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第8話 決着II
しおりを挟むかかやが、湯船にお湯を入れた。
「後少しで溜まるから、一緒に入ろー」
洗面用具を用意しながら、美絵は苦笑いをした。相変わらず、嬉しそうにかかやは美絵に微笑む。
「いやー、女の子がここに泊まるなんて初めてで浮かれちゃって。これからも用なくても、来てもいいからね」
爽やかにサラリといい、何と返せばいいのか分からず美絵は愛想笑いだけした。
そんなズカズカと、何度もおかけても、迷惑じゃないか?自分も学業があるし、かかやは仕事してるわけだし。
お風呂が溜まったアナウンスがなり、かかやが立ち上がる。
「さて、入ろっか。バスソルトとかバスボブとか入れる?このメーカー、気持ち良いんだよ。後であげるよ、智瑛理ちゃんにお土産としてさ。好きそうだし」
タンスを漁り、お気に入りのメーカーのバスボブを見せてくる。
2人とも裸になり、お風呂のドアを開ける。
「結構広いんだな…」
美絵がボソリと呟くと、かかやが腕を引っ張る。
「でしょでしょ~。ここに決めたのは、お風呂が案外大きいからなの。2人湯船入っても、案外狭くないんだよ」
「末道くんと、入った事あるのか?」
何気なく聞いた言葉に、かかやの体全部が真っ赤になった。まだお湯も被ってないのに、手まで熱い。
「まぁまぁ、そんな事より浸かろ」
掛け湯をして入る。確かにそこまで、窮屈ではない。
「湖太郎の事さ、なんか色々ごめんね。ちょっかい出すでしょ、あいつ。私も本気じゃないのわかってるけど、何かヤキモチ妬いて巻き込んで…」
「あ、いや別に。そこまで、気にしてないから」
少しくらい顔で、かかやが言う。美絵は慌てて否定した。
「美絵さんが綺麗でスタイル良いのも、十分分かってる。因みに、胸がおおきいのも」
かかやが横目で見つめているのに気づき、美絵は急いで隠した。
「だから、湖太郎は変な目で見るのも理解できるし。私だってかっこいい子見たら、キラキラするし否定できない。正直、真中さんの事見てアイドルみたいな目線送ってたのは事実だし」
「里志さんの事、そう見てたのか?」
「見るよ。何度か美絵さんを迎えに来てた時、女子のほぼ騒ぐしカッコいいし。紳士で色気もあって、全て様になってたでしょ。あんなの見たら、誰だって惚れちゃう」
美絵は当時の事を思い出して、顔を赤くする。
「だから、あんまし強く怒れない部分もあってさ。それに引き換え、誠君は美絵さん一筋で重たいくらいでしょ?誰にも揺らぐ事なく、どんな美少女が来ようと微動たりしないし。ずーと美絵さんだけ見て」
かかやは、ため息をついた。美絵は、何も言い返せなかった。大当たりだからだ。
「あれ見てたら、私はこの人無理って思ったわ。よく付き合ったよね、美絵さん」
「なんかもう、何も気を使わなくて楽なんだ。あいつといると、飾らなくてもいいし。何でも受け入れてくれるし。他の人といるといつも気を張って、自分が馬鹿みたいで」
美絵が、目を細める。
「重たいところは、疲れるが。別に好きになってしまえば、案外慣れるもんだ。やつはああ言うやつだって、思って仕舞えば扱いも楽だし」
美絵は語りながら、天井を見上げた。
誠の話をしてたら、何だか無性に会いたくなった。
朝、智瑛理は目をこすり起きた。空はもう明るくて、小鳥の囀りも聞こえる。冴えない顔で歩き、服を着替えると部屋を出た。静かな廊下。姉がいないなんて、ご無沙汰な感じ。智瑛理は一つのドアの前で、立ち止まった。ゆっくりとドアノブを回して、部屋を開ける。誰も居なかった。綺麗に布団も、畳まれている。元々里志の使ってた部屋。一昨日と昨日は、カナタが使ってた。けどもう誰も居なかった。本当にもう、帰ってしまったんだ。
答え出せなかったな…。でも嫌いとかそんな事、いきなりは無理。正直あの言葉だって、受け止めるには時間かかるのに。今度あったら、どんな顔すればいいんだろう。それまでにはちゃんと、答え出さないと気持ち的に無理な気がする。
「私だって、キスしたいしその先も…したいよ」
部屋に立ち尽くし、呟く。カナタとしたい、でもそうさせてくれない。カナタが智瑛理をそう言う目で見てくれる日は、永遠にないのだろうか。したくなったらセフレ作って、その人とすればいい。そんなこと言われたけど、彼氏がいるのにそんなの理解できない。今カナタは、セフレいるのだろうか…。脳裏に美絵の顔が浮かんだが、違うと首を振った。あり得ない、そんなの。
かかやは朝から仕事があるとの事で、美絵は早朝にアパートを出た。
駅に着くと電車に乗り込み、空いていたので椅子に座る。せもたれによりかかって、ため息をついた。帰るのがなんか、気が重たい。まだ智瑛理は、ピリピリしているのだろうか。
電車を降り、家に向うのが辛かった。
「美絵ちゃん?珍しいなー」
後ろから声をかけられ、振り向くとスポーツウェアに身を包んだ明宏がいた。
「運動ですか?」
「あぁ、長期休みだけやけどな。結構気持ちいもんやで。どなんしたんや….、浮かない顔して」
美絵は顔を上げ、苦笑いした。
「いえ、何でもないです」
「あっそういや俺、メグと付き合う事になったから」
間が開いた。遅れて、美絵がビックリした。
「えっ!あ…、おめでとうございます」
「嘘や、うそ。そんな訳ないやろ、振られてんやから」
美絵はからかわれてムッときて、睨む。
「美絵ちゃんは、そっちの方がかわええよ。暗い顔は、勿体無い」
「余計なお世話です!」
美絵はふいっとして、歩き出した。何故か明宏もついてくる。
「何でついてくるんですか?」
「何でって…同じ方向やから、家が。何なら今から来る?1人暮らしやから、気にせんでええで」
ニコニコしながら誘ってくる。美絵は笑えなかった。
「気にします!誰が、男の家に軽々しく行く訳ないじゃないですか!」
「別に俺、本命以外に家入れへんけど。だから、親とメグしかまだ入れたことあらへん。1人暮らし、3年経つけどな」
横目で美絵を見ながら語られ、美絵の顔が少し赤くなる。真剣に見てしまうと、本当里志と話してる感覚に陥って熱らしてしまう。
「どうや、案外誠実やろ?」
その言葉に美絵は、ついクスリと笑ってしまった。
「案外って、本当…変な人」
美絵の微笑む顔に、明宏は真っ赤になった。急いで違う方向を向く。美絵が不思議そうに、覗き込んできた。
「可楽さん?気に障りました?ごめんなさい」
「あ…いや、ちゃうねん。ほんま…怖いわ」
聞こえるか聞こえないかの位小さい声で、明宏は呟く。
「まぁええ。なんかあったら、話だけは聞くさかいどんどん言ってや。味方は、多いほどええからな」
「ありがとうございます」
お互い微笑み、明宏は軽く手を挙げると先に走って行ってしまった。
美絵も家に向かうと、真横にフードを深く被った男が横を通り過ぎた。なにやらずーと歩きながら、ブツブツ言っている。顔はよく見えない、背丈は美絵より大きかった。美絵は変な感じがして、足を止めてその男の後ろ姿を目で追った。ふと男の足の速さが、早くなる。美絵は身を乗り出した、男が向かっている先に見えるのは信号待ちをしていた明宏だったからだ。まだ彼は気づいていない。美絵は追いつく様に、走った。そして、男を追い越し明宏の背後に瞬間的に立つ。
「えっ!」
明宏の背中に何か当たった。声を上げ振り返ると、今さっき別れたはずの美絵が居た。明宏の背中に思いっきり当たり、ずるずると落ちて行く。
「なんや!どなんした、美絵ちゃん!」
美絵は明宏の背中にもたれながらも、懸命に踏ん張り手を伸ばした。男のフードを掴み、振り払う。そこには真っ青な顔をした、誠が立っていた。
美絵はバッグで刃物を咄嗟に防いだが、バッグを貫通しお腹に入っていて血が地面に滴り落ちる。
「あかん!血がっ、美絵ちゃん!しっかりせぇ!宮島君、なんて事っ!」
誠はその場に座り込み、震えて動けなくなった。美絵は痛みを堪えながら、力一杯刺さった刃物を抜いた。アスファルトに転がり落ちる。
「誠…ど、して…」
「だって!可楽以外もっ、他もみんな悪いんだ!み、美絵はっ美絵は…俺のっ」
誠は座り込み震えながら、叫んだ。明宏は急いでスマホを取り出す。美絵はそれを止めた。
「病院も…警察も…いい…」
「なんでや!まだ息あるうちに、病院行かんと!ほんま、死ぬで!」
「私が、悪いんだ…。居なくなれば、すこ…しは…楽…だろ。いい、これで…私は…里志さんのとこ…」
それだけ、途切れ途切れで語ると美絵は目を閉じ倒れ込んだ。アスファルトを赤く染める血の量は、尋常じゃなかった。深くないと思っていたが、予想以上に出血が多い。明宏は美絵の言葉を無視し、電話した。
「しっかりせえ、後少しで救急車来るさかい!」
明宏は、傷口をタオルで押さえながら懸命に呼びかけた。そして、動かなくなっている誠を睨む。
「警察も呼んだ、そこでちゃんと反省しろ!謝るのは、そっからや!」
誠は焦点が合わず、黙っていた。
その頃美絵の家には、電話の音が鳴り響いた。智瑛理が、ゆっくりと受話器を取る。
「もしもし、鈴風家ですが…はい。……えっ…
」
智瑛理の耳から受話器がずるりと落ちて、音声だけが鳴り響いた。それに気づき、母親が代わりに耳を当てた。智瑛理はその場に崩れ落ち、涙が溢れた。
病院内では、美絵を乗せたベッドが手術室に走って向かう。看護婦と医者が話をしながら、走り一つのドアが開き閉じられた。手術中のランプが光る。追いかけていた明宏が、息を切らしながらドアの前で立ち止まった。
「処置中ですので、関係者以外この先は入らないでください。先程、ご家族には連絡を入れさせてもらいました。ここで待ちますか?」
看護師が、立ち尽くしていた明宏の背後で語る。明宏は返事をし、近くの椅子に腰を下ろした。それを確認し、一礼をすると看護師は奥に姿を消した。
しばらくすると、智瑛理が病院内を走ってこちらに向かってきた。目はまだ涙で濡れている。
「かっ可楽さん…、お姉ちゃんは?」
息を整えながら問う。明宏がドアを見つめた。
「分からん。ただ救急車に乗る前、意識が途絶えたのは確かや…。あん時、美絵ちゃんの言う事無視して…はよ呼んどったら良かったんや…。何でっ…」
美絵の父親が、明宏の横に座る。
「ありがとう、美絵をここに運んでくれて。まだ後悔するには、早いさ。美絵は強い子だ…、信じて待とう」
父親が明宏の肩に腕を置く。明宏は下を向いた。ふと智瑛理が、ポケットからスマホを取り出した。
「そうだ、誠君に連絡しなきゃ。彼氏なんだし…」
「しんくていい。と言うか出来ん…」
その言葉に3人、明宏を見つめた。
「美絵ちゃんを刺したのは、宮島君なんや…。俺を庇って、美絵ちゃんは刺された。宮島君は今、警察署に居るはずや」
「何言って…。冗談、キツいですよ…」
智瑛理が、半笑いの顔で言う。明宏が、ゆっくりと顔を上げる。その顔は、怒りを帯びていた。
「いや、嘘あらへん。そないな事言って、どうする?ほんまの事や」
智瑛理が口を押さえ、よろけると母親がそれを受け止めた。
「それが本当なら…、貴方に誠君は恨みを持っていたのね…」
「もたれて当然だった、そう思います。俺は美絵ちゃんを、1人の女性として好いていましたから」
その時、手術中のランプが消えドクターが出てきた。父親が立ち上がった。
「ご家族のかたですか?」
「はい、あのっ娘は…」
「傷口は塞ぎました。それ程深くはないのですが、出血の方が酷くまだ意識はない状態です。今日から約1週間の間、意識が戻らない様でしたら命は難しいかもしれません」
看護師が奥から現れ、美絵が乗ったベッドが個室に運ばれた。医者がいなくなった病室で、4人は黙り込んだ。
「1週間…長い様で、短いわね…」
大きい機械に囲まれた娘を、母親は静かに見つめて呟く。
「運ばれる前、美絵ちゃんが言ってました。『自分が悪いんだ。居なくなれば、楽になるだろう。これで…里志さんのところに』って色々背負ってたんですね…」
それを聞いて、父親はため息をついた。
「情けないくらい、大馬鹿娘だな。心底、里志を愛してあの世であいつと会えると思ったんだろ。全く、後の事考えないとは」
「誠君に慣れない剣術させて、同じ大学通わせて…。その事美絵、後悔してたのかしら。美絵はうちの道場の、跡取りだったから」
母親は、ベッドに縋り付き泣きじゃくる智瑛理の背中を何度も撫でた。
「もう、道場の事はいいのよ。この際…辞めたって構わないわ。美絵が居なくなる方が、よっぽど辛いもの…」
母親の目にも、涙が溢れて流れた。ドアが開いた。点滴を杖代わりに、お爺さんが来たのだ。
「おやじ、大丈夫か?寝てても、構わないから」
「いや、大事な孫が倒れたんだ。おちおち寝てられるか」
美絵のベッド前に、お爺さんは立った。
「どんな理由にせよ、わしより早く死んだら…。全くの親不孝ものだ。そんな孫に、道場なんぞ継がせんぞ」
