156 / 330
青山灯里の日常①
しおりを挟む
◆青山灯里の日常
次の日の朝・・受験勉強の他に何一つすることがない一日が始まる。
母の洗い物を手伝った後、庭に出て朝顔に水を遣り終えると、午前の勉強を開始。カリキュラム通りに進める。
お昼、母の手作りハンバーグを平らげ、同じくどこにも行く予定のない妹と談笑し、また勉強部屋に戻る。
これが夏休みの午前のパターンだ。何も予定が無い日はこんな過ごし方だ。
40日間の内、大半はこんな日を送っている。
英文法の問題集を解いていると、設問がマンネリ化していることに気づく。
母に「ちょっと本屋に行ってくる」と言って、英文法の新しい問題集を買い求めに本屋さんに向かった。
家を出て、数歩歩いた所でその車が現れた。
忘れもしない・・合宿の開始日に、青山先輩を乗せて貫禄たっぷりに登場した高級外車だ。
静かなエンジン音、更に静かで上品な走行で僕の脇にすっと停車した。
後部座席のウィンドウがこれも静かに下がると、予想通り、青山先輩の端正な顔が覗いた。
「鈴木くん、お出かけだったんだね。丁度、よかった。これから君の家にお邪魔しようと思っていたところなんだ」
そう言って青山先輩は車外に出てきた。
服装は上下黒のパンツスーツ、いつもの格好いい長身姿が目の前に現れた。
青山先輩の体つきで、そんな服を着ると女子高生にはとても見えない。どこかの政治家の秘書のように見える。
運転席の白髪の男はハンドルを握ったままだ。
先日、見たばかりの顔が新鮮に映るのは、髪を少し切ったせいだろうか?
そんな風に青山先輩の顔を見ていると、
青山先輩は、髪に手を当て、
「ああ、これかい?」と言って「今朝、切ったばかりなんだ。合宿中、鬱陶しくて仕方なかった」と説明した。
しかし・・
「青山先輩、僕の家に、って・・」
わざわざ、何の用事だろう? 予め電話をくれればいいのに・・と僕が思っていると、
青山先輩は、
「おかしいだろ」と言って、「私の家から君に電話をかけると、家の者に盗み聞きされるんだよ」と笑った。
なるほど、青山先輩の行動は監視されているんだな。合宿が唯一自由に羽ばたけた時間だったのかもしれない。
僕は「おかしいですよ」と率直な感想を述べた。「青山先輩の家、厳しすぎです」
青山先輩は「だろ?」と言って、
「もしやと思うが、早川講師から、何かなかったか?」と尋ねた。
「早川先生なら、昨日、電話がかかってきましたよ」不愉快な電話だった。
青山先輩は「やはり」と一言言って、車の中に顔を突っ込み運転席の男に「やっぱり、鈴木くんの家にかかってきたようだよ」と報告した。
そして、僕に向き直って「迷惑をかけてすまなかった」と謝り「詳しく聞かせてくれないか?」と言った。
「いいですよ」
そう僕が言うと、
「それで君はこれからどこに行くところだったんだい?」と青山先輩は訊ねた。
「駅前の本屋さんです」
「あの小さな本屋か?」
確かに三宮の本屋さんに比べると小さい。
「問題集を買うだけですから」と僕は答えた。問題集を買えるのならどこでもいい。
そう言った僕に青山先輩は、
「時間があったら、三宮の大きな本屋に行こう。その後、お茶でも飲もう・・奢るよ。早川の話は車の中で聞かせてくれ」と言った。男口調全開だ。
「たまには私にも先輩らしいことをさせてくれないか」
そう言って青山先輩は素敵な笑顔を見せた。
高級車の中はいい匂いがした。
それが青山先輩の匂いなのか、それとも運転手の白髪の男が撒いた香水の匂いなのかはわからない。
特に用事もない僕は高級外車の後部席に乗せてもらった。横には青山先輩が腰かけている。すらりと伸びたパンツの脚が綺麗だ。
車の中で早川の電話の内容を一言一句洩らさずに話した。
青山先輩は「早川らしい言い方だな」と苦い声を出した。
そして、青山先輩は青山家のややこしい事情を説明した。
青山先輩の話を聞くところによると、早川講師に探偵まがいのことをさせているのは、青山先輩の義理の母、つまり後妻さんらしい。父親は運転手の男も含めて、娘に自由にさせてあげたいらしい。放任主義をとっている。
しかし、この後妻さんは、義理の娘を箱入り娘に育てたいという口実の元に、早川講師に金を払い、青山先輩を監視させている。
聞こえはいい。それほど、娘のことを思って・・
しかし、内情は違うようだ。義理の娘に何らかの行為・・つまり男癖が悪い、とかの類を探させているのだ、
次の日の朝・・受験勉強の他に何一つすることがない一日が始まる。
母の洗い物を手伝った後、庭に出て朝顔に水を遣り終えると、午前の勉強を開始。カリキュラム通りに進める。
お昼、母の手作りハンバーグを平らげ、同じくどこにも行く予定のない妹と談笑し、また勉強部屋に戻る。
これが夏休みの午前のパターンだ。何も予定が無い日はこんな過ごし方だ。
40日間の内、大半はこんな日を送っている。
英文法の問題集を解いていると、設問がマンネリ化していることに気づく。
母に「ちょっと本屋に行ってくる」と言って、英文法の新しい問題集を買い求めに本屋さんに向かった。
家を出て、数歩歩いた所でその車が現れた。
忘れもしない・・合宿の開始日に、青山先輩を乗せて貫禄たっぷりに登場した高級外車だ。
静かなエンジン音、更に静かで上品な走行で僕の脇にすっと停車した。
後部座席のウィンドウがこれも静かに下がると、予想通り、青山先輩の端正な顔が覗いた。
「鈴木くん、お出かけだったんだね。丁度、よかった。これから君の家にお邪魔しようと思っていたところなんだ」
そう言って青山先輩は車外に出てきた。
服装は上下黒のパンツスーツ、いつもの格好いい長身姿が目の前に現れた。
青山先輩の体つきで、そんな服を着ると女子高生にはとても見えない。どこかの政治家の秘書のように見える。
運転席の白髪の男はハンドルを握ったままだ。
先日、見たばかりの顔が新鮮に映るのは、髪を少し切ったせいだろうか?
そんな風に青山先輩の顔を見ていると、
青山先輩は、髪に手を当て、
「ああ、これかい?」と言って「今朝、切ったばかりなんだ。合宿中、鬱陶しくて仕方なかった」と説明した。
しかし・・
「青山先輩、僕の家に、って・・」
わざわざ、何の用事だろう? 予め電話をくれればいいのに・・と僕が思っていると、
青山先輩は、
「おかしいだろ」と言って、「私の家から君に電話をかけると、家の者に盗み聞きされるんだよ」と笑った。
なるほど、青山先輩の行動は監視されているんだな。合宿が唯一自由に羽ばたけた時間だったのかもしれない。
僕は「おかしいですよ」と率直な感想を述べた。「青山先輩の家、厳しすぎです」
青山先輩は「だろ?」と言って、
「もしやと思うが、早川講師から、何かなかったか?」と尋ねた。
「早川先生なら、昨日、電話がかかってきましたよ」不愉快な電話だった。
青山先輩は「やはり」と一言言って、車の中に顔を突っ込み運転席の男に「やっぱり、鈴木くんの家にかかってきたようだよ」と報告した。
そして、僕に向き直って「迷惑をかけてすまなかった」と謝り「詳しく聞かせてくれないか?」と言った。
「いいですよ」
そう僕が言うと、
「それで君はこれからどこに行くところだったんだい?」と青山先輩は訊ねた。
「駅前の本屋さんです」
「あの小さな本屋か?」
確かに三宮の本屋さんに比べると小さい。
「問題集を買うだけですから」と僕は答えた。問題集を買えるのならどこでもいい。
そう言った僕に青山先輩は、
「時間があったら、三宮の大きな本屋に行こう。その後、お茶でも飲もう・・奢るよ。早川の話は車の中で聞かせてくれ」と言った。男口調全開だ。
「たまには私にも先輩らしいことをさせてくれないか」
そう言って青山先輩は素敵な笑顔を見せた。
高級車の中はいい匂いがした。
それが青山先輩の匂いなのか、それとも運転手の白髪の男が撒いた香水の匂いなのかはわからない。
特に用事もない僕は高級外車の後部席に乗せてもらった。横には青山先輩が腰かけている。すらりと伸びたパンツの脚が綺麗だ。
車の中で早川の電話の内容を一言一句洩らさずに話した。
青山先輩は「早川らしい言い方だな」と苦い声を出した。
そして、青山先輩は青山家のややこしい事情を説明した。
青山先輩の話を聞くところによると、早川講師に探偵まがいのことをさせているのは、青山先輩の義理の母、つまり後妻さんらしい。父親は運転手の男も含めて、娘に自由にさせてあげたいらしい。放任主義をとっている。
しかし、この後妻さんは、義理の娘を箱入り娘に育てたいという口実の元に、早川講師に金を払い、青山先輩を監視させている。
聞こえはいい。それほど、娘のことを思って・・
しかし、内情は違うようだ。義理の娘に何らかの行為・・つまり男癖が悪い、とかの類を探させているのだ、
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
5分くらいで読めるハッピーエンド
皆川大輔
青春
現代をメインに、思いついた舞台で小説を書きます。
タイトルにもあるように、ハッピーエンドが大好きです。
そのため、どんな暗い物語でも、登場人物たちは幸せになりますので、その点だけご了承いただけたらと思います。
あくまで自分が幸せだな、と思うようなハッピーエンドです。
捉えようによってはもしかしたらハッピーエンドじゃないのもあるかもしれません。
更新は当面の間、月曜日と金曜日。
時間は前後しますが、朝7:30〜8:30の間にアップさせていただきます。
その他、不定期で書き上げ次第アップします。
出勤前や通学前に読むもヨシ、寝る前に読むのもヨシ。そんな作品を目指して頑張ります。
追記
感想等ありがとうございます!
