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写真②
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山田課長の奥さん・・あれほどの美人だ。山田課長や内海は、彼女に翻弄されていたのかもしれない。
彼女にとって、山田課長や内海は、ただのステップ台なのか。どこかに辿り着くための・・
だが、僕には関係のない話だ。
僕は頭を切り替えるように再びパソコンの画面に目をやると、清水さんが更に詰め寄り、「それより、井村くん、何してんの?」と言って、僕のデスクトップの画面を覗き見た。
「これ、草壁グループのホームページよね」
顔が近い、体が近い。ついでに胸も近い。清水さん、警戒心なさすぎだ。それとも僕は男として見られていないのか。
「井村くん、なんでこんなの見てるの?」
「いろいろと気になることがあって、調べてたところなんだ」
「気になることって?」
「草壁会長の家族について・・」
「なんでまたそんなものを?」清水さんは頭を傾げる。
「ちょっと、知り合いの子に顔が似てるっていう噂だから」
適当に話を誤魔化すと、
「会長のご家族なら・・」と清水さんは言って、ホームページの隅々をチェックすると、
「草壁会長の個人のブログとリンクしているわよ」と言った。
なるほど、よく見ると、それらしきブログ名がある。小さくて分からなかった。それに色も薄い。
その先を見ることに胸が高鳴る。
僕は真横に清水さんの顔が迫っているにも関わらず、そのブログ名をクリックした。
そこには草壁会長の顔写真、そして、ダイアリー的なものや、経営に関する指針のようなものが書き連ねてあった。
ブログのカテゴリを覗いてみると、過去の記事が年月日順に並んでいる。
「きれいに整理されているわね」と清水さんが言ったが、僕はブログの美観には興味はない。
ひたすら記事を順番に繰っていく。
「あった!」思わず声が出た。
草壁会長の家族の写真だ。ブログの年月日を確認すると、数年前に撮影されたものだ。
有名すぎて顔を隠す必要もないのか、どこかで撮影された写真をそのまま使用しているようだ。
どこかの庭園を背景に、逝去された美しい夫人も映っている。
モデルのような体型に洗練された顔、どことなく如月カオリの風貌に似ていないこともない。
そして、長女が夫婦の間に立って微笑んでいる。母親であるはずの夫人に似ていない。
当然だ。母親と長女の間には血の繋がりはない。
せめて、父親の草壁会長にも似ていれば、と思っていただろうが、それもない。
夫婦の間に立つ少女・・草壁ミチル。
それは、イズミに似ているのと同時に、
島本さんの生き別れとなった娘、その人だ。
「へえっ、こんな若い子が、会長のお子さんなの? お孫さんかと思ったわ」
清水さんが大きな声を上げ、
「あれ、この子の顔、どっかで見たことが・・」
清水さんは画面を見ながら、自分の携帯を取り出し、ある画面を僕に見せた。
「このドールちゃん、会長の娘さんに似ていない?」
それはイズミの写真だ。
佐山さんは、イズミがよほど気に入ったのか、先日、僕の家に来た時に、携帯のカメラで撮ったものだ。それを清水さんの携帯に送っていたのだろう。
「ねえ、井村くん、草壁会長のお嬢さん。この子に似ているでしょう?」
清水さんは再度そう言った。
僕は「似ていて、当然だよ」と答えた。
そして、僕は思った。
イズミの顔が、何故これほどまでに草壁会長の娘であるミチルに似ているのか?
それは、島本さんが、ミチルの顔を見ているからだ。そして、その顔を心に焼きつけていたからだ。つまり島本さんの中にあるミチルの顔がフィギュアプリンターで作成されたイズミの顔に投影された。
島本さんが、娘の顔を写真か、それとも実際に会って見たのかどうかは分からない。いずれにせよ、島本さんは成長した娘の顔を見ているはずだ。
彼女にとって、山田課長や内海は、ただのステップ台なのか。どこかに辿り着くための・・
だが、僕には関係のない話だ。
僕は頭を切り替えるように再びパソコンの画面に目をやると、清水さんが更に詰め寄り、「それより、井村くん、何してんの?」と言って、僕のデスクトップの画面を覗き見た。
「これ、草壁グループのホームページよね」
顔が近い、体が近い。ついでに胸も近い。清水さん、警戒心なさすぎだ。それとも僕は男として見られていないのか。
「井村くん、なんでこんなの見てるの?」
「いろいろと気になることがあって、調べてたところなんだ」
「気になることって?」
「草壁会長の家族について・・」
「なんでまたそんなものを?」清水さんは頭を傾げる。
「ちょっと、知り合いの子に顔が似てるっていう噂だから」
適当に話を誤魔化すと、
「会長のご家族なら・・」と清水さんは言って、ホームページの隅々をチェックすると、
「草壁会長の個人のブログとリンクしているわよ」と言った。
なるほど、よく見ると、それらしきブログ名がある。小さくて分からなかった。それに色も薄い。
その先を見ることに胸が高鳴る。
僕は真横に清水さんの顔が迫っているにも関わらず、そのブログ名をクリックした。
そこには草壁会長の顔写真、そして、ダイアリー的なものや、経営に関する指針のようなものが書き連ねてあった。
ブログのカテゴリを覗いてみると、過去の記事が年月日順に並んでいる。
「きれいに整理されているわね」と清水さんが言ったが、僕はブログの美観には興味はない。
ひたすら記事を順番に繰っていく。
「あった!」思わず声が出た。
草壁会長の家族の写真だ。ブログの年月日を確認すると、数年前に撮影されたものだ。
有名すぎて顔を隠す必要もないのか、どこかで撮影された写真をそのまま使用しているようだ。
どこかの庭園を背景に、逝去された美しい夫人も映っている。
モデルのような体型に洗練された顔、どことなく如月カオリの風貌に似ていないこともない。
そして、長女が夫婦の間に立って微笑んでいる。母親であるはずの夫人に似ていない。
当然だ。母親と長女の間には血の繋がりはない。
せめて、父親の草壁会長にも似ていれば、と思っていただろうが、それもない。
夫婦の間に立つ少女・・草壁ミチル。
それは、イズミに似ているのと同時に、
島本さんの生き別れとなった娘、その人だ。
「へえっ、こんな若い子が、会長のお子さんなの? お孫さんかと思ったわ」
清水さんが大きな声を上げ、
「あれ、この子の顔、どっかで見たことが・・」
清水さんは画面を見ながら、自分の携帯を取り出し、ある画面を僕に見せた。
「このドールちゃん、会長の娘さんに似ていない?」
それはイズミの写真だ。
佐山さんは、イズミがよほど気に入ったのか、先日、僕の家に来た時に、携帯のカメラで撮ったものだ。それを清水さんの携帯に送っていたのだろう。
「ねえ、井村くん、草壁会長のお嬢さん。この子に似ているでしょう?」
清水さんは再度そう言った。
僕は「似ていて、当然だよ」と答えた。
そして、僕は思った。
イズミの顔が、何故これほどまでに草壁会長の娘であるミチルに似ているのか?
それは、島本さんが、ミチルの顔を見ているからだ。そして、その顔を心に焼きつけていたからだ。つまり島本さんの中にあるミチルの顔がフィギュアプリンターで作成されたイズミの顔に投影された。
島本さんが、娘の顔を写真か、それとも実際に会って見たのかどうかは分からない。いずれにせよ、島本さんは成長した娘の顔を見ているはずだ。
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