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本編
第25話 『全て君の為』 ①
しおりを挟む「あ、アイザイア様……!」
その後、私は必死にアイザイア様に追いつこうと、アイザイア様の自室を目指していました。早歩きで歩いたことも、功を奏したのでしょう、アイザイア様がお部屋に入られる前に、アイザイア様に追いつくことが出来たのです。
アイザイア様の名前を呼べば、何事かと思われたのでしょう、アイザイア様がゆっくりと振り返ってくださいます。そのエメラルド色の瞳に見つめられ、少しばかり怯んでしまいますが、怯んでなんていられないと自分を奮い立たせます。そんなことをしながら、私はゆっくりと口を開きました。
「ど、どうして……突然、私の行動を制限……されるのですか?」
力強く自分の手を握り締め、私は意を決してそう言います。逃げちゃダメ、逃げちゃダメ。そう必死に自分自身に言い聞かせながら、アイザイア様をじっと見つめます。すると、アイザイア様はため息を一つ付かれながら私の方に近づいてこられました。その足取りはいつも通りに見えます。ですが、その瞳に映った感情はいつも以上に読み取れません。光がないように見えるその瞳に見つめられると、私の背筋が少しばかりヒヤッとしました。
「……なんで? 俺はいつも通りだよ? ……別に、何もおかしなところはない。突然って言うのは心外だよ」
アイザイア様はさも当然のように、そうおっしゃいます。それが、私にとって不気味で仕方がありませんでした。
すると、私の後ろに控えていたルーサーさんが、アイザイア様の方に近づいていかれます。そして、一言言葉をアイザイア様にぶつけました。
「モニカ様は、少々アイザイア様の態度の変化に戸惑っておられるのです。……こうなった理由を、少しばかりお話するのはいかがでしょうか?」
そう言ったルーサーさんに対して、普段の私ならば「ルーサーさんは一体どちらの味方なのでしょうか?」と疑問を抱いていたでしょう。しかし、生憎今の私にはそんなことを思う余裕は一切なくて。ただ、ルーサーさんの言葉にうなずくことしか出来ませんでした。
「……そうだねぇ、話してもいいけれど、このことがきっかけで余計にモニカが危険な目に遭うことも考えないといけない。……だから、話をするのはもう少し後にしようかな。……でも、これだけは言えるよ」
そうおっしゃったアイザイア様は、さらに私の方に近づいてこられると、私に対して微笑まれました。その微笑みは……アイザイア様が豹変する前のままで。少しばかり私の心が緩みました。緊張が、緩んでしまったのです。
「モニカは可愛らしいからね。他の男を無意識のうちに魅了している。……そう言うことだよ」
その後、アイザイア様から紡がれたお言葉は、きっと普段のアイザイア様から伝えられていたらとても嬉しかったはずの言葉でした。ですが、残酷にも今の私に嬉しいなんて思う余裕はちっともありません。だからこそ、心の底から喜ぶことが出来ませんでした。少しだけ、胸が高鳴ってしまったのは真実でしたが。
その後、私は必死にアイザイア様に追いつこうと、アイザイア様の自室を目指していました。早歩きで歩いたことも、功を奏したのでしょう、アイザイア様がお部屋に入られる前に、アイザイア様に追いつくことが出来たのです。
アイザイア様の名前を呼べば、何事かと思われたのでしょう、アイザイア様がゆっくりと振り返ってくださいます。そのエメラルド色の瞳に見つめられ、少しばかり怯んでしまいますが、怯んでなんていられないと自分を奮い立たせます。そんなことをしながら、私はゆっくりと口を開きました。
「ど、どうして……突然、私の行動を制限……されるのですか?」
力強く自分の手を握り締め、私は意を決してそう言います。逃げちゃダメ、逃げちゃダメ。そう必死に自分自身に言い聞かせながら、アイザイア様をじっと見つめます。すると、アイザイア様はため息を一つ付かれながら私の方に近づいてこられました。その足取りはいつも通りに見えます。ですが、その瞳に映った感情はいつも以上に読み取れません。光がないように見えるその瞳に見つめられると、私の背筋が少しばかりヒヤッとしました。
「……なんで? 俺はいつも通りだよ? ……別に、何もおかしなところはない。突然って言うのは心外だよ」
アイザイア様はさも当然のように、そうおっしゃいます。それが、私にとって不気味で仕方がありませんでした。
すると、私の後ろに控えていたルーサーさんが、アイザイア様の方に近づいていかれます。そして、一言言葉をアイザイア様にぶつけました。
「モニカ様は、少々アイザイア様の態度の変化に戸惑っておられるのです。……こうなった理由を、少しばかりお話するのはいかがでしょうか?」
そう言ったルーサーさんに対して、普段の私ならば「ルーサーさんは一体どちらの味方なのでしょうか?」と疑問を抱いていたでしょう。しかし、生憎今の私にはそんなことを思う余裕は一切なくて。ただ、ルーサーさんの言葉にうなずくことしか出来ませんでした。
「……そうだねぇ、話してもいいけれど、このことがきっかけで余計にモニカが危険な目に遭うことも考えないといけない。……だから、話をするのはもう少し後にしようかな。……でも、これだけは言えるよ」
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「モニカは可愛らしいからね。他の男を無意識のうちに魅了している。……そう言うことだよ」
その後、アイザイア様から紡がれたお言葉は、きっと普段のアイザイア様から伝えられていたらとても嬉しかったはずの言葉でした。ですが、残酷にも今の私に嬉しいなんて思う余裕はちっともありません。だからこそ、心の底から喜ぶことが出来ませんでした。少しだけ、胸が高鳴ってしまったのは真実でしたが。
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