目を閉じている、美絵にお爺さんは喝を入れる。ドアが開き、看護師が入ってきた。
「鈴風さん、病室に戻って下さい。検査の時間です。それと、ご家族の皆様面会は19時までです。もし付き添うのでしたら、ナースステーションにお声をかけて下さい」
病室に向かう叔父を支え、看護師は一礼をし出て行った。
「付き添うなら、荷物を取ってこよう。智瑛理はどうする?」
智瑛理が、泣き腫らした顔を少し上げた。
「私、ここに残る。お母さん、私の簡単な荷物お願い」
それを聞き、両親も病室を出た。中は智瑛理と明宏、美絵だけになる。
「可楽さん…警察の事情聴取は…?」
「今日か明日、行ける時でええって言われた。すまないな、俺のせいで」
智瑛理は、首を左右に振った。
「この際、辞めましょう。攻めたって仕方ないです。…誠君、おかしかったんです…」
智瑛理は、服の袖で涙を拭いた。
「一回、誠君お姉ちゃんの事監禁した事あって。何されたかは、教えてくれなかったけど想像はできるし。それからかな…、誠君の独占欲が更に強くなったの」
智瑛理は語りながら、ズボンを強く握る。
「お姉ちゃんは、誠君の事ちゃんと…愛してたのかな…」
「好きでは居たんやろ。でも愛しては居なかった、が正しいかもな。宮島君の人生を狂わせたのは自分だって、相当攻めとったし。償いで付き合ってたか、あるいは里志さんの身代わりとして付き合ってたかのどっちかや」
「そんなんじゃ、誠君が独占したがるのも当然かもね…」
智瑛理がポツリと言う。
「知ってんのやろ。美絵ちゃんが、里志さんの次に愛した男…。そいつの事、呼んでもええか?ええなら、美絵ちゃんのスマホ借りて俺が呼ぶ」
智瑛理は、硬く口を閉ざした。
「私は、その人の事許すつもりない。家族みんなそうなんだ。だから、私がお父さんとお母さんに時間稼ぎする。その間だけなら良いですよ」
それだけ言うと、智瑛理は病室を出た。会いたくもないのだろう、明宏は机に置いてあった美絵のスマホを持ち電話をかけた。
しばらくして、ドアが開きスーツ姿の清高が入ってきた。椅子に座ってた明宏が、立ち上がった。
「宮島様が美絵さんをやって、この状況で私を呼んでどうするつもりですか?」
清高は冷めた口調と顔で言った。
「別にどうもしやへん。只お前さんを呼びたい、そう思ったんや。律次さんは、この美絵を見て…どうも思わへんのか」
清高は美絵に近寄り、1つ息を吐いた。
「思うとしたら、相当な馬鹿女とどうしようもなく情けないですよ」
清高は、目を開けない美絵の頬を撫でる。
「そして、そんな女を愛した私は…もっと大馬鹿なのかも知れませんね。私も残念ながら、里志様のことを愛して忘れられないでいます。私が死んだら、里志様に会えるかも知れませんが…美絵様は会えても罵倒されますよ」
「美絵ちゃんを嫌って、死んだんか」
「いえ、逆ですよ。綺麗に言えば、愛する者のために悪を切ったが似合いますね。私と里志様は悪人で…、美絵さんはそうでは無いからかも知れません」
明宏は、壁に背をつけ天井を見た。
「いや…、宮島君にとっちゃ美絵ちゃん悪人やったと思う。自分をここまで追い詰めても、手に入らんかったんや」
次の日、病室には、一つのベッドに母と智瑛理が身を寄せて寝ていた。父が先に起きスーツに着替える。智瑛理は、ずーと泣きっぱなしだった。目の下が真っ赤に染まっている。父は智瑛理と美絵の頭を、交互に撫でた。病室を出ると、廊下を歩いていた看護師にあった。
「おはようございます。鈴風さん、朝食はどうしますか?」
「おはようございます。私のはいいですよ。もう仕事に向かうので、娘と妻のをお願いします」
「分かりました。気をつけて、いってらっしゃい」
朝7時、2人はお互い頭を下げると父はエレベーターに向かった。
母親が起きて、横に寝ていた智瑛理を揺さぶる。
「あらあら、もうこんな時間…。起きなさい、今日確か部活でしょ?」
「…いやー行かない」
薄目を開け智瑛理は、母親の手を払い除けた。母がため息を吐く。
「美絵の事は、私が付いてるから大丈夫よ。お父さんも仕事行ったんだし、あなたも学校行きなさい。休む理由なんてないわ」
立ち上がりカーディガンを羽織ると、看護師が食事を持って入ってきた。
「失礼します。朝食です」
「ありがとうございます。ほら、智瑛理ご飯よ。食べましょ」
看護師が病室から出ると、不機嫌そうな顔で智瑛理が起き上がった。
「お姉ちゃんは?」
「昨日と変わらずよ…。いつ…目覚めるのかしらね…」
2人悲しい顔をした。朝ごはんを食べ終わり、智瑛理は制服に着替える。
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
「何かあったら連絡して。すぐ行くから」
智瑛理は鞄を持ち、外に出た。
時計は11時を回った。美絵は目覚める事なく、時間だけがただ過ぎていく。ドアからノック音が聞こえた。
「失礼します」
明宏だった。ラフな格好で姿を見せる。
「警察の事情聴取終わって、寄りましたけど。大丈夫ですか?」
「ええ、変わりないわ。お疲れ様、大学の方はどうだった?寄ったのでしょ?」
明宏は頷いた。
「部活の方は俺が、主将に言っておきました。騒ぎにはならない程度に。先生にも大方…」
「そう、ありがとう。ここにいる?私は、少し家に戻る予定だけど…」
「居てもいいなら」
母はニコリとして、許可すると病室を出た。同時に、ドアが開きメグが血相書いて来た。
「珍しいなー。何やライバルが心配か?」
「そんなんじゃないわ、真実を聞きに来たのよ。本当なの?誠君が殺人未遂なんて…」
メグがテレビをつけて、言う。テレビは、昨日の事が流れていた。
「ニュース自体は、そこまで長く言ってないけど、動画流れてて…。本気で鈴風さんの事、刺したの?」
「刺そうとした相手は、俺や。他もおったやろ、律次さんも中に入ってるかもしれへんけど、無理やから俺を狙ったのかもな」
メグは顔を真っ青にして、近くにあった椅子に腰掛ける。頭を抱え込んだ。
「もう無茶苦茶よ。あー何でこんな人、好きになったの私ったら。本当…見る目ないわ…。この女も馬鹿よ、フラフラして。もう、やだ…」
ネガティブなメグを目の当たりにして、真横で明宏はため息を吐く。
「宮島は、退学させられるやろうな。と言うかもうこれないやろ」
「明宏はどうするの?この女目覚めたら、また追いかけるの?」
顔を少し上げ、メグが呟く。
「どうしようかなー。なぁどうして欲しい?」
メグは真っ赤になって、黙り込む。その反応が不思議に見えた。
「こんな所で、不謹慎なのは分かってる。あのさ、あの言葉の返事私一回…断ったけど。まだ有効期限…ある?」
明宏がメグを見た。メグはまともに見れなくて、目を逸らした。
あの言葉とは、明宏がメグに対して言った「好き」と言う気持ちの事だろうか。
「清高に言われて、誠君以外にも実際いるだろって。ずっと否定してたの、自分の心で。私好きになる奴じゃないって。だから認めたくなかった」
メグはスカートを、硬く握りしめた。
「でも手放したくない、それは本音で。この気持ちが、もしそれなら…。私は明宏の事…」
「あるわけないやろ」
冷めた言葉に、メグの目が大きく開き固まった。
「お前に告白した時、もう全部曝け出してこの世が終わってもええって思った。中学からずーと追いかけて、告ったらお前どう言う顔したと思う?」
明宏の顔は怒りに満ちていた。
「笑いながら、『無理、ありえない。あんたと私が、付き合えるわけないじゃん。セフレから恋人、お腹痛い』。それ言っといて今更、何やねん。人の気持ち、貶してから言う言葉ちゃうやろ」
もちろんメグは、その時の事しっかり覚えていた。明宏の本音を聞いて、震えた。
「俺はな、美絵ちゃん目覚めたら支える。こんな事起こって、まともに人生歩める奴なんかおらんのや。確かに美絵ちゃんにも、俺は振られてる」
明宏は美絵を見つめて、語り出す。メグの心にズキズキと、矢が刺さる感じがした。
「でもな、メグ見たくエグい形で振られてはいない。決して美絵ちゃんは、人の気持ちを笑ったりしないでちゃんと受け止めてから答え出す。そんな子やから、まだ追いかけたくなるねん」
メグは無言で立ち上がった。ここに長くいたら、苦しいだけ。
「あら?美絵の同級生さん?初めまして、美絵の母です。えっと…」
その時、美絵の母親が帰って来た。メグはドアの方に向かい、隣を通ると「失礼しました」とボソリと呟き出てってしまった。母親はそれを見て、ビックリする。
「あらやだ、入っちゃいけなかったかしら。ごめんなさいね」
申し訳なさそうに言うと、明宏が笑った。
「大丈夫ですよ。話はすみましたし、それとあの1つ話したいことあるんですけどいいですか?」
「そうなの?話?私でいいのかしら」
明宏は頷いた。面と向き合うと、本当母親は美絵とそっくりで思わずドキリとしてしまう。
「美絵ちゃんから俺は、正式に許婚は解消されてます。でも俺は、美絵ちゃんがどうしようもなく好きで。もし目覚めたら、支えるつもりです」
母親は口元を抑え、驚いていた。
「振られるのも承知ですし、図々しいのも分かってます。でもこんな事起こって、普通に人生歩めなんて無理ですよ。だから俺が今度は、宮島君の代わりになりたいんです」
「あらあら、モテるわね~美絵は。あんなぶっきらぼうで、無愛想なのに。私は構わないわ。それを良いと決めるのは、美絵だもの」
3日目の夜中、まだ皆が目覚める前の時間。夢の中の美絵が、目覚めた。起き上がると、目の前は真っ暗です壁一面真っ暗だった。あたりを見渡しながら、体を起こした。体がふわふわする。地面を足が、踏めていない感覚だった。
「ここは…そうか私、まだ意識戻ってないのか…」
暗い表情で呟いた。心配しているだろうか…。誠はどうしてるのか、そればかりぐるぐるする。
「何故ここにいる、美絵」
後ろから男の声が聞こえて、振り返った。顔が見え、美絵は泣きたくなった。
「さっ里志さん!私、やっと…会えた…」
美絵は里志にしがみ付いた。里志が死んで、どのくらいだっただろう。話したいこと沢山あって、でも叶わなくて…。
「あー、そうか。美絵お前、今は地獄と天国の境目に居るのか?つまり未だ、現世にも戻れる」
「私っ、里志さんと居たいです…。私居ない方が、みんな悩まずに…。それに私、里志さんの事好き…」
言いかけて、里志は美絵を突き飛ばした。美絵は、驚いて座り込む。
「何言ってる。お前は生きろ、死んで当然の人じゃない。それに死んでも美絵は、俺と一緒には居れない」
突然2人の間に、ものすごい勢いの炎が立ちはだかった。里志が遠くに感じる。
「俺は地獄だからだ。美絵は死んでも、悪人ではなく天国だ。その違い分かれ」
里志が見えなくなっていく。それと同時に、炎も強くなった。美絵は必死に、手を伸ばした。届かない、結局は一緒に居れない。美絵は辛くて、涙が流れた。
外に出て、飲み物を買ってきた母が病室に入るとペットボトルが手から落ちた。美絵の顔を見て、口元を抑える。
「うそ…、なっナースコール…」
母は、慌ててベッドに近寄るとボタンを押した。美絵の目は閉じられているが、涙が流れていたのだ。
この日も部活で、学校にいた智瑛理が呼ばれて戻ってきた。横にはカナタが居る。
「お姉ちゃん、意識戻ったの?」
母が首を振る。医師によると、意識は戻っていないものの、戻る可能性は高いと言われた。
「意識はまだ….。でもね、泣いてたのよ。美絵の瞳から、涙が出てたの。美絵、戻ってくるわ」
「よっ良かったぁ…」
智瑛理は、泣きながらその場に座り込んだ。
「高校も騒ぎ酷くて。卒業生の話で目立つ2人だったから、余計…。でもこれで1つ、安心しました」
カナタが、ホッとした。母も少し微笑んだ。
「そうね、でもまだ意識が戻ったわけじゃない。確率が高くなっただけで、油断はできないわ。いつまた下がるか…」
智瑛理は立ち上がり、美絵のベッドに近づくと手を握った。
「お姉ちゃん、帰って来て…。死んじゃ、やだよ…。私、お姉ちゃんの事憧れだもん。これからもずっと、追っかけさせてよ」
カナタが、智瑛理の横に立った。彼女の頭を撫でる。その行動に、智瑛理はビックリして顔を向けた。
「もう、あんな事言わないよ。好きで居る、ちゃんと大事にするから智瑛理ちゃんの事。
時間かかるかも知れないけど、ダメ…かな」
そんな2人を見て、母は席を外した。ドアの音を聞き、智瑛理はカナタの袖を掴んだ。
「本当に?私の事、そういう対象として見てくれるの?」
「努力する。僕みたいにこう言う気持ちで、近づいて美絵先輩がまた同じ事なったら辛いし。好きな人が手に入らなくて、刺す…そんな事起こらない様にする為に」
カナタは微笑んで、智瑛理を優しく見つめた。するとカナタは、急に距離を縮めて来た。
「じゃあ、手始めにキスからしよっか」
