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加藤ゆかりと喫茶店にて②
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僕の憤る様子を見て、加藤はこう言った。
「鈴木を・・そ、その・・信用しているからだよ」
そう照れくさそうに言った加藤の顔は真剣だった。
ええっ・・僕を信用?
なぜ? どうして? わからない!
加藤の言葉にどう言っていいかわからず、
「なんで僕を信用なんか・・」
「だって、鈴木、真面目そうだし、・・それに、クラスの中で影がうすいし・・」
「何だよ、それ」
「それに・・」と加藤ゆかりは理由がまだあるような口ぶりで続けた。
「それに・・何?」僕は加藤を促す。
その言葉の先は・・
また、影が薄いとか、似たような理由じゃないだろうな。
「純子が・・鈴木くんに訊いたら? って言うしさ」
えっ・・水沢さんが・・
僕、この二人に信用されるようなことを言ったか? 水沢さんの家の近くで見つかった言い訳を「散歩」とか言って嘘をついたんだぞ。
「それに、鈴木って、誠実そうじゃん。嘘つかなそうだし」
嘘はついたぞ。つい最近。
もうこれ以上、だんまりはできない。
「だったら、言うよ」
加藤・・聞いても傷つくなよ。
僕の声に加藤は僕の顔を真顔で見た。
「佐藤には好きな子がいる・・」
そう僕は言った。
僕の言葉を聞くなり加藤の体のあらゆる動きが止まった。アイスコーヒーのグラスにも手をつけない。
「そ、そっかあ・・」
加藤は引き攣ったような笑顔を浮かべた。「そりゃ、そうだよねえ。佐藤くんだものねえ。健康な高校生だもんねえ」
一度は落胆したあと、加藤は、
「そ、それで、つき合いは・・・してるの?」
そう加藤はおそるおそる僕に訊ねた。
「いや、佐藤は、その相手とはつき合ってはいない・・と思う」
ああ、加藤を少し喜ばせてしまったかな。
「そ、そうなんだ・・」
加藤の奴、喜びが顔に出過ぎてる。
加藤は「だったら、私にもチャンスがあるかもねえ」と言って、ようやくアイスコーヒーに口をつけた。
さすがはスポーツ系女子だ。立ち直りも早い。おそらくまだ諦めていないのだろう。
僕とは大違いだ。僕は告白する前から諦めている・・いや、水沢さんに告白なんて大それたことはしないが。
「それで・・鈴木は、佐藤くんの好きな子、誰かは知ってるの?」
「いや・・知らない・・」
僕は、また嘘をついた。加藤には二度目の嘘だ。
相手は、
加藤がさっき会ったばかりの子だよ。
文芸サークルの部長速水沙織だ。
一通りの話を終えると加藤ゆかりは、
「鈴木、今日はありがとね」と礼を述べ、
「やっぱり、鈴木に訊いてよかったよ」と言って女の子らしい笑顔を浮かべた。
そして、今日、加藤と話したことは誰にも言わない、特に佐藤には言わないことを加藤に念を押された。
その後、しばらく加藤と雑談をした後、加藤はこう言った。
「鈴木にさあ、もし好きな子ができたら、そん時、教えてよ。私、仲を取り持ってあげてもいいよ」
え?・・加藤は嬉しいことを言ってくれるけど、僕の好きな子は、加藤の親友、水沢純子だぞ。
それって、加藤に言っていいことなのか? 秘めた思いに徹するべきなのか?
「影が薄くっても、鈴木なら、好きになる女の子、いると思うよ」
と、また加藤は嬉しいことを付け足した。「影が薄い」はよけいだ。
最後に加藤に「今回は奢らせて」と言われ、僕は初めて女の子に奢られる経験をすることになった。こうして、 初の女の子と喫茶店に行くという貴重な体験は終わった。
加藤に「私は家に帰るけど、鈴木は部室に戻るの?」と訊かれ、「僕は一応、戻る」と答えて、喫茶店の前で別れた。
部室には特に戻る必要ないが、僕は二人の女の子が待っている部屋に戻ることにした。
部室に戻ると、小清水さんが帰り支度をしているところだった。
速水沙織は僕に気づくと、
その理知的な顔で、
「鈴木くん、喫茶店で透明にならなかったわよね?」と心配そうに話しかけてきた。
なっ・・何て答えればいいんだっ!
速水さん、正気?
「速水部長! トウメイって何ですか?」
小清水さんが素朴な疑問を投げかける。
はっと気づいたのか、速水さんは「ごほん」と咳払いをして、
「透明じゃないわね・・『鈴木くん、薄くならなった?』の間違いよ」と言い直し、「これ以上影が薄くなったら大変だわ」と言った。
どうやら、本当に間違えたらしい。
「なあんだ・・うすくかあ・・」当の小清水さんは速水さんの不自然な言葉に納得したようだ。
「これ以上、うすくならないよ!」僕は声のトーンを荒げて速水さんに言った。
人のいい小清水さんに変な誤解をされたらどうするんだ。
僕たち、三人は一緒に下校するのかと思ったら、速水さんは「私はもう少し、ここにいるわ」と言った。
少し翳のある表情を浮かべた速水さんは僕たちを部室の外へ送り出した。
僕は速水さんがどうやって透明化するのか、そのことを訊きたかったが、またそれは別の機会にするしかない。
校舎を出ると、小清水さんは「私はこっちだから」と言って、北のバス停に向かった。
振り返ると、遠くから小清水さんが「鈴木くん。また明日ね」と言って手を振ってくれた。
女の子にどう対応していいかわからない僕は頭を下げた。何か格好悪い。
「鈴木を・・そ、その・・信用しているからだよ」
そう照れくさそうに言った加藤の顔は真剣だった。
ええっ・・僕を信用?
なぜ? どうして? わからない!
加藤の言葉にどう言っていいかわからず、
「なんで僕を信用なんか・・」
「だって、鈴木、真面目そうだし、・・それに、クラスの中で影がうすいし・・」
「何だよ、それ」
「それに・・」と加藤ゆかりは理由がまだあるような口ぶりで続けた。
「それに・・何?」僕は加藤を促す。
その言葉の先は・・
また、影が薄いとか、似たような理由じゃないだろうな。
「純子が・・鈴木くんに訊いたら? って言うしさ」
えっ・・水沢さんが・・
僕、この二人に信用されるようなことを言ったか? 水沢さんの家の近くで見つかった言い訳を「散歩」とか言って嘘をついたんだぞ。
「それに、鈴木って、誠実そうじゃん。嘘つかなそうだし」
嘘はついたぞ。つい最近。
もうこれ以上、だんまりはできない。
「だったら、言うよ」
加藤・・聞いても傷つくなよ。
僕の声に加藤は僕の顔を真顔で見た。
「佐藤には好きな子がいる・・」
そう僕は言った。
僕の言葉を聞くなり加藤の体のあらゆる動きが止まった。アイスコーヒーのグラスにも手をつけない。
「そ、そっかあ・・」
加藤は引き攣ったような笑顔を浮かべた。「そりゃ、そうだよねえ。佐藤くんだものねえ。健康な高校生だもんねえ」
一度は落胆したあと、加藤は、
「そ、それで、つき合いは・・・してるの?」
そう加藤はおそるおそる僕に訊ねた。
「いや、佐藤は、その相手とはつき合ってはいない・・と思う」
ああ、加藤を少し喜ばせてしまったかな。
「そ、そうなんだ・・」
加藤の奴、喜びが顔に出過ぎてる。
加藤は「だったら、私にもチャンスがあるかもねえ」と言って、ようやくアイスコーヒーに口をつけた。
さすがはスポーツ系女子だ。立ち直りも早い。おそらくまだ諦めていないのだろう。
僕とは大違いだ。僕は告白する前から諦めている・・いや、水沢さんに告白なんて大それたことはしないが。
「それで・・鈴木は、佐藤くんの好きな子、誰かは知ってるの?」
「いや・・知らない・・」
僕は、また嘘をついた。加藤には二度目の嘘だ。
相手は、
加藤がさっき会ったばかりの子だよ。
文芸サークルの部長速水沙織だ。
一通りの話を終えると加藤ゆかりは、
「鈴木、今日はありがとね」と礼を述べ、
「やっぱり、鈴木に訊いてよかったよ」と言って女の子らしい笑顔を浮かべた。
そして、今日、加藤と話したことは誰にも言わない、特に佐藤には言わないことを加藤に念を押された。
その後、しばらく加藤と雑談をした後、加藤はこう言った。
「鈴木にさあ、もし好きな子ができたら、そん時、教えてよ。私、仲を取り持ってあげてもいいよ」
え?・・加藤は嬉しいことを言ってくれるけど、僕の好きな子は、加藤の親友、水沢純子だぞ。
それって、加藤に言っていいことなのか? 秘めた思いに徹するべきなのか?
「影が薄くっても、鈴木なら、好きになる女の子、いると思うよ」
と、また加藤は嬉しいことを付け足した。「影が薄い」はよけいだ。
最後に加藤に「今回は奢らせて」と言われ、僕は初めて女の子に奢られる経験をすることになった。こうして、 初の女の子と喫茶店に行くという貴重な体験は終わった。
加藤に「私は家に帰るけど、鈴木は部室に戻るの?」と訊かれ、「僕は一応、戻る」と答えて、喫茶店の前で別れた。
部室には特に戻る必要ないが、僕は二人の女の子が待っている部屋に戻ることにした。
部室に戻ると、小清水さんが帰り支度をしているところだった。
速水沙織は僕に気づくと、
その理知的な顔で、
「鈴木くん、喫茶店で透明にならなかったわよね?」と心配そうに話しかけてきた。
なっ・・何て答えればいいんだっ!
速水さん、正気?
「速水部長! トウメイって何ですか?」
小清水さんが素朴な疑問を投げかける。
はっと気づいたのか、速水さんは「ごほん」と咳払いをして、
「透明じゃないわね・・『鈴木くん、薄くならなった?』の間違いよ」と言い直し、「これ以上影が薄くなったら大変だわ」と言った。
どうやら、本当に間違えたらしい。
「なあんだ・・うすくかあ・・」当の小清水さんは速水さんの不自然な言葉に納得したようだ。
「これ以上、うすくならないよ!」僕は声のトーンを荒げて速水さんに言った。
人のいい小清水さんに変な誤解をされたらどうするんだ。
僕たち、三人は一緒に下校するのかと思ったら、速水さんは「私はもう少し、ここにいるわ」と言った。
少し翳のある表情を浮かべた速水さんは僕たちを部室の外へ送り出した。
僕は速水さんがどうやって透明化するのか、そのことを訊きたかったが、またそれは別の機会にするしかない。
校舎を出ると、小清水さんは「私はこっちだから」と言って、北のバス停に向かった。
振り返ると、遠くから小清水さんが「鈴木くん。また明日ね」と言って手を振ってくれた。
女の子にどう対応していいかわからない僕は頭を下げた。何か格好悪い。
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