めちゃくちゃ励みになります。一言だけでもモチベーションがぐんぐん上がるので、もしお暇でしたら一言下さいm(_ _)m
11/9
クリエイターアプリ「skima」にて、NYAZU様https://skima.jp/profile?id=156412に表紙イラストを書いていただきました!
温かみのあるイラストに一目惚れしてしまい、すぐに依頼してしまいました。
また、このイラストを記念して、一作目である「桜色」のPVを自分で作ってしまいました!
1分くらい時間ありましたら是非見に来てください!
→https://youtu.be/VQR6ZUt1ipY
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
ハッピークリスマス ! 非公開にしていましたが再upしました。 2024.12.1
設樂理沙
青春
中学生の頃からずっと一緒だったよね。大切に思っていた人との楽しい日々が
この先もずっと続いていけぱいいのに……。
―――――――――――――――――――――――
|松村絢《まつむらあや》 ---大企業勤務 25歳
|堂本海(どうもとかい) ---商社勤務 25歳 (留年してしまい就職は一年遅れ)
中学の同級生
|渡部佳代子《わたなべかよこ》----絢と海との共通の友達 25歳
|石橋祐二《いしばしゆうじ》---絢の会社での先輩 30歳
|大隈可南子《おおくまかなこ》----海の同期 24歳 海LOVE?
――― 2024.12.1 再々公開 ――――
💍 イラストはOBAKERON様 有償画像
不満足氏名
音喜多子平
青春
主人公、乙川仁の通う私立喜田平学園高等学校は、入学した一部生徒の名前が変わるという一風変わった制度があった。
キラキラネームやDQNネームと呼ばれる、珍名が人権的な社会問題に発展した社会において、政府はそう言った名前を『不満足氏名』と定め早期的解決策を執行する。それが『不満足氏名解消法案』である。仁の通う高校は、その一環で認められた特別行政指定校だった。
だが仁が喜多平高校へ入ったのは、母親が強く推し進めていたためであり、本人の希望ではなかった。不満足氏名を変えるという意思のもとに入学してくる生徒が多い中、改名に明確な理由を持っていない仁は、長らく居心地の悪さを感じていた。
しかし、名付けのプロとしてやってきた公認命名士との出会いによって、仁の名前に対する意識は徐々に変わっていく・・・・・
血を吸うかぐや姫
小原ききょう
ホラー
「血を吸うかぐや姫」あらすじ
高校生の屑木和也の家の近くには、通称お化け屋敷と呼ばれる館があった。 大学生が物置に使っているという噂だが、どうもおかしい。 屑木の友人がある日、屋敷に探検に行ったその日から、屑木の日常が崩れ始める。 友人の体の異変・・体育教師の淫行・・色気を増す保険医 それら全てが謎の転校生美女、伊澄瑠璃子が絡んでいるように思われた。
登場人物
葛木和也・・主人公
小山景子・・お隣のお姉さん
小山美也子・・景子さんの妹
伊澄瑠璃子・・転校生
伊澄レミ・・瑠璃子の姉
神城涼子・・委員長
君島律子・・元高嶺の花
佐々木奈々・・クラスメイト
松村弘・・主人公の友達
黒崎みどり・・伊澄瑠璃子の取り巻き
白山あかね・・伊澄瑠璃子の取り巻き
吉田エリカ・・セクシー保険医
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる