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透明人間論議・・透明人間の正体は?①
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◆透明人間論議・・透明人間の正体は?
それから、速水部長の提案で、合宿内容の変更がなされた。
予定していた他の本、2冊は二学期に繰り越すというものだった。
一冊の本に時間を多く割いた方がいいという最もな意見で、皆が賛成した。
二学期に繰り越すことになった本は、僕の「雪国」と青山先輩の「檸檬」だ。
午後の部は小清水さん主催の「グレート・ギャツビー」のみで、夜は温泉をゆっくり楽しむということになった。それも皆が賛成した。せっかく温泉地に来ているのだ。昨晩は慌ただしかったこともあり、ゆっくりと湯につかっていない。
「そうですね。せっかくこういう場所に来ているんですから、もっと楽しまないと」と小清水さんが強く言った。
青山先輩が「明日は、海水浴もあることだしね」と言った。
すると速水さんが眼鏡の縁を押さえ青山先輩に、
「青山さんは、大丈夫なのかしら? 怖がりなのではなかったかしら?」と言った。
速水さん一流の皮肉だ。
青山先輩は部室で、透明化した速水さんの姿を幽霊だと思い込み休部したのだから、部室で読書会というのは青山先輩にとっては拷問のようなものだ。
それを知った上で速水さんは訊いている。意地悪だ。
青山先輩は・・そう言えば部室には幽霊が!・・というような顔をしたあと、
「だ、大丈夫よ・・こう見えても、少しは大人になっているつもりだよ」と強がっているのが丸分かりの顔で答えた。少し可愛い。
旅館のラウンジでくつろぎながら、そんな話を進めていると、顧問の池永先生が戻ってきて「一人でぶらぶらしても、何一つ、いいことなんて転がってないのよぉ」とぼやきながら、向かいのソファーに深く座った。
全員揃うと、先生が奢ってくれるということで、近くの自販機でそれぞれ好きなジュースやアイスコーヒーを買った。
ラウンジ内に缶ドリンクのプルタブを開ける音が軽快にした。
小清水さんと和田くんが僕を挟んで座り、
僕たちの向かいには、速水部長を真ん中に、池永先生、青山先輩と座っている。
和田くんは僕が邪魔だろうな・・と思いながら、
僕は、向かいの席の速水さん、青山先輩、お二人のジーンズの脚、そして、池永先生のホットパンツから伸びた立派なおみ足に視線がどうしても向いてしまう。
そんな僕の健康的な一男子の心情など、誰も斟酌するはずもない。
それに、他の男客の視線を集めているのにも気づかないから始末に悪い。またとんでもない目にあっても知らないぞ。
池永先生はぐいと健康的な脚を組み替え「それで、君たちは何かいいことはあったの?」と言った。
そんなぼやき先生に速水さんは、「私たちも何もないわよ」と答えた。
そう言った速水さんに小清水さんが、「でも、幽霊とか、透明人間の話とか、面白かったじゃないですかぁ」と言うと、
池永先生が即反応して、
「そうそう、そう言えば、先生ね、ちょっと前に、ある男の人にしつこく追いかけられていたことがあってね」と話を切り出した。
あの変質者のことか?
僕が「あの喫茶店の時の・・」とうっかり口を滑らすと、
速水さんが「その話、初めて聞いたわね・・」と間髪入れずに突っ込んだ。「くわしく話を聞かせてちょうだい」
それに対して池永先生が、
「あの時は、鈴木くんを引っ張り込んじゃったのよぉ・・」と一連の経緯を皆に説明した。
それを聞いた小清水さんが、
「池永先生、その話・・ちょっと先生としてどうかと思うんですけど、それよりも、その変な男の人と、幽霊と透明人間の話とどう関わりがあるんですか」と不満げに聞いた。
「おおありよぉ・・だって、その男、透明人間に出会ったって・・皆に言いふれまわっているんだもの」
青山先輩が「透明人間!」とおののくように小さく言った。
速水さんが「それ、どういうこと?」と追及する。
「その人、私との仲を透明人間に邪魔されたって言っているのよ」
仲、って・・人は自分のことを都合よく他人に言うものだな。
小清水さんがすかさず「ええっ、先生はその人とつき合っているんですかぁ?」と訊ねた。
「沙希ちゃん、全然違うのよぉ、向こうで勝手にそう思い込んでいるだけなのよぉ」
速水さんが「危ないタイプの男ね」と強く言った。
青山先輩が「それで、先生は大丈夫だったの?」と訊ねた。
池永先生は、
「それが、どうも、その透明人間が追い払ってくれたみたいなのよねえ」と嬉しそうに言った。
同時に速水さんが僕を睨んだ。「鈴木くん、何か、したでしょう?」と言わんばかりだ。
小清水さんは興味津々の様子で「透明人間が、やっつけたって・・ちょっと格好いいですよねえ・・憧れの王子様みたい」と言った。
その言葉に先生は悪乗りして、
「その男の人、透明人間にこう言われたんだって・・『オレの女に手を出すな!』って」
池永先生の表情・・どう見ても喜んでいるように見える。
