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本編
第35話 『モニカの嫉妬心』 ②
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レノーレ様の、勝ち誇ったような表情。それが、やけに憎たらしくて、妬ましくて。私は、その場に立ち尽くすことしか出来ませんでした。そして、またレノーレ様はこちらを振り向く。丁寧に、口パクの「ざまぁみろ」も付け足して。どうして、そんなことをおっしゃっているのかが分かったかなんて簡単です。私、結構読唇術が得意なんです。……と、そう言うことじゃ、ありません。とにかく、何とかしてこの嫉妬心を抑えなくては。そう思うのに……嫉妬の炎は燃え上がるばかり。
(やっぱり、嫉妬心を抑えるなんてこと、出来るわけないのよ……)
そんなことを、心の奥底で思ってしまう。ですが、そんな時アイザイア様がこちらを振り向かれてしまったのです。どうやら、レノーレ様が何度も後ろを振り返るため、その行動を怪訝に思われたようでした。そして、アイザイア様はすぐに私を見つけられる。その後……驚いたような表情を、浮かべられました。まさか、見られるなんて思わなかった。そうとでも、おっしゃりたいのでしょうか? それは、分かりません。
(私がいたら、ダメだっておっしゃりたいの……?)
ですが、そのアイザイア様の驚いたような表情は、私の胸に思ったよりも突き刺さりました。だって、私が王宮で生活をしているのは周知の事実じゃない。アイザイア様だって……存じていらっしゃるじゃない。やっぱり、アイザイア様は私のことを「妹」としてしか見ていないんだ。そう、思ってしまった。しかも、そう思えば思うほど辛くて。恋って、しんどいものなんだって初めて知った。自らが気が付かないうちに恋をして、自覚をしてすぐに失恋、か。なんというか……惨めだなぁ。そんなことを、思ってしまう。
「……気が変わったわ。お茶は部屋でしましょう」
だからこそ、私は踵を返して自室に戻ることにしました。せっかく淹れてくれたのだから、お茶はいただかないともったいないですし。せっかく作ってくれたのだから、お菓子だって食べないともったいない。だから、私はお茶を自室ですることにしました。アイザイア様とレノーレ様の、仲睦まじいお姿を見たくなかったですし。
そもそも、この年頃は厄介なものなのかもしれません。些細なことで、喜んで。些細なことで、落ち込んで。些細なことで、嬉しくなって。些細なことで、悲しくなって。どうしようもないほど、面倒な年頃なのかもしれません。
(どうしようもないの。本当に……この気持ちは、どうしようもないんだから)
胸の前で手を握り、私はこみあげてくる涙を我慢しました。この涙の意味には、気が付かないフリをしました。身に纏っているのは軽いワンピースのはずなのに、やたらと重苦しい。歩くのも、辛い。そんなことを想いながら、ただひたすら早足でその場を立ち去っていく。侍女たちも、慌てて私についてくるのが分かりました。……ごめんなさい、振り回したりして。心の奥底で侍女たちに謝っていましたが、その言葉が口に出ることはありませんでした。理由なんて簡単。……もう、口に出す元気もなかったから。
「モニカ!」
そんな時、そんな声が後ろから聞こえて来て、私はただ歩くスピードを無言で早めました。聞きたくない。聞きたくなんてないんだ。今、アイザイア様の声なんて……聞きたくないから。早足は、そう言う意味も込めた拒絶でもあったのです。なのに、アイザイア様の足音がどんどん私に近づいてこられる。元より、歩くスピードはアイザイア様の方がずっと早いのです。私がどれだけ頑張っても、逃げることなど不可能に近い。
「……聞きたくない、です」
だから、腕を掴まれてすぐに私はそんなことを言っていました。
私よりもレノーレ様の方が良いなんてお言葉、聞きたくない。
言い訳のお言葉も……聞きたくない。
あぁ、私ってなんてわがままなのでしょうか。自らの気持ちを理解した時、そんなことを思ってしまいました。そして、惨めな気持ちからか笑いさえ、込み上げてきたのでした。
(やっぱり、嫉妬心を抑えるなんてこと、出来るわけないのよ……)
そんなことを、心の奥底で思ってしまう。ですが、そんな時アイザイア様がこちらを振り向かれてしまったのです。どうやら、レノーレ様が何度も後ろを振り返るため、その行動を怪訝に思われたようでした。そして、アイザイア様はすぐに私を見つけられる。その後……驚いたような表情を、浮かべられました。まさか、見られるなんて思わなかった。そうとでも、おっしゃりたいのでしょうか? それは、分かりません。
(私がいたら、ダメだっておっしゃりたいの……?)
ですが、そのアイザイア様の驚いたような表情は、私の胸に思ったよりも突き刺さりました。だって、私が王宮で生活をしているのは周知の事実じゃない。アイザイア様だって……存じていらっしゃるじゃない。やっぱり、アイザイア様は私のことを「妹」としてしか見ていないんだ。そう、思ってしまった。しかも、そう思えば思うほど辛くて。恋って、しんどいものなんだって初めて知った。自らが気が付かないうちに恋をして、自覚をしてすぐに失恋、か。なんというか……惨めだなぁ。そんなことを、思ってしまう。
「……気が変わったわ。お茶は部屋でしましょう」
だからこそ、私は踵を返して自室に戻ることにしました。せっかく淹れてくれたのだから、お茶はいただかないともったいないですし。せっかく作ってくれたのだから、お菓子だって食べないともったいない。だから、私はお茶を自室ですることにしました。アイザイア様とレノーレ様の、仲睦まじいお姿を見たくなかったですし。
そもそも、この年頃は厄介なものなのかもしれません。些細なことで、喜んで。些細なことで、落ち込んで。些細なことで、嬉しくなって。些細なことで、悲しくなって。どうしようもないほど、面倒な年頃なのかもしれません。
(どうしようもないの。本当に……この気持ちは、どうしようもないんだから)
胸の前で手を握り、私はこみあげてくる涙を我慢しました。この涙の意味には、気が付かないフリをしました。身に纏っているのは軽いワンピースのはずなのに、やたらと重苦しい。歩くのも、辛い。そんなことを想いながら、ただひたすら早足でその場を立ち去っていく。侍女たちも、慌てて私についてくるのが分かりました。……ごめんなさい、振り回したりして。心の奥底で侍女たちに謝っていましたが、その言葉が口に出ることはありませんでした。理由なんて簡単。……もう、口に出す元気もなかったから。
「モニカ!」
そんな時、そんな声が後ろから聞こえて来て、私はただ歩くスピードを無言で早めました。聞きたくない。聞きたくなんてないんだ。今、アイザイア様の声なんて……聞きたくないから。早足は、そう言う意味も込めた拒絶でもあったのです。なのに、アイザイア様の足音がどんどん私に近づいてこられる。元より、歩くスピードはアイザイア様の方がずっと早いのです。私がどれだけ頑張っても、逃げることなど不可能に近い。
「……聞きたくない、です」
だから、腕を掴まれてすぐに私はそんなことを言っていました。
私よりもレノーレ様の方が良いなんてお言葉、聞きたくない。
言い訳のお言葉も……聞きたくない。
あぁ、私ってなんてわがままなのでしょうか。自らの気持ちを理解した時、そんなことを思ってしまいました。そして、惨めな気持ちからか笑いさえ、込み上げてきたのでした。
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