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孤高の上級生・青山灯里①
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◆孤高の上級生・青山灯里
僕は校門の脇の柱の陰に佇んでいる。
今は池永先生から聞いた時間だ。
三年生の授業が終わった頃を見計らって、ここにこうして立っている。
時折、女子生徒が僕を訝しげに見ていく。これではまるでさらし者だ。
さすがに影の薄い僕でも、こんな時は色濃く目立ってしまう。
待っている時間だけでも、透明化してくれればいいのだが、格好悪いと思っている時点で眠気は襲ってはこない。
よくよく、考えれば、こんな仕事・・池永先生がしてくれてもいいんじゃないか?
先生は時間だけ僕に伝えると、
「じゃあ、鈴木くん、勧誘、頑張ってねぇ」と言い残し、さっさと職員室に逃げるようにして去った。
いや、顧問の先生じゃなくても、速水部長とか・・
そもそも、青山先輩はどうして休部しているのか?
小清水さんは「自然と来なくなった・・のかな?」と微笑むばかりだし。
速水部長は「本人にしかわからないことね」とあやふやに答えた。
顧問のマドンナ先生・・わかるわけがないか。
そして、その時間がきた・・
僕には青山先輩が現れたら、すぐにわかる自信がある。
あんな大人っぽい人、そんなにいない。逆に今まで学校で見かけなかったのが不思議なくらいだ。
けれど、大人っぽいとは言っても、たかだか、一年上の先輩だ。
しれてる・・僕らとそう変わりはしない。普通にしゃべることができるだろう。
予想通り、すぐにわかった。
校門に向かって静かに歩いてくる女性がいる。
間違いなく、それは青山先輩、その人だ。
一人だ・・
まず目をひく特徴・・真っ直ぐで腰まで届きそうな長い黒髪。
しゃんと伸びた背、遥か前方を見つめる鋭い視線。すっと通った高い鼻筋。
飾り気がないようで、体全体で物を言っている感じがする。
それに上品そうだ。
かといってどこかのお嬢さまという感じでもない。
速水さんの言った通り、「大人の女性」・・そんな言葉がぴったりとくる。
文芸ークル・・当時は文芸部だが、
文学少女と言うよりも、絵とか描いていそうな雰囲気を持っている。
そう言えば、絵画で賞をとったとか・・まさしく美術の方の才能があるんだろうな。
他の上級生は友達同士連れだって歩いているが、青山先輩はそうではない。一人だ。
・・かといって僕と同じように影が薄いとか、存在感がないとか、
そんなことは全く感じさせない。
逆に影は濃すぎるし、存在感はありまくりの出しまくりだ。
孤高の女性・・そんな言葉がぴったりとくる。
そう・・彼女は誰も寄せつけない雰囲気を持っている。
以前、小清水さんが人の出すオーラについて語っていた。
小清水さんはオーラがなく、水沢さんが人を惹きつけるオーラがあると。
そのオーラっていうものが本当に存在するのなら、
青山先輩の出すオーラは、
他者を近づけさせないオーラだ。
つまり、水沢さんとは真逆のオーラだ。
だが、今はそんな感想を言っている場合ではない・・
青山先輩は校門を出ようとしているところだった。
まさか、透明になっていないだろうな・・
念のため、体を確認する。はっきりと体が見える。
よし、大丈夫だ。
僕は目の前を通り過ぎようとしている青山先輩に思い切って声をかけた。
「あ、あの・・」
少し声がうわずったぞ。格好悪い。
「青山先輩・・ですか?」
そんなみっともない僕の声に青山先輩は振り向いた。
「誰?・・君は」
青山先輩は僕を「きみ」と言った。ちゃんと僕の存在を認めてくれた。
「僕、二年二組の鈴木道雄、と言います」
青山先輩は「スズキ?」と言って首をかしげた。
少し、間をおいて、
「ごめんなさい・・私、君のことを知らないわ」
そう言うと、何かを謝罪でもするかのように、腰を折って深く頭を下げた。長い髪がふわりと垂れる。
もしかして、変なナンパとでも勘違いされた?
僕は校門の脇の柱の陰に佇んでいる。
今は池永先生から聞いた時間だ。
三年生の授業が終わった頃を見計らって、ここにこうして立っている。
時折、女子生徒が僕を訝しげに見ていく。これではまるでさらし者だ。
さすがに影の薄い僕でも、こんな時は色濃く目立ってしまう。
待っている時間だけでも、透明化してくれればいいのだが、格好悪いと思っている時点で眠気は襲ってはこない。
よくよく、考えれば、こんな仕事・・池永先生がしてくれてもいいんじゃないか?
先生は時間だけ僕に伝えると、
「じゃあ、鈴木くん、勧誘、頑張ってねぇ」と言い残し、さっさと職員室に逃げるようにして去った。
いや、顧問の先生じゃなくても、速水部長とか・・
そもそも、青山先輩はどうして休部しているのか?
小清水さんは「自然と来なくなった・・のかな?」と微笑むばかりだし。
速水部長は「本人にしかわからないことね」とあやふやに答えた。
顧問のマドンナ先生・・わかるわけがないか。
そして、その時間がきた・・
僕には青山先輩が現れたら、すぐにわかる自信がある。
あんな大人っぽい人、そんなにいない。逆に今まで学校で見かけなかったのが不思議なくらいだ。
けれど、大人っぽいとは言っても、たかだか、一年上の先輩だ。
しれてる・・僕らとそう変わりはしない。普通にしゃべることができるだろう。
予想通り、すぐにわかった。
校門に向かって静かに歩いてくる女性がいる。
間違いなく、それは青山先輩、その人だ。
一人だ・・
まず目をひく特徴・・真っ直ぐで腰まで届きそうな長い黒髪。
しゃんと伸びた背、遥か前方を見つめる鋭い視線。すっと通った高い鼻筋。
飾り気がないようで、体全体で物を言っている感じがする。
それに上品そうだ。
かといってどこかのお嬢さまという感じでもない。
速水さんの言った通り、「大人の女性」・・そんな言葉がぴったりとくる。
文芸ークル・・当時は文芸部だが、
文学少女と言うよりも、絵とか描いていそうな雰囲気を持っている。
そう言えば、絵画で賞をとったとか・・まさしく美術の方の才能があるんだろうな。
他の上級生は友達同士連れだって歩いているが、青山先輩はそうではない。一人だ。
・・かといって僕と同じように影が薄いとか、存在感がないとか、
そんなことは全く感じさせない。
逆に影は濃すぎるし、存在感はありまくりの出しまくりだ。
孤高の女性・・そんな言葉がぴったりとくる。
そう・・彼女は誰も寄せつけない雰囲気を持っている。
以前、小清水さんが人の出すオーラについて語っていた。
小清水さんはオーラがなく、水沢さんが人を惹きつけるオーラがあると。
そのオーラっていうものが本当に存在するのなら、
青山先輩の出すオーラは、
他者を近づけさせないオーラだ。
つまり、水沢さんとは真逆のオーラだ。
だが、今はそんな感想を言っている場合ではない・・
青山先輩は校門を出ようとしているところだった。
まさか、透明になっていないだろうな・・
念のため、体を確認する。はっきりと体が見える。
よし、大丈夫だ。
僕は目の前を通り過ぎようとしている青山先輩に思い切って声をかけた。
「あ、あの・・」
少し声がうわずったぞ。格好悪い。
「青山先輩・・ですか?」
そんなみっともない僕の声に青山先輩は振り向いた。
「誰?・・君は」
青山先輩は僕を「きみ」と言った。ちゃんと僕の存在を認めてくれた。
「僕、二年二組の鈴木道雄、と言います」
青山先輩は「スズキ?」と言って首をかしげた。
少し、間をおいて、
「ごめんなさい・・私、君のことを知らないわ」
そう言うと、何かを謝罪でもするかのように、腰を折って深く頭を下げた。長い髪がふわりと垂れる。
もしかして、変なナンパとでも勘違いされた?
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