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第2章
合同任務 2
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アリスがそう言おうと口を開けば、クリスタがびしっと指を指してくる。人を指さすのは行儀の悪いことだとわかっているが、アリスに指摘する元気はなかった。
「あぁ、もうっ! アリスはくよくよしすぎ! ネガティブだわ!」
クリスタがわざとらしく大きな声でそう言うから、自然と肩が跳ねてしまった。
そんなアリスを見つめて、クリスタはにんまりと唇の端を上げる。
「あなた、自分が思う以上に素晴らしい能力の持ち主だって、わかっているの?」
さも当然のようにクリスタがそう告げてくる。……素晴らしい能力の持ち主。
(それは、団長からも言われたけれど……)
パトリス曰く、アリスの魔力は割と特殊なものらしい。だからこそ、自分が無理強いをしてこちらに引き抜いたのだと、パトリスは言っていた。初めはそれを信じられなかったが、パトリスが嘘を言うとは思えない。そのため、信じるほかなかった。
「そう、それすなわち――あなたが選ばれる可能性も、十分あるということよ!」
胸を張ったクリスタが、そんな宣言をした。その様子を見て、アリスは身を縮めた。クリスタの言葉が信じられないわけじゃない。ただ、やっぱり恐れ多いと思ってしまうのだ。
「で、でも、私なんか……」
ゆるゆると首を横に振ってそう言うと、クリスタがずかずかとこちらに近づいてくる。そして、アリスの肩をぐっと掴んだ。
「いい? あなたには才能がある。合わせ、容姿も愛らしい。家柄だって、伯爵家なんでしょう?」
「……そ、それは」
「ブレント様と結婚できないわけじゃ、ないじゃない」
……侯爵家と伯爵家。身分的な問題で結婚できないわけではない、のだが。
(け、け、結婚!?)
その言葉に、自然と頬に熱が溜まった。顔から火が出そうなほどに、恥ずかしくてたまらない。
「わ、私、そういうつもりじゃあ……」
「じゃあ、ブレント様がほかの女性を娶ってもいいと思ってるの?」
「……うぅ」
それは、間違いなく嫌だ。ブレントの隣に自分じゃないほかの女性が並ぶなんて、想像しただけで胸が張り裂けそうなほどに辛い。
だけど、アリスにこの気持ちを伝える勇気はない。そもそも、ブレントだってアリスのことなどもう忘れてしまっているだろう。
「あのね、アリス。……幸せって、自分で引き寄せないといけないのよ」
「……クリスタ」
「あなたは確かに臆病で人見知りで、あがり症かもしれない。けれど、それ以上に魅力的なのよ」
まるで、小さな子供に言い聞かせるかのような言葉遣いだった。そう、まるで、姉が妹に言い聞かせるような――。
(……お姉様)
ふと、姉のことが頭の中に浮かんだ。アリスのことをずっと気にかけてくれて、豪快に笑い飛ばしてくれた姉。
……姉は、いつも言ってくれていた。
――アリスのことをわかってくれる人が、現れるわ、と。
(それが、ブレント様なのかはわからない。だけど、私……ブレント様のこと、あきらめたくない)
こんな感情になったのは、生まれて初めてだった。たった二度、助けてもらっただけで惚れてしまった。
彼の美しい顔にも、その心地いい低音の声にも。そう、それに――彼の仕事熱心なところも、部下思いなところも。全部、全部――好ましく映ってしまう。
「私はあなたのことを応援しているわ。もしも誰かに文句を言われたら、私に言いなさい。叩きのめしてあげるわ」
「……そ、れは」
なんだか、ちょっと大げさかもしれない。
でも、なんだか心の中のもやもやが晴れたような気がした。
「……ありがとう、クリスタ」
自然と、口がそう言葉を発する。クリスタは、アリスの言葉を聞いて笑っていた。
「ないだろうけれど、もしも選ばれたら……私、ブレント様と少しでも近づけるように、頑張るわ」
今までずっと、臆病すぎるあまり、あきらめるほかなかった。怖くて、恐ろしくて。だけど、ブレントのことだけは……譲りたくないと、思ってしまう。
「えぇ、その意気よ、アリス。……さぁて、そろそろ食堂に行かない? お腹すいちゃったわ」
