95 / 167
ドールズバトル②
しおりを挟む
僕たちを見下ろしているローズが如月カオリに、
「カオリさま、どうしますか? このドールと、人間を」と訊いた。
そう言ったローズの足元を見ながら、僕はぼんやりする意識の中で思った。
僕は人類が、初めて直面する状況に遭遇しているのではないだろうか?
・・AIドールが、人間に暴力を振う。そんな状況に。
如月カオリの所有者は飯山商事の山田課長だ。しかし、彼女は、課長のことなど無視して、行動している。
このローズもしかりだ。彼女の所有者は飯山商事の誰かだろうが、ここにはいない。
だが、もうこれ以上のことはしないだろう。
そんなことがあったら、大事件だ。僕は痛む脇腹を押さえながらそう思った。
如月カオリは、
「そうね。これ以上、ワタシたちの邪魔をしなければ、もう手荒なことは、ここでやめておくわ」と淡々と言った。
元々、如月カオリの真の目的は、イズミの思考回路だ。
このままでは、イズミの身が危ない。
「イズミ・・イズミには手を出すな!」大きな声で言った。
そう言った僕の声に、ローズが険しい顔になった。
今度は、ローズに蹴られる・・あのパワーで、
と、思った瞬間、
「な、なに?」ローズの声。
僕を見下ろすローズの表情には困惑したような感情が見て取れた。
それは、イズミだった。
小さな体のイズミが、大人の体のローズの太腿をその細い両腕で、がしっと握っている。
「イズミ!」
イズミは膝を立て、ローズの動きを封じていた。
「な、なんなの、この小さなドール? いつのまに」
ローズはイズミの腕を懸命に払い退けようと脚を動かしている。
そんなローズを見て、如月カオリが、
「ローズ、何をやっているの? そんな小さなドール、あなたのパワーなら何でもないはずでしょう?」と言った。
主人の如月カオリにそう言われたローズは、
「そのはずですが、この力は・・」と当惑した声で言った。
ローズの脚がギギッと軋むような音がした。イズミが物凄い力でローズの動きを封じている。
「ミノルさんには、触れさせません」とイズミが言った。
「イズミ!」
僕は懐かしいイズミに声をかけた。
イズミは僕の方に向き直り、
「ミノルさん、お久しぶりです。ミノルさんのお友達のイズミです」
相変わらず変な日本語でイズミはそう言った。なぜか笑顔に見える。
「イズミっ、充電切れじゃないのか?」
イズミは動けないはずでは・・
「充電は切れかかってますが、ホジョバッテリーで稼働しています」
「補助?」
「ハイ・・補助です・・けれど、あくまでも緊急の場合の補助なので、すぐに切れますし、動きも限られています」と言ったかと思うと、イズミはふら~っとよろけた。
危ない! と思った瞬間、イズミは背を正し、
「けれど、残ったエネルギーでこんなことくらいはできます」
イズミはそう言ったかと思うと、掴んでいたローズの足を離し、
今度は、如月カオリの背後にスタスタとまわり込んだ。
そして、イズミに差し込まれたままのケーブルの片方の端子を、如月カオリの脇腹に差し込んだ。
その行動は一瞬だった。
あまりの早い行動に如月カオリは「えっ」と当惑の声を洩らしただけだった。
ケーブルを差し込まれた如月カオリは、ぶるっと体を一度痙攣させた。
そして、碧い瞳をカッと見開いた。
ドールはケーブルを差し込まれると動けないのか、如月カオリは立ち尽くしたまま、イズミにされるがままになっている。
「ア・ア・ア」と如月カオリは断続的な機械音を出し始めた。
「カオリさま、どうしますか? このドールと、人間を」と訊いた。
そう言ったローズの足元を見ながら、僕はぼんやりする意識の中で思った。
僕は人類が、初めて直面する状況に遭遇しているのではないだろうか?
