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これが本当の混浴透明風呂?①
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◆これが本当の混浴透明風呂?
女性陣が読書会に使われた男子部屋を退出する際、
青山先輩が速水さんに、
「沙織は今夜もシャワーだけなの?」と訊いているのが耳に入った。「せっかくの温泉なのに」
速水さんが、温泉に入らない・・僕の直感が、速水さんは裸身を他人に曝したくないのだ・・そう思った。
読書会を終えると、その後は夕食、そして、温泉・・のスケジュールをきっちりとこなしていく。
それにしても、部屋に和田くんと二人きりになると・・鬱陶しい。
最近、身の回りに女性が多いのに慣れてきたせいか、男子の花のなさには驚くものがある。周りに女子の影がいつもあった佐藤のような男と違って、和田くんは地味。僕も人のことは言えないが、似たような男子が一つの部屋に佇むとやはり鬱陶しい。
食事に時間まで本でも読むことにしよう・・と先ほどのギャツビーを再び取り出し、湯呑を持って籐椅子に座った。
さっき、青山先輩が座っていた椅子だ。青山先輩の残り香がまだあるような気がした。
・・と思ったが、これは青山先輩の前に座っていた池永先生の香水の匂いだということに気づいた。
すると和田くんが「池永先生って・・いい匂いしてるね」と言った。
僕は「あれは香水の匂いだよ」と即答した。
食後、和田くんと連れ立って、旅館の露天風呂に行くことにした。
浴場の入り口で、池永先生、青山先輩、小清水さんの三人と出会った。
青山先輩が「おや、君たちもお揃いでお風呂かい?」と思いっきり男性口調で言った。
池永先生が「ねえ、君たち・・女風呂を覗いちゃダメだよぉ」と言うと、小清水さんが「鈴木くんはそんな人じゃありません」と僕を庇った。
ちょっと・・小清水さん、和田くんのことは? 彼を忘れてませんか?
露天風呂は結構大きく、風呂の真ん中には大きな岩があり、その周囲をぐるりと泳げるくらいの広さだ。
昨晩はさらりと浸かっただけだったが、今晩はたっぷりと入ろう。
僕は和田くんに「適当に上がっていいぞ。僕はゆっくりつかっているから」と言っておいた。
和田くんは体力がないのか、体を洗った後、10分ほどで出て行った。
・・こんなに広い風呂なのに、他に客はいない。
この旅館の有馬の湯は「金泉」「金の湯」と言われるもので、色は赤銅色。いかにも体に良さそうな色をしている。当然ながら、僕の体は湯から下は全く見えない。家の風呂とは大違いだ。
空を見上げると、月が綺麗で、月の形は湯面にも映っていた。
水面の月を鑑賞しながら、
・・こんな時にでも僕は考えている。
それは水沢さんのことだ。
あの月が照らす地上のどこかに水沢純子という女性がいる。
それはどんなことよりも確実なことのように思えた。
そして、僕の声が彼女に届くことはない・・それも確実なことだ。
しばらくすると、隣の女湯から声が聞こえてきた。
男子の浴場と女子風呂の境は、3メートルはある長い竹を立て詰めただけで、声などはよく聞こえるようだ。連れ合いに「もう上がるぞ」という時には便利だ。
だが、決して覗きはできない。竹はピッタリとくっ付いているし、のぼる踏み場もない。
・・そう言えば、僕が小学生の2年の時だっけ、近所の銭湯で男女の境界の壁をよじ登ろうとしたことがあったっけな。なぜか、足をかける踏み台があった。
あの時、女風呂のほうから、おばさんの声で「誰や、壁を上っているのは!」と怒鳴る声が聞こえた。
壁はタイル張りで、決して向こうから見えるはずもなかった。
どうして、女湯から、僕たちの姿を認識できたのだろう?・・
遠い記憶を辿って行くと、男女の境の天井に、山道の中にあるような安全のためのデカい鏡が付けられているのを思い出した。相手の浴場内を見ることはできなくても、相手側の壁面は鏡に映っていたのだろう。そこにつまり、あの時のおばさんはその鏡に映る僕たちの姿を見たのだ。
不思議だと思ったものは、そう解決できた・・
不思議でもなんでもない・・鏡か・・
そんなことを思いながら、現在の竹の壁の上を見ると、鏡はない。
鏡を付けなくても、この竹は登るのは不可能だ。もしそんなことをして、万が一落ちたりしたら、床の石畳に裸の体を撃ちつけることになる。痛そう・・
