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檻の中の少女①
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◆檻の中の少女
子供たちを見ることは、それこそ彼らを見世物のように扱っている気がして、申し訳ない気がしてきました。
早く父の元へ戻ろう・・
そう思った時、ある女の子が気になったのです。
その子は、下段の端の檻にいて、僕から目を背けていました。まるでプイと怒ったように背を向けています。
その子を見た時、僕は自然と声を出していました。少女の顔を見てみたかったのかもしれません。
声をかけるのは良くないような気がしましたが、止めることができませんでした。
「そこで何してるん?」
「何をしている?」という僕の言葉はおかしかったですが、他に言葉が見つからなかったのです。
少女の身なりは僕とは大違いです。こんなボロの服を僕はこれまで見たことがありません。
クラスの女の子の着飾った服と比べることもできません。
女の子は僕に向き直ると、黙ったまま僕の全身を上から下までチェックするように目を走らせました。
僕がどんな類いの人間・・どんな環境で育ち、どれほど恵まれているのかをチェックしているようです。
僕を見え終えた少女は、ギロリと僕を見上げ、小さくこう言いました。
「私にしゃべりかけんといてっ!」
少女の方も他に言葉が無かったようでした。
少女は「近づくな」という風に言って、檻の片隅に逃げ込むようにして、両膝を抱えて、その間に顔を埋めました。
まるで自分の境遇を僕のような恵まれた男の子に見られるのが恥ずかしい・・見られることは自分の誇りが許さない。そんな風に見えましたし、
「自分を関わると、あなたまで同じ目に遭う」そう言っているような気もしました。
けれど、僕は一瞬、女の子の目を見たのです。
・・女の子の目は燃えているようでした。
髪は伸ばしっぱなしでバサバサなのに、目が澄んでいて光っていました。
その身に付けている物は最悪なのに、その瞳は輝いている・・僕はそんな少女を美しいと思いました。
それきり彼女との会話は終わりなのか・・残念だな、と思っていると、
少女は顔を少し上げ、
「あんた・・」と僕に呼びかけました。
何を言い出すのかと身構えていると、
彼女は、「あんた・・学校とか行ってんの?」と小さな声で言いました。耳を澄ませていないと、聞き逃しそうな小さく切なくなるような声です。
もしかすると、外部の人間に話しかけるのは禁じられれいるのかもしれません。
僕は小さく「うん」と言って、「行ってるよ」と答えました。それが当然だと思ったからです。
けれど、僕にとっての当然は、少女にとってはそうではないようでした。
少女は、「ええなあ」と遠くを見るような目をした後、
「私も学校に行きたいなあ」
それだけ言うと、再び顔を両膝の間に埋めました。
僕たちの会話を聞いていたのか、女の子の斜め上の檻にいた少年が、
「おいっ、お前、どこから来たんか知らんけど、よそ者やろっ。アケミに馴れ馴れしく声をかけるんやない!」と怒鳴ってきました。
けれど、男の子の言葉で、少女の名前が「アケミ」というのが分かりました。少女に少し近づけた気がしました。
更に僕は推測しました。
あの男の子は、アケミという目の綺麗な子のことが好きなのかもしれないと。
けれど、二人の間には、檻の金網があります。すごく距離は近いのに、離れているように思えました。
もっとアケミという少女とお話がしたかったけれど、これ以上、声をかけるのは罪のような気がしました。
それに他の檻に入れられている男の子や女の子が僕を睨みつけています。
僕はよそ者だし、彼らにとってはアケミという子にちょっかいを出している子供に見えたのかもしれません。
だからと言って、他の子と話す気は起きませんでした。僕はそこまで人間が出来ていません。
檻の中の子供たちの顔は、同じクラスの子の顔に見えてきました。境遇は違うけれど、僕たちと同じ年齢の子供たちなのです。
けれど、何かが少しずれてしまった・・そんな気がしました。
確実に言えるのは、檻の中の子供たちには「笑顔」がないことです。
まるで自分の運命を呪っているかのような顔です。とてもこの境遇に安住しているようには見えません。
少女の元を離れる際、「バイバイ」と言っていいのか、「また来るよ」或いは「じゃあね、元気でね」と何を言っていいのか分からず迷っていると、
近くにいた中年の男二人が、僕を見つけて声をかけてきました。
男たちはランニングシャツ一枚で、顔は陽に焼け真っ黒です。
「おい、坊主・・その子らは見世物やないんやで」と一人が言うと、
「まあ、もうじきしたら、どの道、見世物になるんやけどな」ともう一人がそう言ってゲラゲラと笑いました。
すると男たちの後ろから、女の人の顔が覗き、
「見学は無料やから、なんぼでも見てかまへんで」と言いました。女の人は男たちより偉そうな感じです。この場所を仕切っているボスのようにも見えました。
女の人はもう一人いて、
「まだ金にならん子ばかりやからなあ」と言った後、「女の子らは、もうじきしたらええ金になるけどなあ」とニヤニヤ笑いながら言いました。
女の子がいい金になる・・そんな言葉が分からない年齢でしたが、その言葉から何となく怖いもの・・何かイヤらしいものを感じ取りました。
更に不気味なことに、二人の女の人が横に並ぶと、顔が瓜二つなのに気づきました。
怖くなるくらいに似ています。双子でしょうか。
子供たちを見ることは、それこそ彼らを見世物のように扱っている気がして、申し訳ない気がしてきました。
早く父の元へ戻ろう・・
そう思った時、ある女の子が気になったのです。
その子は、下段の端の檻にいて、僕から目を背けていました。まるでプイと怒ったように背を向けています。
その子を見た時、僕は自然と声を出していました。少女の顔を見てみたかったのかもしれません。
声をかけるのは良くないような気がしましたが、止めることができませんでした。
「そこで何してるん?」
「何をしている?」という僕の言葉はおかしかったですが、他に言葉が見つからなかったのです。
少女の身なりは僕とは大違いです。こんなボロの服を僕はこれまで見たことがありません。
クラスの女の子の着飾った服と比べることもできません。
女の子は僕に向き直ると、黙ったまま僕の全身を上から下までチェックするように目を走らせました。
僕がどんな類いの人間・・どんな環境で育ち、どれほど恵まれているのかをチェックしているようです。
僕を見え終えた少女は、ギロリと僕を見上げ、小さくこう言いました。
「私にしゃべりかけんといてっ!」
少女の方も他に言葉が無かったようでした。
少女は「近づくな」という風に言って、檻の片隅に逃げ込むようにして、両膝を抱えて、その間に顔を埋めました。
まるで自分の境遇を僕のような恵まれた男の子に見られるのが恥ずかしい・・見られることは自分の誇りが許さない。そんな風に見えましたし、
「自分を関わると、あなたまで同じ目に遭う」そう言っているような気もしました。
けれど、僕は一瞬、女の子の目を見たのです。
・・女の子の目は燃えているようでした。
髪は伸ばしっぱなしでバサバサなのに、目が澄んでいて光っていました。
その身に付けている物は最悪なのに、その瞳は輝いている・・僕はそんな少女を美しいと思いました。
それきり彼女との会話は終わりなのか・・残念だな、と思っていると、
少女は顔を少し上げ、
「あんた・・」と僕に呼びかけました。
何を言い出すのかと身構えていると、
彼女は、「あんた・・学校とか行ってんの?」と小さな声で言いました。耳を澄ませていないと、聞き逃しそうな小さく切なくなるような声です。
もしかすると、外部の人間に話しかけるのは禁じられれいるのかもしれません。
僕は小さく「うん」と言って、「行ってるよ」と答えました。それが当然だと思ったからです。
けれど、僕にとっての当然は、少女にとってはそうではないようでした。
少女は、「ええなあ」と遠くを見るような目をした後、
「私も学校に行きたいなあ」
それだけ言うと、再び顔を両膝の間に埋めました。
僕たちの会話を聞いていたのか、女の子の斜め上の檻にいた少年が、
「おいっ、お前、どこから来たんか知らんけど、よそ者やろっ。アケミに馴れ馴れしく声をかけるんやない!」と怒鳴ってきました。
けれど、男の子の言葉で、少女の名前が「アケミ」というのが分かりました。少女に少し近づけた気がしました。
更に僕は推測しました。
あの男の子は、アケミという目の綺麗な子のことが好きなのかもしれないと。
けれど、二人の間には、檻の金網があります。すごく距離は近いのに、離れているように思えました。
もっとアケミという少女とお話がしたかったけれど、これ以上、声をかけるのは罪のような気がしました。
それに他の檻に入れられている男の子や女の子が僕を睨みつけています。
僕はよそ者だし、彼らにとってはアケミという子にちょっかいを出している子供に見えたのかもしれません。
だからと言って、他の子と話す気は起きませんでした。僕はそこまで人間が出来ていません。
檻の中の子供たちの顔は、同じクラスの子の顔に見えてきました。境遇は違うけれど、僕たちと同じ年齢の子供たちなのです。
けれど、何かが少しずれてしまった・・そんな気がしました。
確実に言えるのは、檻の中の子供たちには「笑顔」がないことです。
まるで自分の運命を呪っているかのような顔です。とてもこの境遇に安住しているようには見えません。
少女の元を離れる際、「バイバイ」と言っていいのか、「また来るよ」或いは「じゃあね、元気でね」と何を言っていいのか分からず迷っていると、
近くにいた中年の男二人が、僕を見つけて声をかけてきました。
男たちはランニングシャツ一枚で、顔は陽に焼け真っ黒です。
「おい、坊主・・その子らは見世物やないんやで」と一人が言うと、
「まあ、もうじきしたら、どの道、見世物になるんやけどな」ともう一人がそう言ってゲラゲラと笑いました。
すると男たちの後ろから、女の人の顔が覗き、
「見学は無料やから、なんぼでも見てかまへんで」と言いました。女の人は男たちより偉そうな感じです。この場所を仕切っているボスのようにも見えました。
女の人はもう一人いて、
「まだ金にならん子ばかりやからなあ」と言った後、「女の子らは、もうじきしたらええ金になるけどなあ」とニヤニヤ笑いながら言いました。
女の子がいい金になる・・そんな言葉が分からない年齢でしたが、その言葉から何となく怖いもの・・何かイヤらしいものを感じ取りました。
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