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番外編

書籍化御礼小話

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本編終了後の話です。


ううっ。
相変わらず、格好よすぎる!

僕は森の中で隣を歩く侯爵令息を、うっとりと見つめていた。
今日は母主催のお茶会に出席してきた。
謹慎中は社交禁止だが、王妃殿下の招待となれば話は別だ。
もちろん、母の配慮もあって、お茶会の規模自体はそんなに大きなものではなく、母方の親戚の集まりに参加したようなものだった。
だから、リーフェの騒動の時みたいに、フレデリクが侯爵令息として帯同する必要は全くなかったのだけれど。

フレッドの貴族姿見たいじゃん!
ゆっくり鑑賞したいじゃん!

騒動の渦中にいた時は、侯爵令息な専属騎士を堪能する心の余裕がなかった。
フレデリク・テュレンヌの貴族姿があの時で見納めだなんて、断じて許されることではない。
ということで、貴族として参加してほしいと頼んでみたのだ。
色々と面倒事が発生するというのに、フレデリクは笑顔で快諾してくれた。
さすがは僕の騎士様。心が広大でいらっしゃる。

「近衛隊の格好もとても素敵だけど、貴族の正装姿も気品に溢れてて、すっごく魅力的だね」

今日のフレデリクの装いは瑠璃色の一揃えだ。
上着とベストに施された金糸の刺繍が非常に豪奢で、フレデリクの男性美をより華やかなものにしている。
近衛隊の制服だと、騎士としての精悍さが押し出されるが、貴族の盛装だと柔和な上品さが一面に感じられて、それぞれ違った魅力に胸の高鳴りが止まらなくなる。
言葉を尽くして褒めまくっていると、フレデリクは少し照れたように微笑んだ。
そんな表情も、たまらなく格好いい。

「褒めすぎると調子に乗って手がつけられなくなるから、やめたほうがいい」
「フレッドが調子に乗るの?」

全く想像ができなくて、僕は笑った。

「そう。テオの命令すらきかなくなって大変なことになる。例えば、こんな風に」
「え……わっ!?」

急に腰を抱かれて、近くの繁みに引き込まれる。
強く抱きしめられると、息つく暇もなく唇を奪われた。

「……っんぁ……フ、フレッド……っ」

瞬く間に深くなっていく口づけに、僕の身体は驚きとトキメキで混乱してしまう。

「テオ……」

歯列を舐められ、その奥にある舌を絡めとられる。
激しくも甘い交わりに、僕は蕩けるような心地になりながら、フレデリクの背中に腕を回した。

「館には帰さずに、このままさらってしまおうか」

口づけの合間にそっと囁かれる。
白銀の貴公子の情熱的な言葉に、僕は頬を熱くしてアクアマリンの瞳を見上げた。

「……それは大変だ」
「だろ? だから、俺を不用意に褒めるのはよくないんだ」

優しく髪を撫でられると、鼻先が擦り合う。

「ふふ。僕の恋人は褒めずにはいられないぐらい格好いい人だから難しいな」

僕は逞しい体にぎゅっと抱きついた。

「どうしよう。僕のせいでフレッドが手がつけられなくなっちゃう」
「なら、しっかりと責任をとってもらわないとな」

美貌の侯爵令息は、男の色気たっぷりに碧眼を細めた。

もうっ! 何かにつけて格好いいって、本当にどうかと思うっ!

再び重なった唇に、僕は身も心も貴公子様の虜になった。

僕をいつだってメロメロにするフレデリクにこそ、責任をとってもらうべきじゃない?
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