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大暴露読書会②-2
しおりを挟む小清水さんは、自分のことではないのに、心配そうにしているが、速水さんは知らぬ存ぜぬの顔で耳を傾けていない。和田くんは「やっぱり、鈴木くんが、あの水沢さんとなんて、おかしい。おかしすぎる」と一人ぼやいている。
失礼な!
青山先輩は一通り話し終えると、僕に向き直り、
「相思相愛の鈴木くんなら、水沢さんの家の状況を知っているんじゃないのか?」と言った。まるでどこかの会社の上司とかに叱られているみたいだ。
「いや、僕は別に水沢さんとつき合っているわけじゃ・・」僕はたどたどしく応えた。
「まだつき合っていないのか? 相思相愛なのに」
青山先輩は再び『相思相愛』の言葉を使った。青山先輩、相思相愛の言葉にこだわり過ぎだ。
小清水さんが、「私、鈴木くんが誰かと交際しているなんて、そんな話、聞いたことがないです」と悲しげに言った。
青山先輩は今度は小清水さんに向き直り、
「いや、沙希ちゃん。鈴木くんはね。いつも大事な話を仲間にしなかったりするんだ。沙希ちゃんも鈴木くんのそんな性格は知っているだろう?」と優しく言った。
「でも、サークル仲間だし・・」
納得いかない様子の小清水さんが呟くように言った。
すると、和田くんが気を利かせたつもりなのか、「サークル仲間と言っても、個々の人間の集まりだ。鈴木くんもその一員に過ぎないんだよ」と言った。
すると小清水さんは、和田くんをきつい目で見ると、
「和田くんに・・鈴木くんの何が分かるの?」と、強く返した。
小清水さんの激しい口調に怯んだ和田くんはまたしょんぼりとした。たぶん、和田くんは状況を把握する力が不足しているのだろう。
すると速水さんが間に入るように、「青山さんに、沙希さん」と呼びかけた。和田くんは徹底して無視しているようだ。
速水さんは青山先輩と小清水さんの視線が自分に向いたことを確認すると、
「鈴木くんは、現在、幸福の絶頂期にいるのよ。そっと見守るのが、サークル仲間というものではないかしら?」と言った。
幸福の絶頂だと? 僕のどの辺りが・・幸せだと言うんだ。
「速水さん。それ、すごく嫌味に聞こえるんだけど」僕が言った。
すると、
「沙織の言う通りかもしれない。私が余計なことを言ったのかもしれないな」
青山先輩が僕を含めて皆に謝るように言った。
青山先輩は、しばらく僕の顔を真顔で見た。
透き通るように綺麗な瞳だ。
「だが・・鈴木くん。これは私の勝手な推測だが」と前置きし、
「君の好きな人は、水沢純子ではないような気がするよ」と言った。
青山先輩は続けて、「もちろん、以前は、彼女のことを好きだったかもしれない。だが、それは時と共に変わった・・そうじゃないのかな?」
青山先輩は僕の心を見透かしたように言うと、小清水さんが「えっ、水沢さんじゃないんですか?」と声を上げた。
「・・僕の好きな人は、一人です」
僕はそう答えた。
「やっぱり、水沢さんですか?」小清水さんが再び落胆の声を上げた。
速水沙織は黙って聞いている。その眼鏡の奥の瞳も、青山先輩と同じように僕の心を見透かすようだ。
「でも、それはここでする話じゃないし、今は、部の活動・・読書会中です」
僕は皆の心を振り出しに戻すように言った。「今は、梶井基次郎の『檸檬』について語る時間です」
僕が強く言った時、僕の声に続けて、
「そうよ!」
鈴木くんの言う通りよ! と言わんばかりに顔を上げたのは、
小清水さん・・のはずだった。
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