「池永先生に手を?・・」と小清水さん。「ますます素敵な話ですよね」
同時にまた速水さんが僕を眼鏡の奥から睨みつける。
それから、速水部長の提案で、合宿内容の変更がなされた。
予定していた他の本、2冊は二学期に繰り越すというものだった。
一冊の本に時間を多く割いた方がいいという最もな意見で、皆が賛成した。
二学期に繰り越すことになった本は、僕の「雪国」と青山先輩の「檸檬」だ。
午後の部は小清水さん主催の「グレート・ギャツビー」のみで、夜は温泉をゆっくり楽しむということになった。それも皆が賛成した。せっかく温泉地に来ているのだ。昨晩は慌ただしかったこともあり、ゆっくりと湯につかっていない。
「そうですね。せっかくこういう場所に来ているんですから、もっと楽しまないと」と小清水さんが強く言った。
青山先輩が「明日は、海水浴もあることだしね」と言った。
すると速水さんが眼鏡の縁を押さえ青山先輩に、
「青山さんは、大丈夫なのかしら? 怖がりなのではなかったかしら?」と言った。
速水さん一流の皮肉だ。
青山先輩は部室で、透明化した速水さんの姿を幽霊だと思い込み休部したのだから、部室で読書会というのは青山先輩にとっては拷問のようなものだ。
それを知った上で速水さんは訊いている。意地悪だ。
青山先輩は・・そう言えば部室には幽霊が!・・というような顔をしたあと、
「だ、大丈夫よ・・こう見えても、少しは大人になっているつもりだよ」と強がっているのが丸分かりの顔で答えた。少し可愛い。
旅館のラウンジでくつろぎながら、そんな話を進めていると、顧問の池永先生が戻ってきて「一人でぶらぶらしても、何一つ、いいことなんて転がってないのよぉ」とぼやきながら、向かいのソファーに深く座った。
全員揃うと、先生が奢ってくれるということで、近くの自販機でそれぞれ好きなジュースやアイスコーヒーを買った。
ラウンジ内に缶ドリンクのプルタブを開ける音が軽快にした。
小清水さんと和田くんが僕を挟んで座り、
僕たちの向かいには、速水部長を真ん中に、池永先生、青山先輩と座っている。
和田くんは僕が邪魔だろうな・・と思いながら、
僕は、向かいの席の速水さん、青山先輩、お二人のジーンズの脚、そして、池永先生のホットパンツから伸びた立派なおみ足に視線がどうしても向いてしまう。
そんな僕の健康的な一男子の心情など、誰も斟酌するはずもない。
それに、他の男客の視線を集めているのにも気づかないから始末に悪い。またとんでもない目にあっても知らないぞ。
池永先生はぐいと健康的な脚を組み替え「それで、君たちは何かいいことはあったの?」と言った。
そんなぼやき先生に速水さんは、「私たちも何もないわよ」と答えた。
そう言った速水さんに小清水さんが、「でも、幽霊とか、透明人間の話とか、面白かったじゃないですかぁ」と言うと、
池永先生が即反応して、
「そうそう、そう言えば、先生ね、ちょっと前に、ある男の人にしつこく追いかけられていたことがあってね」と話を切り出した。
あの変質者のことか?
僕が「あの喫茶店の時の・・」とうっかり口を滑らすと、
速水さんが「その話、初めて聞いたわね・・」と間髪入れずに突っ込んだ。「くわしく話を聞かせてちょうだい」
それに対して池永先生が、
「あの時は、鈴木くんを引っ張り込んじゃったのよぉ・・」と一連の経緯を皆に説明した。
それを聞いた小清水さんが、
「池永先生、その話・・ちょっと先生としてどうかと思うんですけど、それよりも、その変な男の人と、幽霊と透明人間の話とどう関わりがあるんですか」と不満げに聞いた。
「おおありよぉ・・だって、その男、透明人間に出会ったって・・皆に言いふれまわっているんだもの」
青山先輩が「透明人間!」とおののくように小さく言った。
速水さんが「それ、どういうこと?」と追及する。
「その人、私との仲を透明人間に邪魔されたって言っているのよ」
仲、って・・人は自分のことを都合よく他人に言うものだな。
小清水さんがすかさず「ええっ、先生はその人とつき合っているんですかぁ?」と訊ねた。
「沙希ちゃん、全然違うのよぉ、向こうで勝手にそう思い込んでいるだけなのよぉ」
速水さんが「危ないタイプの男ね」と強く言った。
青山先輩が「それで、先生は大丈夫だったの?」と訊ねた。
池永先生は、
「それが、どうも、その透明人間が追い払ってくれたみたいなのよねえ」と嬉しそうに言った。
同時に速水さんが僕を睨んだ。「鈴木くん、何か、したでしょう?」と言わんばかりだ。
小清水さんは興味津々の様子で「透明人間が、やっつけたって・・ちょっと格好いいですよねえ・・憧れの王子様みたい」と言った。
その言葉に先生は悪乗りして、
「その男の人、透明人間にこう言われたんだって・・『オレの女に手を出すな!』って」
池永先生の表情・・どう見ても喜んでいるように見える。
「池永先生に手を?・・」と小清水さん。「ますます素敵な話ですよね」
同時にまた速水さんが僕を眼鏡の奥から睨みつける。
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