それを聞いて、智瑛理は真っ赤になった。両腕を掴まれ、あたふたする。お構い無しに、カナタが近づいてくる。
「こっここ病室…だし。そ、そそれにっお姉ちゃんっ…」
1人で慌てて居る智瑛理の口を、カナタは唇で塞いだ。心臓が煩いくらい鳴り響く。智瑛理は、動けなくなった。体が火照って、熱い。唇が離れると、智瑛理はとろけた顔になっていた。カナタは、彼女の唇を親指で撫でる。
「可愛い。ねぇ、口…開けれる?」
智瑛理はもうどうでもよくなって、ゆっくりと口を開けた。
「良い子」
カナタが色っぽく呟き、智瑛理の口の中に自分の舌を捩じ込んだ。ディープキス、智瑛理は気持ち良くて身を捩った。口の中が犯されてる感じがして、ゾクゾクする。
ずーと姉が羨ましかった。美絵はこう言う事を先にしていて、知りたかった。どんな気持ちになるのか…。
それまでずっと、架空の世界漫画の世界でしか知る由のなかった。
唇が離れて、カナタがニコニコしながら聞いて来た。
「どお?初めてのキスは?」
智瑛理は、もう全身真っ赤になるくらいドキドキしていた。
「凄く…気持ち、良かった…です…」
カナタがまた頭を撫でる。
「人が、倒れてる時に…呑気だな」
ふと横から声が聞こえ、2人同時に振り向く。
目を開けて、睨んでいた美絵がいた。
「えーー!」
智瑛理の叫び声に、母親が急いで入ってきた。
「どおしたの?」
智瑛理は目を擦ったり、頬を叩いたりしていた。
「痛い…。って事は、本当!本当に」
美絵がゆっくり体を起こそうとしたが、体のあちこちが痛い。流石に無理だった。
「美絵ー、良かった」
母が美絵の手を握った。カナタは呆れた顔で、ナースコールを押した。
医者が来て一通り検査をする。
「うん、安定してるね。でも意識が戻ったからって、油断はしちゃダメだよ。急に動いて傷口が開いたら、大変だからね。暫くは安静に」
医者が出て行くと同時に、父と明宏が入って来た。
「入り口でばったりあって…、いや…本当良かった」
父は嬉しさを噛み締めた。
「おやじのところ、行ってくる。心配してたから」
「私も行く。久し振りに顔出すよ」
父と母、智瑛理が揃って病室を出て行った。急に静かになる。美絵が体を起こそうとしたので、明宏が背中を支える。
「すまない。すっかり、お婆さんみたいだな」
美絵が照れた笑みを見せると、カナタと明宏の顔に赤みが刺した。
弱っていて、可愛い。こんな美絵が見れる事は、まずない。
さっき努力すると言ったのに、カナタの喉がなった。
「心配したんですよ。学校でも、大騒ぎで。智瑛理ちゃん、毎回囲まれてましたし」
カナタは気持ちを押し殺し、口にした。
「その件に関しては、謝りきれないな…。もう…報道、されて居るのだな」
「あぁ、もうあまり見かけなくなったが。1日2日はテレビで、何度か報道された。まぁ俺たちはまだ未成年だし、名前はでない」
明宏の言葉に、美絵は暗い表情で下を向いた。
「噂ってやつですよね…。SNSでも先輩たちの姿、流れてましたし。あー言う無神経な奴ら、本当勘弁してほしいです」
「そう…か…」
美絵は硬く布団を握りしめた。
「でも、こうやって美絵ちゃん戻って来たんや。ほんま良かった。これからは、俺が守ってやるさかい心配せんでええ」
明宏は身を乗り出し、美絵の髪の毛に手を乗せた。
「あ…いや、自分の身くらい…自分で…」
「強がるな。俺が、護りたいんや。せめてもの恩返し、これからの人生俺に護らせてくれ」
「こっこれからって…。そこまでは…、それに恩返しも要りません。これは、私が悪くて…だから」
美絵は焦った。そんなの望んでない。
「誰だか知りませんけど、美絵先輩を困らせないで下さい」
カナタがムスッとした顔で、明宏に掴み掛かる。
「あー失敬失敬。自己紹介まだやったな。俺は可楽明宏、美絵ちゃんの同級生で元婚約者や。よろしく、可愛い顔した男の子」
笑顔で明宏は言った。カナタは気に入らなかったのか、更に怒りのボルテージが上がっていく。
「僕は、大空カナタです!最後の言葉は、からかってるのですか。元婚約者って、振られてるくせによくもまぁズルズルと」
「君かて、なんでピリピリしてんのや。見たところ彼氏ちゃうやろ。どっちかと言うと、智瑛理ちゃんの彼氏やろ?そしたら何、君も美絵ちゃんの事好きなんか?二股か」
カナタは黙った。痛い所突かれた。美絵はそんな光景を、寂しそうに見つめる。
「思ったんだ…。私が居なければ、誠の人生狂わせなかっただろうにと。そうすれば、私と付き合って武道の道も大学も…強制せずに。自由に、伸び伸びと生きていけるのにと。こんな結果にも、ならなかったのにって」
美絵の言葉に、2人の動きが止まった。
「あの時、一層の事…死んでしまったら良かったのにって…。何で、鞄で邪魔してしまったのだろう。深く…もっと深く行ってたら、こんな事…」
明宏は、勢い良く美絵の両肩を掴んだ。病衣に皺が寄る。
「頼むから…頼むから、そんな事…。そんな寂しい事、言わんといてな。あれは、美絵ちゃんを勝手に好きになった俺たちのせいなんや。少なくとも俺は、美絵ちゃんと会えて…嬉しく思う」
明宏もまた寂しそうな顔で、微笑んだ。
「宮島も美絵ちゃんも、悪くないんや。そうさせた俺達が、悪いんやから。せやから、これから護らせてくれって言うたんや。俺が素直にメグ一筋で居れば、こうはならなかったんや」
「でもこんな事起こったら、もう先輩は宮島先輩と付き合えませんよね…」
カナタがボソリと呟くと、明宏がニヤニヤする。
「そりゃ家が怒るやろ。せやから、俺と人生歩む他ないやん。それか、律次でも呼ぶか?」
美絵は顔を真っ赤にした。布団で顔を隠す。
「いや…。呼ばないで、くれ…。こんなかっこ…恥ずかしい…」
「もう見てるで、律次はその格好。何や美絵ちゃん、まだ気になってんのか奴の事。みんな結局、ズルズルやん」
美絵は益々身を小さくする。不思議と笑みが溢れた。
やがて父親達が戻ってきて、智瑛理は美絵に抱きついた。
夢の中で、里志に生きろと言われた。死んでいい人間ではないと…。それが本当かどうかなんて、分からない。でも戻ってきたんだ、その言葉に背中を押され。そうならばちゃんと、生きなければ。
4日目、朝の検査に体調チェクも済みやる事がなくてベッドに横になった。少し開けてある窓からは風が入ってきて、カーテンを揺らす。今年の夏は少しばかり涼しい。
父と母も仕事に行き、智瑛理とカナタは学校。誰も居ない静かな病室。白い天上ばかり見て、飽きてしまい寝返りをうった。こんな事なら、本とかを持ってきてもらうべきだった。朝の10時、あと少しでお昼。動かないせいかあまり、お腹が空かない。でも食べなければ、体力がつかない。口からはため息が漏れた。
ふと病室のドアが開いた。
「誰も、いらっしゃらないですか?」
スーツ姿の清高が、微笑みながら近寄ってきた。美絵は顔を赤くし、布団で隠した。清高はクスリと笑い、椅子に座ると布団を掴み少しずらした。美絵と目が合う。
「目が覚めたのですね。良かったです」
優しい顔、いつも冷酷な彼が嘘の様だ。大っ嫌いと言った。なのにまた会えた、美絵は妙な気持ちになっていた。
「り、律次さん…。どうして、ここに…」
「失礼ですね。これでも、心配してたんですよ。本当無茶ばかりして、馬鹿もこれっきりにして下さい」
清高は美絵の頭を撫でた。心地いいのと恥ずかしさで、美絵は居た堪れなかった。
不意に清高が顔を近づけ、布団を掴んだ。
「もっとよく顔を、見せて下さい。久しぶりに会えたのですから」
美絵は強情に、布団から手を離さない。一瞬清高の力が勝ち、ずれると口元が見えその瞬間を逃さなかった。清高が強引に、美絵の唇を捕まえてキスをした。
美絵の体の奥が、ぞくりとして痺れる。
「やはり、触れるなら貴方がいいですね」
離れると、清高は撫でる様に手を美絵の頬に滑らせた。
「他の人…触ったの、ですか…?」
「さて、どうでしょう」
美絵の心臓ばかりうるさく鳴り響いて、穿り出される。美絵は下を向き、清高を突き放した。
「大っ嫌いと言ったはずです。掻き乱さないで、下さい…。私はっ私…は…」
「メグさんと婚約は、破棄しましたよ。貴方が言ったのです。メグさんは明宏さんが、好きと気付いた様ですよ」
美絵が瞳を逸らした。
「まだ…告白されてらっしゃっらない、と言うことでしょうか…。してたらきっと、可楽さんは私にあんな事」
「されたよ、メグには告白」
ドアが開き、明宏が真顔で言った。
「あんな女やとは、思わんかった。こっちからごめんや。今頃泣いてるんやろ、あんたが慰めたら?律次」
清高は明宏の方を見ながら、美絵の頭を撫でた。
「何故、好きでもない女性を慰めなければならないのですか?生憎、自分は美絵様の相手で精一杯な物ですみません」
美絵はどうしていいか、分からなくなった。あまりにも周りが変わり始めている。
明宏はズカズカと歩き、清高の手を振り払った。
「美絵ちゃんは、俺が全て面倒見る!襲われた時、そう決めたんや。これ以上もう、困らせんな」
「辞めてください!」
美絵が、我慢できず割って入る。
「私の事は、私の気持ちは…どうして聞いてくれないのですか?皆さんで勝手に決めて、私は望んでません」
明宏が、身を離した。その拍子に肘がテレビのリモコンに当たり、テレビが付きニュースが流れた。
『東京駅付近で起きた、傷害罪の罪問われているの犯人の男子大学生は昨夜釈放されました。被害者の証明で殺意が無かったことが、認められたとの事です』
明宏が、慌ててテレビを消した。部屋が静まり返る。誠の事だとすぐに分かったからだ。
「まぁ、良かったってことや。前科は出来てしまったけど釈放されたんや。で?さっきの事やけど、気持ちって?まだ宮島に未練あるんか?」
「私はまだ、誠と別れてなど」
「あかんやろ。また家族に逆らうんか?律次の時やて、あかんから俺と婚約させられたんやろ。宮島がこんなこと起こしとらんかったら、あのままで良かったかもしれん。でも今ちゃうやろ」
美絵は、耳を塞いだ。分かっている、そんな事。
「分かっている。でも私は…可楽さんの事、好きとかそういう目では見れないんです。だから守るとか、良いと言ったんです。私は、大丈夫だから」
「あんな事あって、自分を責めずに歩んでいけるのか!いなくなられちゃ…嫌なんや。美絵ちゃんは、何とも思ってへんでもええ。そんなん、分かっとる」
明宏が、優しく美絵を抱きしめた。
「そんなら俺が、勝手にやる事にする。文句無しや。人肌恋しくなったら、俺を呼べばええ。話聞いたる」
「でも、抱かれるのはやはり…好きな人が良いのでは?」
離れていた清高が呟き、美絵は頬を染めた。明宏は、美絵から身を離す。
「なにが、負けてるのか分からんなー。何で、律次なんだよ」
「それは1番、美絵様がご存知なのでは?」
2人に見られ、布団で顔を隠す。
「俺より、こいつの方が抱くの上手いんか?」
「そっそんなの、知りません…」
「じゃあ賭けますか?美絵様がここを退院した後、どちらが上手いか」
清高が、冗談なのか本気なのか分からない事を言ってきた。
「ええよ、俺これでも40人近くセフレ居たらかなー。舐めんなよ」
「へ、変な賭けしないで下さい!」
明宏は怪しく笑みをこぼし、美絵の髪の毛を弄んだ。
「ええやないの。2人で、可愛がってあげるゆうてるんや。めぇいっぱい、その口で愛らしく鳴いてればええんや。美絵ちゃんは」
ゾクっとして、体全身が熱った。
軽いノックが聞こえ、2人が離れると看護師がランチを運んできた。
「1時間後くらいにまた、下げに参りますね。では、失礼します」
看護師が部屋を出た後、美絵は2人を睨んだ。
「食べずらいので、出てって下さい」
怒られてしまい、2人は仕方なく休憩室に入った。
「帰らないのか?」
明宏が清高を睨み付けた。
「帰りますよ、ご家族が到着する前には」
清高は近くにあった自販機にお金を入れ、コーヒーを2本買うと1本明宏に向かって投げた。明宏は少し驚きながらも、受け止める。
「何で、お前は美絵ちゃんを今ターゲットにしてんだ?」
明宏は手のひらで、缶を転がしながら問う。清高は壁に背をつけ、コーヒーを一口飲んだ。
「何ででしょうね…」
ボソリと呟いた答えに、明宏はイラついた。
「お前!」
「これが、自分でもよく…分からないんですよ。恥ずかしながら。私たちは所詮、関係すら許される存在ではないのに求め合う。慰め合ってる方に、近いのかも知れません」
清高は、静かに語り出した。明宏は掴みかかるのを、やめる。
「お互い元は嫌いな存在で、好きな人は一緒。でも2人して想いを告げられず、相手は死んで。立場はよく似ていました。ただ違ったのは、美絵様はその殿方に好かれてました」
清高は、喋りながら遠くを見つめる。
「あの方が死んで、知りたくなったのです。私が欲しくて止まなかった、あの人はどんな奴なんだか。初めはそれだけの気持ちで、偽りの言葉を並べて行動をして抱きました」
