない)
今思えば、それは子どもの悪戯のようなものだった。命の危険があったわけでもない。
だが、メアリーにとっては許しがたいことばかりだ。
蛇を投げつけられたときには、さすがのメアリーも泣き出してしまった。
(それに……あのときのことも、あるし)
そう思い、メアリーはそっと目を閉じる。あれは忌々しい記憶。
今から三年ほど前のことだ――……
◇◇◇
当時のメアリーは西部を守る騎士団に女騎士として所属していた。
フォレスター家の跡取り娘なのだから……と、父に勧められた結果、一時的に騎士団に所属することになったのだ。
王都の騎士団も西部の騎士団も、女性の所属率は一割以下。つまり、完全な男社会。
メアリーはそこで舐められないよう気丈にふるまっていた。
「……はぁ」
しかし、やはりままならないことはある。
女だからと舐められ、領主の娘だからと対等に扱ってもらえない。
それは、メアリーの心に暗い影を落としていた。
さらにメアリーの心をかき乱すのが――シリルの存在だった。
「いやぁ、それにしてもシリル様は強いよなぁ」
「あぁ。あんな方が次期団長だなんて頼もしいかぎりだ」
騎士たちはシリルのことを口々に褒めたたえる。メアリーと接するときは一線を引く騎士たちも、シリルのことは手放しで賞賛するのだ。
それが気に食わず、メアリーはいつもシリルに突っかかったものだ。
「その傲慢な態度、少しは改めたらどうなの?」
ある日はそう言ってシリルに突っかかった。
「あなたの言うことは正しいかもしれないけど、それにしたって言い方があるでしょう!」
女性の部下がシリルに叱責されたときはそう言って、涙を流す部下を庇って立ち向かった。
が、シリルは相手にもしようともしなかった。
ただ。
「傲慢なつもりはない。実力に見合った態度でいるだけだ」
やら。
「戦場ではちょっとした油断が命取りだ。庇い合いならよそでやれ」
などと言われた。
メアリーだって、自身の行いがいわば言いがかりだと理解していた。けれど、どうしてもシリルに勝ちたかった。彼の上に、立ちたかった。
今思えばあのころのメアリーは幼かった。幼いころから彼に見下され続けたために、彼を見返してやろうと必死だったのだ。
でも、さすがに堪えるときもあって。
その日、メアリーはひとりでうなだれていた。
他の騎士が、自分とシリルを比べるのを聞いてしまったためだ。
彼らはメアリーよりもシリルのほうがずっと優秀で有能だと言っていた。
それくらいで傷つくような柔らかい心など、とうに捨て去った。そう、思っていたのに――無性に苦しくなった。
(私だって、本当はわかってるわ……)
自分が騎士に向いていないことも。
シリルのほうが騎士としてずっと優秀だということも。
彼の言葉が正論であるということも。
全部、全部わかっていた。
なのに、やめられなかった。
ここでやめたら逃げ出したと思われる。それが嫌で、ただ気丈にふるまっていた。
「……私、なんなのかしら」
宿舎の庭で木にもたれかかって、ぽつりとこぼす。
もしも男に生まれていたら、なにか違ったのかも――なんて益体もないことを思うほどに、この日のメアリーは落ちこんでいた。
そう物思いにふけっていたせいで、いつもならば気がつく忌々しい足音にメアリーは気がつかなかった。
「……メアリー?」
不意に名前を呼ばれて、ハッとする。
声のほうに視線を向けると、そこには騎士団の制服に身を包んだシリルがいた。
彼は今日、パトロールの当番だったはずなのに、なぜここに――そんなことを思って視線を泳がせていると、彼は「パトロールなら終わった」と言いながらメアリーのそばに近づいてきた。
「……泣いてたのか?」
シリルに指摘され、メアリーははじめて自分が泣いていることに気がついた。
けれど、それを認めたくなくて。メアリーは差し出された手を思いきり振り払う。
「ば、ばかっ! そんなわけ、ないじゃない……!」
強がりだった。
実際は泣いていたし、落ちこんでもいた。
だけど、目の前のこの男にだけは知られたくない。
憎むべきコナハン家の男には――……
(それって本当に私の感情なの?)
ふと、そう思った。
自分はシリルのことを嫌っている。幼少期にされた数々の意地悪がそのきっかけだ。
だが、そもそも家の人間に「コナハン家は我がフォレスター家とはいがみ合う仲だ」と言われ続けたから、嫌わなければいけないと思わされている――のではないだろうか?
そう思い、シリルの目を真っ直ぐに見つめる。
すると、彼の顔がおもむろに近づいてきた。
「――っ!」
目元になにかぬるりとしたものが触れる。
その瞬間、メアリーは彼に舐められたのだと理解した。
「なっ!」
思わず大きな声を上げ、後ろに飛びのく。しかし、シリルは面白そうに笑うだけだ。
その態度が――ひどくメアリーの心を揺らした。
この男はメアリーの涙を舐めとったのだ。
泣いているのを馬鹿にしようとした、そうに違いない。
「泣くなよ。……まぁ、お前じゃ俺には勝てないしな」
普段のメアリーなら、気丈に言い返していただろう。
けれど文字通り舐められたという衝撃から、なにも言えずその場に立ち尽くす。
「……けど、まぁ、その……なんだ。別に、騎士になんてならなくたって、ほら。女なんだから結婚するって道もあるだろう。なんだったら……俺が、その」
シリルがなにかぼそぼそ呟いている。
だが、メアリーにそれを気にする余裕はない。
(け……っ!? ……な、な、なっ!)
――なんなの、こいつ!
その出来事をきっかけに、メアリーはシリルへの苦手意識を、いや嫌悪感を強めたのだ。
弱いところを見られた、唯一の相手。
それから、屈辱的なかたちでからかわれたこと。
それはメアリーの記憶の中でも最も苦々しいものとなり、いつの間にか家のことは関係なく、彼を大嫌いな存在だと思うようになったのだ。
◇◇◇
(あのことがあるから余計に……あの人との結婚なんて、嫌!)
内心でそう思いつつ、メアリーはぎゅっと手を握りしめた。
(私はやすやすとは組み伏せられたりしないわ)
そんな決意も固める。
貴族の妻は夫に従わなければならない。それは一般常識だ。
メアリーだって結婚相手がシリルではなくエディなら、彼をそれとなく立てようと思っていた。
しかし、相手はシリルに代わってしまった。従う気もなければ、彼に組み伏せられる気もない。そんなことになれば、一生の屈辱に値する。
(どうせだし、逆にあの人を手のひらの上で転がせばいいのよ。コナハン家を乗っ取ってやるんだから)
そうだ。この結婚はメアリーがシリルを見返す最大のチャンスでもある。
そう考えた瞬間、メアリーの口元がゆるんだ。
「挙式の日程が決まったら、準備をしなくちゃね」
王が直々に結婚を命じたということは、日程も通常より早くなるはずだ。
西部一の教会で、豪華なウェディングドレスを身にまとう。さぞかし華やかなことだろう。
問題はやはり――隣に並ぶ相手だ。
メアリーは「はぁ」とため息をついた。
それからの日々はメアリーの予想通りというべきか、とんとん拍子に事が進んだ。
コナハン家も、国王直々の命令に逆らうことは得策ではないと判断したのだろう。フォレスター家との結婚話を早々に受け入れた。
そして、メアリーが結婚の話を聞いてから約三カ月。
ウィテカー王国の西部にある中でも最も高貴な教会にて、メアリーとシリルは永遠の愛を誓うことになったのだ。
「……はぁ」
本日幾度目になるかわからないため息をつき、メアリーは花嫁の控室から窓の外を見つめた。
空は晴れ渡り、花々が咲き誇っている。
季節は春。温かな日差しが差しこむ部屋の空気は快適そのもの。
しかし、メアリーの心の中は絶対零度だ。
メアリーのそばでは母であるフォレスター伯爵夫人が、目元をハンカチで拭っている。
先ほどから、涙が溢れて止まらないのだ。
それは娘の結婚が嬉しくて流す涙ではない。悔しいからこそ流す涙だ。
メアリーの母アンネ・フォレスターは、フォレスター家の分家である男爵家の娘だった。
幼少期からメアリーの父を心底慕っていたアンネは無事妻の座を射止め、メアリーとフローレンスというふたりの娘をもうけた。
