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今そこにある景色①
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◆今そこにある景色
日曜日・・疲れ切っていた僕は、朝遅くまで寝た。
あれから神城と佐々木とは学校近くで別れた。
だが、今日の午後、再び会う約束をしている。
三人とも、あの屋敷の出来事が頭に焼き付いて離れなかったからだ。
「絶対におかしい」・・それが三人の共通の意見だ。
なんか、体がだるい・・疲れが残っているのか?
そう思いながら、朝ご飯が残っていることを期待しながら居間に降りた。
「和也。遅くまで、寝てたのねえ」と母が言った。時計を見ると朝の10時だ。
有難いことに、母は朝食の準備を始めてくれた。
父がソファーに座り、テレビのニュースを見ている。
父は僕の顔を見ると、
「また、おかしな夢でも見たのか?」と笑った。
父と母には昨日の出来事を話してある。
一連の経緯を説明しても、
「そんな所に行くから、変なものを見るんでしょ!」と返された。
無理もない・・あんな光景を見て、それを両親に報告しても、体中の血を失った白山あかねは元通り・・何もなかったような顔をしていた。
おそらく、神城と佐々木も同じようなことを両親に言われたのではないだろうか?
誰が吸血鬼なんて信じる・・
僕がリビングに座って牛乳を飲み始めると、
テレビのニュースを見ていた父が、
「おい、この事故・・この近くだぞ」と言った。
母が手を拭いながらリビングに顔を出した。
「しかも、これ・・救急車の事故だぞ。大事故だ」
救急車?
テレビの中では女性キャスターが事故の大きさをしきりに伝えていた。
「今のところ、原因はわかっておりませんが・・」
母が「いやあねえ。この現場って・・家の近くの天井川沿いじゃないの」と言って父の隣に仲良く腰かけた。
女性キャスターの声はこの町「神戸市東灘区」の名を言って、その状況と凄さを伝えた。
そして、テレビの画面に事故現場が大写しとなった。
救急車が横転し、煙を吹いている。
父が「これ・・川に突っ込んでいるぞ」と大きく言った。
見ると救急車は川に突っ込み横転しているように見える。
そして、ニュースは更に伝えた。
・・この事故の時間、それは救急車が業務から戻る途中だったこと。
この救急車・・まさか、佐々木が呼んだ救急車ではないのか?
父が僕の方を向いて、
「おい、和也。昨日、おかしな出来事を見て、救急車を呼んだって言ってたよな?」と訊いた。「このニュースの事故・・その救急車じゃないのか?」
そんなことを訊かれてもわからない。確かめようがない。
「わからないよ・・救急車を見たのって、帰り際だったし・・それに暗かった」
ニュースは引き続き、隊員たちの死亡を伝えていた。
「お気の毒にねえ」と母が小さく言った。
「原因は不明・・調査中だってさ」と父が続けた。
そんな悲惨なニュースを見ながら僕は考えていた。
それは事故の原因だ。
ただの車の事故なのだろうか?
佐々木は言っていた。
「救急隊員の首筋に穴が開いているように見えたんですけど」
この事故と首の穴が関係あるのだろうか?
昼間、約束通りに神城と佐々木の三人、ファミレスで落ち合った。
話題はさっそくニュースで見た救急車の事故だった。
僕は事故の車と駆けつけくれた車が同じものかどうか、わからなかったが、
佐々木が、「お父さんが問い合わせてくれたんですよ・・そしたら、同じだって」と語った。
「やだわ・・あの事故・・もしかして、私たちのせい?」と神城が声を出した。
「そんなわけないだろ」と僕が言った。
「でも・・これって・・偶然でしょうか?」と佐々木が疑問を呈した。
「奈々、どうして、そう思うの?」
「だって・・私、見たんですよ。屑木くんには言ったんですけど、救急隊員の首筋に穴が開いていたんですよ」
「ええっ・・奈々、それ本当なの?」
それはいつできた穴なのか?