清高の口元が歪み、コーヒーを飲み干し缶が片手で潰れる。
「憎んで居たんですよ。殺してやりたいほど、なのにどんどんハマっていって。最後には、物にしたくなった。銃口は向けられない程、愛しくて堪らない存在に至るとは思いもしませんでした」
「真面目で、汚したくなるほど真っ白で。壊したくなる程、無垢な子や。一度壊してみたくなるような、感情に持ってかれる。そんくらい、美絵ちゃんは無意識な魅力があったんや」
明宏も、口を開いた。清高はそんな彼を、片目で見つめた。
「押さえつけたら、壊したくなってくるんや。あー、こうやって鳴くんやな。なら今度はここはどうなるんやろ…。これを口にしたら、どんな反応すんのやろって。そればっか、美絵ちゃん相手だと試したくなる」
明宏も缶の口を開けた。
「まるで、新しいおもちゃを与えられた子供のようになってしまう」
「寂しがり屋を強い口調と、行動で隠してるんですよ。物凄く、不器用なのに…。可愛いですよね」
「あぁ、掻き立てられるくらいかわええ。せやから、手放したくないんや。笑ってたり泣いてたりしてると、キスしてメチャクチャにしたくなるんや」
お互い深み笑いすると、足音がして振り返る。カナタが立っていた。
「僕もです。今までは智瑛理ちゃんを利用して、先輩に近づいて抱きたいと思ってました。でも僕に対しては、貴方達みたいに先輩は心許してくれませんでした」
カナタは歩き2人の間に入る。
「それは多分、智瑛理ちゃんの彼氏だからだと思います。もう決めたんです、これから先輩を困らせない様にするって。でも、一度でもいい。抱いてみたいんです」
「なんなら、参加してみるか?俺ら、美絵ちゃん退院したら可愛がろうって話してたんや。なんなら入ってみる?それでやめて、妹ちゃんの彼氏真面目にやるんやろ?」
カナタの顔に少し赤みが刺したが、振り払い頷く。明宏がカナタの真横を通り、カナタの頭を軽く叩いた。
「もうそろそろ、1時間経ちますね。病室行ってください。私は帰ります。大空さんが来たって事は、そろそろ妹さんさんも来るでしょうから」
清高はそれだけ言うと、エレベーターに乗り込んだ。
2人は智瑛理の来るのを、そこで待ちさらに1時間後彼女がきた。
3人で美絵の病室に入る。
「智瑛理…、丁度良かった。私、明後日退院する事になった」
智瑛理は、笑顔を見せ美絵に抱きついた。
退院する1日前。美絵は、プリントを眺めていた。さっき大学の先生が見えて、話をし授業の簡単なまとめを貰ったのだ。
正直これからどうしようか、悩んでいる。もう1週間も大学休んで、授業も進んでいる。そんな当たり前なことが、これで改めて知らされる。
大学、なんのために行ってるんだろう…。最初は里志との約束の為、進学を目指した。でももういなくて、正直剣道の練習だってスキルだって家で出来る。勉強したところで、何かになりたいわけでもない。元々生まれた時から決まっている、人生でもう叶うのだから必要ない。
「辞めて…しまおうか…」
「何をですか?」
ボソリと呟いた声に、問いが来た。振り向くと、清高がいた。
「いえ、何でもないです。あの…そんなに毎日ここに来て、大丈夫なのですか?」
「今情けないですが、無職ですし。毎日シェルターに閉じこもってるのも、憂鬱ですから。正直行くところないですしね」
美絵はプリントを仕舞おうと、紙袋を開けてると1枚清高が取った。
「歴史ですね…。美絵様、大学…どうするおつもりですか?」
美絵は下を向いた。まさにそれを、今思っていたのだ。迷っている、口を閉ざしていると清高が頭を撫でてきた。
「辞める、辞めないも貴方自身ですよ。辞めたら…何をしたいですか?」
「辞めたら、私は道場を継いで。お祖父様がやってきた様に、先生になるのだと思います。いろんな生徒、を引き連れて…。大会にも参加するかは、分かりませんが」
「恋は?恋愛はしないのですか?」
その言葉に、美絵は布団を握りしめた。
「どうでしょう…。恋愛したら、必ず不幸になる人が1人でも出来てしまう。ならしない方が、いい様な気がして」
もう、誠の様な人を作りたくない。作ってはいけない、だったら自分は恋しない方がいい。
「当たり前ですよ、恋愛すれば誰か必ず不幸になる人が出来る。それが恋なんです。何てそんな事、語れる立場でもないですが。いつまでも貴方は、男に囚われ過ぎてます」
頭を撫でてた手が、肩に触れる。
「私はもう、里志様を思うのはとっくに辞めましたよ。まぁ箪笥にしまった、の方が正しいですね。だから貴方も、2人の事もうしまって改めて考え直すいい機会かもですよ」
「いい機会…。私は誠の事、好きでやり直した。でも…分からなくなってる。誠は私と付き合い始めてから、変わったんだ。怖いくらい…」
美絵は自分自身を、抱きしめる。服に指が食い込んだ。
「人を刺すなんて、そんな事何で実行しようなんて思う奴じゃなかったはずだ。私が、壊したんだ誠を…。だから…私が、私が…」
美絵の目には、涙が溢れた。清高が、優しく抱きしめる。
「人は必ず一度は壊れます。私も壊れました。今その状態です。貴方に会って、みんな壊れるんです」
美絵の顔が真っ青になる。みんな自分のせいで…。
「いい意味ですよ、私にとっては。そのお陰で今こうやって、生きれて貴方を抱きしめて悦びに満ち溢れてます。生きる喜びを、貴方が今くれてるんです」
涙で濡れた顔を、美絵は清高の肩に預ける。
「貴方を好きにならなかったら、私は里志様の後を追って、死んでましたよ。そこまで私は貴方に、里志様を思う気持ちを壊されたのです」
清高は美絵の耳に唇を寄せ、「ありがとう」と呟いた。とても心地よかった。
「美絵、もう1度…恋しませんか?私に」
耳を舐められ、逃げる様に離れると清高は美絵の唇を塞いだ。
その時退院の手続きを終えた、母が病室のドアを開けた。入ろうとのぞかせると、すぐ閉める。美絵が清高と顔を寄せているのを、目にしたのだ。律次清高、前に叔父を殺そうとした相手であり里志を死刑に追い遣った張本人。無人島で何があったか知らないが、事件に巻き込まれ助けてくれたと美絵は言っていた。美絵は、清高を好きなのだろうか…。とても幸せそうだった。清高の職業は執事だ。主人に忠実で常にその考えを曲げず、何事にも従う。それがもし仕事としてのことで、本能ではないのなら。叔父の件は、許せるのではないか?許せる行動だったかと言われると、全くそうではないのだが。
実際叔父が死んだわけでもない。
