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美術部の静かな時間①
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◆美術部の静かな時間
美術部の本部室は別室とは比較にならないくらいに広い。ちゃんと片付けもされている快適な空間だ。
予め、僕は美術部に友人のいる和田くんを通じて美術部のスケジュールを聞いてある。
と言っても、大勢の部員たちの中に顧問である早川講師がいればいいだけのことだ。
更に今日は早川だけではなく、美術の先生である三谷真紀子先生がいる。
より好都合だった。
僕は計画通り、美術部の部室に入り込み物陰に隠れている。いや、正確には隠れてはいない。自主透明化して佇んでいるだけだ。予め、靴は音がするので物陰に隠してある。
そして、絶好のタイミングが来るのをひたすら待っている。
チャンスが来なければ、再透明化して、更に透明化を延長させなければならない。
再々透明化はまだ試みたことがない。それが危険なのか、問題ないのか不明だ。
ええいっ、ままよ! 何とかなる!
三谷先生は我が部の顧問のセクシーな池永先生とタイプは異なり、少々きつめのタイプだ。つり目のような眼鏡がその人格にフィットしている。たまにヒステリーを起こすことで有名だ。
スケッチの指導を聞いていても、その刺々しさが伝わってくる。三谷先生のつんと澄ました顔を見ていると、我が部の顧問が池永先生であって良かった、とつくづく思う。
そして、僕の目の先には、あの早川がいる。早川は、特に興味もないような感じで立っている。三谷先生の指導には関心がないようだ。関心があるのは女性生徒の方にだろう。
その厭らしい目は女性を物色するように、懸命に絵筆を動かしてる女子生徒の胸元やお尻に注がれている。
もしかすると、女子を眺めることが目的でこの場にいるのかもしれない。
そんな目で、小清水さんや、青山先輩を見たことが許せない。
改めて、許しがたい気持ちが高まってくる。
今日は人物画らしく、部員と思える女の子が専用の椅子に腰かけ、不規則に並んだイーゼルに囲まれている。数人の女の子は慣れているらしく表情一つ変えず壁を見ている。
三谷先生が「いいですか、みなさん。本日は顧問の早川先生がお見えになっています。先生もみなさんの作品に目を通されます」と前置きのようなことを言って、満足げに早川講師を見た。学校での立場は三谷先生が上だが、その様子を見ると美術面では早川の方が上のように見える。
それに、この様子を見ていると、クラブ活動と言うよりも、美術の授業みたいだ。少なくとも文芸サークルとは違う。
いずれにせよ、状況は完璧だ。
僕には早川の背中しか見えない。その向こうには短めのタイトスカートの三谷先生がいる。
僕のこれからの行動に難をつけるとすれば、この行いはクラブ活動の妨害だ。
それだけは申し訳なく思う。
だが、許してくれ。僕の頭では他に方法が思いつかなかった。
そう心に念じて、僕は歩をゆっくりと進めた。
そして、早川の背後に忍び寄り、彼のチノパンを腰で締めているベルトに手をかけた。
ただちに異変に気づいた早川が振り向いた。
もちろん、振り返っても誰もいない。早川には僕が見えない。
「えっ?」
早川の顔が歪んだ。状況をどう判断していいのかわからない様子だ。
戸惑う早川の耳に息がかかるくらいの距離まで近づき、
池永先生のつきまといを追い払った時のようにドスを利かせてこう言った。
「最低だな、あんた」
あくまでも周囲に聞こえないような小さな声だ。
すると早川は「わっ」と大きな雄叫びを上げた。
同時に僕は、早川のベルトを引き抜いた。気持ちいいほど革ベルトがズボンの通し穴をしゅーっと抜けていった。
あとは、締めるものを失ったズボンを引き下げるだけだった。
早川は状況を理解できないながらも、自分のズボンが下げられることに対しては必死の抵抗を試みた。
だが、慌てふためく人間と冷静な人間とでは勝ち目は明らかだ。
美術部の本部室は別室とは比較にならないくらいに広い。ちゃんと片付けもされている快適な空間だ。
予め、僕は美術部に友人のいる和田くんを通じて美術部のスケジュールを聞いてある。
と言っても、大勢の部員たちの中に顧問である早川講師がいればいいだけのことだ。
更に今日は早川だけではなく、美術の先生である三谷真紀子先生がいる。
より好都合だった。
僕は計画通り、美術部の部室に入り込み物陰に隠れている。いや、正確には隠れてはいない。自主透明化して佇んでいるだけだ。予め、靴は音がするので物陰に隠してある。
そして、絶好のタイミングが来るのをひたすら待っている。
チャンスが来なければ、再透明化して、更に透明化を延長させなければならない。
再々透明化はまだ試みたことがない。それが危険なのか、問題ないのか不明だ。
ええいっ、ままよ! 何とかなる!