「もしかして、それが救急車の事故の原因?」と神城が言った。
「それはまだわからない・・」と僕は答えた。
こんな話ばかりで、気分的に昼食どころではない。
昨夜の屋敷での出来事、そして、ニュースで見た事故。
それでも食欲のある佐々木はオムライスを平らげ、コーヒーをお替りした。
「奈々、よく食べるわね」と神城が呆れ顔で言った。
「こんな時にはよく食べておかないと」と佐々木は笑顔で答えた。
一方、神城の食は進まないようだ。手が止まっている。
そんな二人に僕は、
「なあ・・念のためにみんな・・と言っても三人だけだけど・・ここで意見を一致させておきたいんだ」
「屑木くんに賛成ね」と神城は言った。佐々木も手を挙げ「私も賛成です」と言った。
「まず・・松村と佐々木があのお化け屋敷に二人で行った・・色々とおかしくなったのはそこからだよな」
僕は話を始めた。
「私はすぐに引き返しましたけどね」と佐々木が付け足す。
「その翌日、松村くんの顔が変になったのよ」と神城が言った。
すると佐々木が、「私の顔・・大丈夫ですよねえ?」と二人の顔を見ながら訊いた。
「奈々の顔、すごく変よ」と神城が脅かす。
「ええっ」佐々木が鞄からコンパクトの鏡を出すと、
「冗談よ」と神城が笑った。「もうっ、奈々ったら、すぐに本気にするんだから」
話が進まない。
冗談を言った神城が話を戻し、
「顔が変なのは・・体育の大崎先生もでしょ」と言った。
「それに、保健の吉田先生の首にも穴が開いていました」と佐々木が言った。
吉田先生の首の穴は伊澄瑠璃子が指摘した。
「首の穴は・・屋敷の中で、白山さんもそうだったわね」
白山あかねの首から血が線状に吹き出した。
「おそらく、穴は、白山さんに噛まれた黒崎さんにもあったと思います。想像ですけど」
そう佐々木奈々は言った。
・・いや・・違う。そこが違うんだ。
「あのさ・・僕はこう考えるんだけど」と僕は話を切り出した。
「穴が開いているのと、噛まれるのとは、違う・・それぞれが別の現象じゃないのかな」
「別なの?」
「これは僕の推測だ・・つまり、二人も見たよな? 白山さんの首の穴から血の糸のようなものがどこかに飛んでいくのを・・」
神城と佐々木はそれぞれ「見たわ」「見ましたよ」と言った。
「あれが・・『穴』・・なんだと思う」そう僕は言って、
「そして、黒崎さんが白山あかねに噛まれていたのが・・『噛まれる』ということだ」と説明した。
「どう違うの?」と神城が訊ねると
「全然違いますよぉ」と佐々木が言った。
佐々木は、
「何者かが、白山さんの首筋に穴を開けたんですよ。そして、空中に血を出させ・・体中の血を奪ったんだと思いますよ」
何者かが白山の血を抜き取った。
どうやら、佐々木の方が勘が鋭い。呑み込みも早そうだ。
僕は佐々木の言ったことに「そういうことだ」と肯定し、
「そして、血を吸われた人間は吸血鬼化する・・」と定義した。
「やだあ・・屑木くん、それ本当なの?」
神城は顔に恐怖を滲ませて言った。
「僕だって、わからない・・こんなことを経験するの初めてのことだし」
佐々木が「だから、吸血鬼化した白山さんに噛まれた黒崎さんが、同じように吸血鬼化して、屑木くんを噛んだんですね」と言った。
「そういうことだと思う」
空中に血を吸われた白山が黒崎の喉に噛みついて血を吸った。
そして、今度は黒崎が吸血鬼化し、僕の首を噛んだ。
日曜日・・疲れ切っていた僕は、朝遅くまで寝た。
あれから神城と佐々木とは学校近くで別れた。
だが、今日の午後、再び会う約束をしている。
三人とも、あの屋敷の出来事が頭に焼き付いて離れなかったからだ。
「絶対におかしい」・・それが三人の共通の意見だ。
なんか、体がだるい・・疲れが残っているのか?
そう思いながら、朝ご飯が残っていることを期待しながら居間に降りた。
「和也。遅くまで、寝てたのねえ」と母が言った。時計を見ると朝の10時だ。
有難いことに、母は朝食の準備を始めてくれた。
父がソファーに座り、テレビのニュースを見ている。
父は僕の顔を見ると、
「また、おかしな夢でも見たのか?」と笑った。
父と母には昨日の出来事を話してある。
一連の経緯を説明しても、
「そんな所に行くから、変なものを見るんでしょ!」と返された。
無理もない・・あんな光景を見て、それを両親に報告しても、体中の血を失った白山あかねは元通り・・何もなかったような顔をしていた。
おそらく、神城と佐々木も同じようなことを両親に言われたのではないだろうか?
誰が吸血鬼なんて信じる・・
僕がリビングに座って牛乳を飲み始めると、
テレビのニュースを見ていた父が、
「おい、この事故・・この近くだぞ」と言った。
母が手を拭いながらリビングに顔を出した。
「しかも、これ・・救急車の事故だぞ。大事故だ」
救急車?
テレビの中では女性キャスターが事故の大きさをしきりに伝えていた。
「今のところ、原因はわかっておりませんが・・」
母が「いやあねえ。この現場って・・家の近くの天井川沿いじゃないの」と言って父の隣に仲良く腰かけた。
女性キャスターの声はこの町「神戸市東灘区」の名を言って、その状況と凄さを伝えた。
そして、テレビの画面に事故現場が大写しとなった。
救急車が横転し、煙を吹いている。
父が「これ・・川に突っ込んでいるぞ」と大きく言った。
見ると救急車は川に突っ込み横転しているように見える。
そして、ニュースは更に伝えた。
・・この事故の時間、それは救急車が業務から戻る途中だったこと。
この救急車・・まさか、佐々木が呼んだ救急車ではないのか?
