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番外編
入浴を終えるその前に(前編)
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まさかの浴場で欲情シーンの第二部です。
24話後の話でございます!
三話分もアダルトシーンを書いておきながら、まだ続きます。胸やけ必須ですね~。
ふにゃふにゃになった主君の体をもみもみするフレデリクの話です。
フレデリクの視点で進みます。本番ありです。
つまり、攻め視点のマッサージプレイです……!
大丈夫ですか?大丈夫ですか?大丈夫ですか?
本編よりも少々濃いめ(そしてマニアック)な描写が散見されます!
OKならば、どうぞよろしくお願いしますっ!!
白く滑らかな腹の上に散った愛蜜と精液をそっと拭っていると、気を失っているテオドールが、わずかに身じろいだ。
幾度となく絶頂を極めた体は甘くとろけて、ついには意識を飛ばしてしまった。
大切な恋人の体に負担をかけるような交わりは控えなければと、いつも思っているのに、結局はこうして限界までテオドールを追い込んでしまうことが常だった。
最初は湧きあがる快感に戸惑い気味だったテオドールも、今では咲き狂う花のようにこちらを求めて身をくねらせ、淫欲をあおってくる。
そのいやらしい姿を見せつけられながら、熱く柔らかい極上の泥濘を味わってしまえば、理性の箍などすぐに外れて、美しい体を獣のように思う存分貪ってしまうのだ。
「テオドール……」
フレデリクは愛する王子の名を小さく呟くと、薄く開いた桃色の唇を、親指で優しく撫でた。
こんな可愛い唇が、先程まで唾液を垂らしながら激しく喘ぎ、濃厚な口づけに興じていたかと思うと、股間にじんと痺れが走る。
まずい。
意識のないテオドールに無体を働きかねない己を抑えて、フレデリクは柔らかな唇から手を離した。
そして、寝台の脇に置いてある薄手のガウンを羽織り、王子の体に掛布をかけると、近くにある小瓶が並んだ棚に向かった。
石造りのそれには、様々な小瓶が並んでいる。
これらは、全て香油や香水だ。
先王夫妻はそろって香油や香水を好んでいて、自分たちで調合を考えるほどだった。
そのおかげか、ロベルティア王国では香料の製造技術が非常に発達しており、貴族を中心に、男女問わず香油や香水を愛用している者が多い。
もちろん、ラオネスも例外ではなく、この館のような賓客を招く施設では、必ずといっていいほど、香りが詰まった棚が置いてあるのだ。
すごい種類だな……。
棚に近づくだけで、濃縮された花や香草の香りが鼻腔を満たす。
並んだ小瓶は棚を隙間なく埋めていて、これらは全て違う香料で作られているのだろう。
瓶には、原料が記された布が貼られていたが、香料に詳しくない自分には、分からないものが多かった。
いくつか手にとって香りを確かめてみるが、何度か嗅いでいるうちに、全て同じ匂いに感じてくる。
テオドールが好みそうな香りを選ぼうと思ったが、これらを嗅ぎ分けられるような優れた感覚を、自分は持っていないようだ。
これは……悩んでも無駄だな。
自ら選択することを早々に諦めて、一番人気がありそうなバラの香油を手に取ろうとした時、棚の下方にある瓶が目にとまった。
その瓶には、懐かしい花の名が記されている。
思わず手にとって匂いを嗅ぐと、脳内に幼少期の記憶が一気に広がった。
「フレッドぉ~。何してるの……?」
ふり返ると、意識を取り戻したテオドールが、こちらを不思議そうに見ていた。
「ちょっと香油を見ていたんだ」
「香油? フレッド、そういうの好きだっけ?」
「いや。俺はつけたことはないな」
フレデリクは瓶を手にしたまま寝台の側に戻り、テオドールに優しく微笑みかけた。
「一緒に入浴する機会はそうないだろうから、どうせなら、普段しない特別なことをしてみたいと思ったんだ。テオも普段は香油を使わないだろ? せっかくだから、試してみよう」
「いいけど……香油ってどうやって使うの? 僕もつけたことがないから、全然知らないな」
「俺も詳しくはないが、風呂上がりなんかに体に薄く塗るらしい。香油を好む騎士は、按摩も一緒にすると、香りも相まって気持ちがいいと言っていたな」
「へぇ~。確かに、くつろぎながら筋肉がほぐれてよさそうだね」
「テオは全身につけてみような。香りが強かったら、湯で洗い流そう」
「上手く塗れるかなぁ」
自分で塗るつもりでいるテオドールに、フレデリクは笑みを深めた。
「俺が塗って按摩もするから、テオはそのまま横になっていればいい」
「え!? そこまでしてもらうのは……」
テオドールは頬を染めながら、ごにょごにょと何やら呟いている。
全身に塗られることに、抵抗を感じているのだろう。
「自分の手だと届かないところがあるし、俺が塗った方がいいだろ?」
「そうだけど……」
「テオの体で、触れてないところも見てないところもないから、今更、羞恥を感じることもないと思うが――」
そこまで言うと、テオドールは耳まで紅く染めて、掛布の中に丸まった。
「……テオ、悪かった。そういうことじゃないよな。俺が自分の手で、テオの体に塗りたいんだ。もちろん、按摩の気持ちよさは保障する」
「…………」
「テオ?」
「変な風に触らないって約束する?」
「変な風って?」
「…………」
軽くからかうと、掛布の中の丸まった団子が、より硬くなったのが分かった。
「テオ、ごめん。変な風に触らないし、意地悪もしないから」
布越しにテオドールの体に触れると、団子がもぞもぞと動く。
寝台に腰かけて中をうかがうように、そっと掛布をめくると、エメラルドの瞳がじっとこちらを見ていた。
「……今日はもうだめだよ。フレッドの怪我に障るから」
「分かってる。気遣ってくれてありがとな」
テオドールに言われて、背中に意識を向けた途端に、鈍痛を感じた。
ずっと興奮状態で、痛みが飛んでいたようだ。
しかし、これぐらいの痛みでどうこうなるような体の鍛え方はしていないので、本気でどうでもよかった。
「香油の種類が多かったから、どれにするか迷ったんだ。テオが選んだ方がいいかな」
「フレッドが持ってきたものは?」
テオドールが、掛布から顔を出しながら言う。
「これは懐かしくて、つい手にとったんだ」
「……ミリエーネ?」
小瓶を手にした王子が、記された文字を読みながら首をかしげる。
「ミリエーネは大陸西部の各地に自生している青い花なんだ。テュレンヌ家の本邸の近くに群生地があって、春先になると、森の中に青い絨毯を作るんだ。体が弱かった子供の頃は、春の楽しみだったな。体調がいい日を見計らって、よく散歩に行っていた。乳母が部屋に飾ってくれることも多かったから、匂いも覚えていて……嗅ぐと、あの頃のことが鮮明に思い出されたよ」
フレデリクは、脳裏によみがえる青い花の絨毯に目を細めた。
「フレッドにとって、ミリエーネは思い出深い花なんだね。青い絨毯なんて素敵だなぁ。見てみたいよ」
「王都の周辺に咲いているとは聞いたことがないから、時期に合わせて、テオを本邸に招待しようか」
「本当!?」
テオドールは勢いよく上半身を起こすと、傍に腰かけているフレデリクに抱きついた。
「前から、フレッドが生まれ育った故郷を見てみたいなって思ってたんだ。絶対、約束だよっ」
「ああ。約束する」
テュレンヌ家本邸は、王都から馬で数日ほど北上したところにある。
ラオネスよりも近い距離で、街道も整備が進んでいるので、テオドールもそこまで馬車の移動に苦しめられることはないだろう。
ぎゅっと抱き返せば、王子は嬉しそうに頬を緩ませた。
「じゃあ、香油はこれにするよ」
「いいのか? バラとかジャスミンの方が、華やかな香りでいいんじゃないか?」
「僕はミリエーネがいいの!」
テオドールは、手に持っている小瓶の蓋を開けて香りを嗅いだ。
「……すごくいい匂い……! 濃厚で甘いけど、爽やかに香って、鼻の奥に広がるんだ」
エメラルドの瞳を嬉しそうにキラキラと輝かせて、テオドールは可憐な笑みを浮かべる。
「ふふ。何だかフレッドみたいだね」
