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第9話 ありがとうそしてさようなら
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退院してから、また1週間月日が立った。後少しで大学生活がまた再スタートする。何気に濃い、夏休みだった。美絵は、ぼーと外を見つめる。その先は、誠の家だった。ちゃんと、一度話さなければ。今家にいるのだろう。どうやら謹慎中らしい…。美絵は立ち上がり、外に出た。誠の家のインターフォンを押す。
『はい、どちら様ですか?』
インターフォン越しのぎこちない声。美絵は少し、ほっと胸を撫で下ろした。
「私だ。会って話せないか?」
美絵が答えると、沈黙が流れた。やがて誠が、ボソリと呟く。
『無理…。俺今、接近禁止命令出てるから。美絵に対して…』
「でもお前は、私に被害…加えないだろ?私は大丈夫だから、顔を見せてくれないか?」
接近禁止命令、多分美絵の家族が出したのだろう。美絵は心が痛んだ。
暫くすると、ゆっくり玄関が開いて誠が顔を出した。美絵は、身を乗り出した。フェンスに手を乗せる。顔色は悪く、少し痩せた様にも見える。見ていて辛くなった。
「誠…ちゃんと」
「ごめん!ごめんじゃ許してくれる、そんな事ないと思ってるけど…!分かってるんだ、話さなきゃいけないって…けど勇気なくて」
誠は勢いよく、頭を下げた。
「いや、いいんだ。誠をこう言う人にしてしまったのは、私が優柔不断だったせいだ。でも何で、あんな事したんだ?」
「それ、よく…母さんに言われるよ…。幸い名前と写真出なかったから、誰がやったとか分からないけど…。何でだろう、俺…美絵を困らせるつもり無かったのに…」
誠は下を向き、肩を振るわせた。
「美絵を独り占め、したかったんだ…。夏休み中家にいると、考えちゃって気づいたら動いてた」
誠は今にも泣きそうな顔で、前を見た。
「誰も、巻き込むつもり無かったんだ。でも本心は違ったみたいで…。こんな、自分辛くなって」
美絵は誠を見つめる。何故だか、時より傷が強く痛んだ。
「俺さ‥ここ出るつもりなんだ。大学も行けないし、美絵とも終わりだし。それに今の俺、受け入れてくれる人見つかったし。そっから再スタートするよ、頑張るから」
「誰?」
「堂麗奈…。実は言うと、少し前から連絡取ってたんだ。ちょっと前に再会して、ごめん言ってなくて。その時はまだ、メル友くらいだったから」
美絵の目が大きく開いたが、やがて目線を逸らす。
「そうか…。良かったな。実は言うと私も、新しい相手見つかったんだ」
「可楽?」
美絵は小さく、首を左右に振った。
「律次さん。無理だと思ってたんだが、お母さんが話してくれて許してもらった。今度から一緒に住むことになってる」
美絵は目を細めた。誠は少し、複雑な気持ちになる。まだ本気で、麗奈を愛せてないからだ。ずっと美絵一筋だった自分に、他人を愛せるか分からなかった。でもここを離れて、美絵を見なくなる日が長くなれば、次第に薄れていくかもしれない。そう思っての行動だった。
「俺なんかが幸せ掴んでいいかなんて、正直分かんないけど。母さんの事、楽にしてあげたいのもあるし」
「誰だって、過ち一つや二つある。それが偶々、警察沙汰になって。でもそれを責めてはいないよ、可楽さんだってそう言ってた」
美絵は、少し前に歩み寄る。誠は頬を赤く染め、一歩後ろに下がった。
「でも決してなんでも、やって良い訳ではない。それを刻んで、生きる事だ」
美絵は声のトーンを落とし語ると、家に戻って行った。
あれから1年経った。
「お姉ちゃん!卵焼き、焦げてるよー」
美絵は慌てて、ひっくり返すも黒くなっていた。智瑛理は横で苦笑いする。
「もう、卵焼きは簡単なんだから覚えなきゃ」
智瑛理は美絵から、フライパンを受け取ると焦げた卵をまな板に移す。焦げたところを避け、包丁を入れた。それを美絵は、横で見つめる。
「こんなんじゃ、私いつまで経ってもここ出ていけないじゃん」
智瑛理は、念願の大学に受かりこれからパティシエになる為アルバイトをしながら通う事になっている。
「でも、本当寂しくなっちゃうわねー。智瑛理たまには帰ってきてね」
母はテーブルを、セッティングする。
「当たり前じゃん、心配だもん。お姉ちゃんだけで家事やらせたら、なに起こるか…」
錦糸卵を作り、ご飯と混ぜた。
「何言ってるんだ!やれば私にだって、出来る」
美絵は慌てて否定した。
「まぁ、洗濯機を使えるようになったんだから前進したわよね」
母がニコニコする。美絵は真っ赤になった。
「私も出来る限りは手伝うから、無理しなくていいのよ。専業主婦でも、剣道の先生もあるんだしそこまで暇でもないんだから」
「でもお母さんも、仕事あるでしょ」
智瑛理もご飯を、お茶碗に盛る。
「おはよう。何か豪勢だなー」
父がテーブルを見て、しみじみ言った。焼き魚に筑前煮。ちらし寿司と味噌汁。
「祝い事だし、とりあえず。私の大学合格&1人暮らし&アルバイト先決定祝い的な?」
「おいおい、智瑛理は欲張りだな。まぁでも、頑張ったな。おめでとう」
父に頭を撫でられ、智瑛理は照れた。美絵は眩しかった。今智瑛理はすごく、幸せなのだろう。
「後さ、お姉ちゃんも。8段おめでとう、それと婚約も」
「ありがとうございます」
美絵が口を開いて言おうとしてた言葉を、襖を開けて入ってきた清高が先に言った。
皆が振り向く。清高が少し焦った顔を見せた。
「おはようございます。すみません、入ってはいけませんでしたか?どうも賑やかな雰囲気に、慣れてなくてタイミング測れなくて…」
美絵では無く、何故か智瑛理が顔を赤くして口元を押さえた。
「何その顔、反則!可愛すぎです!」
智瑛理が抑えきれず叫ぶと、美絵が頭を軽く叩いた。
「駄目でしょ、智瑛理ちゃん。お姉ちゃんの旦那様褒めちゃ。貴方にも彼氏居るんだから、妬いちゃうわよ」
母が苦笑いして言うと、頭をさすりながら智瑛理が言葉を並べた。
「だってだって、会ったばかりの頃はさつーめたい目しててさ。口もへの字で冷血人間の塊だった人だよ。腰には毎日拳銃つけてて、私怖かったもん。顔綺麗なのに、平気で人傷つけるし」
「何だか、酷い言われようですね。事実なので、否定できませんが」
清高はクスリと笑い、父親に促され座った。
智瑛理が顔を手で覆う。
「無意識で、女をバサバサと落として行くタイプだ!益々お姉ちゃんが心配だよー」
「あらあら、変な妄想モード入っちゃって。そんな事してたら、入学式遅れちゃうわよ」
母が智瑛理の背中を叩いて言うと、皆朝ごはんを食べ始めた。
「でも、いいの?美絵、本当に大学辞めちゃってこっちの道入って」
しばらくして皆食べ終わると、母は食器を洗う。美絵は片付けを手伝った。
智瑛理は着替えのため部屋に。父と清高は、身支度をしていた。
「いいんです。元々大学行くと決めたのは、里志さんとの約束で…もう居ないですし。それになりたいと、決めてましたから剣道やって来れたんです」
美絵は噛み締めながら語り、台拭きで机を拭く。
「お母さんも、ありがとうございます。律次…えっと…き、清高さん…の事…」
まだ言い慣れていないのか、美絵はつっかえながら言う。母は内心ウキウキしながら、笑顔で返した。
「いいのよ。結婚は好きな人として、1番のハッピイエンドなんだから。それを私は、手伝えて親として嬉しいわ」
「おーい、そろそろ行くからなー」
父が玄関から叫ぶ。母は水を止め、顔だけ出した。
「はーい、行ってらっしゃい。気をつけて」
それだけ言うと、また皿洗いに没頭する。廊下を歩く清高を見て、美絵はキッチンを出て後をついて行った。
スーツに身を包み、革靴を履く姿に少し美絵は頬を赤くした。
「遅くなります?」
美絵の一言に、清高は首を傾げた。
「どうでしょう。なんせ会社初日ですし。今のまでとは違う、サラリーマンとはどんな仕事かも分かりませんから。早めには帰りますよ、新人をいきなり残業にはしないでしょう」
