81 / 330
最強の休部員②
しおりを挟む
僕は速水さんに「それで、速水部長、どうやって、休部中の先輩に声をかけるんだよ」と訊ねた。
「それでは、鈴木くん、引き受けてくれるのね?」
「ほとんど、無理やりだな」と僕が弱く抗議すると、
「私、あの人・・青山さんは苦手なのよ。ちょうどよかったわ、鈴木くんのような人がいてくれて」
僕はそんな時のための補強要員か。
「ところで、その青山先輩に会うの、どうすればいいんだ? まさか、三年生の教室に出向けって言うんじゃないだろうな」
三年生の教室に入るなんて、すごく、格好悪いぞ。それに・・
「それに・・僕の場合、影が薄いんだけど、3年の教室に行って大丈夫か?」
その言葉に小清水さんが「鈴木くん、それ、どういうことですかあ?」と訊ねた。
そこへ、すかさず速水さんが、
「沙希さん、きっと鈴木くんは『僕は影が薄いけど、僕の姿が青山さんに見えるか、どうか心配なんだ』・・とでも言いたいだけなのよ・・鈴木くんのつまらない冗談よ。いちいち真に受けない方がいいわ」
「つまらない冗談で悪かったな」と僕はふてくされた。
小清水さんは「そうだったんですね」と笑顔で納得した。
池永先生がそんな僕たちの様子を見て、
「へえ~っ、速水さんって、鈴木くんのことなら何でもわかるのね」と感心したように言った。
池永先生の言葉に、速水さんは、
「だって、鈴木くんって、わかりやすい性格なんですもの」と言った。
池永先生も「そうねえ・・先生もそう思うわ・・それに鈴木くん、いい人っぽいところもあるし」とつけ加えた。
いい人っぽい、って何だよ! お人好しという意味で言っているだろ!
速水さんだけでなく、池永先生までもか、と思っていると、
更に小清水さんが、追い打ちをかけるように、
「鈴木くんだったら、青山先輩にも、気持ちが通じるかもしれませんよ」と言った。
変なプレッシャーを感じるな・・
速水さんは状況を見て、「これでこの話はおしまいね」と判断したように言った。
「ちょっと、待てよ。まだ話が終わってないぞ! 僕はどこでその青山先輩に声をかけたらいいんだ?」
速水さんは改めて眼鏡の位置を整えて、
「鈴木くん、それは極めて簡単よ」と言った。
「簡単って?」
「彼女・・いえ、青山さんの家に行けばいいのよ」
速水さんがそう言うと、池永先生が「速水さん、ちょっと自宅はまずいわよ」と制した。
速水さんは「コホン」と咳払いをして、
「そうね。言われてみれば確かに、自宅っていうのはまずいわね」
指摘されるまで気づかなかったのか。
だが速水さんは懲りずに、
「だったら、鈴木くん、青山さんを待ち伏せしてちょうだい」と命令口調で言った。
「待ち伏せだと!」と僕は 大袈裟に反応した。
待ち伏せ・・そんな大それたこと、僕の17年間の短い人生で一度もしたことがない。
しかも年上の女性・・かつ、会ったこともない人だ。
影の薄い僕にそんな大胆なことができるのか? 相手に見えなかったりしたらどうするんだよ。
「これで決まりね。待ち伏せ場所は校門前よ」
と速水さんは強く言った。速水部長、無理に早く話を終わらそうとしてるだろ。
僕は速水さんの押しに観念して、
「わかったよ。校門前で待ち伏せするから、写真とかないのか」と言った。
小清水さんが「写真・・そういえば」と言って、書架の隣の戸棚の中をごそごそと何やら探し始めた。
そして、埃まみれのアルバムのようなものを取り出した。
「これ、去年の写真ですけど」
繰られたページの中に、新聞記事の切り抜き写真のようなものが貼ってあった。
速水さんが「その写真、学校の新聞の切り抜きよ。青山先輩が美術の絵画部門で優勝した時のものね」
「あら、懐かしいわね」と池永先生が言った。
そこに映っている青山先輩の雰囲気・・なんだか、本当の大人の女性みたいだ。
