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放課後の出来事①
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◆放課後の出来事
長く感じた夏休みが終わりを告げ、二学期が始まった。
夢の世界から現実の空間に投げ出されたような感じだった。
秋の席替えで、水沢さんは僕から見えない位置に変わった。
窓際は窓際だが、後ろの方だ。前よりの僕の席からは見えない。速水さんが僕の真後ろから真ん前に変更になり、小清水さんは、一番前で先生から目立つ席になった。
そして、加藤が元水沢さんの席になった。
それが、僕の秋の始まりだ。
僕は速水さんの後姿を見て、午後の陽が差す窓を背景に加藤ゆかりの姿を見ている。
あれほど、二学期も水沢さんの姿が見える位置を願っていたのに、今では、水沢さんが見えないことに何かの救いを感じている。
心とは、勝手なものだ。
かといって、加藤の後姿に、かつての初恋の女の子、石山純子のイメージがかぶることはない。
加藤と石山純子とは、あまりにもタイプが違い過ぎる。
石山純子は掴みどころがない女の子だったが、加藤はすごく身近に感じる女の子だ。重なる部分が少しもない。
速水さんと小清水さんとは、サークルが同じなので世間話はするけれど、誰も水沢さんのことには触れない。
速水さんは小清水さんには言っていない。いや、言うはずがない。
「最近、肩が凝って仕方ないのよ」
速水さんが首を回しながら言うと、小清水さんが、
「ええっ、速水部長。肩こりなんて、まだ早すぎますよおぉ」
「誰かさんのせいなのよ。背中に強い視線を感じるのよ」
「それ、僕のことだろ!」
速水さんは僕の前の席なので、そのことを嫌味で言っている。
「鈴木くんは、影は薄いけれど、目の力は人並み以上のようね」
すると、小清水さんが、
「ええっ・・でも、いいじゃないですか。鈴木くんの視線が背中に刺さるなんて」と羨ましそうに言った。
「あら、沙希さん。私が羨ましいのかしら?」
小清水さんは「そ、そういう意味じゃないですよ」と慌てて言って、
「私なんて、一番前ですから、先生の視線が刺さるんですよ。それに比べたら、鈴木くんの視線なんて、遥かにマシじゃないですか」と弁解した。
速水さんは眼鏡の位置を整えると、
「そうね、とくに美術の時間。あのイヤらしい早川講師の時は、沙希さんも大変ね」
「そうですよ。他の先生はそうも思わないんですけど、早川先生。ちょっと目がいやらしいですよ」
そう、あの美術の講師の早川は、青山先輩の監視役を降ろされただけで、まだこの高校にしがみ付いている。 青山先輩の母親、青山麗華の力で、いずれ解雇にはなるだろうが、それまでは居座るつもりのようだ。
「沙希さんも気をつけた方がいいわよ。沙希さん、胸が大きいから、あの早川の視線が釘付けになっているわよ」
速水さんの言葉に小清水さんは「ええっ」と驚きの表情を見せると、急に自分の胸を気にし出した。
確かに言われてみれば、小清水さんの胸は大きく見える。少なくとも速水さんよりは。
「ほら、鈴木くんも、沙希さんの胸を見はじめたわよ」と言って「男なんて、みんな早川と同じね」と論じた。
速水さんと僕は同じ理由で早川講師を嫌っている。
僕は、偏見的な美術の点数をつける早川が嫌いだし、速水さんは性暴力をする男全般を憎んでいる。それは養父のキリヤマのせいだ。
「おいっ! 速水さん、さっきから言いたい放題だな」と僕は抗議の声を上げた。
小清水さんは笑って「鈴木くんは、そんな人じゃありませんよ」と僕を擁護した。
長く感じた夏休みが終わりを告げ、二学期が始まった。
夢の世界から現実の空間に投げ出されたような感じだった。
秋の席替えで、水沢さんは僕から見えない位置に変わった。
窓際は窓際だが、後ろの方だ。前よりの僕の席からは見えない。速水さんが僕の真後ろから真ん前に変更になり、小清水さんは、一番前で先生から目立つ席になった。
そして、加藤が元水沢さんの席になった。
それが、僕の秋の始まりだ。
僕は速水さんの後姿を見て、午後の陽が差す窓を背景に加藤ゆかりの姿を見ている。
あれほど、二学期も水沢さんの姿が見える位置を願っていたのに、今では、水沢さんが見えないことに何かの救いを感じている。
心とは、勝手なものだ。
かといって、加藤の後姿に、かつての初恋の女の子、石山純子のイメージがかぶることはない。
加藤と石山純子とは、あまりにもタイプが違い過ぎる。
石山純子は掴みどころがない女の子だったが、加藤はすごく身近に感じる女の子だ。重なる部分が少しもない。
速水さんと小清水さんとは、サークルが同じなので世間話はするけれど、誰も水沢さんのことには触れない。
速水さんは小清水さんには言っていない。いや、言うはずがない。
「最近、肩が凝って仕方ないのよ」
速水さんが首を回しながら言うと、小清水さんが、
「ええっ、速水部長。肩こりなんて、まだ早すぎますよおぉ」
「誰かさんのせいなのよ。背中に強い視線を感じるのよ」
「それ、僕のことだろ!」
速水さんは僕の前の席なので、そのことを嫌味で言っている。
「鈴木くんは、影は薄いけれど、目の力は人並み以上のようね」
すると、小清水さんが、
「ええっ・・でも、いいじゃないですか。鈴木くんの視線が背中に刺さるなんて」と羨ましそうに言った。
「あら、沙希さん。私が羨ましいのかしら?」
小清水さんは「そ、そういう意味じゃないですよ」と慌てて言って、
「私なんて、一番前ですから、先生の視線が刺さるんですよ。それに比べたら、鈴木くんの視線なんて、遥かにマシじゃないですか」と弁解した。
速水さんは眼鏡の位置を整えると、
「そうね、とくに美術の時間。あのイヤらしい早川講師の時は、沙希さんも大変ね」
「そうですよ。他の先生はそうも思わないんですけど、早川先生。ちょっと目がいやらしいですよ」
そう、あの美術の講師の早川は、青山先輩の監視役を降ろされただけで、まだこの高校にしがみ付いている。 青山先輩の母親、青山麗華の力で、いずれ解雇にはなるだろうが、それまでは居座るつもりのようだ。
「沙希さんも気をつけた方がいいわよ。沙希さん、胸が大きいから、あの早川の視線が釘付けになっているわよ」
速水さんの言葉に小清水さんは「ええっ」と驚きの表情を見せると、急に自分の胸を気にし出した。
確かに言われてみれば、小清水さんの胸は大きく見える。少なくとも速水さんよりは。
「ほら、鈴木くんも、沙希さんの胸を見はじめたわよ」と言って「男なんて、みんな早川と同じね」と論じた。
速水さんと僕は同じ理由で早川講師を嫌っている。
僕は、偏見的な美術の点数をつける早川が嫌いだし、速水さんは性暴力をする男全般を憎んでいる。それは養父のキリヤマのせいだ。
「おいっ! 速水さん、さっきから言いたい放題だな」と僕は抗議の声を上げた。
小清水さんは笑って「鈴木くんは、そんな人じゃありませんよ」と僕を擁護した。
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