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会話ってそんなに大事?①
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◆会話ってそんなに大事?
「それにしても、鈴木くんは以前、あのキリヤマという男に会っていたんだな」
青山先輩は驚きを隠せないように言った。
僕たち文芸サークルの部員たちと顧問の池永先生は、以前、水沢さんと加藤ゆかりと来たことのあるファミリー向けの喫茶店で涼んでいた。
すぐに車に乗らなかったのは、先ほどまでのいきり立った感情を沈めたかったせいかもしれない。このままそれぞれ帰宅すれば何か気まずい。
確かに頼んだメロンソーダが体に染みた。体の熱が一気に放出されるようだった。
部員、先生もみんな日に焼け、肌が赤くなっている。
健康そうな小清水さんが小麦色に焼け、どこかの深窓のご令嬢のような青山先輩もひどく焼けている。速水さんは海にいる時間が短かったせいで、それほどでもない。
マドンナ先生は元々焼けていたので目立たない。和田くんの肌は・・男なので見る気がしない。
「鈴木くん・・君は熱い男だね」
青山先輩は僕の顔を感慨深く見ながらそう言った。
池永先生が、「鈴木くんはどうしてあのキリヤマを知っていたの?」と訊ねた。
話せば長くなる・・けれど、ある程度は話さないと皆も納得しないだろう。
僕は思い切って、
「中学の時、あいつに暴力を受けたんだ」と言って、速水さんの顔を伺いながら、
「その時、その場に、速水さんがいた・・でも、その時の女の子が速水さんだって、さっきまで気づかなかったんだ」と正直に言った。
速水さんはコクリと頷いた。
「鈴木くんの言う通りよ。あの時は暗かったし、その時の私はまだ眼鏡をかけてはいなかったのよ。それに顔も腫れていたし、髪型も前とは違うわ」
速水さんはいつもの口調で淡々と皆に説明した。
速水さんは、
「他の男子なら気づくところ、さすがは鈴木くんだわ。今まで全く気がつかなかったのよ」といつも口調に戻ってそう言った。
「私は、鈴木くんにけっこうの数のヒントを与えていたはずよ」
その通りだ。気づかない僕が悪い。
そんな速水さんに青山先輩が「まあまあ、沙織もそう言うなよ。彼も、色々とあったんだろう」となだめた。
そう言った青山先輩に速水さんは、
「灯里さんは、鈴木くんにはずいぶんと甘いのね」といつもの口調で厭味ったらしく言った。
厭味ったらしいが、速水さんは青山先輩をちゃんと「灯里さん」という呼称で言っている。
僕は青山先輩の言葉を受けて「そうだよ。僕もいろいろとあったんだ」と言った。
すると、速水さんはアイスコーヒーの氷をストローで回しながら、
「そう、鈴木くんは私に初めて出会った時、ある女の子にふられた直後だったのよ」
と淡々と事実を述べた。
それは僕の恥部に該当する秘密も秘密、大秘密だ。それをいとも簡単に速水さんは皆の前で暴露した。
「その通りで、間違いはないけれど、あまり言って欲しくはない話だ。それもみんなの前で」
僕がそう抗議すると、
小清水さんが、興味を示し「それって、鈴木くんの初恋の彼女さんですか?」と訊ねた。
速水さんは「らしいわよ」と僕の代わりに答え、「それも思いっきり冷淡にあしらわれたそうよ」と、また言って欲しくないことを言った。
青山先輩が「君を袖にするとは、ひどい女もいたものだな」と強い男口調で言った。
池永先生は「鈴木くん、その女の子とはそれまで話をしたことがあったの?」とホームルーム口調で訊ねた。
「それが全くなかったんです」
石山純子とはあの夜の公衆電話以前は一言も会話を交わしていない。
同じクラスにいながら全くない。顔を見合わせたこともない。
「それじゃあ、ダメよお」
池永先生はそうきっぱりと言った。
僕はしゅんとなって「そうですよね」と答えた。
そんなやり取りを聞いていた小清水さんは「ええっ、話をしたことがない人は、一切ダメなんですか?」と驚きの顔で言った。
池永先生は「沙希ちゃん、ダメよお」と重ねて強く言った。
何で僕の初恋の話になってるんだよ!
青山先輩は胸元で腕を組み「そうかな?」と疑問を投げかけ、「先生の話だと、いわゆる一目ぼれっていうのが成立しなくなると思うのだが」と言った。青山先輩、口調がほとんど男だ。
池永先生は「そう言えばそうよねえ、私も出会ったその瞬間にときめく、っていうのがよくあるわね」と思い出すように言った。「やっぱり会話は関係ないかぁ」
池永先生、話がぶれぶれだ。
和田くんが合間に、「僕はその人の声を聞いた時に好きになったんだ」と会話に入ってきた。ゲームセンターで別人格の小清水さんに声をかけられた時のことだな。
僕はそんなやり取りを見ながら、元の文芸サークルの状態に戻った・・そう思った。
僕はこんな部の状態を守りたい。
「それにしても、鈴木くんは以前、あのキリヤマという男に会っていたんだな」
青山先輩は驚きを隠せないように言った。
僕たち文芸サークルの部員たちと顧問の池永先生は、以前、水沢さんと加藤ゆかりと来たことのあるファミリー向けの喫茶店で涼んでいた。
すぐに車に乗らなかったのは、先ほどまでのいきり立った感情を沈めたかったせいかもしれない。このままそれぞれ帰宅すれば何か気まずい。
確かに頼んだメロンソーダが体に染みた。体の熱が一気に放出されるようだった。
部員、先生もみんな日に焼け、肌が赤くなっている。
健康そうな小清水さんが小麦色に焼け、どこかの深窓のご令嬢のような青山先輩もひどく焼けている。速水さんは海にいる時間が短かったせいで、それほどでもない。
マドンナ先生は元々焼けていたので目立たない。和田くんの肌は・・男なので見る気がしない。
「鈴木くん・・君は熱い男だね」
青山先輩は僕の顔を感慨深く見ながらそう言った。
池永先生が、「鈴木くんはどうしてあのキリヤマを知っていたの?」と訊ねた。
話せば長くなる・・けれど、ある程度は話さないと皆も納得しないだろう。
僕は思い切って、
「中学の時、あいつに暴力を受けたんだ」と言って、速水さんの顔を伺いながら、
「その時、その場に、速水さんがいた・・でも、その時の女の子が速水さんだって、さっきまで気づかなかったんだ」と正直に言った。
速水さんはコクリと頷いた。
「鈴木くんの言う通りよ。あの時は暗かったし、その時の私はまだ眼鏡をかけてはいなかったのよ。それに顔も腫れていたし、髪型も前とは違うわ」
速水さんはいつもの口調で淡々と皆に説明した。
速水さんは、
「他の男子なら気づくところ、さすがは鈴木くんだわ。今まで全く気がつかなかったのよ」といつも口調に戻ってそう言った。
「私は、鈴木くんにけっこうの数のヒントを与えていたはずよ」
その通りだ。気づかない僕が悪い。
そんな速水さんに青山先輩が「まあまあ、沙織もそう言うなよ。彼も、色々とあったんだろう」となだめた。
そう言った青山先輩に速水さんは、
「灯里さんは、鈴木くんにはずいぶんと甘いのね」といつもの口調で厭味ったらしく言った。
厭味ったらしいが、速水さんは青山先輩をちゃんと「灯里さん」という呼称で言っている。
僕は青山先輩の言葉を受けて「そうだよ。僕もいろいろとあったんだ」と言った。
すると、速水さんはアイスコーヒーの氷をストローで回しながら、
「そう、鈴木くんは私に初めて出会った時、ある女の子にふられた直後だったのよ」
と淡々と事実を述べた。
それは僕の恥部に該当する秘密も秘密、大秘密だ。それをいとも簡単に速水さんは皆の前で暴露した。
「その通りで、間違いはないけれど、あまり言って欲しくはない話だ。それもみんなの前で」
僕がそう抗議すると、
小清水さんが、興味を示し「それって、鈴木くんの初恋の彼女さんですか?」と訊ねた。
速水さんは「らしいわよ」と僕の代わりに答え、「それも思いっきり冷淡にあしらわれたそうよ」と、また言って欲しくないことを言った。
青山先輩が「君を袖にするとは、ひどい女もいたものだな」と強い男口調で言った。
池永先生は「鈴木くん、その女の子とはそれまで話をしたことがあったの?」とホームルーム口調で訊ねた。
「それが全くなかったんです」
石山純子とはあの夜の公衆電話以前は一言も会話を交わしていない。
同じクラスにいながら全くない。顔を見合わせたこともない。
「それじゃあ、ダメよお」
池永先生はそうきっぱりと言った。
僕はしゅんとなって「そうですよね」と答えた。
そんなやり取りを聞いていた小清水さんは「ええっ、話をしたことがない人は、一切ダメなんですか?」と驚きの顔で言った。
池永先生は「沙希ちゃん、ダメよお」と重ねて強く言った。
何で僕の初恋の話になってるんだよ!
青山先輩は胸元で腕を組み「そうかな?」と疑問を投げかけ、「先生の話だと、いわゆる一目ぼれっていうのが成立しなくなると思うのだが」と言った。青山先輩、口調がほとんど男だ。
池永先生は「そう言えばそうよねえ、私も出会ったその瞬間にときめく、っていうのがよくあるわね」と思い出すように言った。「やっぱり会話は関係ないかぁ」
池永先生、話がぶれぶれだ。
和田くんが合間に、「僕はその人の声を聞いた時に好きになったんだ」と会話に入ってきた。ゲームセンターで別人格の小清水さんに声をかけられた時のことだな。
僕はそんなやり取りを見ながら、元の文芸サークルの状態に戻った・・そう思った。
僕はこんな部の状態を守りたい。
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