血を吸うかぐや姫

小原ききょう

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血②

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 シンドウの登場で、松村と佐々木の様子が大きく変わった。
 松村は佐々木をシンドウから守るように覆い被さっている。その様子は普通ではない。
 二人の様子を見ながら、シンドウが口を開いた。
「この出来損ないが・・」
 そう吐き捨てるように言った。出来損ない・・それは、松村と佐々木のことを指すのか?
 いや、違う。
 僕はこの「出来損ない」と言う言葉を聞いたことがある。
 それは、教室で伊澄瑠璃子と保健の吉田女医との対話でだ。
 二人は、「出来損ない」「失敗作」そんなことを言っていた。
 あの時の「失敗作」とは、体育の大崎先生のことだった。その大崎は、藪の中で発見された。その時、体内から「あれ」が出ていた。あのジャーナリストの渡辺さんからそう聞いている。
すると、今、シンドウが言っている「出来損ない」とは、松村のこととは思えない。なぜなら松村は何の行動も起こしていないからだ。ただ、ここに現れただけだからだ、
 だが、佐々木の場合は違う。僕に「あれ」を入れようとして、何かが原因で中断を余儀なくされた。
 つまり、シンドウが「出来損ない」と言ったのは、佐々木奈々のことだ。
 一体どういうことだ?

 松村はシンドウの言葉を聞くなり、佐々木の体を更に庇った。まるで、シンドウに何かされることを怖れるように。
 その下で佐々木が苦しそうに「松村くん、はやく逃げて」と言った。
 逃げて・・何から?

 そう思った次の瞬間、
「二人とも、失せろ!」
 シンドウの怒号と共に、松村と佐々木の体が飛んでいった。
 気がついた時には、二人の体は、公園の中央にある砂場まで吹き飛ばされていた。
 瞬時のことで、何が起こったのか分からなかったが、シンドウが二人の体を蹴り飛ばしたのだ。そのパワーに瞬発力、尋常ではない。
 佐々木も松村も防ぎようがなかった。
 吸血鬼化している人間のワンランク上のタイプ、そんな気がした。
 松村もそれなりに運動神経が向上していた。だが、その代わりに体が柔らかくなっていた。体が、というより、「骨」だ。
 今、吸血鬼化のマイナスの要素が、松村と佐々木に如実に表れている。
 松村はどこかの骨が曲がったようで起き上れないようだ。佐々木は口から大量の血を吐き出し始めた。

 その様子を見ながらシンドウは冷笑し、
「ほらほら、松村。早く自分の血をあげないと、お前の大事な彼女は死んじまうぜ」
 と、からかうように言った。
 え・・
 佐々木が死ぬ? 嘘だろ。
 僕は佐々木や松村を何とかしたい。そう思ってこれまで行動してきたのに、その佐々木に何かあれば大きな目的が失われてしまう。
 すると、倒れ込んでいた松村は、ずるずると地面を這うようにして佐々木の傍に向かった。

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