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伊澄瑠璃子が憎むもの①
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◆伊澄瑠璃子が憎むもの
僕も君島さんも、血に対する欲望が徐々に膨らんでいるを感じている。
僕と君島さんは、少量の血を吸われた同士だ。だから、同じく少量の血を吸い合っている。今のところ、舐める程度かもしれないが、もっと多くの血を欲しているのが自分でもわかる。
だが、僕や君島さんと比べて、佐々木奈々や伊澄瑠璃子の取り巻きの二人は、体が萎むほどに大量に、しかも一気に血を吸われた。
だから、体内に「あれ」を入れないと、その生命を維持できない。「あれ」が無くなるとその生命を閉ざす結果になるかもしれない。
そして、少量の血しか吸い上げられない僕と君島さんは、「あれ」を体内に取り込めば、もっと血を吸うことができる。
そんなことが少しずつわかってきた。
しかし、それは絶望的な見解だ。そんな原因を作った伊澄瑠璃子にこうして会いにきたのは、その逃げ道を模索しているからなのだろう。
彼女に僕や君島さん、そして、佐々木奈々や松村の体を何とかしてほしい。こんな状況から脱したい。そう思ってここに来ている。
柱時計が大きな音でボーン、ボーンと続けて4回打ち、4時になったことを知らせた。聞きなれない音だったので神城が「きゃっ」と驚きの声を上げた。
壁を見上げると、大きな振り子がチッチッと音を立て揺れていた。かなり大きな音だ。この部屋の中で一番大きな音だと言っても言い過ぎではない。
そんな音の中、まず話を切り出したのは、当然、渡辺さんだ。
「初対面の伊澄さんに、色々と尋ねるのは心苦しいんだが」
そう前置きした渡辺さんに、伊澄瑠璃子は改めて髪をかき分け、
「何でも訊いてくださって結構ですわ。私が知っている事なら何でもお答えします」と優しく言った。
どうして、彼女からそんな言葉が出て来るのか、理解できない。
僕は彼女にこう言いたい。
「伊澄さんが、多くの人の血を吸ったんだろ! あの怪物を使って・・そして、大量の血を吸い上げた人間の体内に、『あれ』を入れ、更に、吸血鬼を増やしているんだろ」
そう叫びたかった。
その原因を作った人間なら、全て元通りに出来るだろ!
僕と君島さんのような少量の血を吸う吸血人。
そして、「あれ」が中に入っている佐々木や松村。
みんなを元に戻してくれ!
ここに来たみんなが、それぞれの思いを抱いていることだろう。神城は佐々木のことが心配だし、君島さんも僕と同じかもしれない。そして、渡辺さんは・・
・・渡辺さんは、只の興味本位、記者としての関心だけなのか?
柱時計の振り子の音が耳に入る。チッチッという音以外にも振り子が揺れる音まで感じる。
伊澄瑠璃子は「お茶を用意しますね」と言うと、神城が「私も手伝うわ」と言って、二人で丸テーブルにお茶を配した。
部屋の中が湿気ている。その空気の中を、ゆらゆらと湯呑から湯気が立ち昇る。天井が湿気で軋み、たわんだ畳も湿気を帯びてくるようだ。
伊澄瑠璃子は、そんな部屋の様子など気にも留めず、改めて座り直した。
伊澄さんは、美しい。だが、保健医の吉田先生のような女性特有のセクシーさは微塵も感じられない。性的なこととは無縁の荘厳な美を感じる。
そして、彼女の何かを射るよう目が僕の目と合った。彼女の目は、こう言っているように見えた。
「屑木くん、苦しいのでしょう? 私が楽にさせてあげるわ」
伊澄瑠璃子は、僕の中に「あれ」を入れたがっている。その対象は、僕だけじゃないだろう。君島さんも同じだ。
だが、完全な人間の神城や渡辺さんに対してはどうなんだろうか?
伊澄瑠璃子は、ここにいる全員の体に「あれ」を入れたいのか?
だが僕にはわからない。彼女の目的が、「あれ」を増殖させて、その向こうには何が待っているというのだ。
まさか、この家にも、あの屋敷にいた巨大な自立歩行型の「あれ」が、どこかに潜んでいるんじゃないだろうな。
だとしたら、ここにいる僕たち全員が大量に血を吸われる危険にさらされていることになる。
だが、そんな危険を冒してまでも、僕は知らなければならない。
僕も君島さんも、血に対する欲望が徐々に膨らんでいるを感じている。
僕と君島さんは、少量の血を吸われた同士だ。だから、同じく少量の血を吸い合っている。今のところ、舐める程度かもしれないが、もっと多くの血を欲しているのが自分でもわかる。
だが、僕や君島さんと比べて、佐々木奈々や伊澄瑠璃子の取り巻きの二人は、体が萎むほどに大量に、しかも一気に血を吸われた。
だから、体内に「あれ」を入れないと、その生命を維持できない。「あれ」が無くなるとその生命を閉ざす結果になるかもしれない。
そして、少量の血しか吸い上げられない僕と君島さんは、「あれ」を体内に取り込めば、もっと血を吸うことができる。
そんなことが少しずつわかってきた。
しかし、それは絶望的な見解だ。そんな原因を作った伊澄瑠璃子にこうして会いにきたのは、その逃げ道を模索しているからなのだろう。
彼女に僕や君島さん、そして、佐々木奈々や松村の体を何とかしてほしい。こんな状況から脱したい。そう思ってここに来ている。
柱時計が大きな音でボーン、ボーンと続けて4回打ち、4時になったことを知らせた。聞きなれない音だったので神城が「きゃっ」と驚きの声を上げた。
壁を見上げると、大きな振り子がチッチッと音を立て揺れていた。かなり大きな音だ。この部屋の中で一番大きな音だと言っても言い過ぎではない。
そんな音の中、まず話を切り出したのは、当然、渡辺さんだ。
「初対面の伊澄さんに、色々と尋ねるのは心苦しいんだが」
そう前置きした渡辺さんに、伊澄瑠璃子は改めて髪をかき分け、
「何でも訊いてくださって結構ですわ。私が知っている事なら何でもお答えします」と優しく言った。
どうして、彼女からそんな言葉が出て来るのか、理解できない。
僕は彼女にこう言いたい。
「伊澄さんが、多くの人の血を吸ったんだろ! あの怪物を使って・・そして、大量の血を吸い上げた人間の体内に、『あれ』を入れ、更に、吸血鬼を増やしているんだろ」
そう叫びたかった。
その原因を作った人間なら、全て元通りに出来るだろ!
僕と君島さんのような少量の血を吸う吸血人。
そして、「あれ」が中に入っている佐々木や松村。
みんなを元に戻してくれ!
ここに来たみんなが、それぞれの思いを抱いていることだろう。神城は佐々木のことが心配だし、君島さんも僕と同じかもしれない。そして、渡辺さんは・・
・・渡辺さんは、只の興味本位、記者としての関心だけなのか?
柱時計の振り子の音が耳に入る。チッチッという音以外にも振り子が揺れる音まで感じる。
伊澄瑠璃子は「お茶を用意しますね」と言うと、神城が「私も手伝うわ」と言って、二人で丸テーブルにお茶を配した。
部屋の中が湿気ている。その空気の中を、ゆらゆらと湯呑から湯気が立ち昇る。天井が湿気で軋み、たわんだ畳も湿気を帯びてくるようだ。
伊澄瑠璃子は、そんな部屋の様子など気にも留めず、改めて座り直した。
伊澄さんは、美しい。だが、保健医の吉田先生のような女性特有のセクシーさは微塵も感じられない。性的なこととは無縁の荘厳な美を感じる。
そして、彼女の何かを射るよう目が僕の目と合った。彼女の目は、こう言っているように見えた。
「屑木くん、苦しいのでしょう? 私が楽にさせてあげるわ」
伊澄瑠璃子は、僕の中に「あれ」を入れたがっている。その対象は、僕だけじゃないだろう。君島さんも同じだ。
だが、完全な人間の神城や渡辺さんに対してはどうなんだろうか?
伊澄瑠璃子は、ここにいる全員の体に「あれ」を入れたいのか?
だが僕にはわからない。彼女の目的が、「あれ」を増殖させて、その向こうには何が待っているというのだ。
まさか、この家にも、あの屋敷にいた巨大な自立歩行型の「あれ」が、どこかに潜んでいるんじゃないだろうな。
だとしたら、ここにいる僕たち全員が大量に血を吸われる危険にさらされていることになる。
だが、そんな危険を冒してまでも、僕は知らなければならない。
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