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本編
第2話 『モニカ・エストレア』 ②
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「さて、モニカ。そろそろお茶の時間も終わりだね」
ある時、ふとアイザイア様は時計を一瞥されると、そんなことを呟かれました。その表情は、心底寂しそうであり、終わってしまうこの時間を惜しんでいるように私には見えました。それが、少しばかり嬉しい。だけど、本音は私も寂しかったのです。私にとってこの時間というのはとても大切で、大好きな時間なのです。お忙しいアイザイア様と共に過ごせる時間は、とても落ち着きますから。心の底から、私もそう感じていたのです。
「……そうですね」
カップに残っていた紅茶を飲み干し、私は部屋に戻る準備を始めることにしました。駄々をこねて、アイザイア様を困らせるわけにはいかない。その一心でした。私付きの侍女たちに声をかけて、部屋に戻る意思を伝えます。……本音を言うのならば、もっとアイザイア様と一緒に過ごしたかったのですが……。次、いつこういった風なゆっくりとした時間がとれるかは分からない。それが、一番大きな別れを惜しむ理由でした。ですが、アイザイア様を困らせるのはもっと嫌です。
「……あ、そうだ。モニカ、これから少しだけモニカの時間を貰いたいんだけれど……大丈夫?」
「……え?」
しかし、次にアイザイア様が発したお言葉は、私の予想もしていなかった言葉で。これは、都合のいい夢でしょうか? そう思ってしまいました。だからなのか、私は驚いたような表情をそのままアイザイア様に見せてしまいます。……淑女なのに。
確かに、アイザイア様との別れを惜しんでいた気持ちは、たくさんありました。それでも、アイザイア様のご迷惑にならないように。その一心で、今日も別れようとしたのに。
なのに、そんなお言葉をかけられてしまえば、その決意は揺らいでしまうじゃないですか。もっと、アイザイア様とご一緒したい。そう、思ってしまうじゃないですか。
「……あ、あの……」
だから、私は歯切れの悪い返事をしてしまいます。ちょっとばかり、失礼だったでしょうか。そう思っても、アイザイア様は特に気にしたご様子もありません。それどころか、私の専属侍女たちのリーダーであるヴィニーに声をかけていらっしゃいました。
「モニカにこれからの予定はある?」
アイザイア様がそう尋ねれば、ヴィニーは何でもない風に私のスケジュール帳を確認します。そして「あと一時間程度ならば次のご予定まで時間があります」と簡潔に答えてくれました。
それを聞いたアイザイア様は、満足そうにうなずかれます。その後、ゆっくりと立ち上がられて……次に、私のすぐそばまで移動されました。何だろうか。私がそう思っていると、私の手をアイザイア様は優しく取ってくださいました。
「……モニカ。俺、名残惜しいんだよね。……俺も、ちょっとだけ時間があるからもうちょっとだけ一緒に居ようか。……まぁ、お茶とかは出来ないし、散歩でもどうかな?」
そう優しく声をかけられて、私が断れるわけがないのです。だから、私は笑顔を浮かべてただ「はい」とだけ返事をしました。二人で、一緒に居たい。そう思っているのが、私だけではない。それを実感すると、私はとても嬉しくなる。そして、幸せをかみしめていました。
たとえ、政略的な結婚だったとしても。たとえ、私たちが互いに向けている感情が恋愛感情ではなかったとしても。それでも、私たちは婚約者だから。いつだって……良好な関係を築かなくては。私は、ずっとそう思っておりました。
ある時、ふとアイザイア様は時計を一瞥されると、そんなことを呟かれました。その表情は、心底寂しそうであり、終わってしまうこの時間を惜しんでいるように私には見えました。それが、少しばかり嬉しい。だけど、本音は私も寂しかったのです。私にとってこの時間というのはとても大切で、大好きな時間なのです。お忙しいアイザイア様と共に過ごせる時間は、とても落ち着きますから。心の底から、私もそう感じていたのです。
「……そうですね」
カップに残っていた紅茶を飲み干し、私は部屋に戻る準備を始めることにしました。駄々をこねて、アイザイア様を困らせるわけにはいかない。その一心でした。私付きの侍女たちに声をかけて、部屋に戻る意思を伝えます。……本音を言うのならば、もっとアイザイア様と一緒に過ごしたかったのですが……。次、いつこういった風なゆっくりとした時間がとれるかは分からない。それが、一番大きな別れを惜しむ理由でした。ですが、アイザイア様を困らせるのはもっと嫌です。
「……あ、そうだ。モニカ、これから少しだけモニカの時間を貰いたいんだけれど……大丈夫?」
「……え?」
しかし、次にアイザイア様が発したお言葉は、私の予想もしていなかった言葉で。これは、都合のいい夢でしょうか? そう思ってしまいました。だからなのか、私は驚いたような表情をそのままアイザイア様に見せてしまいます。……淑女なのに。
確かに、アイザイア様との別れを惜しんでいた気持ちは、たくさんありました。それでも、アイザイア様のご迷惑にならないように。その一心で、今日も別れようとしたのに。
なのに、そんなお言葉をかけられてしまえば、その決意は揺らいでしまうじゃないですか。もっと、アイザイア様とご一緒したい。そう、思ってしまうじゃないですか。
「……あ、あの……」
だから、私は歯切れの悪い返事をしてしまいます。ちょっとばかり、失礼だったでしょうか。そう思っても、アイザイア様は特に気にしたご様子もありません。それどころか、私の専属侍女たちのリーダーであるヴィニーに声をかけていらっしゃいました。
「モニカにこれからの予定はある?」
アイザイア様がそう尋ねれば、ヴィニーは何でもない風に私のスケジュール帳を確認します。そして「あと一時間程度ならば次のご予定まで時間があります」と簡潔に答えてくれました。
それを聞いたアイザイア様は、満足そうにうなずかれます。その後、ゆっくりと立ち上がられて……次に、私のすぐそばまで移動されました。何だろうか。私がそう思っていると、私の手をアイザイア様は優しく取ってくださいました。
「……モニカ。俺、名残惜しいんだよね。……俺も、ちょっとだけ時間があるからもうちょっとだけ一緒に居ようか。……まぁ、お茶とかは出来ないし、散歩でもどうかな?」
そう優しく声をかけられて、私が断れるわけがないのです。だから、私は笑顔を浮かべてただ「はい」とだけ返事をしました。二人で、一緒に居たい。そう思っているのが、私だけではない。それを実感すると、私はとても嬉しくなる。そして、幸せをかみしめていました。
たとえ、政略的な結婚だったとしても。たとえ、私たちが互いに向けている感情が恋愛感情ではなかったとしても。それでも、私たちは婚約者だから。いつだって……良好な関係を築かなくては。私は、ずっとそう思っておりました。
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