105 / 167
イズミのバージョンアップ①
しおりを挟む
◆イズミのバージョンアップ
「イズミタイプのドールの大きな情報って何だ?」
あまり期待しないでおこう。
僕のそんな反応ぶりを見て、イズミは立ち上がって、湯を沸かし始めた。
「ミノルさん、お話の前に、お茶をどうぞ」
イズミはそう言って差し出した。
イズミは自分の話を聞いて欲しい時に、よくお茶を勧める。
特に飲みたくもなかったが、熱いのを我慢して口をつけると、
「美味しいですか?」と尋ねた。
僕が「そうだな」と答えると、
「前に入れた時と、どちらが美味しいですが?」と訊いた。
「茶葉を変えたのか?」と訊くと、「いえ、前と同じです」と返した。
「なら、一緒だろ」と強く言うと、
イズミは、
「前より、煎れ方が上手になったか、と」と言った。
そういうことか。
あまり味の変わらないお茶を「少し香りがよくなった気がする」と言うと、イズミは気をよくしたのか、得意気に話を始めた。
まず、
「ミノルさん・・ワタシを創ったプリンターのメーカーさんから、おメールが届いているようです。そこからの情報です」
メール?
あ、そうか。今は、イズミはパソコンと繋げているから、それくらいはわかるのか。
「メーカーからって・・どんなメールだ?」
久しく、メールチェックをしていなかったな。
「バージョンアップのお知らせです」とイズミは答えた。
僕は「どれどれ」と言って、パソコンのディスプレイを覗き込んだ。
すると、
「ミノルさん、パソコンを見る、そして、読む必要はありません。ワタシが話します」
イズミはそう言って僕がパソコンを見るのを遮った。
「いや、イズミ、話を聞くより、メールを読む方が早いだろ」僕は抗議する。
イズミは納得いかないのか、
「ワタシの話を聞く方が効率的です」とむくれた。
そんな様子を見てサツキさんが笑って、
「イムラさん、ここはイズミさんの顔を立てて、お話を聞いてあげてはいかがでしょうか」と僕に折れるように言った。
サツキさん、優しい! 僕とイズミの刺々しい会話の中和剤のようだ。
僕はサツキさんの意見に従い、イズミの話を聞くことにした。
「ミノルさん。ワタシのバージョンアップは、このケーブルで行えます」
「そうか・・」
買っといて良かったでしょ、と言いたいのか?
「それで、どんなバージョンアップなんだ?」
少し興味が沸く。
そんな僕の心を見透かすように、
「ミノルさん。楽しみですか?」と尋ねた。
僕は「いや、それほどでも」と答えた。「楽しみ」と言うと癪だ。
すると、サツキさんが、
「イムラさん。お顔に『楽しみ』と書かれていますよ」と微笑んだ。
なんだか、ドール二人に弄ばれている気分だ。
僕はやけくそになって「ああ、楽しみだ。だから、早く教えてくれ」と急かした。
僕がそう言うと、イズミは再び、
「ミノルさん。二杯目のお茶をどうぞ」とまたお茶を勧めた。
仕方なくまた飲むと、
イズミは、
「ワタシのバージョンアップは、『思念読み取り能力』の追加です」と言った。
「思念読み取り能力?」
よくわからないが、なんかすごいバージョンアップだな。
まさか、追加払いがあるんじゃないだろうな?
僕が経費のことを訊ねると、
「無料。只です」と答えた。
「そうか」と一安心していると、
「つまり、元々フィギュアプリンターに備わっていた思念を読み取る装置を、ドール自体に埋め込んだものです」
「プリンターに元々あったもの」
「元々あるものだから、経費はかからないのです」
よくわからないが・・更に凄いな。普通、金はとるだろ。
「それって、ケーブルは使わないのか?」
「使いません」とイズミは言って、
イズミは冷笑するような顔になり、
「ミノルさんは、ワタシを創った時、ミノルさんの頭とプリンターを繋がれましたか?」
「そんなことするわけないだろ!」
考えただけでゾッとする。僕の頭にケーブルの端子が差し込まれたところを想像しただろ!
「ならば、無線ということです」
なんか、腹立つ言い方!
横でサツキさんがくすくすと笑っている。
イズミは、続けて説明した。B型ドールの並列思考以外では、ドール同士は、ケーブルで繋がないと情報が読み取れない。
しかし、人間の思念は読み取れる。
人間の思念は、イズミ曰く「漂っている」ものらしい。
それって・・人魂のように聞こえるが。
「イズミタイプのドールの大きな情報って何だ?」
あまり期待しないでおこう。
僕のそんな反応ぶりを見て、イズミは立ち上がって、湯を沸かし始めた。
「ミノルさん、お話の前に、お茶をどうぞ」
イズミはそう言って差し出した。
イズミは自分の話を聞いて欲しい時に、よくお茶を勧める。
特に飲みたくもなかったが、熱いのを我慢して口をつけると、
「美味しいですか?」と尋ねた。
僕が「そうだな」と答えると、
「前に入れた時と、どちらが美味しいですが?」と訊いた。
「茶葉を変えたのか?」と訊くと、「いえ、前と同じです」と返した。
「なら、一緒だろ」と強く言うと、
イズミは、
「前より、煎れ方が上手になったか、と」と言った。
そういうことか。
あまり味の変わらないお茶を「少し香りがよくなった気がする」と言うと、イズミは気をよくしたのか、得意気に話を始めた。
まず、
「ミノルさん・・ワタシを創ったプリンターのメーカーさんから、おメールが届いているようです。そこからの情報です」
メール?
あ、そうか。今は、イズミはパソコンと繋げているから、それくらいはわかるのか。
「メーカーからって・・どんなメールだ?」
久しく、メールチェックをしていなかったな。
「バージョンアップのお知らせです」とイズミは答えた。
僕は「どれどれ」と言って、パソコンのディスプレイを覗き込んだ。
すると、
「ミノルさん、パソコンを見る、そして、読む必要はありません。ワタシが話します」
イズミはそう言って僕がパソコンを見るのを遮った。
「いや、イズミ、話を聞くより、メールを読む方が早いだろ」僕は抗議する。
イズミは納得いかないのか、
「ワタシの話を聞く方が効率的です」とむくれた。
そんな様子を見てサツキさんが笑って、
「イムラさん、ここはイズミさんの顔を立てて、お話を聞いてあげてはいかがでしょうか」と僕に折れるように言った。
サツキさん、優しい! 僕とイズミの刺々しい会話の中和剤のようだ。
僕はサツキさんの意見に従い、イズミの話を聞くことにした。
「ミノルさん。ワタシのバージョンアップは、このケーブルで行えます」
「そうか・・」
買っといて良かったでしょ、と言いたいのか?
「それで、どんなバージョンアップなんだ?」
少し興味が沸く。
そんな僕の心を見透かすように、
「ミノルさん。楽しみですか?」と尋ねた。
僕は「いや、それほどでも」と答えた。「楽しみ」と言うと癪だ。
すると、サツキさんが、
「イムラさん。お顔に『楽しみ』と書かれていますよ」と微笑んだ。
なんだか、ドール二人に弄ばれている気分だ。
僕はやけくそになって「ああ、楽しみだ。だから、早く教えてくれ」と急かした。
僕がそう言うと、イズミは再び、
「ミノルさん。二杯目のお茶をどうぞ」とまたお茶を勧めた。
仕方なくまた飲むと、
イズミは、
「ワタシのバージョンアップは、『思念読み取り能力』の追加です」と言った。
「思念読み取り能力?」
よくわからないが、なんかすごいバージョンアップだな。
まさか、追加払いがあるんじゃないだろうな?
僕が経費のことを訊ねると、
「無料。只です」と答えた。
「そうか」と一安心していると、
「つまり、元々フィギュアプリンターに備わっていた思念を読み取る装置を、ドール自体に埋め込んだものです」
「プリンターに元々あったもの」
「元々あるものだから、経費はかからないのです」
よくわからないが・・更に凄いな。普通、金はとるだろ。
「それって、ケーブルは使わないのか?」
「使いません」とイズミは言って、
イズミは冷笑するような顔になり、
「ミノルさんは、ワタシを創った時、ミノルさんの頭とプリンターを繋がれましたか?」
「そんなことするわけないだろ!」
考えただけでゾッとする。僕の頭にケーブルの端子が差し込まれたところを想像しただろ!
「ならば、無線ということです」
なんか、腹立つ言い方!
横でサツキさんがくすくすと笑っている。
イズミは、続けて説明した。B型ドールの並列思考以外では、ドール同士は、ケーブルで繋がないと情報が読み取れない。
しかし、人間の思念は読み取れる。
人間の思念は、イズミ曰く「漂っている」ものらしい。
それって・・人魂のように聞こえるが。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる