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AIフィギュアドール
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◆AIフィギュアドール
その時、ドアをドンドンと叩く音がした。続けてチャイムがピンポンと鳴った。
慌てて僕は、部屋の間仕切りのドアを閉め箱が見えないようにして、ドアを開けた。
ドアの向こうに立っているのは、例の隣のおばさんだった。
「あのっ、井村くんっ! さっきからちょっとうるさいんだけど」
おばさんの言うことはごもっともだ。苦情が出ても致し方ない。
「す、すみません・・もうすぐ終わりますから」
「何が終わるっていうの?」
「ちょっと、大きな棚を組み立てていて・・」と僕は適当な事を言った。
おばさんはちょっと考えた後、「そんな音だったかしら?」と言った。「もっと機械的な音だった気がするけど」
そして、おばさんはありえないことを言った。
「井村くん、棚を作るのなら、手伝ってあげましょうか?」
えっ?
このおばさん、小うるさいのか、優しいのか、全くわからない。
「い、いいです。自分でできますからっ!」
僕は必死でそう答えた。部屋に入って来られてはかなわない。
・・が、次の瞬間、
「ミノルさん」
と、また、フィギュアの僕を呼ぶ声が聞こえた。これも機械的な声。
その声を聞いたおばさんは、
「あら、女の子がいたのね?」と含みを持たせた笑顔を見せた。
女の子を連れ込んでいるとでも思ったのだろう。それよりも早く出て行ってくれ。
「ミノルさん、この箱、アキマセン・・」
箱が開かない?
えーっ・・自分で出てくるんじゃないのかよ!
説明書にはそう書いてあったじゃないか! この嘘つき! 中○製!
フィギュアの声を聞いたおばさんは、
「やっぱり、手伝った方がいいんじゃない?」と心配そうに言った。「ミノルって、井村くんのことでしょ」
たぶん、おばさんは人がいいのだろう。しかし、今はただのお節介、邪魔だ!
「だ、大丈夫ですよ」と僕は答えた。
「でも・・」
えーっ、おばさんは靴を脱いで家の中に上がろうとしている。
「いえ、いいですから・・結構ですから」
部屋の中を見られたらたまったものではない。部屋の中は散らかっているし、あの大きな箱、見られてはいけない・・こともないが、商品が商品なだけに恥ずかしい。男としても恥ずかしい。欲求不満に思われる。
かなり焦っているのが自分でもわかった。
部屋の中から僕を呼ぶ少女の声、その中を見よう部屋に入り込もうとするおばさん。
僕はおばさんに無理やりにでも出て行ってもらおうと、おばさんの体を押そうとした。
むにゅっ、
何だ? この感触は?
僕の手の持っていった先は、おばさんの人より大きめの乳房だった。
「ちょ、ちょっと井村くん!」
顔を紅潮させたおばさんの顔が間近にあった。
「ごっ、ごめんなさいっ!」
僕は慌てておばさんの体から手を離し素直に謝った。
「わ、私も悪かったわ・・」そう言っておばさんは、「彼女といるところ、お邪魔したら悪いものね」
「ミノルさん。ドウカされましたか?」
あれ? さっきより声が少し柔らかくなった気がする。
おばさんは中にいるフィギュアに「ごめんさなさいね・・おばさんはこれで失礼するわね」と声をかけた。
それでおばさんは自分の部屋に戻る・・そのはずだった。
ところが、また中からフィギュアの声が聞こえた。
「そこのオバサンもテツダッテください・・ミノルさん一人の力ではムリだと思いますから」
えーっ・・何て事を言うんだよ!
僕は心の中で、まだ見たことのないフィギュアに激しく抗議した。
そんなことしたら、お前の姿を見られてしまうじゃないか・・
おばさんの方はおばさんの方で。
「ちょっと、今、おばさんって言ったわね」と言って、「姿が見えないのに、どうして、私がおばさんだってわかるのよ!」と少し憤っている。
僕は「こ、声が、おばさん、っぽいんからじゃないですか?」と言った。
どさくさに紛れてかなり失礼なことを言ってしまったと、激しく後悔した。
「井村くん、ずいぶんと失礼なことを言うわね」
おばさんの顔が更に真っ赤になっている。
「レディに対してなんてことを。これでも、私、まだ若いつもりなのよ」
すぐに僕は「ごめんなさい・・」と謝って「彼女はああ言ってますが、一人で大丈夫ですから」と言った。僕はフィギュアドールのことを「彼女」と言った。
すると、また中から、
「ミノルさん、私はまだアナタの彼女ではありません」と声がした。どんどん人間の少女の声らしくなっていく。
それにいち早く反応したのがおばさんだ。
「えっ・・井村くんの彼女じゃないって言ってるわよ」と疑いの目を向けてくる。
「こ、これから彼女になるんですよ」と僕は誤魔化した。
もう彼女でも何でもいいじゃないか、早く、帰ってくれよ!
「彼女になるかどうかはマダわかりません」
また続けてフィギュアの声が聞こえた。お願いだから、黙っててくれ!
とにかく今は、この状況から脱しないと、
おばさんは少し落ち着いたのか、息を整え、
「わかったわ」と言った。
ホッとした。これでやっと・・
と思ったら、また中から、
「ミノルさん、早く、私をここから出してショキセッテイをしてください」
初期設定?
そう言えば、そんなこと書いてあったな。
それより、
「井村くん、今、『ここから出して』って言ったわよ・・確かに、私、そう聞こえたわ」
僕は「部屋ん中、暑いですからね」と適当に誤魔化した。
おばさんは怪訝そうな表情を浮かべ、
「そうだったかしら?・・」と言って、
「一言、挨拶をしてから帰ることにするわ」とおばさんは言った。
え~っ!
それがまずいんだよ!
そう思った時には、もうおばさんはドアを開けかけていた。
止めないと!
僕はドアノブに手を伸ばしたおばさんの手をむんずと掴んだ。
「ちょっと・・井村くん?」
振り向いたおばさんの顔はこれでもかというくらい間近にあった。下手をするとキスでもできそうな距離だった。
おばさんにしたら、どうしてそこまで部屋に入られては困るのか、そんなことを考えているのだろう。
香水の香りがほわっと漂ってくる。けれど、不快な匂いではない。会社の女性社員の香水にはあれほど、過剰反応をする僕なのに。
そして、現実は、いつだって予想外に展開する。
内開きのボロいドアは、僕とおばさんを合わせた重みのせいか、簡単に二人の体を受け入れ、僕とおばさんは絡み合うように部屋の中に倒れ込んでしまったのだ。
「ごっ、ごめんなさい」と即座に謝った僕の下に、おばさんの顔はあった。
「わ、私こそ、ごめんなさい」と僕の下になったおばさんは息を荒くし答えた。
何だよ、この状況・・
僕がおばさんをねじ伏せているみたいじゃないか。
僕は慌てて立ち上がった。
おばさんも衣服、スカートの乱れを整えながら、起き上がった。
それより、あの箱・・
問題のあの箱は? 僕は箱を確認した。
・・まだドライアイスのような煙を吐き出し続けている。
「井村くん、あ、あれ、何なのよ」
おばさんが箱を指差して言った。
どう説明したらいいんだ? 僕が答えあぐねていると、
「ちょっと、井村くん! 聞いているのっ!」と問いただされた。
「は、はいっ!」
おばさんに声高に名前を呼ばれ、僕は背筋をしゃきんとさせた。
すると、
箱の小さな出窓から声が漏れてきた。
「そこのオバサン・・ミノルさんはちゃんとキイテいますよ」
また「おばさん」と言ったぞ、このフィギュア、お行儀が悪いんじゃないか?
おばさんは「な、中に誰か入っているの?」と声を震わせながら言った。
僕は観念して、
「じ、実は・・中には、女の子が・・」
じゃない・・フィギュアドールだけど。
「井村くん・・それって・・」
おばさんは僕の顔を直視した。
僕、何か変な事をいったか?
「もしかして、誘拐?」
えーっ・・そうじゃないんだって、
「ち、違うんです・・これは女の子が入っているだけで・・」
いや、僕の答え方がまずい。
「それ、誘拐、さらに監禁って言うのよ」
監禁!
「ちっ、違うんですよ。これは・・か、買ったんです!」
そうだ、これはただの通販の商品だ。
「買ったって・・女の子を買ったの?」
買う・・その言葉もまずいな。
おばさんは次々と出てくる怪しい言葉に面食らっているようだった。
その顔はまるで犯罪者でも見るかのようだった。
すると、
「はい、オバサン、私はただのショウヒンです」と声が聞こえた。
それはもう普通の女の子の声だった。
次第にフィギュアドールが人間の声を出すのに慣れてきたっていうことか?
おばさんはまだ疑っている様子なので、僕は宅配の納品書を見せて、
「これがその証拠です。これ、通販で買ったものなんです」
おばさんは一応目を通したが、まだ信じられないようなので、僕はフィギュアの説明書を見せた。
その時、ドアをドンドンと叩く音がした。続けてチャイムがピンポンと鳴った。
慌てて僕は、部屋の間仕切りのドアを閉め箱が見えないようにして、ドアを開けた。
ドアの向こうに立っているのは、例の隣のおばさんだった。
「あのっ、井村くんっ! さっきからちょっとうるさいんだけど」
おばさんの言うことはごもっともだ。苦情が出ても致し方ない。
「す、すみません・・もうすぐ終わりますから」
「何が終わるっていうの?」
「ちょっと、大きな棚を組み立てていて・・」と僕は適当な事を言った。
おばさんはちょっと考えた後、「そんな音だったかしら?」と言った。「もっと機械的な音だった気がするけど」
そして、おばさんはありえないことを言った。
「井村くん、棚を作るのなら、手伝ってあげましょうか?」
えっ?
このおばさん、小うるさいのか、優しいのか、全くわからない。
「い、いいです。自分でできますからっ!」
僕は必死でそう答えた。部屋に入って来られてはかなわない。
・・が、次の瞬間、
「ミノルさん」
と、また、フィギュアの僕を呼ぶ声が聞こえた。これも機械的な声。
その声を聞いたおばさんは、
「あら、女の子がいたのね?」と含みを持たせた笑顔を見せた。
女の子を連れ込んでいるとでも思ったのだろう。それよりも早く出て行ってくれ。
「ミノルさん、この箱、アキマセン・・」
箱が開かない?
えーっ・・自分で出てくるんじゃないのかよ!
説明書にはそう書いてあったじゃないか! この嘘つき! 中○製!
フィギュアの声を聞いたおばさんは、
「やっぱり、手伝った方がいいんじゃない?」と心配そうに言った。「ミノルって、井村くんのことでしょ」
たぶん、おばさんは人がいいのだろう。しかし、今はただのお節介、邪魔だ!
「だ、大丈夫ですよ」と僕は答えた。
「でも・・」
えーっ、おばさんは靴を脱いで家の中に上がろうとしている。
「いえ、いいですから・・結構ですから」
部屋の中を見られたらたまったものではない。部屋の中は散らかっているし、あの大きな箱、見られてはいけない・・こともないが、商品が商品なだけに恥ずかしい。男としても恥ずかしい。欲求不満に思われる。
かなり焦っているのが自分でもわかった。
部屋の中から僕を呼ぶ少女の声、その中を見よう部屋に入り込もうとするおばさん。
僕はおばさんに無理やりにでも出て行ってもらおうと、おばさんの体を押そうとした。
むにゅっ、
何だ? この感触は?
僕の手の持っていった先は、おばさんの人より大きめの乳房だった。
「ちょ、ちょっと井村くん!」
顔を紅潮させたおばさんの顔が間近にあった。
「ごっ、ごめんなさいっ!」
僕は慌てておばさんの体から手を離し素直に謝った。
「わ、私も悪かったわ・・」そう言っておばさんは、「彼女といるところ、お邪魔したら悪いものね」
「ミノルさん。ドウカされましたか?」
あれ? さっきより声が少し柔らかくなった気がする。
おばさんは中にいるフィギュアに「ごめんさなさいね・・おばさんはこれで失礼するわね」と声をかけた。
それでおばさんは自分の部屋に戻る・・そのはずだった。
ところが、また中からフィギュアの声が聞こえた。
「そこのオバサンもテツダッテください・・ミノルさん一人の力ではムリだと思いますから」
えーっ・・何て事を言うんだよ!
僕は心の中で、まだ見たことのないフィギュアに激しく抗議した。
そんなことしたら、お前の姿を見られてしまうじゃないか・・
おばさんの方はおばさんの方で。
「ちょっと、今、おばさんって言ったわね」と言って、「姿が見えないのに、どうして、私がおばさんだってわかるのよ!」と少し憤っている。
僕は「こ、声が、おばさん、っぽいんからじゃないですか?」と言った。
どさくさに紛れてかなり失礼なことを言ってしまったと、激しく後悔した。
「井村くん、ずいぶんと失礼なことを言うわね」
おばさんの顔が更に真っ赤になっている。
「レディに対してなんてことを。これでも、私、まだ若いつもりなのよ」
すぐに僕は「ごめんなさい・・」と謝って「彼女はああ言ってますが、一人で大丈夫ですから」と言った。僕はフィギュアドールのことを「彼女」と言った。
すると、また中から、
「ミノルさん、私はまだアナタの彼女ではありません」と声がした。どんどん人間の少女の声らしくなっていく。
それにいち早く反応したのがおばさんだ。
「えっ・・井村くんの彼女じゃないって言ってるわよ」と疑いの目を向けてくる。
「こ、これから彼女になるんですよ」と僕は誤魔化した。
もう彼女でも何でもいいじゃないか、早く、帰ってくれよ!
「彼女になるかどうかはマダわかりません」
また続けてフィギュアの声が聞こえた。お願いだから、黙っててくれ!
とにかく今は、この状況から脱しないと、
おばさんは少し落ち着いたのか、息を整え、
「わかったわ」と言った。
ホッとした。これでやっと・・
と思ったら、また中から、
「ミノルさん、早く、私をここから出してショキセッテイをしてください」
初期設定?
そう言えば、そんなこと書いてあったな。
それより、
「井村くん、今、『ここから出して』って言ったわよ・・確かに、私、そう聞こえたわ」
僕は「部屋ん中、暑いですからね」と適当に誤魔化した。
おばさんは怪訝そうな表情を浮かべ、
「そうだったかしら?・・」と言って、
「一言、挨拶をしてから帰ることにするわ」とおばさんは言った。
え~っ!
それがまずいんだよ!
そう思った時には、もうおばさんはドアを開けかけていた。
止めないと!
僕はドアノブに手を伸ばしたおばさんの手をむんずと掴んだ。
「ちょっと・・井村くん?」
振り向いたおばさんの顔はこれでもかというくらい間近にあった。下手をするとキスでもできそうな距離だった。
おばさんにしたら、どうしてそこまで部屋に入られては困るのか、そんなことを考えているのだろう。
香水の香りがほわっと漂ってくる。けれど、不快な匂いではない。会社の女性社員の香水にはあれほど、過剰反応をする僕なのに。
そして、現実は、いつだって予想外に展開する。
内開きのボロいドアは、僕とおばさんを合わせた重みのせいか、簡単に二人の体を受け入れ、僕とおばさんは絡み合うように部屋の中に倒れ込んでしまったのだ。
「ごっ、ごめんなさい」と即座に謝った僕の下に、おばさんの顔はあった。
「わ、私こそ、ごめんなさい」と僕の下になったおばさんは息を荒くし答えた。
何だよ、この状況・・
僕がおばさんをねじ伏せているみたいじゃないか。
僕は慌てて立ち上がった。
おばさんも衣服、スカートの乱れを整えながら、起き上がった。
それより、あの箱・・
問題のあの箱は? 僕は箱を確認した。
・・まだドライアイスのような煙を吐き出し続けている。
「井村くん、あ、あれ、何なのよ」
おばさんが箱を指差して言った。
どう説明したらいいんだ? 僕が答えあぐねていると、
「ちょっと、井村くん! 聞いているのっ!」と問いただされた。
「は、はいっ!」
おばさんに声高に名前を呼ばれ、僕は背筋をしゃきんとさせた。
すると、
箱の小さな出窓から声が漏れてきた。
「そこのオバサン・・ミノルさんはちゃんとキイテいますよ」
また「おばさん」と言ったぞ、このフィギュア、お行儀が悪いんじゃないか?
おばさんは「な、中に誰か入っているの?」と声を震わせながら言った。
僕は観念して、
「じ、実は・・中には、女の子が・・」
じゃない・・フィギュアドールだけど。
「井村くん・・それって・・」
おばさんは僕の顔を直視した。
僕、何か変な事をいったか?
「もしかして、誘拐?」
えーっ・・そうじゃないんだって、
「ち、違うんです・・これは女の子が入っているだけで・・」
いや、僕の答え方がまずい。
「それ、誘拐、さらに監禁って言うのよ」
監禁!
「ちっ、違うんですよ。これは・・か、買ったんです!」
そうだ、これはただの通販の商品だ。
「買ったって・・女の子を買ったの?」
買う・・その言葉もまずいな。
おばさんは次々と出てくる怪しい言葉に面食らっているようだった。
その顔はまるで犯罪者でも見るかのようだった。
すると、
「はい、オバサン、私はただのショウヒンです」と声が聞こえた。
それはもう普通の女の子の声だった。
次第にフィギュアドールが人間の声を出すのに慣れてきたっていうことか?
おばさんはまだ疑っている様子なので、僕は宅配の納品書を見せて、
「これがその証拠です。これ、通販で買ったものなんです」
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