「この香りが? 花の色と目の色が似てると言われたことはあるが……」
「なら、ミリエーネはフレッドの花だね」
小瓶から、甘く爽やかな香りが周囲に広がる。
その中で、愛らしい表情をして抱きついてくるテオドールにたまらなくなって、フレデリクは桃色のぷるんとした唇に吸いついた。
「……ん、フレッド……ふっ……ぁあっ……はぅっ……」
柔らかく甘いそれを舐めまわし、舌をすすり、唾液を奪う。
ゆったりと体を弛緩させて、口づけに夢中になっているテオドールの手から小瓶を取ると、そっと寝台に仰向けに寝かせた。
「まずは腕と胸からはじめようか」
「うん……」
とろんとした顔つきでこちらを見上げてくるのが可愛くて、つい滑らかな肌にむしゃぶりつきたくなるが、ぐっと我慢する。
自分の怪我は大したことはないが、テオドールの体はもう休ませた方がいい。
海に落とされた不安や恐怖を忘れて、ミリエーネの香りの中で、ゆっくりと無心になってほしかった。
「わ……垂らすと、香りが濃くなったね」
下肢に掛け布をかぶせて、腕に香油を落としていく。
より豊かな香りに包まれて、テオドールは心地よさそうに瞼を伏せた。
「テオの好きな蜂蜜の匂いもするな」
「色々調合されてるんだね……今までつけようと思わなかったけど、香油にはまる人の気持ちが分かるなぁ」
腕を持ちあげ、垂らした香油を肌に馴染ませるようにしながら、筋肉をほぐしていく。
「んん……気持ちいい……フレッドは按摩も上手なんだね」
「少しだけ異国の按摩師に手解きを受けたが、ほとんど独学なんだ。レオンが頻繁にせがんでくるから、そのおかげで上達できたのかもしれないな」
「ふふっ。隊長は按摩が好きなんだ。フレッドはダガーも独学だし、優秀な騎士様はさすがだなぁ~」
しっとりと輝くエメラルドの目が、優しく笑みを描く。
「ゆっくりと塗りこんでいくから、寝てもいいからな」
「ん~。寝ちゃうともったいない気がする……」
指の先まで香油を揉みこませながら、テオドールの絹肌を堪能する。
吸いついてくるような肌はどこに触れてもまろやかで、ずっと手を這わせていたくなる。
本人が気にしている柔らかな体つきも、情欲が煽られっぱなしになるほど極上の感触だ。
「怪我、痛みはひどくなってない? 按摩、負担になってるんじゃない?」
「なってない。テオに触れるのに夢中で、痛みも感じないしな」
「また、そんなこと言って……」
困ったような顔をするテオドールに優しく微笑むと、フレデリクは白い胸に香油を垂らした。
「あ……ぁ」
胸から腹を撫で擦って甘い香りを塗り広げていると、テオドールの息がわずかに乱れる。
「フレッドの手……温かくて心地いいね……」
頬を桃色に染めて、うっとりと長い睫を瞬かせる美しい王子。
「テオの肌も、柔らかくて滑らかで、最高だ……」
両手で胸を揉むように撫でると、可愛い唇が震えながら熱い吐息をこぼす。
「……っん……フレッド……」
「ミリエーネの香り……強すぎず丁度いいな」
「うん……気持ちがおちつくよ……」
柔肌をじっくりと味わっているフレデリクの手の下で、薄紅色の乳首がぷくりと膨れている。
香油にまみれたそれは、いやらしく艶めいていて、思わず吸いつきたくなったが、生唾を飲み込みながら劣情を抑えこむ。
指先でいじりたい衝動も我慢して、細い腰をぎゅっと掴んで撫でまわす。
「ぁっ……んん……」
テオドールは潤んだエメラルドの目を細めて、色っぽく身をよじる。
「テオ……感じてるのか?」
「ち、ちがうよっ……按摩がきもちいいだけだもん……っ」
そう強く主張しながらも、王子の全身は火照って桃色に染まっている。
「……本当に?」
へその下あたりをゆっくりと摩擦すると、ビクビクと白い腰が震えた。
……マッサージプレイ……本当に大丈夫でしょうか?
そして、また余談ですが、フレデリクは普段、レオンに呆れた視線を向けたりして塩対応なのですが、自身の楽しい思い出や見習い騎士時代の大切な話をする時には、だいたいレオンが出てきます。
何だかんだ言って、結局は仲のいい兄弟弟子なんですよね!