三谷先生は我が部の顧問のセクシーな池永先生とタイプは異なり、少々きつめのタイプだ。つり目のような眼鏡がその人格にフィットしている。たまにヒステリーを起こすことで有名だ。
スケッチの指導を聞いていても、その刺々しさが伝わってくる。三谷先生のつんと澄ました顔を見ていると、我が部の顧問が池永先生であって良かった、とつくづく思う。
そして、僕の目の先には、あの早川がいる。早川は、特に興味もないような感じで立っている。三谷先生の指導には関心がないようだ。関心があるのは女性生徒の方にだろう。
その厭らしい目は女性を物色するように、懸命に絵筆を動かしてる女子生徒の胸元やお尻に注がれている。
もしかすると、女子を眺めることが目的でこの場にいるのかもしれない。
そんな目で、小清水さんや、青山先輩を見たことが許せない。
改めて、許しがたい気持ちが高まってくる。
今日は人物画らしく、部員と思える女の子が専用の椅子に腰かけ、不規則に並んだイーゼルに囲まれている。数人の女の子は慣れているらしく表情一つ変えず壁を見ている。
三谷先生が「いいですか、みなさん。本日は顧問の早川先生がお見えになっています。先生もみなさんの作品に目を通されます」と前置きのようなことを言って、満足げに早川講師を見た。学校での立場は三谷先生が上だが、その様子を見ると美術面では早川の方が上のように見える。
それに、この様子を見ていると、クラブ活動と言うよりも、美術の授業みたいだ。少なくとも文芸サークルとは違う。
いずれにせよ、状況は完璧だ。
僕には早川の背中しか見えない。その向こうには短めのタイトスカートの三谷先生がいる。
僕のこれからの行動に難をつけるとすれば、この行いはクラブ活動の妨害だ。
それだけは申し訳なく思う。
だが、許してくれ。僕の頭では他に方法が思いつかなかった。
そう心に念じて、僕は歩をゆっくりと進めた。
そして、早川の背後に忍び寄り、彼のチノパンを腰で締めているベルトに手をかけた。
ただちに異変に気づいた早川が振り向いた。
もちろん、振り返っても誰もいない。早川には僕が見えない。
「えっ?」
早川の顔が歪んだ。状況をどう判断していいのかわからない様子だ。
戸惑う早川の耳に息がかかるくらいの距離まで近づき、
池永先生のつきまといを追い払った時のようにドスを利かせてこう言った。
「最低だな、あんた」
あくまでも周囲に聞こえないような小さな声だ。
すると早川は「わっ」と大きな雄叫びを上げた。
同時に僕は、早川のベルトを引き抜いた。気持ちいいほど革ベルトがズボンの通し穴をしゅーっと抜けていった。
あとは、締めるものを失ったズボンを引き下げるだけだった。
早川は状況を理解できないながらも、自分のズボンが下げられることに対しては必死の抵抗を試みた。
だが、慌てふためく人間と冷静な人間とでは勝ち目は明らかだ。
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