ただ一年上の先輩だからという理由ではない。
少しもちゃらけた感じがしない。というか、高校生らしさがない。
僕が幼かった頃、大人の女性というのは、こういう人を指すのだ思っていた。長い黒髪、少し翳のある表情・・そんなイメージが青山先輩にはあった。
「彼女、どんな感じの人なんだ?」
「どんな感じ?」と速水さんは言った。
「性格とかだよ」
「そうね・・青山さんは一言で言うと・・」
「一言で言うと?」
「大人ね」そう速水さんは言った。
「ですよねぇ。青山先輩・・すごく大人っぽいですよね」と小清水さん。
「本当ね・・彼女、ちょっと高校生らしくないっていうか」とマドンナ先生。
写真で見た通りだな。
さて・・いづれにせよ、僕は近日中にこの人を待ち伏せしなければならなくなったわけだ。
「それでは、鈴木くん、引き受けてくれるのね?」
「ほとんど、無理やりだな」と僕が弱く抗議すると、
「私、あの人・・青山さんは苦手なのよ。ちょうどよかったわ、鈴木くんのような人がいてくれて」
僕はそんな時のための補強要員か。
「ところで、その青山先輩に会うの、どうすればいいんだ? まさか、三年生の教室に出向けって言うんじゃないだろうな」
三年生の教室に入るなんて、すごく、格好悪いぞ。それに・・
「それに・・僕の場合、影が薄いんだけど、3年の教室に行って大丈夫か?」
その言葉に小清水さんが「鈴木くん、それ、どういうことですかあ?」と訊ねた。
そこへ、すかさず速水さんが、
「沙希さん、きっと鈴木くんは『僕は影が薄いけど、僕の姿が青山さんに見えるか、どうか心配なんだ』・・とでも言いたいだけなのよ・・鈴木くんのつまらない冗談よ。いちいち真に受けない方がいいわ」
「つまらない冗談で悪かったな」と僕はふてくされた。
小清水さんは「そうだったんですね」と笑顔で納得した。
池永先生がそんな僕たちの様子を見て、
「へえ~っ、速水さんって、鈴木くんのことなら何でもわかるのね」と感心したように言った。
池永先生の言葉に、速水さんは、
「だって、鈴木くんって、わかりやすい性格なんですもの」と言った。
池永先生も「そうねえ・・先生もそう思うわ・・それに鈴木くん、いい人っぽいところもあるし」とつけ加えた。
いい人っぽい、って何だよ! お人好しという意味で言っているだろ!
速水さんだけでなく、池永先生までもか、と思っていると、
更に小清水さんが、追い打ちをかけるように、
「鈴木くんだったら、青山先輩にも、気持ちが通じるかもしれませんよ」と言った。
変なプレッシャーを感じるな・・
速水さんは状況を見て、「これでこの話はおしまいね」と判断したように言った。
「ちょっと、待てよ。まだ話が終わってないぞ! 僕はどこでその青山先輩に声をかけたらいいんだ?」
速水さんは改めて眼鏡の位置を整えて、
「鈴木くん、それは極めて簡単よ」と言った。
「簡単って?」
「彼女・・いえ、青山さんの家に行けばいいのよ」
速水さんがそう言うと、池永先生が「速水さん、ちょっと自宅はまずいわよ」と制した。
速水さんは「コホン」と咳払いをして、
「そうね。言われてみれば確かに、自宅っていうのはまずいわね」
指摘されるまで気づかなかったのか。
だが速水さんは懲りずに、
「だったら、鈴木くん、青山さんを待ち伏せしてちょうだい」と命令口調で言った。
「待ち伏せだと!」と僕は 大袈裟に反応した。
待ち伏せ・・そんな大それたこと、僕の17年間の短い人生で一度もしたことがない。
しかも年上の女性・・かつ、会ったこともない人だ。
影の薄い僕にそんな大胆なことができるのか? 相手に見えなかったりしたらどうするんだよ。
「これで決まりね。待ち伏せ場所は校門前よ」
と速水さんは強く言った。速水部長、無理に早く話を終わらそうとしてるだろ。