・・AIドールが、人間に暴力を振う。そんな状況に。
如月カオリの所有者は飯山商事の山田課長だ。しかし、彼女は、課長のことなど無視して、行動している。
このローズもしかりだ。彼女の所有者は飯山商事の誰かだろうが、ここにはいない。
だが、もうこれ以上のことはしないだろう。
そんなことがあったら、大事件だ。僕は痛む脇腹を押さえながらそう思った。
如月カオリは、
「そうね。これ以上、ワタシたちの邪魔をしなければ、もう手荒なことは、ここでやめておくわ」と淡々と言った。
元々、如月カオリの真の目的は、イズミの思考回路だ。
このままでは、イズミの身が危ない。
「イズミ・・イズミには手を出すな!」大きな声で言った。
そう言った僕の声に、ローズが険しい顔になった。
今度は、ローズに蹴られる・・あのパワーで、
と、思った瞬間、
「な、なに?」ローズの声。
僕を見下ろすローズの表情には困惑したような感情が見て取れた。
それは、イズミだった。
小さな体のイズミが、大人の体のローズの太腿をその細い両腕で、がしっと握っている。
「イズミ!」
イズミは膝を立て、ローズの動きを封じていた。
「な、なんなの、この小さなドール? いつのまに」
ローズはイズミの腕を懸命に払い退けようと脚を動かしている。
そんなローズを見て、如月カオリが、
「ローズ、何をやっているの? そんな小さなドール、あなたのパワーなら何でもないはずでしょう?」と言った。
主人の如月カオリにそう言われたローズは、
「そのはずですが、この力は・・」と当惑した声で言った。
ローズの脚がギギッと軋むような音がした。イズミが物凄い力でローズの動きを封じている。
「ミノルさんには、触れさせません」とイズミが言った。
「イズミ!」
僕は懐かしいイズミに声をかけた。
イズミは僕の方に向き直り、
「ミノルさん、お久しぶりです。ミノルさんのお友達のイズミです」
相変わらず変な日本語でイズミはそう言った。なぜか笑顔に見える。
「イズミっ、充電切れじゃないのか?」
イズミは動けないはずでは・・
「充電は切れかかってますが、ホジョバッテリーで稼働しています」
「補助?」
「ハイ・・補助です・・けれど、あくまでも緊急の場合の補助なので、すぐに切れますし、動きも限られています」と言ったかと思うと、イズミはふら~っとよろけた。
危ない! と思った瞬間、イズミは背を正し、
「けれど、残ったエネルギーでこんなことくらいはできます」
イズミはそう言ったかと思うと、掴んでいたローズの足を離し、
今度は、如月カオリの背後にスタスタとまわり込んだ。
そして、イズミに差し込まれたままのケーブルの片方の端子を、如月カオリの脇腹に差し込んだ。
その行動は一瞬だった。
あまりの早い行動に如月カオリは「えっ」と当惑の声を洩らしただけだった。
ケーブルを差し込まれた如月カオリは、ぶるっと体を一度痙攣させた。
そして、碧い瞳をカッと見開いた。
ドールはケーブルを差し込まれると動けないのか、如月カオリは立ち尽くしたまま、イズミにされるがままになっている。
「ア・ア・ア」と如月カオリは断続的な機械音を出し始めた。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
鋼月の軌跡
チョコレ
SF
月が目覚め、地球が揺れる─廃機で挑む熱狂のロボットバトル!
未知の鉱物ルナリウムがもたらした月面開発とムーンギアバトル。廃棄された機体を修復した少年が、謎の少女ルナと出会い、世界を揺るがす戦いへと挑む近未来SFロボットアクション!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ゾンビのプロ セイヴィングロード
石井アドリー
SF
東京で営業職に三年勤め、youtuberとしても活動していた『丘口知夏』は地獄の三日間を独りで逃げ延びていた。
その道中で百貨店の屋上に住む集団に救われたものの、安息の日々は長く続かなかった。
梯子を昇れる個体が現れたことで、ついに屋上の中へ地獄が流れ込んでいく。
信頼していた人までもがゾンビとなった。大切な屋上が崩壊していく。彼女は何もかも諦めかけていた。
「俺はゾンビのプロだ」
自らをそう名乗った謎の筋肉男『谷口貴樹』はロックミュージックを流し、アクション映画の如く盛大にゾンビを殲滅した。
知夏はその姿に惹かれ奮い立った。この手で人を救うたいという願いを胸に、百貨店の屋上から小さな一歩を踏み出す。
その一歩が百貨店を盛大に救い出すことになるとは、彼女はまだ考えてもいなかった。
数を増やし成長までするゾンビの群れに挑み、大都会に取り残された人々を救っていく。
ゾンビのプロとその見習いの二人を軸にしたゾンビパンデミック長編。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる