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予定は未定②

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 こうなったら、言おう言おうと思っていたことを今!
「青山先輩は、目立たないことは全然ないです。むしろすごく人の目を引くくらいです」
 僕の言葉の何が癇に触ったのか知らないが、青山先輩の顔がぴくっとなった。
「君、それこそ、他の人に失礼だよ。私が目立つくらいなら、沙織や沙希ちゃんは眩しくて、表を歩けないじゃないか」
 それ、本気で言っているのか? 冗談としか思えない。
 すると、僕の思考を代弁するように、
「ちょっと、青山さん。あなたの言葉こそ、ここにいるみんなに失礼よ」と速水部長が言った。御もっともだ。
 これで青山先輩は分かってくれただろう。
 だが青山先輩は、首を傾げ「沙織・・君の言わんとすることが分からないよ」と言った。
 ダメだ。埒が明かない。

 その時、「和田くん・・」と小清水さんが声を上げた。
 まだ夢うつつだった和田くんがしゃきんと顔を上げると、
「当日、和田くんに予定がないのだったら、私と一緒に歩きませんか?」と誘った。
 和田くんは、一気に眠気が覚めたようだ。
「も、もちろん」と強く返事をした。
 誰も文句の出ない微笑ましい光景を見ながら、青山先輩は、
「私にとって、今度の学園祭は高校生活で最後の学園祭になるんだ。鈴木くん。それくらいの我儘を聞いてくれたって、いいじゃないか」と言った。

 青山先輩は、三年生だ。来年は卒業だ。それまでにも試験準備で忙しくなり、部活もそれほど顔を出せなくなるだろう。そう思うと寂しくなる。
 青山先輩とは色んな思い出がある。
 サークルの人数合わせに、休部中だった青山先輩を引っ張り出し、合宿に参加させた。その合宿先の有馬温泉にある愛宕山の展望台で色々と会話をしたりした。速水沙織との因縁の過去もその時に聞いた。
 そして、神戸三宮の本屋さんの喫茶室にも行った。極めつけは、青山家へ行ったことだ。
 僕は青山先輩の恋人役で義母を騙す芝居をしたりした。あっさり見破られはしたものの、素敵な時間だった。
 そんなことを思い出しながら「そうですね」と僕は言った。
「別に一日中、君を引っ張り回すわけじゃないよ。ほんの僅かな時間だ」
 青山先輩は優しく微笑んだ。
 でも、注目の的になるだろうな。
「あの二人、不似合いだ!」とか、
「影が薄いくせに、学園で最も影の濃い女性と歩くなんて!」とかの声が聞こえてきそうだ。
 僕と青山先輩の話が成立するのを見ていた和田くんが、
「鈴木くん、こんな美人の青山さんと行動を共にするなんて、なんて贅沢なんだ。やっぱり、僕は君が羨ましいよ」と大きな声で言った。
「おいっ!」
 和田くん、その言い方は小清水さんに無茶苦茶失礼だ!
 せっかく小清水さんとの話が成立しているのに破談となったらどうするんだ!
 誰も指摘しないので、僕は和田くんを睨みつけ、首をくいくいと小清水さんの方に振って合図をしたが、和田くんには理解ができないようだ。眉間に皺を寄せ、訝しげに僕を見ているだけだ。
 小清水さん、気を悪くしないでくれ。和田くんは本当は根はいい奴なんだ。

「あら、私だけが食いっぱぐれというわけね」
 この場を締めくくるように速水部長が言った。
「なら、沙織も一緒に・・三人でどうだい?」青山先輩が速水さんに提案した。「なんならサークルメンバー全員で」
「私は、遠慮しておくわ」
 あっさり返した速水部長を見て青山先輩は、小さく溜息をつき、「沙織はそう言うと思ったよ」と言って、
「沙織は、いつまでも今一歩を踏み出せないんだな」とポツリと言った。
 その言葉も意味深に聞こえたが、青山先輩が無理無理に僕を誘ったのは別の意味があるように思えてならなかった。
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