美絵は焦った。確かに初日に、仕事内容が分かるわけがない。
「行ってきますね、美絵」
優しく微笑む清高に、美絵は顔を真っ赤にして下を向いた。
「行ってらっしゃい…。きっ、き…清高さん」
モゾモゾと言う彼女を、清高は愛おしげに見つめ美絵の顎を掴むと唇を重ねた。ねっとりと舌まで入りそうになり、美絵は身を離した。
「新婚は、するんじゃなかったですか?こう言う事」
「しっ知りません!それに入れないで下さい!」
清高は見透かしたような顔で見ると、ドアに手をかける。
「では、続きは帰ってきた後で」
その目がぞくりとする。清高が出て行くと、美絵はため息をついた。
「うわー、朝っぱらから出ずらー。ハート飛ばしちゃって、めっちゃいずらーい。それに朝だって言うのに、夜のラブラブ約束までしていいなー。私まだなのに…」
柱から覗くように、智瑛理が見つめて言う。振り向いて、美絵は智瑛理の腕を引っ張り玄関に連れて行く。
「何やってんだ!本気で遅れるぞ!」
「あー今日えっちするんだ!清高さんが、最近自分の部屋防音に改造したのその為なんだー!ずるいなー、ずるいなー」
智瑛理が拗ねて言いふらしていると、美絵は口を手で塞いだ。
「近所迷惑だ、叫ぶな恥ずかしい。それに何だその出鱈目は」
智瑛理はもごもごしながら、美絵の手を下にずらす。
「知らないの?防音になる壁紙、清高さん最近自分で貼ってたよ。えー知らないのー、将来の旦那様なのにー」
意地悪っぽく言う智瑛理に、美絵は靴を無理やり履かせ背中を押す。
「あー、もう!良いからさっさと、大学行け!」
「後から、根掘り葉掘り聞くからねー」
智瑛理がそう言うと、ドアが閉まった。
「じゃあまた後から、迎えに行くから」
一つの一軒家の前で車が止まり、運転席から女性の声が聞こえ降りた男が頷くと車は発進した。
ドアを開け、2階に上がりダンボールを持った。引っ越しして半年、アパートを片付け隙間が空いたので残りの荷物を取りに来た。
「これで最後かな」
周りを見渡し、すっかりもぬけの殻になった部屋を見つめる。懐かしさが、じんわりと体を通った。
ドアを開け部屋を出ようとすると、ダンボールから一枚の写真が出て床に落ちた。目で追い、それを見つめると心臓が高鳴った。高校での写真、当時好きで好きで仕方なかった女の子の写真。まだしっかり拭い切れていないのか、何故か捨てれなかった。拾うと、ダンボールに入れ直し下に降りて縁側を歩く。何となく外を見ると、洗濯物を干している隣の人が目に入った。見惚れて、手から荷物が落ちる。
白い大きなシーツが風に舞い、見え隠れする女性の顔。知っている、だってずっと好きで追いかけて拭い切れてないんだから。
縁側の石段に置いてあるサンダルに足を入れ、その子を見ながら歩く。触れたい、声久し振りに聞きたい。今の彼女はどうしているのか。別れてから電話も何もかも、していない。連絡を断ち切って、もう辞めたのに。見たら、止まらない。
彼が手を伸ばし、木を退かすとその音で相手と目が合った。彼女も手が止まる。
「ま…こと…」
驚いた顔で美絵は、その人の名を呼ぶ。誠は聞いた瞬間、足を動かし美絵の家の敷地内に入った。誠の顔に赤みが刺す。一年経ってまた綺麗になった、美絵に戸惑った。
「久し振り…。元気してた?」
ドギマギする、何でだろう。心臓まで大きく高鳴る。美絵はぎこちなかったが、笑みを見せる。
「あぁ、そっちは?」
「まぁ見ての通り、かな。今日はまだ残ってた荷物、取りに来てさ…」
誠は照れくさくて、頭を引っ掻いた。
「そか。麗奈とは、上手く行ってるんだな」
「うん。堂は美絵と会いずらいみたいで、買い物行ったけど…。近くにいるよ」
誠が下を向くと、目にきらりと光るものが見えた。美絵がそれに気づく。
「私な、近々…結婚するんだ。誠は、するのか?麗奈と…」
結婚の言葉に誠は、心が揺さぶられた。
別れたんだ、そりゃ結婚だってする。当たり前の流れだ…。
胸がキシキシと、痛んだ。唾を飲み込んだ。
