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本編
第4話 『アイザイア・フェリシタル』 ①
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その日、私はとても懐かしい夢を見ていました。
その夢は、物心ついた時に王宮にやってきた日のこと。私は、何故かその時の記憶だけははっきりと持っていました。
広い王宮内。子供にとっては興味深いものばかりが一面にあり、私の興味は定まりませんでした。そして、気が付いた時には一緒にやってきていたお父様とはぐれてしまったあの時。
「……おとうさま?」
まだ幼かった私にとって、未知の場所で知っている人がいない空間など、恐怖の場所でしかなかった。必死にお父様を呼び、王宮内を歩き回りました。ですが、お父様と合流できないどころか、お父様の居場所さえ分からない。そんなことからだんだん心細くなってしまった私の瞳には、涙が溜まり始めていました。元々、私は寂しがりやな子供だったのです。こんなことになって、心細くないわけがなかった。
「……グスッ、おとうさまぁ……!」
必死に涙を拭いながら、私はその場に座り込んでしまいました。身に纏っている立派で華美なドレスの価値など、まだ分からなかった私はそのドレスの裾で涙を拭っていました。……今らば、絶対にそんなことはしませんが。でも、子供にそんなことを言っても分からないのが現実です。
そして、泣きじゃくっていた時でした。
「……キミ、どうしたの?」
美しい、年上の男の子が現れたのです。美しい金色の長い髪を後ろで一つに束ね、まるで女の子の様に美しいその男の子。男の子は、緑色の瞳が零れそうな程瞳を丸くしていました。ですが、その男の子の声音はとても優しくて。私は、ポツリポツリとこうなってしまった経緯を話しました。
「……そっか。じゃあ、俺と一緒にキミのお父様を探そうか。俺、王宮内に詳しいし、きっとキミのお父様がいる場所に連れていけるよ」
男の子は、私と同じ目線の高さまで屈み、私の頭を数回軽く、ポンポンとたたいてくれました。それは、とても落ち着くものであり、私の涙は徐々に引っ込んでいきました。
そして、その男の子の差し出された手に、私は自身の手を重ねたのです。
その男の子が、私の婚約者であるアイザイア・フェリシタル様だと知ったのは、それから十数分後のことでした。それは、無事私がお父様と再会できた時。
「おとうさまぁ!」
そう叫び、ただひたすらお父様に泣きつく私を見て、アイザイア様はただ微笑んでいてくださったそうです。どうやら、アイザイア様にとっては貴族の子供であろうと油断できない存在だったそうです。いつも自分のご機嫌を窺い、何かあれば付け込もうとする。そんな人間ばかりだったそうです。だからこそ、私のような純粋な子供と関わることが久々で。アイザイア様は新鮮だったと後々教えてくださいました。アイザイア様には弟の王子様がいらっしゃいましたが、当時はほとんど関わりがなかったそうですから。
「アイザイア様。本当に、娘がお世話になりまして……!」
お父様は、私の背中を優しく撫でながら、アイザイア様に頭を下げられました。その表情は、アイザイア様からすればとても優しい父親そのものであり、仕事の際に見ているエストレア公爵ではない、と思ったそうです。
「いいえ、再会できたのならば良かったです。……モニカ嬢。もう、お父様の手を離してはダメですからね?」
「……はい! ありがとうございます、あいざいあさま!」
その時のアイザイア様の優しい表情は、未だに私の胸に焼き付いている。そして、アイザイア様の心の中にも、あの時の私の笑顔が焼き付いていたことを、私は後々知ることになるのでした。
その夢は、物心ついた時に王宮にやってきた日のこと。私は、何故かその時の記憶だけははっきりと持っていました。
広い王宮内。子供にとっては興味深いものばかりが一面にあり、私の興味は定まりませんでした。そして、気が付いた時には一緒にやってきていたお父様とはぐれてしまったあの時。
「……おとうさま?」
まだ幼かった私にとって、未知の場所で知っている人がいない空間など、恐怖の場所でしかなかった。必死にお父様を呼び、王宮内を歩き回りました。ですが、お父様と合流できないどころか、お父様の居場所さえ分からない。そんなことからだんだん心細くなってしまった私の瞳には、涙が溜まり始めていました。元々、私は寂しがりやな子供だったのです。こんなことになって、心細くないわけがなかった。
「……グスッ、おとうさまぁ……!」
必死に涙を拭いながら、私はその場に座り込んでしまいました。身に纏っている立派で華美なドレスの価値など、まだ分からなかった私はそのドレスの裾で涙を拭っていました。……今らば、絶対にそんなことはしませんが。でも、子供にそんなことを言っても分からないのが現実です。
そして、泣きじゃくっていた時でした。
「……キミ、どうしたの?」
美しい、年上の男の子が現れたのです。美しい金色の長い髪を後ろで一つに束ね、まるで女の子の様に美しいその男の子。男の子は、緑色の瞳が零れそうな程瞳を丸くしていました。ですが、その男の子の声音はとても優しくて。私は、ポツリポツリとこうなってしまった経緯を話しました。
「……そっか。じゃあ、俺と一緒にキミのお父様を探そうか。俺、王宮内に詳しいし、きっとキミのお父様がいる場所に連れていけるよ」
男の子は、私と同じ目線の高さまで屈み、私の頭を数回軽く、ポンポンとたたいてくれました。それは、とても落ち着くものであり、私の涙は徐々に引っ込んでいきました。
そして、その男の子の差し出された手に、私は自身の手を重ねたのです。
その男の子が、私の婚約者であるアイザイア・フェリシタル様だと知ったのは、それから十数分後のことでした。それは、無事私がお父様と再会できた時。
「おとうさまぁ!」
そう叫び、ただひたすらお父様に泣きつく私を見て、アイザイア様はただ微笑んでいてくださったそうです。どうやら、アイザイア様にとっては貴族の子供であろうと油断できない存在だったそうです。いつも自分のご機嫌を窺い、何かあれば付け込もうとする。そんな人間ばかりだったそうです。だからこそ、私のような純粋な子供と関わることが久々で。アイザイア様は新鮮だったと後々教えてくださいました。アイザイア様には弟の王子様がいらっしゃいましたが、当時はほとんど関わりがなかったそうですから。
「アイザイア様。本当に、娘がお世話になりまして……!」
お父様は、私の背中を優しく撫でながら、アイザイア様に頭を下げられました。その表情は、アイザイア様からすればとても優しい父親そのものであり、仕事の際に見ているエストレア公爵ではない、と思ったそうです。
「いいえ、再会できたのならば良かったです。……モニカ嬢。もう、お父様の手を離してはダメですからね?」
「……はい! ありがとうございます、あいざいあさま!」
その時のアイザイア様の優しい表情は、未だに私の胸に焼き付いている。そして、アイザイア様の心の中にも、あの時の私の笑顔が焼き付いていたことを、私は後々知ることになるのでした。
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