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告白の行方①
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◆告白の行方
「ねえ、純子・・あんまり鈴木をいじめたらダメだよ。鈴木、困ってるじゃん」
加藤が水沢さんを戒める。
「別にそんな意味で言っているわけじゃないわ」
水沢さん自身も戸惑っている。
たぶん・・水沢さんの心の中には、僕の心が透けて見えている。
しかし、それは正しくない心の読み方だ。
たまたま僕は、加藤の怪我のことや、小清水さんの多重人格のことを考えてしまっただけなんだ。
心配するのと、恋することは別問題だ。
どうして、他のことばかり伝わって、僕の恋心が水沢さんには伝わらないんだ!
「純子はね、知らないうちに男子を傷つけてるんだよ」
気がつくと、加藤は水沢さんを責めだしている。
「純子はね、いっつもそうだったんだよ」
加藤は、これまで溜まっていたのものを吐き出すように言った。普段、仲のいい二人の会話とは思えなかった。
「純子に告白した男子をことごとく振ったのはいいんだよ。けれど、話も聞かないうちに拒絶するのはどうかなと思ってた。いつもそう思っていた」
加藤の口調が激しい。
「それは・・男の子の下心が見えて・・」
水沢さんはそう言葉を詰まらせた。
そう・・水沢純子は、人の心が読める。つまりは、告白してくる男子の心なら、かなり強く感じたのではないだろうか。
それで、告白の内容を聞くまでもなく、言い寄ってくる男子を拒絶していた。
ある意味、残酷な体質だ。
「でもね・・でも」と加藤は一呼吸開けると、
「鈴木は・・鈴木だけは、傷つけないで欲しいんだよ」
そう言った。口調に激しい感情がこもっている。
加藤は、いったい何を言っているんだ?
「加藤・・僕は別に、何も・・」
僕は傷ついていなし、水沢さんが心を読めることを苦にしていることも知っている。
水沢さんにはそれなりの苦悩がある。だから、そんなに気にしていない。
でも、それは本当だろうか?
僕は水沢さんの能力を怖がってはいないのだろうか?
「加藤・・僕は別に傷ついてもいないし、水沢さんが変なことを言ってるとも思わないよ」
僕は水沢さんを庇っている。
すると加藤は、
「鈴木は優しいからね」と言った。
僕は優しくなんかない。自分のことしか考えていないし、自分の好きな子が、今、何を考えているか知りたいだけだ。
けれど、水沢さんには告白は絶対にしない。ふられて傷つくのが怖い。中学の時の石山純子のことが頭をよぎり告白にどうしても足止めがかかる。
僕がそう思った時、加藤が、
「純子、鈴木を振らないであげて」と言った。「もし、鈴木が純子に告白しても、鈴木を振らないであげてね」
おいっ、加藤、いきなり、な、何を言っているんだよ!
「加藤、お前っ、水沢さんに・・し、失礼じゃないか」慌て過ぎて何を言っていいのか分からない。「そんなことを決めるのは水沢さんの勝手だし・・僕は水沢さんに告白するなんて一言も言っていないし」
変な動きをした僕の太腿がコンッとテーブルの脚に当たってガタッと揺れ、それぞれのグラスがテーブルの上を移動した。僕は慌ててテーブルを押さえた。
「鈴木・・分かり過ぎ」と加藤が笑った。「純子のことが好きなの、顔に書いているし」
「加藤っ!」
それ以上言えない。話せば更に悪循環しそうだ。
「鈴木、慌て過ぎだよ」と加藤は言った。「私は、もし純子に鈴木が告白したら、振らないで、って言っただけだよ」
「そ、そういうことか・・」
いやいや、加藤、そのセリフもまずいぞ。
そんな僕と加藤を見て、
「ちょっと、ゆかりっ。鈴木くんをからかっているの?」水沢さんが加藤を戒める。
そうそう、加藤は僕をからかっているだけなんだ。水沢さん、気にしないでくれ。
でも、水沢さんの返事も訊きたい。
「振らないで」と言った加藤のお願いに、水沢さんがどう答えるのか?
ところが、加藤は、
「別にからかってなんかないよ」と言った。「鈴木が、私に告白とかしても、私、断んないから・・」
なんか、すごいことを平気で淡々と加藤は言った。
「いや、僕は、加藤に告白することなんか・・」と言いかけ、
この言葉・・女の子は傷つくよな・・
たとえ、加藤が、僕にそんな気持ちを持っていなくても。
こんな時、どう返したらいいんだ?
だいだい、僕は女の子とそんなに会話をした経験もない。ましてや、目の前にあの水沢純子がいる。言葉を選んで話さないと、変な方向に行ってしまう。
そうだ・・
水沢さんのことを強く思うんだ!
加藤や小清水さんのことを考えずに、ただ水沢純子の事だけを。
それで、水沢さんは分かってくれるはずだ。僕が加藤のことは思っていないこと。水沢さんを好きだということ。
僕は「水沢さん」と呼びかけ、
「違うと思うよ。誰かを好きなのと、誰かを気遣うのとは・・」と言った。
僕が加藤や小清水さんを思うのは、ただの思いやりで、水沢さんを思うのは、恋だ。
一時的な思いやりは途切れるかもしれないが、
恋は・・ずっと続く。
「ねえ、純子・・あんまり鈴木をいじめたらダメだよ。鈴木、困ってるじゃん」
加藤が水沢さんを戒める。
「別にそんな意味で言っているわけじゃないわ」
水沢さん自身も戸惑っている。
たぶん・・水沢さんの心の中には、僕の心が透けて見えている。
しかし、それは正しくない心の読み方だ。
たまたま僕は、加藤の怪我のことや、小清水さんの多重人格のことを考えてしまっただけなんだ。
心配するのと、恋することは別問題だ。
どうして、他のことばかり伝わって、僕の恋心が水沢さんには伝わらないんだ!
「純子はね、知らないうちに男子を傷つけてるんだよ」
気がつくと、加藤は水沢さんを責めだしている。
「純子はね、いっつもそうだったんだよ」
加藤は、これまで溜まっていたのものを吐き出すように言った。普段、仲のいい二人の会話とは思えなかった。
「純子に告白した男子をことごとく振ったのはいいんだよ。けれど、話も聞かないうちに拒絶するのはどうかなと思ってた。いつもそう思っていた」
加藤の口調が激しい。
「それは・・男の子の下心が見えて・・」
水沢さんはそう言葉を詰まらせた。
そう・・水沢純子は、人の心が読める。つまりは、告白してくる男子の心なら、かなり強く感じたのではないだろうか。
それで、告白の内容を聞くまでもなく、言い寄ってくる男子を拒絶していた。
ある意味、残酷な体質だ。
「でもね・・でも」と加藤は一呼吸開けると、
「鈴木は・・鈴木だけは、傷つけないで欲しいんだよ」
そう言った。口調に激しい感情がこもっている。
加藤は、いったい何を言っているんだ?
「加藤・・僕は別に、何も・・」
僕は傷ついていなし、水沢さんが心を読めることを苦にしていることも知っている。
水沢さんにはそれなりの苦悩がある。だから、そんなに気にしていない。
でも、それは本当だろうか?
僕は水沢さんの能力を怖がってはいないのだろうか?
「加藤・・僕は別に傷ついてもいないし、水沢さんが変なことを言ってるとも思わないよ」
僕は水沢さんを庇っている。
すると加藤は、
「鈴木は優しいからね」と言った。
僕は優しくなんかない。自分のことしか考えていないし、自分の好きな子が、今、何を考えているか知りたいだけだ。
けれど、水沢さんには告白は絶対にしない。ふられて傷つくのが怖い。中学の時の石山純子のことが頭をよぎり告白にどうしても足止めがかかる。
僕がそう思った時、加藤が、
「純子、鈴木を振らないであげて」と言った。「もし、鈴木が純子に告白しても、鈴木を振らないであげてね」
おいっ、加藤、いきなり、な、何を言っているんだよ!
「加藤、お前っ、水沢さんに・・し、失礼じゃないか」慌て過ぎて何を言っていいのか分からない。「そんなことを決めるのは水沢さんの勝手だし・・僕は水沢さんに告白するなんて一言も言っていないし」
変な動きをした僕の太腿がコンッとテーブルの脚に当たってガタッと揺れ、それぞれのグラスがテーブルの上を移動した。僕は慌ててテーブルを押さえた。
「鈴木・・分かり過ぎ」と加藤が笑った。「純子のことが好きなの、顔に書いているし」
「加藤っ!」
それ以上言えない。話せば更に悪循環しそうだ。
「鈴木、慌て過ぎだよ」と加藤は言った。「私は、もし純子に鈴木が告白したら、振らないで、って言っただけだよ」
「そ、そういうことか・・」
いやいや、加藤、そのセリフもまずいぞ。
そんな僕と加藤を見て、
「ちょっと、ゆかりっ。鈴木くんをからかっているの?」水沢さんが加藤を戒める。
そうそう、加藤は僕をからかっているだけなんだ。水沢さん、気にしないでくれ。
でも、水沢さんの返事も訊きたい。
「振らないで」と言った加藤のお願いに、水沢さんがどう答えるのか?
ところが、加藤は、
「別にからかってなんかないよ」と言った。「鈴木が、私に告白とかしても、私、断んないから・・」
なんか、すごいことを平気で淡々と加藤は言った。
「いや、僕は、加藤に告白することなんか・・」と言いかけ、
この言葉・・女の子は傷つくよな・・
たとえ、加藤が、僕にそんな気持ちを持っていなくても。
こんな時、どう返したらいいんだ?
だいだい、僕は女の子とそんなに会話をした経験もない。ましてや、目の前にあの水沢純子がいる。言葉を選んで話さないと、変な方向に行ってしまう。
そうだ・・
水沢さんのことを強く思うんだ!
加藤や小清水さんのことを考えずに、ただ水沢純子の事だけを。
それで、水沢さんは分かってくれるはずだ。僕が加藤のことは思っていないこと。水沢さんを好きだということ。
僕は「水沢さん」と呼びかけ、
「違うと思うよ。誰かを好きなのと、誰かを気遣うのとは・・」と言った。
僕が加藤や小清水さんを思うのは、ただの思いやりで、水沢さんを思うのは、恋だ。
一時的な思いやりは途切れるかもしれないが、
恋は・・ずっと続く。
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