二人はかっこいいバディな側面もあるので、いつかそんな二人を書けたらいいなぁと思っています。
24話後の話でございます!
三話分もアダルトシーンを書いておきながら、まだ続きます。胸やけ必須ですね~。
ふにゃふにゃになった主君の体をもみもみするフレデリクの話です。
フレデリクの視点で進みます。本番ありです。
つまり、攻め視点のマッサージプレイです……!
大丈夫ですか?大丈夫ですか?大丈夫ですか?
本編よりも少々濃いめ(そしてマニアック)な描写が散見されます!
OKならば、どうぞよろしくお願いしますっ!!
白く滑らかな腹の上に散った愛蜜と精液をそっと拭っていると、気を失っているテオドールが、わずかに身じろいだ。
幾度となく絶頂を極めた体は甘くとろけて、ついには意識を飛ばしてしまった。
大切な恋人の体に負担をかけるような交わりは控えなければと、いつも思っているのに、結局はこうして限界までテオドールを追い込んでしまうことが常だった。
最初は湧きあがる快感に戸惑い気味だったテオドールも、今では咲き狂う花のようにこちらを求めて身をくねらせ、淫欲をあおってくる。
そのいやらしい姿を見せつけられながら、熱く柔らかい極上の泥濘を味わってしまえば、理性の箍などすぐに外れて、美しい体を獣のように思う存分貪ってしまうのだ。
「テオドール……」
フレデリクは愛する王子の名を小さく呟くと、薄く開いた桃色の唇を、親指で優しく撫でた。
こんな可愛い唇が、先程まで唾液を垂らしながら激しく喘ぎ、濃厚な口づけに興じていたかと思うと、股間にじんと痺れが走る。
まずい。
意識のないテオドールに無体を働きかねない己を抑えて、フレデリクは柔らかな唇から手を離した。
そして、寝台の脇に置いてある薄手のガウンを羽織り、王子の体に掛布をかけると、近くにある小瓶が並んだ棚に向かった。
石造りのそれには、様々な小瓶が並んでいる。
これらは、全て香油や香水だ。
先王夫妻はそろって香油や香水を好んでいて、自分たちで調合を考えるほどだった。
そのおかげか、ロベルティア王国では香料の製造技術が非常に発達しており、貴族を中心に、男女問わず香油や香水を愛用している者が多い。
もちろん、ラオネスも例外ではなく、この館のような賓客を招く施設では、必ずといっていいほど、香りが詰まった棚が置いてあるのだ。
すごい種類だな……。
棚に近づくだけで、濃縮された花や香草の香りが鼻腔を満たす。
並んだ小瓶は棚を隙間なく埋めていて、これらは全て違う香料で作られているのだろう。
瓶には、原料が記された布が貼られていたが、香料に詳しくない自分には、分からないものが多かった。
いくつか手にとって香りを確かめてみるが、何度か嗅いでいるうちに、全て同じ匂いに感じてくる。
テオドールが好みそうな香りを選ぼうと思ったが、これらを嗅ぎ分けられるような優れた感覚を、自分は持っていないようだ。
これは……悩んでも無駄だな。
自ら選択することを早々に諦めて、一番人気がありそうなバラの香油を手に取ろうとした時、棚の下方にある瓶が目にとまった。
その瓶には、懐かしい花の名が記されている。
思わず手にとって匂いを嗅ぐと、脳内に幼少期の記憶が一気に広がった。
「フレッドぉ~。何してるの……?」
ふり返ると、意識を取り戻したテオドールが、こちらを不思議そうに見ていた。
「ちょっと香油を見ていたんだ」
「香油? フレッド、そういうの好きだっけ?」
「いや。俺はつけたことはないな」
フレデリクは瓶を手にしたまま寝台の側に戻り、テオドールに優しく微笑みかけた。
「一緒に入浴する機会はそうないだろうから、どうせなら、普段しない特別なことをしてみたいと思ったんだ。テオも普段は香油を使わないだろ? せっかくだから、試してみよう」
「いいけど……香油ってどうやって使うの? 僕もつけたことがないから、全然知らないな」
「俺も詳しくはないが、風呂上がりなんかに体に薄く塗るらしい。香油を好む騎士は、按摩も一緒にすると、香りも相まって気持ちがいいと言っていたな」
「へぇ~。確かに、くつろぎながら筋肉がほぐれてよさそうだね」
「テオは全身につけてみような。香りが強かったら、湯で洗い流そう」
「上手く塗れるかなぁ」
自分で塗るつもりでいるテオドールに、フレデリクは笑みを深めた。
「俺が塗って按摩もするから、テオはそのまま横になっていればいい」
「え!? そこまでしてもらうのは……」
テオドールは頬を染めながら、ごにょごにょと何やら呟いている。
全身に塗られることに、抵抗を感じているのだろう。
「自分の手だと届かないところがあるし、俺が塗った方がいいだろ?」
「そうだけど……」
「テオの体で、触れてないところも見てないところもないから、今更、羞恥を感じることもないと思うが――」
そこまで言うと、テオドールは耳まで紅く染めて、掛布の中に丸まった。
「……テオ、悪かった。そういうことじゃないよな。俺が自分の手で、テオの体に塗りたいんだ。もちろん、按摩の気持ちよさは保障する」
「…………」
「テオ?」
「変な風に触らないって約束する?」
「変な風って?」
「…………」
軽くからかうと、掛布の中の丸まった団子が、より硬くなったのが分かった。
「テオ、ごめん。変な風に触らないし、意地悪もしないから」
布越しにテオドールの体に触れると、団子がもぞもぞと動く。
寝台に腰かけて中をうかがうように、そっと掛布をめくると、エメラルドの瞳がじっとこちらを見ていた。
「……今日はもうだめだよ。フレッドの怪我に障るから」
「分かってる。気遣ってくれてありがとな」
テオドールに言われて、背中に意識を向けた途端に、鈍痛を感じた。
ずっと興奮状態で、痛みが飛んでいたようだ。
しかし、これぐらいの痛みでどうこうなるような体の鍛え方はしていないので、本気でどうでもよかった。
「香油の種類が多かったから、どれにするか迷ったんだ。テオが選んだ方がいいかな」
「フレッドが持ってきたものは?」
テオドールが、掛布から顔を出しながら言う。
「これは懐かしくて、つい手にとったんだ」
「……ミリエーネ?」
小瓶を手にした王子が、記された文字を読みながら首をかしげる。
「ミリエーネは大陸西部の各地に自生している青い花なんだ。テュレンヌ家の本邸の近くに群生地があって、春先になると、森の中に青い絨毯を作るんだ。体が弱かった子供の頃は、春の楽しみだったな。体調がいい日を見計らって、よく散歩に行っていた。乳母が部屋に飾ってくれることも多かったから、匂いも覚えていて……嗅ぐと、あの頃のことが鮮明に思い出されたよ」
フレデリクは、脳裏によみがえる青い花の絨毯に目を細めた。
「フレッドにとって、ミリエーネは思い出深い花なんだね。青い絨毯なんて素敵だなぁ。見てみたいよ」
「王都の周辺に咲いているとは聞いたことがないから、時期に合わせて、テオを本邸に招待しようか」
「本当!?」
テオドールは勢いよく上半身を起こすと、傍に腰かけているフレデリクに抱きついた。
「前から、フレッドが生まれ育った故郷を見てみたいなって思ってたんだ。絶対、約束だよっ」
「ああ。約束する」
テュレンヌ家本邸は、王都から馬で数日ほど北上したところにある。
ラオネスよりも近い距離で、街道も整備が進んでいるので、テオドールもそこまで馬車の移動に苦しめられることはないだろう。
ぎゅっと抱き返せば、王子は嬉しそうに頬を緩ませた。
「じゃあ、香油はこれにするよ」
「いいのか? バラとかジャスミンの方が、華やかな香りでいいんじゃないか?」
「僕はミリエーネがいいの!」
テオドールは、手に持っている小瓶の蓋を開けて香りを嗅いだ。
「……すごくいい匂い……! 濃厚で甘いけど、爽やかに香って、鼻の奥に広がるんだ」
エメラルドの瞳を嬉しそうにキラキラと輝かせて、テオドールは可憐な笑みを浮かべる。
「ふふ。何だかフレッドみたいだね」
「この香りが? 花の色と目の色が似てると言われたことはあるが……」
「なら、ミリエーネはフレッドの花だね」
小瓶から、甘く爽やかな香りが周囲に広がる。