父が僕の方を向いて、
「おい、和也。昨日、おかしな出来事を見て、救急車を呼んだって言ってたよな?」と訊いた。「このニュースの事故・・その救急車じゃないのか?」
そんなことを訊かれてもわからない。確かめようがない。
「わからないよ・・救急車を見たのって、帰り際だったし・・それに暗かった」
ニュースは引き続き、隊員たちの死亡を伝えていた。
「お気の毒にねえ」と母が小さく言った。
「原因は不明・・調査中だってさ」と父が続けた。
そんな悲惨なニュースを見ながら僕は考えていた。
それは事故の原因だ。
ただの車の事故なのだろうか?
佐々木は言っていた。
「救急隊員の首筋に穴が開いているように見えたんですけど」
この事故と首の穴が関係あるのだろうか?
昼間、約束通りに神城と佐々木の三人、ファミレスで落ち合った。
話題はさっそくニュースで見た救急車の事故だった。
僕は事故の車と駆けつけくれた車が同じものかどうか、わからなかったが、
佐々木が、「お父さんが問い合わせてくれたんですよ・・そしたら、同じだって」と語った。
「やだわ・・あの事故・・もしかして、私たちのせい?」と神城が声を出した。
「そんなわけないだろ」と僕が言った。
「でも・・これって・・偶然でしょうか?」と佐々木が疑問を呈した。
「奈々、どうして、そう思うの?」
「だって・・私、見たんですよ。屑木くんには言ったんですけど、救急隊員の首筋に穴が開いていたんですよ」
「ええっ・・奈々、それ本当なの?」
それはいつできた穴なのか?
「もしかして、それが救急車の事故の原因?」と神城が言った。
「それはまだわからない・・」と僕は答えた。
こんな話ばかりで、気分的に昼食どころではない。
昨夜の屋敷での出来事、そして、ニュースで見た事故。
それでも食欲のある佐々木はオムライスを平らげ、コーヒーをお替りした。
「奈々、よく食べるわね」と神城が呆れ顔で言った。
「こんな時にはよく食べておかないと」と佐々木は笑顔で答えた。
一方、神城の食は進まないようだ。手が止まっている。
そんな二人に僕は、
「なあ・・念のためにみんな・・と言っても三人だけだけど・・ここで意見を一致させておきたいんだ」
「屑木くんに賛成ね」と神城は言った。佐々木も手を挙げ「私も賛成です」と言った。
「まず・・松村と佐々木があのお化け屋敷に二人で行った・・色々とおかしくなったのはそこからだよな」
僕は話を始めた。
「私はすぐに引き返しましたけどね」と佐々木が付け足す。
「その翌日、松村くんの顔が変になったのよ」と神城が言った。
すると佐々木が、「私の顔・・大丈夫ですよねえ?」と二人の顔を見ながら訊いた。
「奈々の顔、すごく変よ」と神城が脅かす。
「ええっ」佐々木が鞄からコンパクトの鏡を出すと、
「冗談よ」と神城が笑った。「もうっ、奈々ったら、すぐに本気にするんだから」
話が進まない。
冗談を言った神城が話を戻し、
「顔が変なのは・・体育の大崎先生もでしょ」と言った。
「それに、保健の吉田先生の首にも穴が開いていました」と佐々木が言った。
吉田先生の首の穴は伊澄瑠璃子が指摘した。
「首の穴は・・屋敷の中で、白山さんもそうだったわね」
白山あかねの首から血が線状に吹き出した。
「おそらく、穴は、白山さんに噛まれた黒崎さんにもあったと思います。想像ですけど」
そう佐々木奈々は言った。
・・いや・・違う。そこが違うんだ。
「あのさ・・僕はこう考えるんだけど」と僕は話を切り出した。
「穴が開いているのと、噛まれるのとは、違う・・それぞれが別の現象じゃないのかな」
「別なの?」
「これは僕の推測だ・・つまり、二人も見たよな? 白山さんの首の穴から血の糸のようなものがどこかに飛んでいくのを・・」
神城と佐々木はそれぞれ「見たわ」「見ましたよ」と言った。
「あれが・・『穴』・・なんだと思う」そう僕は言って、
「そして、黒崎さんが白山あかねに噛まれていたのが・・『噛まれる』ということだ」と説明した。
「どう違うの?」と神城が訊ねると
「全然違いますよぉ」と佐々木が言った。
佐々木は、
「何者かが、白山さんの首筋に穴を開けたんですよ。そして、空中に血を出させ・・体中の血を奪ったんだと思いますよ」
何者かが白山の血を抜き取った。
どうやら、佐々木の方が勘が鋭い。呑み込みも早そうだ。
僕は佐々木の言ったことに「そういうことだ」と肯定し、
「そして、血を吸われた人間は吸血鬼化する・・」と定義した。
「やだあ・・屑木くん、それ本当なの?」
神城は顔に恐怖を滲ませて言った。
「僕だって、わからない・・こんなことを経験するの初めてのことだし」
佐々木が「だから、吸血鬼化した白山さんに噛まれた黒崎さんが、同じように吸血鬼化して、屑木くんを噛んだんですね」と言った。
「そういうことだと思う」
空中に血を吸われた白山が黒崎の喉に噛みついて血を吸った。
そして、今度は黒崎が吸血鬼化し、僕の首を噛んだ。
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