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中学3年・初恋~回想①
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◆中学3年・初恋~回想
教室の窓の向こうには春の青空がどこまでも広がっていた。
教壇に立っているのは、どの科目の教師よりも厳しかった数学の教師だ。
そんな教師が教壇の上で、
「この難問が正解だったのは水沢だけだ」と皆の前で強く言った。
僕の目は教室の窓際に座る水沢純子を大きく映していた。
その瞬間、僕は水沢純子に恋をした。
けれど、
これと同じ光景を僕は中学3年の春に見ている。
「この問題を解いたのは石山だけだったぞ。他には誰もいない」
顔は違うがそう言ったのも数学担当の厳しい先生だ。
窓際の席に座っていたのも水沢さんの場合と同じだった。
そう、水沢純子への想いは、僕の二度目の恋だった。
中学3年の春、僕の前には希望とか、夢とか、そんな言葉しかなかった。
そんな季節に、僕は一人の女の子に恋をした。
それは僕の初めての恋、紛れもない初恋だった。
その相手の名前は、石山純子。
水沢純子に恋をする僕が、それ以前に好きになった子の名前だ。
同時に忘れたい名前、僕の記憶から消し去ってしまいたい名前だった。
こんなはずじゃなかった初恋。
だから、僕の初恋の相手は、水沢純子、そんな風に記憶を塗り替えてしまった。
僕が高校二年のクラス替えで、窓際の僕の斜め前に座っている水沢さんを見た時、
「あっ、石山純子だ」と思ったのだ。
その違いはポニーテールと三つ編みくらいで、それ以外は、ほぼ同じ。
名前も同じ「純子」
僕は中学時代の石山純子の姿を、高校生の水沢純子に投影してしまったのだ。見事に初恋の上書きをしてしまった。
僕の初恋の相手は水沢さんではなく、石山純子だ。
水沢純子に出会ったことで、石山純子への恋心を消し去ったはずだった。
しかし、図書館のラウンジで水沢さんに、
「鈴木くんは私を見ていない。私の向こう・・ずっと遠くを見ている」と指摘された。水沢さんに僕の心を見破られた。
水沢さんの指摘通り、僕の心はこの中学3年の時に沈んだままだった。
石山純子に初めて出会ったのは、新学期が始まる日、クラス替えの発表の日だった。
新しいクラスの教室は最上階で、廊下の突き当たり、一番奥の部屋だった。
僕が一番に着いた時、まだ誰も来ていなかった。教室の扉は閉まっている。僕は廊下で担任の教師が来るのを待った。白い壁の続く廊下の窓は春の青空を鮮やかに映していた。
廊下でぼんやり待っているのは僕だけか、と思っていたが、そうではなかった、
僕以外に人がいるのに気がつかなかったのは、その子が廊下の壁の支柱の陰になっていたからだ。
その女の子は俯き泣いていた。
どことなく淡い印象の子だった。仲のいい友達と違うクラスになってしまったのだろうか? それくらいのことで、大げさな・・と思っていると彼女の制服が僕たちの中学のものではないとすぐに気がついた。
この中学の制服、紺色のセーラー服の襟の白のラインの部分が、彼女の場合は同じ色の紺色だ。この中学は白のラインだ。
メリハリのある白と紺の色彩とは違って、彼女の制服の姿が淡く見えたのはそのせいかもしれない。
他校から転校してきて知り合いの子が誰もいない、それで心細いのか? と理解した。
でも、普通そんなことで泣きはしないだろ・・
そんな推測を勝手にしていても、彼女に何の慰めの言葉をかけることもできないし、その時の僕の心は初めて見た女の子の姿で埋めるわけにはいかなかった。
まず、新しいクラスに馴染むこと、受験、高校進学、将来の夢。
そんな茫漠とした将来への不安の方が先行していた。
長い間、僕は女の子の方ばかり見ていたのだろう。
僕に気づいたのか、女の子は顔を上げ、僕の顔を見た。
おそらく顔を上げた時に僕以外に何も見るものがなかったからだろう。
彼女は少し微笑んだ気がする。
その瞬間、情けないことに僕は彼女の視線から目をそらした。
不器用な年齢だ。
それまで女の子とろくな会話をしたことがない僕は、
その女の子と何も話すことができないし・・話せたとしても何もできない。
できることはその時に見た女の子の笑顔を、心の奥底に仕舞い込むことだけだった。
しばらくすると他の生徒たちがぽつぽつと集まり、僕と彼女のと空間はあっという間に他の生徒たちの圧倒的な喧噪に飲み込まれて消えた。
その日から僕の長い長い初恋が始まった。
薄い印象の女の子。背は高からず低くもない。本当の少女のようなイメージ。
