【完結】狂愛の第一王子は公爵令嬢を離さない〜普段は大人っぽい素敵な婚約者は、実はとても嫉妬深い男性でした!?〜

扇 レンナ

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本編

第49話 『いざ、最後の舞台へ』 ①

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「……よし」

 その日は、遂にやって来ました。本日はベアリング伯爵家でのお茶会の日。アイザイア様のおっしゃる「すべてが終わるとき」です。私はヴィニーたち侍女にドレスを着せてもらい、鏡台に映る私自身を見つめていました。いつもよりもずっとおめかしをした私は、少しばかり大人っぽく見えるかもしれません。まぁ、ドレスのデザインが綺麗系であり、フリルなども少ないため、それに影響されているのでしょうが……。でも、それでもいいのです。アイザイア様のお隣に並ぶのだから、これぐらいじゃなきゃ。

「モニカ様。まだ、少しお時間が早いのですが……」

 侍女の一人が、そう言います。それに、私はにっこりと笑って言葉を発する。「えぇ、知っているわ」と。本日、私はいつもよりもかなり早く準備を済ませていました。理由は簡単。お茶会の前に立ち寄るところがあるからです。それは、エストレア公爵家。つまり、私の実家です。アイザイア様と共にエストレア公爵家に向かい、少しばかりお話をするのです。わざわざそのために、こんなにも早く準備をしたのですから。

「今日はね、一度実家に寄るのよ。だから……早めに準備をしてもらったの。早めに出るために」

 もちろん、実家に寄るための許可は得ています。私が王宮から出るには許可が必要ですし、出掛ける先も伝えなくてはなりません。何かがあったら、大変ですからね。

「それではモニカ様。……ご準備が整いましたので」

 ヴィニーのその声に合わせて、私は鏡台の前に置かれた椅子から立ち上がります。準備が出来た、ということは馬車の準備が出来たのですね。とりあえず、馬車が止まっている場所まで行きましょうか。そう、思いました。

「……モニカ様、本日は……」
「えぇ、分かっているわ。私の護衛はルーサーさんがしてくれるのよね?」
「はい、そうでございます」

 本日、ヴィニーはお茶会の時間を使ってエストレア公爵家に今までのことを報告することになっています。だからこそ、今日は私の護衛が出来ません。まぁ、アイザイア様がわざわざ私の護衛に、とルーサーさんを呼んでくれたので、大丈夫です。アイザイア様が側に居らっしゃらないときは、ルーサーさんが私の側にピッタリとついてくれているそうです。なので、ヴィニーも少しは安心できますよね。

 王宮の廊下を歩き、使用人たちに挨拶をしながら馬車が待つ場所を目指します。馬車が待つ場所までは、ヴィニーや侍女たちもついてきてくれます。私たちは適当な会話をしながら、その場所まで歩いていきました。そこにたどり着けば、御者が私を迎えてくれます。

「おはようございます、モニカ様。本日は……アイザイア様から聞いている予定で、よろしいのですね?」
「えぇ、アイザイア様のお伝えしたとおりにお願いするわ」

 アイザイア様は、もうすでに御者に予定を伝えてくださっているそうです。だから、私はそれだけ返事をし、待ってくれていた馬車に乗り込みました。ふかふかの椅子は、いつも通りです。馬車に付いた家紋も、いつも通り王家のもの。この馬車は、アイザイア様の私物ですからね。

「……モニカ。お待たせ」

 そして、私がしばらく待っていると、アイザイア様が現れました。いつもよりもきっちりとされた正装を身に纏っていらっしゃるアイザイア様は、婚約者という贔屓目を除いてもとてもかっこいいです。その長い金色の髪はいつものように一つに束ねられています。私はその言葉に一礼をし、アイザイア様が馬車に乗りこまれるのを見つめていました。アイザイア様は、私との待ち合わせで私が馬車の外で待つことを嫌がられます。なので、いつの間にかこうやって私が先に乗り込んで待つというのが当たり前になったのですよね……。

「じゃあ、馬車を出して」
「かしこまりました」

 アイザイア様が御者に指示を出される。すると、馬車がゆっくりと走り始めました。走り出す馬車の中、少しばかりの沈黙が場を支配します。でも、すぐにアイザイア様が口を開かれました。

「モニカ、今日もとても可愛らしいね。……ううん、綺麗って言った方がいいのかな?」
「え……あ、その、ありがとう、ございます……」

 にっこりと微笑まれて、そう言われてしまえば私はただ照れて俯くことしか出来ません。それに、今、可愛らしいと褒めてくださった後、綺麗っておっしゃってくださったわよね……? 本当? とても嬉しい……!

「ふふっ、たまにはね。今日は綺麗だなぁって思ったから、素直な気持ちを伝えただけだよ。……モニカ」
「……はい」
「『粛清』が始まる。今日はその記念すべき初めての日だ。……俺が、このフェリシタル王国を良くしていく。そのためにならば努力を惜しまないつもりだ。王太子としても、第一王子としても。……モニカは、こんな俺についてきてくれる?」

 不安そうな表情で、そうおっしゃるアイザイア様。なので、私はアイザイア様の手に自らの手を重ねて、ただはっきりと「はい」と言いました。

 私は、アイザイア様についていく。惹かれ始めたって気が付いたその日から、それよりもずっと前から。私はアイザイア様をお支えしたいと思っていた。……大丈夫。今更、その気持ちは揺らいだりしない。

「とりあえず、今日はエストレア公爵にそのことを詳しくお伝えしに行く。……『粛清』のことはある程度伝えて入るけれど、詳しいことは伝えていないからね。……さぁ、最後だけれど最初の舞台へと、行こうか――」

 ――俺の愛しい愛しい、婚約者。
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