母はまた病室のドアを開け、中に入った。それに気づき、清高は目を見開いた。美絵も心臓が強くなるのを抑える。
「久しぶりね、律次君」
母は美絵を見ずに、清高の方に目をやった。
「そうですね。お元気そうで」
「ええ、お陰様で。まぁお爺さんは、癌で元気とはまではいかないけれど」
少しピリピリとした空気が漂って、美絵は唾を飲み込んだ。
「ところで、私の大切な娘に何をしていたの?貴方達、どう言う関係?」
「おっ、お母さん…あ、あの」
「片思いですよ。私の一方的な」
美絵の前に清高が立ち、淡々と語る。美絵の目が大きく開いた。
「だって、そうだろ?美絵様から言われてないし、好きだって」
ぶっきらぼうな口調だが、瞳は試す様な目をしていた。
ここで好きだなんて言ったら、母は軽蔑するだろうか。大っ嫌いって言ったのに、嫌いになれない。壁を貼って、誠と付き合って。でも、まだ隅にいた。清高がいいって思う自分が。
素直に言っていいのだろうか。
「好きなんでしょ?だから、キス拒まなかったんじゃない?違うかしら、美絵」
その時、智瑛理が入って来た。3人を見て、ビックリする。
「知ってたんでしょ?智瑛理、美絵が律次君のこと好きだって事」
智瑛理は、母の言葉に息を呑んだ。
「おかしいと思ったのよ。じゃないと婚約者候補を、せがんだりなんてしないはずだし。でも無理だった、だって美絵…頑固だから」
3人は口を閉ざす中、母だけ語り続ける。恐怖でさえ、感じた。
「どっちが誑かしたの?」
にっこりと微笑み、2人に問いたが分かっている様なそぶりだった。
「辞めてちょうだい。殺人未遂の分際で、人の娘誑かさないで。警察に突き出さなかっただけでも、ありがたく思う事ね」
「そうですね。鈴風家の方は未遂でしたが。私はこれまで、数えきれないほどの人々を殺めて来ました。それが指名、仕事ですから」
冷めた口調で、清高も言い放つ。清高は美絵の肩を軽く叩くと、席を外そうと歩み出した。
「仕事じゃなかったら、殺してなかった?」
「ええ、だって理由無いじゃないですか。私に被害加えた、とかじゃ無いですし。私の仕事は主に執事か、SPですから。では失礼します、ご家族を壊したく無いので」
「待って!」
ドアに手をかけた、清高の手が止まる。美絵がベッドから身を乗り出し、声で引き留めた。
「私が律次さんと歩むのが、この先無理なのでしたら説得します。お祖父様と約束したんです。継ぐのは破りたく無い…。けど、私は…私はお母さん…禁忌を犯す事許して下さい」
美絵に背を向けていた母の背中を、美絵は見つめた。
「殺人鬼を好きになる決していけない事だって、承知です。ですが、私は…好きなんです。どうしようもなく、律次さんが」
「そうよ、里志君と同じ殺人鬼。でも里志君も律次君も、決して自分の意思でやったのではい。上の指示でやってた。そして今、執事を降りて貴方は自由ね。あれから殺しはやったの?」
「いえ、無人島でやったので最後です。でもあの時は、美絵様も人を何人も殺めてます。まぁ警察の許可降りてましたから」
母はまた微笑んだ。
「そうね。理由があってやってたのよね。意思ではなかった、それを聞きたかったの。いいわよ、美絵…好きになっても」
美絵の方を向いた母は、いつもの優しい母だった。
「お母さん、でもそんなの」
智瑛理が反論する。
「快楽のためだとか、自分の気持ちでやったとかでは無いんだもの。もしそうとしたら、無理にでも離すわ。美絵だって、殺されちゃうかもしれないじゃ無い。違うなら、大丈夫よ」
智瑛はまだ困惑していた。母は清高と美絵を、交互に見る。
「大丈夫よ、私が言うわ。美絵には小さい頃から、縛り付けて苦労させたのだから。ごめんなさいね。嫌だって言う気持ちもあったろうに、剣道と勉強の両立大変だったでしょ?ろくに友達も作らず、遊ばず恋愛もせずに…」
「そんな私、思ってません。むしろその選択がなかったら、将来悩んでました」
母と美絵は笑い合った。
横で智瑛理は、ブスッとした顔で睨む様に清高を見つめる。その目に気づき、清高が智瑛理を見た。智瑛理はすぐ目を背ける。
本当智瑛理は、姿に出やすい。
「お姉ちゃんの事、泣かせたら直ぐに追い出しますよ。これ以上泣かせたく無いので」
「はい、了解です。智瑛理さん」
呆れた声で答える清高に、智瑛理は小声で「名前で呼ぶの許可してない」と呟いた。それが聞こえた清高は、じゃ何と呼ぶべきかと思った。
退院の日、荷物を父の車に詰める。すると、明宏が小走りで近づいて来た。
「退院、おめでとうさん」
和かに、花束を美絵の両手に乗せる。美絵も笑顔で受け取った。
「ありがとうございます」
一度は受け取った花束を、また明宏に返した。明宏はキョトンとした。
「花束をあげる相手、間違ってます」
「何でや?退院はおめでたい事やろ」
美絵が明宏をくるりと回し、背中を押す。明宏は、ずるずると押されていく。
「何や、訳わからんわー」
「私、律次さんと交際する事正式に決定しましたので」
その言葉に、明宏は顔だけ美絵に向ける。
「嘘やろー?絶対あり得へんって、自分でも言うてたやん」
「あり得ない、確かにそうでした。でもできる事もあるんです」
「そんじゃ、美絵ちゃんを3人で回そうって話は?」
美絵は顔を真っ赤にした。
「却下です!何で1人増えてるんですか!」
「えーと、大空カナタっていう子。確かあれって、智瑛理ちゃんの今彼やろ?」
「許可してない約束に、人を増やさないで下さい!」
家族から離れた場所で、怒鳴る。こんな話聞かれたら、かなりヤバい。
「だってさその大空君って子、美絵ちゃんを抱いたらもう他に手を出さずに、智瑛理ちゃんだけ愛するって約束するって」
「本当、最低です」
美絵はため息を吐き、明宏の背中を押すのを辞めた。もう2人は病院の敷地外に、出ていた。
「花束、渡す相手。そこにいますよ」
美絵が微笑む。明宏は前を向くと、足元に人がいるのに気づいた。うずくまってこっちを、驚いた顔で見つめていた。
「すっ鈴風さん…。いつから、気づいてたの?」
うずくまっていた、メグの口角が引き攣る。
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否定しながら、メグは立ち上がった。明宏が、そんな彼女を冷めた目で見る。
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