僕は速水さんの押しに観念して、
「わかったよ。校門前で待ち伏せするから、写真とかないのか」と言った。
小清水さんが「写真・・そういえば」と言って、書架の隣の戸棚の中をごそごそと何やら探し始めた。
そして、埃まみれのアルバムのようなものを取り出した。
「これ、去年の写真ですけど」
繰られたページの中に、新聞記事の切り抜き写真のようなものが貼ってあった。
速水さんが「その写真、学校の新聞の切り抜きよ。青山先輩が美術の絵画部門で優勝した時のものね」
「あら、懐かしいわね」と池永先生が言った。
そこに映っている青山先輩の雰囲気・・なんだか、本当の大人の女性みたいだ。
ただ一年上の先輩だからという理由ではない。
少しもちゃらけた感じがしない。というか、高校生らしさがない。
僕が幼かった頃、大人の女性というのは、こういう人を指すのだ思っていた。長い黒髪、少し翳のある表情・・そんなイメージが青山先輩にはあった。
「彼女、どんな感じの人なんだ?」
「どんな感じ?」と速水さんは言った。
「性格とかだよ」
「そうね・・青山さんは一言で言うと・・」
「一言で言うと?」
「大人ね」そう速水さんは言った。
「ですよねぇ。青山先輩・・すごく大人っぽいですよね」と小清水さん。
「本当ね・・彼女、ちょっと高校生らしくないっていうか」とマドンナ先生。
写真で見た通りだな。
さて・・いづれにせよ、僕は近日中にこの人を待ち伏せしなければならなくなったわけだ。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
俺のメインヒロインは妹であってはならない
増月ヒラナ
青春
4月になって、やっと同じ高校に通えると大喜びの葵と樹。
周囲の幼馴染たちを巻き込んで、遊んだり遊んだり遊んだり勉強したりしなかったりの学園ラブコメ
小説家になろう https://ncode.syosetu.com/n4645ep/
カクヨム https://kakuyomu.jp/works/1177354054885272299/episodes/1177354054885296354
幼馴染をわからせたい ~実は両想いだと気が付かない二人は、今日も相手を告らせるために勝負(誘惑)して空回る~
下城米雪
青春
「よわよわ」「泣いちゃう?」「情けない」「ざーこ」と幼馴染に言われ続けた尾崎太一は、いつか彼女を泣かすという一心で己を鍛えていた。しかし中学生になった日、可愛くなった彼女を見て気持ちが変化する。その後の彼は、自分を認めさせて告白するために勝負を続けるのだった。
一方、彼の幼馴染である穂村芽依は、三歳の時に交わした結婚の約束が生きていると思っていた。しかし友人から「尾崎くんに対して酷過ぎない?」と言われ太一に恨まれていると錯覚する。だが勝負に勝ち続ける限りは彼と一緒に遊べることに気が付いた。そして思った。いつか負けてしまう前に、彼をメロメロにして告らせれば良いのだ。
かくして、実は両想いだと気が付かない二人は、互いの魅力をわからせるための勝負を続けているのだった。
芽衣は少しだけ他人よりも性欲が強いせいで空回りをして、太一は「愛してるゲーム」「脱衣チェス」「乳首当てゲーム」などの意味不明な勝負に惨敗して自信を喪失してしまう。
乳首当てゲームの後、泣きながら廊下を歩いていた太一は、アニメが大好きな先輩、白柳楓と出会った。彼女は太一の話を聞いて「両想い」に気が付き、アドバイスをする。また二人は会話の波長が合うことから、気が付けば毎日会話するようになっていた。
その関係を芽依が知った時、幼馴染の関係が大きく変わり始めるのだった。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる