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コンプレックス1①
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◆コンプレックス
人間、誰しもコンプレックスを抱えて生きている。
人生に成功した大富豪でも幾つものコンプレックスがあると聞く。それは体の事だったり、環境だったり、学歴だったりする。
僕の場合は、親が授けてくれたこの体にさほど劣等感はないし、家の環境も何ら問題もない。学歴も中の上だ。人にとやかく言われることもない。
だが、コンプレックスは「限りない欲望」とセットになっている。
ある程度の学歴があっても、その上の者に対しては劣等感を持つものだ。
僕にとって県立の神戸高校がそれだ。
中学三年生の時、どうあがいても入れなかった高校。
同時にそれは、初恋の女の子、石山純子がすんなり入った高校でもある。石山純子にはほぼ絶望的な形で振られた。
それ故に、僕にとっての神戸高校は、コンプレックスの対象であるのと同時に、思い出したくない女の子がいる場所だ。
成績優秀な青山先輩も入れなかった、と言っていた特別な高校だ。
僕はこう思う。
コンプレックスや憎悪の対象となるもの。
僕の場合はそれが神戸高校だ。その校舎を見たことは無いが、仮に見たとしたら、眩しく足が竦みそうになるかもしれない。ましてやそこに通う生徒となると、すごくこちらが劣った人間のように感じてしまう。
おかしなものだ。少しの偏差値の差で進路が変わっただけのことだ。そこまで考えるのはおかしいと言われるかもしれない。
だが、人間はそんな僅かなことでコンプレックスを抱いたり、他人を嘲ったり、憎しみを抱いたりする。
少なくとも僕はこの数年でそんなことを学んだ。
そんな高校の文芸部と一緒に読書会をするわけだ。まさか、石山純子が神戸高校の文芸部に所属しているはずもないが、胸の高ぶりを抑えられないでいる。
ひょっとしたら? という心の動きだ。
この「ひょっとしたら?」という感情は、「居て欲しい」なのか、「居てもらっては困る」なのか定かではない。
だが今日、その不安定な気持ちを安定に変えてくれた。
「これが相手の高校の出席者リストよ」
夕暮れの部室で、速水部長が、神戸高校文芸部の出席者リストをサークルメンバーに回示した。
人間、誰しもコンプレックスを抱えて生きている。
人生に成功した大富豪でも幾つものコンプレックスがあると聞く。それは体の事だったり、環境だったり、学歴だったりする。
僕の場合は、親が授けてくれたこの体にさほど劣等感はないし、家の環境も何ら問題もない。学歴も中の上だ。人にとやかく言われることもない。
だが、コンプレックスは「限りない欲望」とセットになっている。
ある程度の学歴があっても、その上の者に対しては劣等感を持つものだ。
僕にとって県立の神戸高校がそれだ。
中学三年生の時、どうあがいても入れなかった高校。
同時にそれは、初恋の女の子、石山純子がすんなり入った高校でもある。石山純子にはほぼ絶望的な形で振られた。
それ故に、僕にとっての神戸高校は、コンプレックスの対象であるのと同時に、思い出したくない女の子がいる場所だ。
成績優秀な青山先輩も入れなかった、と言っていた特別な高校だ。
僕はこう思う。
コンプレックスや憎悪の対象となるもの。
僕の場合はそれが神戸高校だ。その校舎を見たことは無いが、仮に見たとしたら、眩しく足が竦みそうになるかもしれない。ましてやそこに通う生徒となると、すごくこちらが劣った人間のように感じてしまう。
おかしなものだ。少しの偏差値の差で進路が変わっただけのことだ。そこまで考えるのはおかしいと言われるかもしれない。
だが、人間はそんな僅かなことでコンプレックスを抱いたり、他人を嘲ったり、憎しみを抱いたりする。
少なくとも僕はこの数年でそんなことを学んだ。
そんな高校の文芸部と一緒に読書会をするわけだ。まさか、石山純子が神戸高校の文芸部に所属しているはずもないが、胸の高ぶりを抑えられないでいる。
ひょっとしたら? という心の動きだ。
この「ひょっとしたら?」という感情は、「居て欲しい」なのか、「居てもらっては困る」なのか定かではない。
だが今日、その不安定な気持ちを安定に変えてくれた。
「これが相手の高校の出席者リストよ」
夕暮れの部室で、速水部長が、神戸高校文芸部の出席者リストをサークルメンバーに回示した。
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