いずれにせよ、僕はもう高校生だ。そんなつもりもさらさらないが。
女性陣が読書会に使われた男子部屋を退出する際、
青山先輩が速水さんに、
「沙織は今夜もシャワーだけなの?」と訊いているのが耳に入った。「せっかくの温泉なのに」
速水さんが、温泉に入らない・・僕の直感が、速水さんは裸身を他人に曝したくないのだ・・そう思った。
読書会を終えると、その後は夕食、そして、温泉・・のスケジュールをきっちりとこなしていく。
それにしても、部屋に和田くんと二人きりになると・・鬱陶しい。
最近、身の回りに女性が多いのに慣れてきたせいか、男子の花のなさには驚くものがある。周りに女子の影がいつもあった佐藤のような男と違って、和田くんは地味。僕も人のことは言えないが、似たような男子が一つの部屋に佇むとやはり鬱陶しい。
食事に時間まで本でも読むことにしよう・・と先ほどのギャツビーを再び取り出し、湯呑を持って籐椅子に座った。
さっき、青山先輩が座っていた椅子だ。青山先輩の残り香がまだあるような気がした。
・・と思ったが、これは青山先輩の前に座っていた池永先生の香水の匂いだということに気づいた。
すると和田くんが「池永先生って・・いい匂いしてるね」と言った。
僕は「あれは香水の匂いだよ」と即答した。
食後、和田くんと連れ立って、旅館の露天風呂に行くことにした。
浴場の入り口で、池永先生、青山先輩、小清水さんの三人と出会った。
青山先輩が「おや、君たちもお揃いでお風呂かい?」と思いっきり男性口調で言った。
池永先生が「ねえ、君たち・・女風呂を覗いちゃダメだよぉ」と言うと、小清水さんが「鈴木くんはそんな人じゃありません」と僕を庇った。
ちょっと・・小清水さん、和田くんのことは? 彼を忘れてませんか?
露天風呂は結構大きく、風呂の真ん中には大きな岩があり、その周囲をぐるりと泳げるくらいの広さだ。
昨晩はさらりと浸かっただけだったが、今晩はたっぷりと入ろう。
僕は和田くんに「適当に上がっていいぞ。僕はゆっくりつかっているから」と言っておいた。
和田くんは体力がないのか、体を洗った後、10分ほどで出て行った。
・・こんなに広い風呂なのに、他に客はいない。
この旅館の有馬の湯は「金泉」「金の湯」と言われるもので、色は赤銅色。いかにも体に良さそうな色をしている。当然ながら、僕の体は湯から下は全く見えない。家の風呂とは大違いだ。
空を見上げると、月が綺麗で、月の形は湯面にも映っていた。
水面の月を鑑賞しながら、
・・こんな時にでも僕は考えている。
それは水沢さんのことだ。
あの月が照らす地上のどこかに水沢純子という女性がいる。
それはどんなことよりも確実なことのように思えた。
そして、僕の声が彼女に届くことはない・・それも確実なことだ。
しばらくすると、隣の女湯から声が聞こえてきた。
男子の浴場と女子風呂の境は、3メートルはある長い竹を立て詰めただけで、声などはよく聞こえるようだ。連れ合いに「もう上がるぞ」という時には便利だ。
だが、決して覗きはできない。竹はピッタリとくっ付いているし、のぼる踏み場もない。
・・そう言えば、僕が小学生の2年の時だっけ、近所の銭湯で男女の境界の壁をよじ登ろうとしたことがあったっけな。なぜか、足をかける踏み台があった。
あの時、女風呂のほうから、おばさんの声で「誰や、壁を上っているのは!」と怒鳴る声が聞こえた。
壁はタイル張りで、決して向こうから見えるはずもなかった。
どうして、女湯から、僕たちの姿を認識できたのだろう?・・
遠い記憶を辿って行くと、男女の境の天井に、山道の中にあるような安全のためのデカい鏡が付けられているのを思い出した。相手の浴場内を見ることはできなくても、相手側の壁面は鏡に映っていたのだろう。そこにつまり、あの時のおばさんはその鏡に映る僕たちの姿を見たのだ。
不思議だと思ったものは、そう解決できた・・
不思議でもなんでもない・・鏡か・・
そんなことを思いながら、現在の竹の壁の上を見ると、鏡はない。
鏡を付けなくても、この竹は登るのは不可能だ。もしそんなことをして、万が一落ちたりしたら、床の石畳に裸の体を撃ちつけることになる。痛そう・・
いずれにせよ、僕はもう高校生だ。そんなつもりもさらさらないが。
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