その中で、愛らしい表情をして抱きついてくるテオドールにたまらなくなって、フレデリクは桃色のぷるんとした唇に吸いついた。
「……ん、フレッド……ふっ……ぁあっ……はぅっ……」
柔らかく甘いそれを舐めまわし、舌をすすり、唾液を奪う。
ゆったりと体を弛緩させて、口づけに夢中になっているテオドールの手から小瓶を取ると、そっと寝台に仰向けに寝かせた。
「まずは腕と胸からはじめようか」
「うん……」
とろんとした顔つきでこちらを見上げてくるのが可愛くて、つい滑らかな肌にむしゃぶりつきたくなるが、ぐっと我慢する。
自分の怪我は大したことはないが、テオドールの体はもう休ませた方がいい。
海に落とされた不安や恐怖を忘れて、ミリエーネの香りの中で、ゆっくりと無心になってほしかった。
「わ……垂らすと、香りが濃くなったね」
下肢に掛け布をかぶせて、腕に香油を落としていく。
より豊かな香りに包まれて、テオドールは心地よさそうに瞼を伏せた。
「テオの好きな蜂蜜の匂いもするな」
「色々調合されてるんだね……今までつけようと思わなかったけど、香油にはまる人の気持ちが分かるなぁ」
腕を持ちあげ、垂らした香油を肌に馴染ませるようにしながら、筋肉をほぐしていく。
「んん……気持ちいい……フレッドは按摩も上手なんだね」
「少しだけ異国の按摩師に手解きを受けたが、ほとんど独学なんだ。レオンが頻繁にせがんでくるから、そのおかげで上達できたのかもしれないな」
「ふふっ。隊長は按摩が好きなんだ。フレッドはダガーも独学だし、優秀な騎士様はさすがだなぁ~」
しっとりと輝くエメラルドの目が、優しく笑みを描く。
「ゆっくりと塗りこんでいくから、寝てもいいからな」
「ん~。寝ちゃうともったいない気がする……」
指の先まで香油を揉みこませながら、テオドールの絹肌を堪能する。
吸いついてくるような肌はどこに触れてもまろやかで、ずっと手を這わせていたくなる。
本人が気にしている柔らかな体つきも、情欲が煽られっぱなしになるほど極上の感触だ。
「怪我、痛みはひどくなってない? 按摩、負担になってるんじゃない?」
「なってない。テオに触れるのに夢中で、痛みも感じないしな」
「また、そんなこと言って……」
困ったような顔をするテオドールに優しく微笑むと、フレデリクは白い胸に香油を垂らした。
「あ……ぁ」
胸から腹を撫で擦って甘い香りを塗り広げていると、テオドールの息がわずかに乱れる。
「フレッドの手……温かくて心地いいね……」
頬を桃色に染めて、うっとりと長い睫を瞬かせる美しい王子。
「テオの肌も、柔らかくて滑らかで、最高だ……」
両手で胸を揉むように撫でると、可愛い唇が震えながら熱い吐息をこぼす。
「……っん……フレッド……」
「ミリエーネの香り……強すぎず丁度いいな」
「うん……気持ちがおちつくよ……」
柔肌をじっくりと味わっているフレデリクの手の下で、薄紅色の乳首がぷくりと膨れている。
香油にまみれたそれは、いやらしく艶めいていて、思わず吸いつきたくなったが、生唾を飲み込みながら劣情を抑えこむ。
指先でいじりたい衝動も我慢して、細い腰をぎゅっと掴んで撫でまわす。
「ぁっ……んん……」
テオドールは潤んだエメラルドの目を細めて、色っぽく身をよじる。
「テオ……感じてるのか?」
「ち、ちがうよっ……按摩がきもちいいだけだもん……っ」
そう強く主張しながらも、王子の全身は火照って桃色に染まっている。
「……本当に?」
へその下あたりをゆっくりと摩擦すると、ビクビクと白い腰が震えた。
……マッサージプレイ……本当に大丈夫でしょうか?
そして、また余談ですが、フレデリクは普段、レオンに呆れた視線を向けたりして塩対応なのですが、自身の楽しい思い出や見習い騎士時代の大切な話をする時には、だいたいレオンが出てきます。
何だかんだ言って、結局は仲のいい兄弟弟子なんですよね!
二人はかっこいいバディな側面もあるので、いつかそんな二人を書けたらいいなぁと思っています。
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