フォレスター家の分家の生まれということもあり、アンネもたいそうコナハン家を嫌っている。
彼女は大切な娘がコナハン家に嫁ぐことを心底悲しんでいるのだ。
「あぁ、メアリー。私の可愛いメアリー。どうしてこんなことに……」
昨日の夜から泣きじゃくる母に苦笑しながら「大丈夫ですよ、お母様」と声をかけることしかメアリーにはできない。
実際は少しも大丈夫ではない。
心の中は絶対零度だし、頭の中は怒りでふつふつと沸騰している。
だが人間とは、自分よりも慌てたり悲しんだりしている人を見ると、自然と冷静になる生き物らしい。まったく不思議な仕組みである。
(お父様は昨日からお酒ばかりだし、挙式というよりもはや葬式ね)
メアリーはまたこっそりため息をつく。
おおかたコナハン家も同じような状況だろうが、それを知る術はない。挙式のあとは披露宴が開かれる予定だが、それも早々に解散になるだろう。
自然豊かなウィテカー王国。ここは大陸の中でも広い国土を誇り、周辺諸国の中でも有数の存在感を放つ国である。
東側には大海原が広がり、魚介類をはじめとした豊富な資源に恵まれている。
南側は交通の要所として交易が盛んで、温暖な気候からバカンスに訪れる者も多い。
北側は自然豊かな国というだけあり、美しい自然が広がる静養地として有名だ。
では、西側は?
西側には隣国との国境があり、常日頃からピリピリした空気を醸し出していた。というのも、隣接する国は血気盛んな、世にいう武力国家なのだ。
そのために、ウィテカー王国は国の西側に大きな武力を置いている。
西側を守るふたつの伯爵家。
コナハン伯爵家と、フォレスター伯爵家。
このふたつの家は王国にとって守りの要であり、それぞれ王家からの信頼も厚い。
が、このふたつの家はとことん仲が悪かった。
それこそ、社交の場で顔を合わせてもにらみ合い、会話ひとつしないほどの険悪さ。
コナハン家とフォレスター家は王国にとって大切な存在だ。片方を贔屓にするということは、それすなわちもう片方を敵にまわすということ。歴代の王は触らぬ神に祟りなしとばかりに、ふたつの伯爵家について干渉してこなかった。
だが、二年ほど前に王位を継いだ第十七代目の国王は違った。
コナハン家とフォレスター家を、和解させようとしたのだ。
◇◇◇
「え、政略結婚、ですか?」
その日、フォレスター伯爵である父に執務室に呼び出され、フォレスター家の長女メアリーは怪訝そうな声を上げた。
メアリー・フォレスター、十九歳。
ゆるく波打つ漆黒色の髪、長い睫毛にふちどられた意志の強そうな赤い瞳。その美しい容姿は十九歳とは思えないほど大人びていた。実際、彼女の態度には貫禄がある。
「あぁ、そうだ」
メアリーの父はただでさえ怖い顔をさらにしかめながら、彼女に向き合った。
メアリーはこのフォレスター伯爵家の次世代を担う跡取りだ。今のフォレスター家には娘しかおらず、長女であるメアリーが婿を取って家督を継ぐことになっていた。
そのため、結婚自体はおかしな話ではない。嫌がる理由もない。
けれど、メアリーにはひとつの懸念点がある。
「お言葉ですが、私にはすでに婚約者がおります。わざわざ改まってお話をするということは……彼、エディ様がお相手ではないということでしょう?」
父は難しい顔でうなずいた。
「……そうだ」
エディ・ロウトンはフォレスター伯爵家の分家であるロウトン子爵の令息であり、メアリーの婚約者だ。
気は弱いが、女伯爵として家を盛り立てるメアリーを支えるにはふさわしいと判断された。そのため、約一年前にメアリーはエディと婚約したのだ。
「悪いが、その婚約は解消になる」
「なぜです?」
「王より、政略結婚を命じられたからだ」
はぁと露骨にため息をつきながら、父は執務机の前からソファーに移動し、そこに腰かけた。
その様子を見つめながらも、メアリーは「王命、ですか」と静かに呟く。
「……それも、相手が問題でな」
父が不服そうにひげを撫でる。
この様子は、かなり面倒な相手なのかもしれない。メアリーの直感がそう告げて、思わず表情がこわばった。
「陛下がな、王命として結婚を命じてきた。ここまではいいな?」
その言葉と同時に、侍女が紅茶を運んでくる。
カップを口元に運びながら、メアリーはこくんと首を縦に振った。
貴族である以上、王命は絶対だ。
だがフォレスター家は多大な武力を有し、王家にとって恐れを抱く対象でもある。だからこそ、王家はフォレスター家に対し、ことさらに機嫌をとってきた。王命としてなにか依頼することがあっても、多大な報酬と引き換えであることがほとんどだ。
だから王命とはいえ、そこまでフォレスター家にとって不利益になることがあるとは考えづらい。
それなのに、父はなぜそんなにも思いつめた表情をしているのか。
「まぁ、私とて貴族の娘。王命に背くことがあまり好ましいことではないことくらい、理解があります」
カップをソーサーの上に戻しながらそう答える。
だが、父の表情は相変わらず浮かないものだ。
もしかしたら、相手が問題のある人なのかもしれない。
一瞬だけそんな考えが頭をよぎるが、王家が変な輩をこの家に送りこむとは考えにくい。
「……それで、お相手はどちらさま?」
今度は父に顔を向け、メアリーは凛とした声でたずねた。
そんな娘の態度に覚悟が決まったのか、父はため息をひとつついたのち、声を上げる。
「……コナハン家の人間だ」
「コナハン、家」
その家名を聞いて、メアリーも露骨に顔をしかめた。
コナハン伯爵家。
フォレスター家と同等の権力を持つ家であり……フォレスター家の人間にとって、忌み嫌うべき家だ。
「陛下は、コナハン家と我がフォレスター家の和解をお望みなのだ」
父が震える声でそう告げると、メアリーは内心でため息をついた。
父の声の震えの原因は、決して怯えているからではない。……怒っているからだ。
それくらいメアリーも理解していた。
コナハン家とフォレスター家の因縁がはじまったのは、かれこれ百年以上前だと言われている。
詳しい事情こそ知らされてはいないものの、その敵愾心は子孫たちに代々受け継がれ、現在でもふたつの家はいがみ合っている。
メアリーも当然、父と母が嫌うように幼少期からコナハン家を忌み嫌ってきた。
特に、小さなころよく母が言っていた。
『いい子にしていないと、コナハン家の男に攫われてしまうわよ』
と。
その言葉の真意をメアリーはよくわかっていない。
けれど幼いころからの刷りこみは、メアリーにとってコナハン家を忌まわしき存在と思わせるには十分なものだった。
……まぁ、それとは別に個人的なもうひとつの理由があったりもするのだが。
「そう、ですか」
メアリーは目を伏せ、その真っ赤な瞳を揺らした。
フォレスター家にはもうひとり娘がいる。
名前はフローレンス・フォレスター。メアリーの三つ年下の最愛の妹。
本来ならばコナハン家へ嫁入りするのは跡取りとして育てられたメアリーではなく、次女のフローレンスにその役割がまわるはずである。
だが、それができない事情があるのだ。
メアリーはそれをよく理解していた。
(あの子は身体が弱いもの。コナハン家に行って耐えられるとは思えないわ)
フローレンスは虚弱体質だ。
子どものころから病気がちで、いつも姉のメアリーに頼りきりだった。
そんな彼女がコナハン家のような針の筵で生きていくことなどできるはずがない
だから父はメアリーにこの話をもちかけたのだ。それは容易に想像がつく。
メアリーにとってフローレンスはなによりも誰よりも大切な妹だ。
世の中にはいがみ合う姉妹も多いが、メアリーにとって彼女は可愛くて可愛くて仕方のない妹。
小さなころから自分の後ろをちょこちょことついてくる彼女を、嫌うというほうが無理な話だ。
なにをするにも一緒にいたがる甘えん坊な妹を、メアリーは目に入れても痛くないほどに可愛がっていた。
「それでお父様。……コナハン家のお相手というのは、やはり」
確かめるように言うと、父は言いづらそうに口をもごもごと動かす。
「……長男のシリル様だ」
「やっぱり、ね」
父の言葉に、メアリーはそう呟いた。
シリル・コナハン。
コナハン家の跡取り息子であり、国の西側を守る騎士団の次期団長という将来有望な男性だ。
年齢は二十三歳。
常に自信に満ち溢れ、それにふさわしい実力の持ち主だと周囲からはもてはやされている。
しかし、幼少期から彼と付き合いがあり、いわば幼馴染のような関係のメアリーは知っている。
自信家といえば聞こえはいいが、あれは度が過ぎた傲慢であると。
(昔からいけ好かないのよ、あの人は)
手のひらを握りしめながら、メアリーは心の中でそうこぼした。
メアリーはシリルのことが嫌いだ。それこそ、大嫌いといっても過言ではないほどに。
コナハン家の人間だからというだけではない。
幼馴染として幼少期から付き合い続けたメアリーは、幾度となく彼のあの傲慢な態度に振りまわされてきた。
極めつけに、過去に起きた『とある出来事』。
それがきっかけで、彼に対して決定的な苦手意識も持つようになったのだ。
なので、本音を言えば彼との結婚などまっぴらごめんだった。
しかしフローレンスのことを思うと断るなんて選択肢はない。
(エディ様には悪いけれど……)
そっと目を伏せ、メアリーは噛みしめるように「わかりました」と返事をする。
「私とて貴族の娘。家のために嫁ぐなんてこと、どうということはありませんわ」
メアリーは凛とした声でそう宣言した。
父はそんなメアリーを見つめると、「悪いな」と頭を下げた。
その言葉を聞いて、メアリーは静かに首を横に振る。
「貴族が簡単に頭を下げるものではありません。それを教えてくださったのは、お父様でしょう?」
「……そうだったな」
メアリーのその言葉に、父は少しだけ口元をゆるめた。
貴族とは侮られてはいけない存在だ。
だから、やすやすと他人に謝罪をすることは許されない。
メアリーは次期跡取りとしてそう教育されてきた。
それに、メアリーにも貴族令嬢としての矜持がある。
逃げ出すなんてしたくないし、コナハン家に甘く見られるのも嫌なのだ。
「それではお父様。失礼いたします」
いまだに表情の暗い父にそれだけ告げ、メアリーは父の執務室を出ていった。
が、執務室の扉を閉めると、一気に身体から力が抜けてその場に崩れ落ちる。
(私があの人と結婚? 冗談じゃないわ!)
父の前では凛とした令嬢を演じた。
だが、ひとりになってその仮面を外せば、言いたいことは叫びだしたいほどにある。
(あんな人、大嫌いよ。小さいころにさんざん嫌がらせをされたじゃない)
今思えば、それは子どもの悪戯のようなものだった。命の危険があったわけでもない。
だが、メアリーにとっては許しがたいことばかりだ。
蛇を投げつけられたときには、さすがのメアリーも泣き出してしまった。
(それに……あのときのことも、あるし)
そう思い、メアリーはそっと目を閉じる。あれは忌々しい記憶。
今から三年ほど前のことだ――……
◇◇◇
当時のメアリーは西部を守る騎士団に女騎士として所属していた。
フォレスター家の跡取り娘なのだから……と、父に勧められた結果、一時的に騎士団に所属することになったのだ。
王都の騎士団も西部の騎士団も、女性の所属率は一割以下。つまり、完全な男社会。
メアリーはそこで舐められないよう気丈にふるまっていた。
「……はぁ」
しかし、やはりままならないことはある。
女だからと舐められ、領主の娘だからと対等に扱ってもらえない。
それは、メアリーの心に暗い影を落としていた。
さらにメアリーの心をかき乱すのが――シリルの存在だった。
「いやぁ、それにしてもシリル様は強いよなぁ」
「あぁ。あんな方が次期団長だなんて頼もしいかぎりだ」
騎士たちはシリルのことを口々に褒めたたえる。メアリーと接するときは一線を引く騎士たちも、シリルのことは手放しで賞賛するのだ。
それが気に食わず、メアリーはいつもシリルに突っかかったものだ。
「その傲慢な態度、少しは改めたらどうなの?」
ある日はそう言ってシリルに突っかかった。
「あなたの言うことは正しいかもしれないけど、それにしたって言い方があるでしょう!」
女性の部下がシリルに叱責されたときはそう言って、涙を流す部下を庇って立ち向かった。
が、シリルは相手にもしようともしなかった。
ただ。
「傲慢なつもりはない。実力に見合った態度でいるだけだ」
やら。
「戦場ではちょっとした油断が命取りだ。庇い合いならよそでやれ」
などと言われた。
メアリーだって、自身の行いがいわば言いがかりだと理解していた。けれど、どうしてもシリルに勝ちたかった。彼の上に、立ちたかった。
今思えばあのころのメアリーは幼かった。幼いころから彼に見下され続けたために、彼を見返してやろうと必死だったのだ。
でも、さすがに堪えるときもあって。
その日、メアリーはひとりでうなだれていた。
他の騎士が、自分とシリルを比べるのを聞いてしまったためだ。
彼らはメアリーよりもシリルのほうがずっと優秀で有能だと言っていた。
それくらいで傷つくような柔らかい心など、とうに捨て去った。そう、思っていたのに――無性に苦しくなった。
(私だって、本当はわかってるわ……)
自分が騎士に向いていないことも。
シリルのほうが騎士としてずっと優秀だということも。
彼の言葉が正論であるということも。
全部、全部わかっていた。
なのに、やめられなかった。
ここでやめたら逃げ出したと思われる。それが嫌で、ただ気丈にふるまっていた。
「……私、なんなのかしら」
宿舎の庭で木にもたれかかって、ぽつりとこぼす。
もしも男に生まれていたら、なにか違ったのかも――なんて益体もないことを思うほどに、この日のメアリーは落ちこんでいた。
そう物思いにふけっていたせいで、いつもならば気がつく忌々しい足音にメアリーは気がつかなかった。
「……メアリー?」
不意に名前を呼ばれて、ハッとする。
声のほうに視線を向けると、そこには騎士団の制服に身を包んだシリルがいた。
彼は今日、パトロールの当番だったはずなのに、なぜここに――そんなことを思って視線を泳がせていると、彼は「パトロールなら終わった」と言いながらメアリーのそばに近づいてきた。
「……泣いてたのか?」
シリルに指摘され、メアリーははじめて自分が泣いていることに気がついた。
けれど、それを認めたくなくて。メアリーは差し出された手を思いきり振り払う。
「ば、ばかっ! そんなわけ、ないじゃない……!」
強がりだった。
実際は泣いていたし、落ちこんでもいた。
だけど、目の前のこの男にだけは知られたくない。
憎むべきコナハン家の男には――……
(それって本当に私の感情なの?)
ふと、そう思った。
自分はシリルのことを嫌っている。幼少期にされた数々の意地悪がそのきっかけだ。
だが、そもそも家の人間に「コナハン家は我がフォレスター家とはいがみ合う仲だ」と言われ続けたから、嫌わなければいけないと思わされている――のではないだろうか?
そう思い、シリルの目を真っ直ぐに見つめる。
すると、彼の顔がおもむろに近づいてきた。
「――っ!」
目元になにかぬるりとしたものが触れる。
その瞬間、メアリーは彼に舐められたのだと理解した。
「なっ!」
思わず大きな声を上げ、後ろに飛びのく。しかし、シリルは面白そうに笑うだけだ。
その態度が――ひどくメアリーの心を揺らした。
この男はメアリーの涙を舐めとったのだ。
泣いているのを馬鹿にしようとした、そうに違いない。
「泣くなよ。……まぁ、お前じゃ俺には勝てないしな」
普段のメアリーなら、気丈に言い返していただろう。
けれど文字通り舐められたという衝撃から、なにも言えずその場に立ち尽くす。
「……けど、まぁ、その……なんだ。別に、騎士になんてならなくたって、ほら。女なんだから結婚するって道もあるだろう。なんだったら……俺が、その」
シリルがなにかぼそぼそ呟いている。
だが、メアリーにそれを気にする余裕はない。
(け……っ!? ……な、な、なっ!)
――なんなの、こいつ!
その出来事をきっかけに、メアリーはシリルへの苦手意識を、いや嫌悪感を強めたのだ。
弱いところを見られた、唯一の相手。
それから、屈辱的なかたちでからかわれたこと。
それはメアリーの記憶の中でも最も苦々しいものとなり、いつの間にか家のことは関係なく、彼を大嫌いな存在だと思うようになったのだ。
◇◇◇
(あのことがあるから余計に……あの人との結婚なんて、嫌!)
内心でそう思いつつ、メアリーはぎゅっと手を握りしめた。
(私はやすやすとは組み伏せられたりしないわ)
そんな決意も固める。
貴族の妻は夫に従わなければならない。それは一般常識だ。
メアリーだって結婚相手がシリルではなくエディなら、彼をそれとなく立てようと思っていた。
しかし、相手はシリルに代わってしまった。従う気もなければ、彼に組み伏せられる気もない。そんなことになれば、一生の屈辱に値する。
(どうせだし、逆にあの人を手のひらの上で転がせばいいのよ。コナハン家を乗っ取ってやるんだから)
そうだ。この結婚はメアリーがシリルを見返す最大のチャンスでもある。
そう考えた瞬間、メアリーの口元がゆるんだ。
「挙式の日程が決まったら、準備をしなくちゃね」
王が直々に結婚を命じたということは、日程も通常より早くなるはずだ。
西部一の教会で、豪華なウェディングドレスを身にまとう。さぞかし華やかなことだろう。
問題はやはり――隣に並ぶ相手だ。
メアリーは「はぁ」とため息をついた。
それからの日々はメアリーの予想通りというべきか、とんとん拍子に事が進んだ。
コナハン家も、国王直々の命令に逆らうことは得策ではないと判断したのだろう。フォレスター家との結婚話を早々に受け入れた。
そして、メアリーが結婚の話を聞いてから約三カ月。
ウィテカー王国の西部にある中でも最も高貴な教会にて、メアリーとシリルは永遠の愛を誓うことになったのだ。
「……はぁ」
本日幾度目になるかわからないため息をつき、メアリーは花嫁の控室から窓の外を見つめた。
空は晴れ渡り、花々が咲き誇っている。
季節は春。温かな日差しが差しこむ部屋の空気は快適そのもの。
しかし、メアリーの心の中は絶対零度だ。
メアリーのそばでは母であるフォレスター伯爵夫人が、目元をハンカチで拭っている。
先ほどから、涙が溢れて止まらないのだ。
それは娘の結婚が嬉しくて流す涙ではない。悔しいからこそ流す涙だ。
メアリーの母アンネ・フォレスターは、フォレスター家の分家である男爵家の娘だった。
幼少期からメアリーの父を心底慕っていたアンネは無事妻の座を射止め、メアリーとフローレンスというふたりの娘をもうけた。
フォレスター家の分家の生まれということもあり、アンネもたいそうコナハン家を嫌っている。
彼女は大切な娘がコナハン家に嫁ぐことを心底悲しんでいるのだ。
「あぁ、メアリー。私の可愛いメアリー。どうしてこんなことに……」
昨日の夜から泣きじゃくる母に苦笑しながら「大丈夫ですよ、お母様」と声をかけることしかメアリーにはできない。
実際は少しも大丈夫ではない。
心の中は絶対零度だし、頭の中は怒りでふつふつと沸騰している。
だが人間とは、自分よりも慌てたり悲しんだりしている人を見ると、自然と冷静になる生き物らしい。まったく不思議な仕組みである。
(お父様は昨日からお酒ばかりだし、挙式というよりもはや葬式ね)
メアリーはまたこっそりため息をつく。
おおかたコナハン家も同じような状況だろうが、それを知る術はない。挙式のあとは披露宴が開かれる予定だが、それも早々に解散になるだろう。
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