「……そうね」
突然変わった話題に苦笑を浮かべつつ、アリスは立ち上がる。少し休憩すれば、身体はある程度動くようになっていた。
「あぁ、もうっ! アリスはくよくよしすぎ! ネガティブだわ!」
クリスタがわざとらしく大きな声でそう言うから、自然と肩が跳ねてしまった。
そんなアリスを見つめて、クリスタはにんまりと唇の端を上げる。
「あなた、自分が思う以上に素晴らしい能力の持ち主だって、わかっているの?」
さも当然のようにクリスタがそう告げてくる。……素晴らしい能力の持ち主。
(それは、団長からも言われたけれど……)
パトリス曰く、アリスの魔力は割と特殊なものらしい。だからこそ、自分が無理強いをしてこちらに引き抜いたのだと、パトリスは言っていた。初めはそれを信じられなかったが、パトリスが嘘を言うとは思えない。そのため、信じるほかなかった。
「そう、それすなわち――あなたが選ばれる可能性も、十分あるということよ!」
胸を張ったクリスタが、そんな宣言をした。その様子を見て、アリスは身を縮めた。クリスタの言葉が信じられないわけじゃない。ただ、やっぱり恐れ多いと思ってしまうのだ。
「で、でも、私なんか……」
ゆるゆると首を横に振ってそう言うと、クリスタがずかずかとこちらに近づいてくる。そして、アリスの肩をぐっと掴んだ。
「いい? あなたには才能がある。合わせ、容姿も愛らしい。家柄だって、伯爵家なんでしょう?」
「……そ、それは」
「ブレント様と結婚できないわけじゃ、ないじゃない」
……侯爵家と伯爵家。身分的な問題で結婚できないわけではない、のだが。
(け、け、結婚!?)
その言葉に、自然と頬に熱が溜まった。顔から火が出そうなほどに、恥ずかしくてたまらない。
「わ、私、そういうつもりじゃあ……」
「じゃあ、ブレント様がほかの女性を娶ってもいいと思ってるの?」
「……うぅ」
それは、間違いなく嫌だ。ブレントの隣に自分じゃないほかの女性が並ぶなんて、想像しただけで胸が張り裂けそうなほどに辛い。
だけど、アリスにこの気持ちを伝える勇気はない。そもそも、ブレントだってアリスのことなどもう忘れてしまっているだろう。
「あのね、アリス。……幸せって、自分で引き寄せないといけないのよ」
「……クリスタ」
「あなたは確かに臆病で人見知りで、あがり症かもしれない。けれど、それ以上に魅力的なのよ」
まるで、小さな子供に言い聞かせるかのような言葉遣いだった。そう、まるで、姉が妹に言い聞かせるような――。
(……お姉様)
ふと、姉のことが頭の中に浮かんだ。アリスのことをずっと気にかけてくれて、豪快に笑い飛ばしてくれた姉。
……姉は、いつも言ってくれていた。
――アリスのことをわかってくれる人が、現れるわ、と。
(それが、ブレント様なのかはわからない。だけど、私……ブレント様のこと、あきらめたくない)
こんな感情になったのは、生まれて初めてだった。たった二度、助けてもらっただけで惚れてしまった。
彼の美しい顔にも、その心地いい低音の声にも。そう、それに――彼の仕事熱心なところも、部下思いなところも。全部、全部――好ましく映ってしまう。
「私はあなたのことを応援しているわ。もしも誰かに文句を言われたら、私に言いなさい。叩きのめしてあげるわ」
「……そ、れは」
なんだか、ちょっと大げさかもしれない。
でも、なんだか心の中のもやもやが晴れたような気がした。
「……ありがとう、クリスタ」
自然と、口がそう言葉を発する。クリスタは、アリスの言葉を聞いて笑っていた。
「ないだろうけれど、もしも選ばれたら……私、ブレント様と少しでも近づけるように、頑張るわ」
今までずっと、臆病すぎるあまり、あきらめるほかなかった。怖くて、恐ろしくて。だけど、ブレントのことだけは……譲りたくないと、思ってしまう。
「えぇ、その意気よ、アリス。……さぁて、そろそろ食堂に行かない? お腹すいちゃったわ」
「……そうね」
突然変わった話題に苦笑を浮かべつつ、アリスは立ち上がる。少し休憩すれば、身体はある程度動くようになっていた。
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