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まあっ、なんて可愛らしいんでしょ!①

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◆まあっ、なんて可愛らしいんでしょ!

 我が家、今はドール二人、イズミとサツキさんの三人暮らしの家と化しているアパートに帰りついた。
 なんとそこで待っていたのは、僕の母親だった。
 鍵を差し込もうとすると、部屋の中から女性同士の会話が聞こえてきたので、悪い予感しかしなかった。
ドアを開けると、談笑していたのは、予想通り、サツキさんと僕の母親だった。
 母はアパートの鍵を持っている。母が中に入って、驚いたのは、母ばかりでなくサツキさんもだろう。
 一人暮らしのはずの僕の部屋に、S型ドールがいたのだから。

「あら、実。遅かったのねえ」
 母は第一声そう言うと、僕の斜め後ろに隠れるようにしているイズミに気づき、
「まあまあ、実ったら、そんな小さな女の子まで・・」と言った。
「いや、お母さん。違うんだ。これには色々と事情があるんだよ」
 僕がそう言うと、イズミが、
「ジジョウ?」と小さく言って、
「ミノルさん。ワタシとサツキさんは、その事情の類なのでしょうか?」と尋ねた。
 おいっ、話がややこしくなる!
 だが、母の反応は、
「まあっ、なんて可愛らしい子なんでしょう!」と感激の声を上げた。「この子が、実が留守の時に電話に出た子なのね」と言いながら、近寄ってきた。
「お母さん・・この子は、人間じゃなくて・・」
「ええ、ドールのイズミちゃんでしょ? もう知っているわよ。こちらのサツキさんから聞いて」
 サツキさんがニッコリと微笑んでいる。サツキさんがどれくらいのことを話したのかわからないが、当然、イズミのことも話していることだろう。
 サツキさんが説明するように、「最初、イムラさんのお母さまが来られた際には、驚きました。ワタシのことをドールだと気づかれず、同棲している恋人だと思われたようです」と言った。
 母も「そうよ。でも、よく見たら、人間ではないようだし、これが、噂のフィギュアドールだとわかったわよ。それに・・」
「それに? 何だよ、お母さん」
 僕が問うと、
「それに、実が、こんな綺麗でスタイルのいい人とお付き合いなんてできるはずないものねえ」と母は言った。
「なんだよ、それ」
 声を荒げる僕にサツキさんが、
「お母さまが大変驚かれているので、ワタシが大体のことを説明しました」と言った。
「そうそう。サツキさんの説明。わかりやすかったわ」
 どこまでのことをサツキさんから聞いたのか気になるところだ。
 
 母はイズミの容姿がすごく気になるようで、
「サツキさんも綺麗だけど、この子。イズミちゃん・・本当に可愛らしいわ」と言ったり、
「ねえ、この子、いくつなの?」とイズミの顔を見ながら、僕に尋ねた。
「・・17歳です」イズミは淡々と答えた。
 いや、それ、たぶん母は信用しないから。
 だが、母は、「まあっ、自分の年齢も、ちゃんと言えるのね」と別の意味で関心した。

 母の興奮は、制止しようにも、どうにもできない。母は、いつかの佐山さんみたいに、帽子をかぶったイズミの頭を撫でたり、ゴシック調の服に触れたり、手を握ったりした。
 イズミは、迷惑なのか、気持ちいいのか、母の動きに身をまかせながら、「まるでワタシは、オモチャのようです」と言った。
 母は母で「まるで、娘ができたようだわ」と喜びに浸っている。
「本当のお人形さんみたいだわ」と更に関心する母。
「ワタシは、人形ではありません。フィギュアドールです」とこだわるイズミ。
「どちらも一緒の意味ではないでしょうか?」と説明するサツキさん。

 母はそう言った後、「人間の女の子ではないことはわかるわ」と強く言った。
 当たり前だ。
「でも、本当によくできているわねえ」
 再び母が感心していると、イズミが、
「ワタシは、ミノルさんの、願望でできたフィギュアドールなのです」と自身の説明をした。
「ええっ、実の願望?」
 イズミの奴。またややこしいことを言い出したな・・そう思い僕は咳払いをした。
「そうです。ワタシは、ミノルさんの思うがままの通りに作られています」
「おいっ! イズミっ」
 すると、母は僕に向き直り、
「実・・あなた。ロリコンだったの?」と真顔で言った。
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