無口で、出しゃばらず、目立たない。
風景画の中に彼女の姿をそっと入れれば、見事に絵画と溶け合ってしまいそうなそんな雰囲気を持っていた。
教室の窓の向こうには春の青空がどこまでも広がっていた。
教壇に立っているのは、どの科目の教師よりも厳しかった数学の教師だ。
そんな教師が教壇の上で、
「この難問が正解だったのは水沢だけだ」と皆の前で強く言った。
僕の目は教室の窓際に座る水沢純子を大きく映していた。
その瞬間、僕は水沢純子に恋をした。
けれど、
これと同じ光景を僕は中学3年の春に見ている。
「この問題を解いたのは石山だけだったぞ。他には誰もいない」
顔は違うがそう言ったのも数学担当の厳しい先生だ。
窓際の席に座っていたのも水沢さんの場合と同じだった。
そう、水沢純子への想いは、僕の二度目の恋だった。
中学3年の春、僕の前には希望とか、夢とか、そんな言葉しかなかった。
そんな季節に、僕は一人の女の子に恋をした。
それは僕の初めての恋、紛れもない初恋だった。
その相手の名前は、石山純子。
水沢純子に恋をする僕が、それ以前に好きになった子の名前だ。
同時に忘れたい名前、僕の記憶から消し去ってしまいたい名前だった。
こんなはずじゃなかった初恋。
だから、僕の初恋の相手は、水沢純子、そんな風に記憶を塗り替えてしまった。
僕が高校二年のクラス替えで、窓際の僕の斜め前に座っている水沢さんを見た時、
「あっ、石山純子だ」と思ったのだ。
その違いはポニーテールと三つ編みくらいで、それ以外は、ほぼ同じ。
名前も同じ「純子」
僕は中学時代の石山純子の姿を、高校生の水沢純子に投影してしまったのだ。見事に初恋の上書きをしてしまった。
僕の初恋の相手は水沢さんではなく、石山純子だ。
水沢純子に出会ったことで、石山純子への恋心を消し去ったはずだった。
しかし、図書館のラウンジで水沢さんに、
「鈴木くんは私を見ていない。私の向こう・・ずっと遠くを見ている」と指摘された。水沢さんに僕の心を見破られた。
水沢さんの指摘通り、僕の心はこの中学3年の時に沈んだままだった。
石山純子に初めて出会ったのは、新学期が始まる日、クラス替えの発表の日だった。
新しいクラスの教室は最上階で、廊下の突き当たり、一番奥の部屋だった。
僕が一番に着いた時、まだ誰も来ていなかった。教室の扉は閉まっている。僕は廊下で担任の教師が来るのを待った。白い壁の続く廊下の窓は春の青空を鮮やかに映していた。
廊下でぼんやり待っているのは僕だけか、と思っていたが、そうではなかった、
僕以外に人がいるのに気がつかなかったのは、その子が廊下の壁の支柱の陰になっていたからだ。
その女の子は俯き泣いていた。
どことなく淡い印象の子だった。仲のいい友達と違うクラスになってしまったのだろうか? それくらいのことで、大げさな・・と思っていると彼女の制服が僕たちの中学のものではないとすぐに気がついた。
この中学の制服、紺色のセーラー服の襟の白のラインの部分が、彼女の場合は同じ色の紺色だ。この中学は白のラインだ。
メリハリのある白と紺の色彩とは違って、彼女の制服の姿が淡く見えたのはそのせいかもしれない。
他校から転校してきて知り合いの子が誰もいない、それで心細いのか? と理解した。
でも、普通そんなことで泣きはしないだろ・・
そんな推測を勝手にしていても、彼女に何の慰めの言葉をかけることもできないし、その時の僕の心は初めて見た女の子の姿で埋めるわけにはいかなかった。
まず、新しいクラスに馴染むこと、受験、高校進学、将来の夢。
そんな茫漠とした将来への不安の方が先行していた。
長い間、僕は女の子の方ばかり見ていたのだろう。
僕に気づいたのか、女の子は顔を上げ、僕の顔を見た。
おそらく顔を上げた時に僕以外に何も見るものがなかったからだろう。
彼女は少し微笑んだ気がする。
その瞬間、情けないことに僕は彼女の視線から目をそらした。
不器用な年齢だ。
それまで女の子とろくな会話をしたことがない僕は、
その女の子と何も話すことができないし・・話せたとしても何もできない。
できることはその時に見た女の子の笑顔を、心の奥底に仕舞い込むことだけだった。
しばらくすると他の生徒たちがぽつぽつと集まり、僕と彼女のと空間はあっという間に他の生徒たちの圧倒的な喧噪に飲み込まれて消えた。
その日から僕の長い長い初恋が始まった。
薄い印象の女の子。背は高からず低くもない。本当の少女のようなイメージ。
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