「どうだろ…。分からない、まだ恋人みたいな行為もしてないし…。と言うか、まだ踏み出せてない」
美絵は苦笑いした。このもどかしい時間、苦手だが久し振りに人と話したような感じがした。誠は人と本当あの事の後、ずっと距離を置いていた。だから外の人と話すのは、本当久し振りだ。
「そう言えば、星野さんと末道君も半年前結婚した。写真…見るか?私、結婚式行って来たから」
美絵はスマホをポケットから取り出し、写真を出した。綺麗なウエディングドレスに身を包んだ、かかやが映っている。
「末道君が、誠によろしくって…。心配してたぞ。私を見るなり、星野さんも泣いて抱きついて来て焦ったし…」
写真をスクロールしながら、話す美絵を誠は眺めた。
「みんな、どんどん進んでいくな…。止まってらんないね。俺も、就活頑張らないと」
「焦るなよ」
2人は笑った。あんな事あったのに、こんな距離を許してくれる美絵には本当驚かされる。
「まことくーん、そろそろ行くよー」
誠の家の近くで、呼ぶ女の声がした。車のエンジン音も響く。誠が手を降り、家に戻るとダンボールを持ち車の方へ歩く。美絵は躊躇ったが、後ろをついて行った。
運転席から麗奈が、顔だけ出して覗き込んでいる。誠は後ろのドアを開け、荷物を乗せる。
「麗奈‥ご無沙汰、だな」
美絵が後ろから、顔を出した。麗奈がドキリとした。まともに顔を合わせたのは、何年ぶりだろうか…。喧嘩して、自然教滅した2人の友情。
「誠の事、ありがとう」
美絵がぎこちなく笑うと、麗奈はその顔を凝視する。
「み…え…。あんた、よく許したわね…。本当、可笑しいわよ」
「そうだな。大学で言われたよ、それは。でも事情は…、こちら側にもあるんだ。全てが、誠が悪いとまでは言い切れないから」
重たい空気が流れて、麗奈はため息を吐きエンジンを切った。
「遅すぎるのよ。気づくのが、色々と。これで終わりにしてよ、色恋沙汰をさ。私が責任持って、誠君の人生支えるから」
「するよ。もうみんな身を固めた事だしな。私も疲れた。大体望んでもない事だ」
「それに乗っかった、美絵も美絵よ。私も、まともになるわ」
麗奈が天を仰ぐ。
「あー、堂ってさ前水商売やってたんだけど。やめて今、やっと普通の職に着いたよ」
「なんで知ってんだ、水商売の事…」
美絵が誠を見ると、誠は目を逸らした。麗奈が身を乗り出す。
「それがさ、聞いてよ。私初仕事が、バブだった訳。でね、そこに来たのよ誠君が。それがさー言いづらいバブでさー。確か来た日って、美絵と喧嘩した日だっけ?」
「言うなよー!」
誠が必死に止めると、麗奈が「もう終わってんだから、いいじゃん」と言った。
「おっぱいバブよ。私もすぐ辞めたかったけど、お金欲しかったし。半年やったかなー。もう、いろんな男にあれよあれよと色々触られてヘド出るわ。あんなとこ」
それを聞いて、美絵は誠から離れる。
「別に行きたくて、行ったんじゃないって!友達に強引に引っ張られて、連れてかれたんだって。だから、触ってない!」
誠の顔に、麗奈は笑った。美絵もつられて笑ってしまった。誠は顔を真っ赤にした。
「おかしー、何別れた女の前で昔の事弁解してんのよ。言ったところで、何も怒りゃしないわよ」
誠は怒って、車に乗り込んだ。麗奈はエンジンをかける。
「ありがとう、美絵。あんたに会うの本音言うと、ちょっと気まずかったのよ。でも話せてよかったわ。また、会えたらもっとちゃんと話しましょ」
麗奈は手を振り窓を閉め、車を発進させた。
美絵は家に入り、スマホにメールが入っていることに気がつき開いた。
その内容に目を細める。
『お姉ちゃん、聞いてー。私カナタ君と、同棲することになったの♪引っ越しの日楽しみー』
智瑛理は、入学式が終わった後カナタとおちあい話し合ったらしい。
後、1通。
『鈴風さん、あの時はありがとうね。私めでたく、明宏と婚約決定したから。後、結婚式決まったら呼ぶから待ってなさいよ』
メグは今や人気モデルとして、TVで観ない日はないほどに成長した。
色んなことがあった。悪い事やいい事やあったが、進む以外道はない。
道着に着替え、髪の毛をポニーテールに纏める。道場を開けると、子供から大人までの教え子が美絵を見た。
「先生、よろしくお願いします!」
子供達の声に、美絵は笑顔で答えた。
「はい。よろしくお願いします」
『はい、どちら様ですか?』
インターフォン越しのぎこちない声。美絵は少し、ほっと胸を撫で下ろした。
「私だ。会って話せないか?」
美絵が答えると、沈黙が流れた。やがて誠が、ボソリと呟く。
『無理…。俺今、接近禁止命令出てるから。美絵に対して…』
「でもお前は、私に被害…加えないだろ?私は大丈夫だから、顔を見せてくれないか?」
接近禁止命令、多分美絵の家族が出したのだろう。美絵は心が痛んだ。
暫くすると、ゆっくり玄関が開いて誠が顔を出した。美絵は、身を乗り出した。フェンスに手を乗せる。顔色は悪く、少し痩せた様にも見える。見ていて辛くなった。
「誠…ちゃんと」
「ごめん!ごめんじゃ許してくれる、そんな事ないと思ってるけど…!分かってるんだ、話さなきゃいけないって…けど勇気なくて」
誠は勢いよく、頭を下げた。
「いや、いいんだ。誠をこう言う人にしてしまったのは、私が優柔不断だったせいだ。でも何で、あんな事したんだ?」
「それ、よく…母さんに言われるよ…。幸い名前と写真出なかったから、誰がやったとか分からないけど…。何でだろう、俺…美絵を困らせるつもり無かったのに…」
誠は下を向き、肩を振るわせた。
「美絵を独り占め、したかったんだ…。夏休み中家にいると、考えちゃって気づいたら動いてた」
誠は今にも泣きそうな顔で、前を見た。
「誰も、巻き込むつもり無かったんだ。でも本心は違ったみたいで…。こんな、自分辛くなって」
美絵は誠を見つめる。何故だか、時より傷が強く痛んだ。
「俺さ‥ここ出るつもりなんだ。大学も行けないし、美絵とも終わりだし。それに今の俺、受け入れてくれる人見つかったし。そっから再スタートするよ、頑張るから」
「誰?」
「堂麗奈…。実は言うと、少し前から連絡取ってたんだ。ちょっと前に再会して、ごめん言ってなくて。その時はまだ、メル友くらいだったから」
美絵の目が大きく開いたが、やがて目線を逸らす。
「そうか…。良かったな。実は言うと私も、新しい相手見つかったんだ」
「可楽?」
美絵は小さく、首を左右に振った。
「律次さん。無理だと思ってたんだが、お母さんが話してくれて許してもらった。今度から一緒に住むことになってる」
美絵は目を細めた。誠は少し、複雑な気持ちになる。まだ本気で、麗奈を愛せてないからだ。ずっと美絵一筋だった自分に、他人を愛せるか分からなかった。でもここを離れて、美絵を見なくなる日が長くなれば、次第に薄れていくかもしれない。そう思っての行動だった。
「俺なんかが幸せ掴んでいいかなんて、正直分かんないけど。母さんの事、楽にしてあげたいのもあるし」
「誰だって、過ち一つや二つある。それが偶々、警察沙汰になって。でもそれを責めてはいないよ、可楽さんだってそう言ってた」
美絵は、少し前に歩み寄る。誠は頬を赤く染め、一歩後ろに下がった。
「でも決してなんでも、やって良い訳ではない。それを刻んで、生きる事だ」
美絵は声のトーンを落とし語ると、家に戻って行った。
あれから1年経った。
「お姉ちゃん!卵焼き、焦げてるよー」
美絵は慌てて、ひっくり返すも黒くなっていた。智瑛理は横で苦笑いする。
「もう、卵焼きは簡単なんだから覚えなきゃ」
智瑛理は美絵から、フライパンを受け取ると焦げた卵をまな板に移す。焦げたところを避け、包丁を入れた。それを美絵は、横で見つめる。
「こんなんじゃ、私いつまで経ってもここ出ていけないじゃん」
智瑛理は、念願の大学に受かりこれからパティシエになる為アルバイトをしながら通う事になっている。
「でも、本当寂しくなっちゃうわねー。智瑛理たまには帰ってきてね」
母はテーブルを、セッティングする。
「当たり前じゃん、心配だもん。お姉ちゃんだけで家事やらせたら、なに起こるか…」
錦糸卵を作り、ご飯と混ぜた。
「何言ってるんだ!やれば私にだって、出来る」
美絵は慌てて否定した。
「まぁ、洗濯機を使えるようになったんだから前進したわよね」
母がニコニコする。美絵は真っ赤になった。
「私も出来る限りは手伝うから、無理しなくていいのよ。専業主婦でも、剣道の先生もあるんだしそこまで暇でもないんだから」
「でもお母さんも、仕事あるでしょ」
智瑛理もご飯を、お茶碗に盛る。
「おはよう。何か豪勢だなー」
父がテーブルを見て、しみじみ言った。焼き魚に筑前煮。ちらし寿司と味噌汁。
「祝い事だし、とりあえず。私の大学合格&1人暮らし&アルバイト先決定祝い的な?」
「おいおい、智瑛理は欲張りだな。まぁでも、頑張ったな。おめでとう」
父に頭を撫でられ、智瑛理は照れた。美絵は眩しかった。今智瑛理はすごく、幸せなのだろう。
「後さ、お姉ちゃんも。8段おめでとう、それと婚約も」
「ありがとうございます」
美絵が口を開いて言おうとしてた言葉を、襖を開けて入ってきた清高が先に言った。
皆が振り向く。清高が少し焦った顔を見せた。
「おはようございます。すみません、入ってはいけませんでしたか?どうも賑やかな雰囲気に、慣れてなくてタイミング測れなくて…」
美絵では無く、何故か智瑛理が顔を赤くして口元を押さえた。
「何その顔、反則!可愛すぎです!」
智瑛理が抑えきれず叫ぶと、美絵が頭を軽く叩いた。
「駄目でしょ、智瑛理ちゃん。お姉ちゃんの旦那様褒めちゃ。貴方にも彼氏居るんだから、妬いちゃうわよ」
母が苦笑いして言うと、頭をさすりながら智瑛理が言葉を並べた。
「だってだって、会ったばかりの頃はさつーめたい目しててさ。口もへの字で冷血人間の塊だった人だよ。腰には毎日拳銃つけてて、私怖かったもん。顔綺麗なのに、平気で人傷つけるし」
「何だか、酷い言われようですね。事実なので、否定できませんが」
清高はクスリと笑い、父親に促され座った。
智瑛理が顔を手で覆う。
「無意識で、女をバサバサと落として行くタイプだ!益々お姉ちゃんが心配だよー」
「あらあら、変な妄想モード入っちゃって。そんな事してたら、入学式遅れちゃうわよ」
母が智瑛理の背中を叩いて言うと、皆朝ごはんを食べ始めた。
「でも、いいの?美絵、本当に大学辞めちゃってこっちの道入って」
しばらくして皆食べ終わると、母は食器を洗う。美絵は片付けを手伝った。
智瑛理は着替えのため部屋に。父と清高は、身支度をしていた。
「いいんです。元々大学行くと決めたのは、里志さんとの約束で…もう居ないですし。それになりたいと、決めてましたから剣道やって来れたんです」
美絵は噛み締めながら語り、台拭きで机を拭く。
「お母さんも、ありがとうございます。律次…えっと…き、清高さん…の事…」
まだ言い慣れていないのか、美絵はつっかえながら言う。母は内心ウキウキしながら、笑顔で返した。
「いいのよ。結婚は好きな人として、1番のハッピイエンドなんだから。それを私は、手伝えて親として嬉しいわ」
「おーい、そろそろ行くからなー」
父が玄関から叫ぶ。母は水を止め、顔だけ出した。
「はーい、行ってらっしゃい。気をつけて」
それだけ言うと、また皿洗いに没頭する。廊下を歩く清高を見て、美絵はキッチンを出て後をついて行った。
スーツに身を包み、革靴を履く姿に少し美絵は頬を赤くした。
「遅くなります?」
美絵の一言に、清高は首を傾げた。
「どうでしょう。なんせ会社初日ですし。今のまでとは違う、サラリーマンとはどんな仕事かも分かりませんから。早めには帰りますよ、新人をいきなり残業にはしないでしょう」
美絵は焦った。確かに初日に、仕事内容が分かるわけがない。
「行ってきますね、美絵」
優しく微笑む清高に、美絵は顔を真っ赤にして下を向いた。
「行ってらっしゃい…。きっ、き…清高さん」
モゾモゾと言う彼女を、清高は愛おしげに見つめ美絵の顎を掴むと唇を重ねた。ねっとりと舌まで入りそうになり、美絵は身を離した。
「新婚は、するんじゃなかったですか?こう言う事」
「しっ知りません!それに入れないで下さい!」
清高は見透かしたような顔で見ると、ドアに手をかける。
「では、続きは帰ってきた後で」
その目がぞくりとする。清高が出て行くと、美絵はため息をついた。
「うわー、朝っぱらから出ずらー。ハート飛ばしちゃって、めっちゃいずらーい。それに朝だって言うのに、夜のラブラブ約束までしていいなー。私まだなのに…」
柱から覗くように、智瑛理が見つめて言う。振り向いて、美絵は智瑛理の腕を引っ張り玄関に連れて行く。
「何やってんだ!本気で遅れるぞ!」
「あー今日えっちするんだ!清高さんが、最近自分の部屋防音に改造したのその為なんだー!ずるいなー、ずるいなー」
智瑛理が拗ねて言いふらしていると、美絵は口を手で塞いだ。
「近所迷惑だ、叫ぶな恥ずかしい。それに何だその出鱈目は」
智瑛理はもごもごしながら、美絵の手を下にずらす。
「知らないの?防音になる壁紙、清高さん最近自分で貼ってたよ。えー知らないのー、将来の旦那様なのにー」
意地悪っぽく言う智瑛理に、美絵は靴を無理やり履かせ背中を押す。
「あー、もう!良いからさっさと、大学行け!」
「後から、根掘り葉掘り聞くからねー」
智瑛理がそう言うと、ドアが閉まった。
「じゃあまた後から、迎えに行くから」
一つの一軒家の前で車が止まり、運転席から女性の声が聞こえ降りた男が頷くと車は発進した。
ドアを開け、2階に上がりダンボールを持った。引っ越しして半年、アパートを片付け隙間が空いたので残りの荷物を取りに来た。
「これで最後かな」
周りを見渡し、すっかりもぬけの殻になった部屋を見つめる。懐かしさが、じんわりと体を通った。
ドアを開け部屋を出ようとすると、ダンボールから一枚の写真が出て床に落ちた。目で追い、それを見つめると心臓が高鳴った。高校での写真、当時好きで好きで仕方なかった女の子の写真。まだしっかり拭い切れていないのか、何故か捨てれなかった。拾うと、ダンボールに入れ直し下に降りて縁側を歩く。何となく外を見ると、洗濯物を干している隣の人が目に入った。見惚れて、手から荷物が落ちる。
白い大きなシーツが風に舞い、見え隠れする女性の顔。知っている、だってずっと好きで追いかけて拭い切れてないんだから。
縁側の石段に置いてあるサンダルに足を入れ、その子を見ながら歩く。触れたい、声久し振りに聞きたい。今の彼女はどうしているのか。別れてから電話も何もかも、していない。連絡を断ち切って、もう辞めたのに。見たら、止まらない。
彼が手を伸ばし、木を退かすとその音で相手と目が合った。彼女も手が止まる。
「ま…こと…」
驚いた顔で美絵は、その人の名を呼ぶ。誠は聞いた瞬間、足を動かし美絵の家の敷地内に入った。誠の顔に赤みが刺す。一年経ってまた綺麗になった、美絵に戸惑った。
「久し振り…。元気してた?」
ドギマギする、何でだろう。心臓まで大きく高鳴る。美絵はぎこちなかったが、笑みを見せる。
「あぁ、そっちは?」
「まぁ見ての通り、かな。今日はまだ残ってた荷物、取りに来てさ…」
誠は照れくさくて、頭を引っ掻いた。
「そか。麗奈とは、上手く行ってるんだな」
「うん。堂は美絵と会いずらいみたいで、買い物行ったけど…。近くにいるよ」
誠が下を向くと、目にきらりと光るものが見えた。美絵がそれに気づく。
「私な、近々…結婚するんだ。誠は、するのか?麗奈と…」
結婚の言葉に誠は、心が揺さぶられた。
別れたんだ、そりゃ結婚だってする。当たり前の流れだ…。
胸がキシキシと、痛んだ。唾を飲み込んだ。
「どうだろ…。分からない、まだ恋人みたいな行為もしてないし…。と言うか、まだ踏み出せてない」
美絵は苦笑いした。このもどかしい時間、苦手だが久し振りに人と話したような感じがした。誠は人と本当あの事の後、ずっと距離を置いていた。だから外の人と話すのは、本当久し振りだ。
「そう言えば、星野さんと末道君も半年前結婚した。写真…見るか?私、結婚式行って来たから」
美絵はスマホをポケットから取り出し、写真を出した。綺麗なウエディングドレスに身を包んだ、かかやが映っている。
「末道君が、誠によろしくって…。心配してたぞ。私を見るなり、星野さんも泣いて抱きついて来て焦ったし…」
写真をスクロールしながら、話す美絵を誠は眺めた。
「みんな、どんどん進んでいくな…。止まってらんないね。俺も、就活頑張らないと」
「焦るなよ」
2人は笑った。あんな事あったのに、こんな距離を許してくれる美絵には本当驚かされる。
「まことくーん、そろそろ行くよー」
誠の家の近くで、呼ぶ女の声がした。車のエンジン音も響く。誠が手を降り、家に戻るとダンボールを持ち車の方へ歩く。美絵は躊躇ったが、後ろをついて行った。
運転席から麗奈が、顔だけ出して覗き込んでいる。誠は後ろのドアを開け、荷物を乗せる。
「麗奈‥ご無沙汰、だな」
美絵が後ろから、顔を出した。麗奈がドキリとした。まともに顔を合わせたのは、何年ぶりだろうか…。喧嘩して、自然教滅した2人の友情。
「誠の事、ありがとう」
美絵がぎこちなく笑うと、麗奈はその顔を凝視する。
「み…え…。あんた、よく許したわね…。本当、可笑しいわよ」
「そうだな。大学で言われたよ、それは。でも事情は…、こちら側にもあるんだ。全てが、誠が悪いとまでは言い切れないから」
重たい空気が流れて、麗奈はため息を吐きエンジンを切った。
「遅すぎるのよ。気づくのが、色々と。これで終わりにしてよ、色恋沙汰をさ。私が責任持って、誠君の人生支えるから」
「するよ。もうみんな身を固めた事だしな。私も疲れた。大体望んでもない事だ」
「それに乗っかった、美絵も美絵よ。私も、まともになるわ」
麗奈が天を仰ぐ。
「あー、堂ってさ前水商売やってたんだけど。やめて今、やっと普通の職に着いたよ」
「なんで知ってんだ、水商売の事…」
美絵が誠を見ると、誠は目を逸らした。麗奈が身を乗り出す。
「それがさ、聞いてよ。私初仕事が、バブだった訳。でね、そこに来たのよ誠君が。それがさー言いづらいバブでさー。確か来た日って、美絵と喧嘩した日だっけ?」
「言うなよー!」
誠が必死に止めると、麗奈が「もう終わってんだから、いいじゃん」と言った。
「おっぱいバブよ。私もすぐ辞めたかったけど、お金欲しかったし。半年やったかなー。もう、いろんな男にあれよあれよと色々触られてヘド出るわ。あんなとこ」
それを聞いて、美絵は誠から離れる。
「別に行きたくて、行ったんじゃないって!友達に強引に引っ張られて、連れてかれたんだって。だから、触ってない!」
誠の顔に、麗奈は笑った。美絵もつられて笑ってしまった。誠は顔を真っ赤にした。
「おかしー、何別れた女の前で昔の事弁解してんのよ。言ったところで、何も怒りゃしないわよ」
誠は怒って、車に乗り込んだ。麗奈はエンジンをかける。
「ありがとう、美絵。あんたに会うの本音言うと、ちょっと気まずかったのよ。でも話せてよかったわ。また、会えたらもっとちゃんと話しましょ」
麗奈は手を振り窓を閉め、車を発進させた。
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後、1通。
『鈴風さん、あの時はありがとうね。私めでたく、明宏と婚約決定したから。後、結婚式決まったら呼ぶから待ってなさいよ』
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色んなことがあった。悪い事やいい事やあったが、進む以外道はない。
道着に着替え、髪の毛をポニーテールに纏める。道場を開けると、子供から大人までの教え子が美絵を見た。
「先生、よろしくお願いします!」
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「はい。よろしくお願いします」
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